いまの状況は?
おまたせいたしました。第2章を開始します。
これを書いている間、ずっと放置していたのに、なぜかブクマや評価がすごいことになっていまして……ありがとうございます!
作者だけが楽しんでいる底辺作品しか書けない浅学非才の身ですので驚くやら、怖くなってみたり、ポイントの増え方を見て、ちょっとしたパニックになっていました。
これからスタートする第2章はそんな皆様の期待にこたえられるものになれば、と祈っています。
意識が………………だんだん…………………………覚醒していく。
誰だ?
僕の昼寝を妨げる奴は?
よかったな、僕がただの王子で。
もし国王だったら『昼寝を妨げる奴は死刑』って法律を作って、不埒な者はみんな縛り首かギロチンにかけるところだ。
「クリート王子、物騒な心情が口から漏れてます。あと、あんまり馬鹿な国王だと革命が起きて、あなたのほうが縛り首かギロチンですよ」
確かに処刑されるのは僕のほうかもしれない、と目を開けるとフレドリカ先生が覗き込んでいた。
このアルフォルド王国でもトップクラスの魔法士にして、さっぱり魔法の才能がない落ちこぼれの出涸らし王子ですら見捨てずに最低限の魔法くらいは使えるようにしてあげようと努力している、本物の教師だ。
さらに付け加えると長い時を生きたエルフ族でもあり、知識にしても、経験にしても、人族とは比較にならない量だったりする。
そんな俊英に教わっても魔力を体内に循環させる身体強化はできても、外に放出することはできないんだけどね。
改善の兆候すらさっぱり。
魔力もあって、素質もそれなりにはあるのにね。
明かりを灯す『ライト』という幼児でさえできる魔法すら僕には使えないのだ。
彼に言わせると僕に魔法の才能がないのは自分の教え方が悪いせいらしい。
僕に言わせると最初に魔法を教わったとき「手から火や水が出るって、どんな物理現象だよwww」と心の中で大爆笑してたのがいけなかったのだと思う。
魔法の根底はイメージ力らしいからね。
そんなもん物理現象的に絶対できないだろ、と思いながらやったら失敗するのも当然だ。
たぶん、そのときの失敗をいまでも引きずっているのだろう。
「そろそろ午後の授業ですよ」
「ちょっと疲れてて」
「事情は……詳しく知っているとは言えませんが、いろいろ噂は聞いています。だからこそ、学業を怠ってはいけません」
「はい、先生」
わざわざ僕が遅刻しないように起こしにきてくれたらしい先生には感謝しなければならないだろう。
晴れた日の昼休みは中庭の芝生が僕のベッドだと学校中の人が知っているのだけれど、だからといって目覚まし時計を勤めようという志願者はいない。
これが第1王子や第2王子ならつまらない雑用でも希望者が多すぎて困るんだろうけど、出涸らし王子に関わったところで、まったく得することがないからね。
ところが、今日はどうやらそうでもないようだ。
フレドリカ先生だけではない。
なぜか僕の隣で昼寝を楽しんでいる人がいるのだ――ってフェヘールじゃないの?
先生とのやりとりで目覚めたようで、ムクリと起き上がったが、ボーッとした顔をしていて、まだ半分くらいは寝ているようだ。
「なんでいるの?」
寝ぼけている人に質問をしたところで、まともな答えは返ってこないだろうと思いながらもいちおう尋ねてみた。
「わたくしも自由に日向ぼっこや昼寝をするために戦った。だから、こうやって昼寝をしてもいい」
「それは、まあ、そうかもしれないけど……」
「前にクリートは昼寝の素晴らしさもわからない人とは友達になれないと言っていた。わたくしは婚約者なので、友人以上に昼寝の素晴らしさを理解する必要があると思う」
違う? と首をコテンと傾げる。
いや、違わないけど……頭の悪い出涸らし王子らしい軽口だよ、それ。
真剣な顔をして「昼寝の素晴らしさもわからない人とは友達になれない」なんて口にしてたら将来の黒歴史確定じゃないの?
「婚約者が2人で並んで中庭でお昼寝、かわいらしい光景でしたよ」
ふふふ、とフレドリカ先生が目を細める。
なんか恥ずかしいぞ! と思ったので、さっさと教室に戻ることにした。
「先生、起こしてくれてありがとうございました。午後の授業もがんばります」
フェヘールを促して中庭を立ち去ろうとしたら、彼女に指をつかまれた。
まだ完全に覚醒したわけじゃないから、教室まで連れていけということらしい。
前世をプラスすると、完全なオッサンだけど、女の子と手をつないで教室に入るのは結構勇気がいるような。
この難解なミッションをなんとか達成してみせよう!
だけど遅刻寸前だったせいか、教室に入ると、みんながこっちに注目する。
見られてもいいしね、婚約者だし、と開き直るしかないな。
もっとも、午後一番の授業は必須科目だから、大教室に1年生が全員揃っている。
大教室という名称だけど、講堂といったほうがふさわしいような巨大な空間に500人くらいいる1年生のほぼ全員が揃っていた。
右よりの席に座っている生徒が多く、それよりずっと少ない数の生徒が左よりにかたまっていて、中央付近は人影がまばらだ。
ここでの授業は席が決められてなくて、自由だから通常は仲のいい生徒で誘い合って適当に座るのだが――最近は様子が違う。
空いている席の多い中央付近にいこうとして……ちょっとしたアイディアが湧いた。
「なあ、フェヘール。上の兄さんの近くはダメか?」
「ダメってことはないけど……この状況で?」
「この状況だから、かな」
「まあ、それはそれでおもしろいと思うけど」
小声でフェヘールと相談。
聡い彼女のことだ、すぐに僕の意図を理解してくれた。
「ねえ、上の兄さん、隣が空いているようだけど、そっちにいっていい?」
アルフォルド王国の第1王子にして、王位継承順位第1位のバラージュに声をかける。
大教室の右より、その前のほうに彼は座っていて、さすがに王族の間近は敬遠するのか、ちょっと空いていた。
「……そうだな。ちょうどいい。こっちに座れ」
その瞬間、だいたい1000個くらいの目玉がギロッと僕たちのほうを向いた。
もちろん、気づかないふりをして僕とフェヘールがバラージュのところにいこうとすると、次の動きがあった。
いままで中央付近に座っていた生徒たちが腰を上げて右よりに席を移したのだ。
さらには左よりに座っていた生徒の何人かが続いた。
「おーい、フラランジュではないか、ひさしぶりだな」
見え透いた小芝居までして席を移る奴までいる。
いまアルフォルド王国はちょっとばかり困った状況になっているのだ。
評価、ブクマありがとうございました!
なによりの励みです
自己満足の作品を勝手に投稿してるだけですが、まったく反応がないのも寂しいのですよ! 読者に届く物語になってるのか? と不安に感じるのですね。
評価いただいた方、本当に感謝しております。
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