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北門消失で戦線後退

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 北門も、その内門もどんどん壊されていく。


 オーガたちは元は門だった木片や鉄材や、城壁を崩した石材をこっちに投げつけて攻撃してきたのだ。


 もう応急修理みたいなものは無理だろう。


 北門は一番の防衛拠点なのに。


 新しく資材を運んで作る、事実上の新造という形でないと北門も内門も復活しない。


 崩したところを登ってオーガが城壁の上で暴れ出した。


 弓や魔法で城壁上から下に攻撃していたのが、その攻撃力がどんどん低下していく。


 北門は完全に陥落して、城壁も僕たちの手から失われようとしていた。


 一気に形勢が不利になった。


 そして、有利と不利の天秤はいま現在もどんどん不利のほうに大きく傾き続けている。


「王子、野戦病院を撤収させるように伝えて、その手伝いをしてもらいたい」


「わかりました。すぐに!」


 娘が心配というのもあるのだろうが、戦線崩壊までありそうな形勢に侯爵はヒーラーを安全地帯に移動させる選択をしたのだろう。


 野戦病院がなくなってしまうと回復に時間が余分に必要となるが、ここでヒーラーを潰されてしまったら天秤が傾き過ぎて引っ繰り返る。


 損得を計算すれば、適切な判断だと僕も思った。


 フェヘールのところにいき侯爵の撤収命令を伝えるが、すでに自分たちでも危険だと判断していたようだ。


「ちょっと待って、いま準備している」


「ゆっくりでも大丈夫だよ」


 40秒で支度しなとか、3分だけ待ってやるとか、そんなセリフが頭に浮かんだけど。


 こういうときに急かしていい結果が出ることはないからね。


 白樺救護団のメンバーだけでなく、重傷者も移動させなければならない。


 打撲や裂傷なら治せるけど、手や足を食われたらフェヘールでも無理。


 なくなった手や足が生えてくるわけないし。


 聖女だとか言われていたとしても基本的には自然治癒するのを活性化して加速させるとか、医学の範囲のものを魔法で再現するとか、そういうレベルであれば成功するけど、さすがに人間の科学的な治癒範囲を超えることはできない。


 そういう不幸な負傷者はできる限り治療するし、なんとか死なせないように努力するものの残念ながら障害が残ったりする。


 自力で動けない患者を連れてフェヘールと白樺救護団のメンバーは後方に撤収だ。


 テントやベッドは捨てていく。


 僕は最後尾で警護担当。


 さあ、出発! というところで嫌な気配がした。


 同じものをフェヘールも察知したらしい。


「クリート!」


「なんだ? 速い!」


 禍々しいパワーの塊が急速接近中。


 メレデクヘーギ山脈からこっちに向かってくる!


 しかも、複数。


 数は……100?


 200?


 とほうもない数で、北の空が暗く見える。


 タトラ山でワイバーンに襲われたが、あのときよりもずっと強いものが、もっと速く、もっと多く、街に迫っているのは間違いなかった。


「ワイバーン以上ということは……ドラゴン?」


「そう。おそらく……180頭くらいかな?」


「180!」


 終わった……いくらメレデクヘーギ侯爵家の騎士たちや、この領地に暮らす冒険者が凄腕で、ドラゴンでも楽々狩ってしまうといっても、1頭を集団で包囲するからだ。


 一気に180頭のドラゴンが攻めてきたら勝ち目はまずないだろう。


 スタンピードはあいかわらずで他の魔獣も攻めてきていて、防衛の要になるはずの北門は破壊されているのだ。


 その一方で「これで終わりかな?」と思った瞬間から思考は冷たく冴えてきた。


 アダマント製のハゴロモだから剣のほうはドラゴンだって効果はあるはずだけど、剣技のほうが心許ない――それでも、やる!


 僕はまだ戦えるんだ。


 まあ、侯爵たちがなんとかしてくれて、こっちにこない可能性も結構あったりするから、それに期待しておこう。


 どんどん危険な気配が近づいてきて、背中がゾクゾクする。


 城壁のあたりでも怒声が響いてきた。


 フェヘールたちは負傷者を抱えるようにして急ぐ。


 だけど、ゆっくり歩くほどのスピードがやっと。


 気配だけでなく、シルエットが見えてきた。


 はっきりとはわからないけど……デカい!


 180頭とフェヘールが言ったけど、ちょっと数え切れないレベル。


 ドラゴンといえども魔獣なのだから、そんな意識はないのだろうが、まるで戦闘機の編隊飛行みたいにVの字になっている。


 その編隊がいくつも連なっていた。


 どんどん姿が大きくなっていき、はっきりドラゴンだとわかる。


 バンバンバンと空気を切り裂く鋭い音が連続した。


 残り100メートルを切ったとき、城壁上のバリスタが放たれたのだ。


 何本かは当たったかのように見えたが、ドラゴンは1頭も離脱せずに突っ込んでくる。


 城壁上や、その周辺で戦闘がはじまった。


 そして、そこを抜けてきたドラゴンが1頭、こっちに向かってくる。


「フェヘール、伏せて!」


 叫びながらハゴロモを抜く。


 いくぞ! と自分に気合いを入れる。


 巨大な顎が開き、口中の真っ赤な色だけが僕の視界を占めた。


 このところ一番得意な突き技の改良をやっていた――本来は5メートルほどの間合いを一気に潰して突き技を放つのだが、それを上方向に移動しつつ突き技に持っていこうとしていたのだ。


 いままでの練習では、かなり成功率を高めることができたけど、それが本番で成功するという保証にならない。


 ゲームの世界では失敗して死んでもリスポーンできるけど、この世界では2度目なんてないのだから、なおさら緊張感が高まる。


 体内に魔力をぐるぐるまわして、人間を辞めてしまったレベルに筋力をアップさせていった。


「ストリーム・ストライク!」


 食われるという、その瞬間。


 モーションのスタート時にわずかなズレが出しまったけど、敵のほうが質量が圧倒的に上で、しかも急降下してるのだから少しくらい僕のほうの威力が低くなっても関係ない。


 ハゴロモがドラゴンの口中に飛び込もうとする寸前、わずかに剣先を上げる。


 その剣先が鼻を貫いた。


 するっと、滑るようにハゴロモの鍔元まで突き抜ける。


 例えていうなら豆腐に箸を刺すような感触だ。


 これで呼吸系にダメージを与えた。


 息が吸えなくなったわけではないけど、酸素を充分に取り込めないと運動能力が低下するのは人間も魔獣も同じ。


 特に激しい戦闘で鼻が使えなくなるのは致命的な事態だ――といっても、基礎的な能力がドラゴンと僕では桁が違うので、ものすごく不利だったのが、すごく不利になった程度なんだと思うけど。


「おいおい、俺のかわいいペットにひどいことしてくれるな」


 若い男の声がした。




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