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攻防戦が本格化してきた

085




 翌日も翌々日も強行偵察がおこなわれ、出陣した水溺姫は街に迫ってくる魔獣をどんどん殲滅していった。


 もっとも、1人や2人の魔法士がどんなに強い魔法を使ったところで、何万、何十万、ことによっては何百万もの魔獣が溢れ出すスタンピードを食い止めることは不可能。


 フェヘールが濁流の前に置いた小石みたいなものだと例えたけど、方向をわずかに逸らすことすらできなかった。


 その次の日にはスタンピードの先頭がメレデクヘーギ侯爵家の一番外の城壁に到達したのだから。


 第1波はコブリンやコボルドを中心にした、最弱クラスの魔獣がただ数任せにゴリ押しするだけだったので、城壁の上から弓兵が矢の雨を降らせ、魔法士が薙ぎ倒し、怯んだところを打って出てほとんど全滅に近いところまで追い込むことができた。


 山に近い北門やその近くの城壁が一番の激戦地になるのは確実だけど、やっぱり僕はその少し後ろの物見櫓に配置されて、メレデクヘーギ侯爵の隣にいることになった。


 まあ、こういう序盤では弓や魔法がメインで剣士はあまり活躍の場はないけど。


 でもね、最前線というのは、最前線というだけで心が躍るよ。


 わがままなことを言う気もないし、乱戦になったら前へ出る機会はいくらでもあるんだが――それは同時に城壁を突破されてしまったことを意味するので、乱戦にならなければいいと願ってはいたが。


 夜にはスケルトン、ゾンビ、グールといったアンデッドが攻めてくる。


 こっちもこっちで、そう強くはないが、昼夜連続して攻撃が続くのが辛い。


 幸いメレデクヘーギ侯爵家が最大規模の騎士団を抱えているから交代で食事や休憩や睡眠をとることができているけど、絶え間ない攻撃こそがスタンピードにおける最大の脅威だと思う。


 ゴブリンやオークにくわえて、アーマーリザードやグリズリードッグが混じったり、オークやオーガの姿が見えたりすることも出てきた。


 トロールが城壁に手をかけて――だけどポラーニみたいな低い塀ではないから登ることはできず、上から集中攻撃を受けて斃れる。


 ゴーレムは厄介で、物理的に硬くて矢が通りにくく、魔法耐性もあったりして、かといって接近戦で剣や槍に弱いわけもなく、1頭だけだったとしても破壊するまでに時間がかかった。


「北門が突破されたぞ!」


 不吉な情勢を伝える声が響く。


 幸い、僕は休憩時間だったので急いで援軍に向かった。


 当番なら物見櫓から勝手に動くわけにはいかないけど、非番中なら自由だ。


 まあ、本当のところは非番だからといって勝手なことしていいわけないんだけど、命令違反にはギリギリならない……と思う。


 たぶん。


 きっと。


 北門では魔獣が虐殺されていた。


 防御設備としては門だけがあるわけではなく、城壁も外まわりを囲っているだけでもなく、門の内側にも丸太を組み合わせた柵があった。


 まるで門からの侵入者を挟み撃ちするかのように――実際それが目的だろうが門から内側にも左右に柵があり、そこを騎士や冒険者が守っている。


 柵の隙間から矢を射かけたり、槍で突いていく。


 僕もそんな中に飛び込んで剣で魔獣を突き倒していった。


 門を突破してきたのはトロールとゴーレムばかりだから一撃というわけにはいかず、何度も突くことになる。


 ただアダマント製の剣のおかげで切れ味が鈍ることもないのは助かったけど。


 特にゴーレムは鉄だしね。


 魔力を含んだ鉄で、鍛えると一般的な鉄より頑丈でゲーム的に例えるなら耐久性+3とか破壊耐性+5とか、そんなイメージだから、売れば結構な小遣いになりそうなんだけど、いまは拾っている時間がないのが残念。


 城壁の内側だから魔獣を殲滅させれば拾うことができるかな?


 いま破壊された門は突貫工事で修理中だから、1時間もしないうちに修復されるはずだけど。


 ちょっとだけ欲にまみれたことを考えながら魔獣と戦っていると、あっという間に休憩時間が終わってしまった。


 現場の指揮官に訊いてみたけど、別に手が足りないわけではないと言われてしまったので本来の持ち場である物見櫓に戻る。


 もし現場で人手不足なら、もう少し残れたかもしれないけどね。


 残念だけどしかたない。


 それに物見櫓に戻って改めて眺めてみると、いい感じに防衛戦が推移しているのがわかった。


 さっきの北門はそうだけど、ちょっと防御に綻びが出ても、すぐに的確なカバーできるような構造になっていて、指揮官の指示が出るよりも早く騎士も冒険者も動き出しているのだ。


「これなら……勝ち目が見えてきた」


 そんなことを実感したとき、城壁の上からバリスタの発射音がしてきた。


 スタンピードの魔獣の群れにガーゴイルやワイバーンといった飛行型の魔獣もくわわったのだ。


 そして、それを契機にだんだんとメレデクヘーギ侯爵家の騎士団にも損害が出てくる――まあ、考えてみれば前世での戦争でも戦闘機を撃ち落とすには機関銃みたいなものを使っていたし、その後の時代になると追跡機能がついたミサイルが開発されたんだから、地上からの対空戦は難しいのだろう。


 大和みたいな超弩級戦艦だってアメリカ軍機の爆撃と雷撃で鹿児島県の沖に沈んだし。


 だいたいワイバーンなんて異様に旋回能力が高くて、いきなり空中で停止したり、急加速したり、ジェット戦闘機やヘリコプターより飛行能力が高いんじゃないかな?


 それに対して単発でしか撃てず、次弾の装填に時間のかかるバリスタで戦うのだから不利もいいところ。


 ランゲ団長をはじめ、腕のいい魔法士が揃ったメレデクヘーギ侯爵家の魔法士団は100名ほどいるから、100頭はいそうなワイバーンの群れだけど、1人で1頭を斃せばいい計算だ――あくまで計算上の話だけど。


 弾幕というには薄いが城壁の上に並んだバリスタが次から次へとワイバーンに向かっていくが、いいとこみろまでいっても、なかなか当たらない。


 その間隙をついて急降下してきたワイバーンが騎士を咥えると急上昇していく。


 さらに何人もの騎士や冒険者に犠牲が出た。


「ちょっといってきます」


 メレデクヘーギ侯爵に言い捨てるようにして駆け出した。


 大きい声をあげてワイバーンの気を惹きながら城壁に向かう。


「こっちだ、こっちだ、かかってこい!」


 突っ込んできたところを剣技で斬り墜としてやろうと狙っていたのに、飛んできたのはブレスだけ。


 必死に炎をかわしつつ、城壁の上で叫ぶ。


「かかってこいよ! かかってこいよ!」


「クケケケケケケケ………………」


 しかし、ワイバーンはバカにしてような鳴き声を浴びせてくるだけ。


 さらに他のワイバーンも嘲笑ったり、ブレスをぶつけようとしてきた。





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