はじめての冒険者活動
011
事前に用意したストックを使い切りましたので不定期更新となります。
ずっと毎日更新してる人がいますけど、すごいですよね。私には無理!
どうしたら早く書けるようになるのかな?
いつの間にか僕は本当に寝てしまったらしい。
目を開けると、朝になっていて、隣にいたはずのフェヘールがいなかった。
昨夜のことを思い出すと、まともに顔を見られない気がするので、そこは助かったけど――いや、僕は寝てて、フェヘールの告白は聞いてないことになっているのか?
自分のヘタレ加減に嫌気が差すよ。
ああいうときは「僕も前から君のことが好きだったんだ」くらい言えないもんかな?
言えないよね、僕には。
ちょっと待て、僕たちは婚約しているんだよな?
将来結婚します! と約束してるんだから、政略的な意味だけでなくて、ちゃんと愛情もあると早めに伝えたほうがいいような気もするけど――理屈ではわかっているんだ、ちゃんと。
そんなことを考えているとフェヘールが部屋に戻ってきた。
「は? ふぇ?」
「なに?」
「いや……」
「ん?」
「……どこにいってたの?」
「朝食は何時からかと思って。もう食べられるって」
どうする? いまから食べる? という感じにコテンと首を傾げる。
くそっ!
まるで昨夜のことはなかったことになってるじゃないか――いや、僕が寝たふりして、かなり強引になかったことにしたんだけど。
でも、でも。
なんかズルい!
僕のほうはまともにフェヘールの顔を見られないのに。
そのときドアをノックする音が。
「起きてるか? 朝メシ、食おうぜ」
キスロの声だった。
慌てて誤魔化すように、それにのっかる。
「僕たちも食べにいこう」
「そうね、最後にみんなで食べたらいいわね」
「最後?」
「もともと冒険者登録までという話だってしょ?」
そうだ、僕たちの事情に巻き込むわけにはいかないので、近くの街で冒険者として登録できたら別れる予定だった。
「みんなで食べよう」
「また2人きりね」
ニコッとかわいらしく微笑みかけてくる。
ぐわっ!
フェヘールさん、その笑顔、反則です。
お風呂があるというだけで選んだ小さな宿なのでしかたないが、2口か3口でなくなってしまうパンと、さっぱり具が見当たらない薄いスープだけのしょぼい朝食だった。
しかし、なにかの縁があって出会ったキケロとの別れの食事になるのだから、できれば楽しい雰囲気で終わりたい。
僕たちがアルフォルド王国まで辿り着けなければ死ぬことになるだろうし、なんとか無事に逃げ切れたとしても身分差があるし、どっちにしても二度と会うことはないのだから。
「まあ、このところ調味料もまともに使ってないものばかりだったから、ちょっと塩が効いてるだけでも美味しく感じるな」
「冒険者の朝メシとしてはこんなんでも贅沢なんだぜ」
「贅沢じゃない朝食はどんなの?」
「最低はなにもなし。その次は水1杯とか、そんなもん。水の悪い土地だと薄めたワインだ。ピケットという奴な。もう少しましだとバッタを炒ったもんとか」
「そのあたりと比較すると、これはかなりいいほうだね」
「なんなら試しに昼メシは最低なの、いってみるか?」
「いや、これで別れようかと思う」
フェヘールも僕の言葉にうなずく。
キスロはちょっと考えていたが、今日1日はこの街に滞在して、一緒に仕事を請けないかと誘ってきた。
「依頼の選び方から、依頼完了後の報告まで、一通りの流れを教えてぇーし……そもそも、2人とも疲れが完全にとれてるわけじゃねーだろ?」
「うっ……それは……」
なかなか痛いところをついてくる。
冒険者ギルドには狩った魔獣を買い取ってもらうだけで依頼を請ける気はない。
そして買い取りに関しては登録のあと、オックスグリズリーの皮を売ったので手順はわかっていた。
だが、途中でどうしても現金がいるとか、なにか必要があって、どうしても冒険者ギルドの依頼を請けなければならない場面があるかも。
そうなると一連の流れくらいは知っておいて損はないだろう。
さらに疲れが完全にとれてないのも事実だ。
なにしろ、まったくなんの準備もなく野宿が何日も続いたのだ。
キャンプみたいなものならともかく、サバイバルとかホームレスだもんな、あの生活は。
僕だって一晩たって疲れが少し残っているのだから、フェヘールはもっとだろう。
彼女は魔法士としては天才だとしても、フィジカルな面では普通の女の子。
この世界では基本的に男は体力、女は魔力に優れている。
もちろん、例外もあって女騎士もいるし、男性で凄腕の魔法士もいるが。
「僕はもう1日、この街にいてもいいような気がする。フェヘールはどう思う?」
「……そうね、どうしても今日中に出発しないといけないわけじゃないけど」
彼女が賛成したのは体の疲れもあるのだろうが、ここまで追手の影がまったく見えないからだろう。
襲撃された当初は追われているような気配があったものの、それを振り切った当日の夜以後には後ろから迫ってくるような予兆は感じられなくなった。
これでもバトルに関しての能力を磨くことには全力を尽くしてるからね。
そして、おそらくフェヘールも僕と同等か、それ以上だろう。
なにしろ彼女の家が領有しているメレデクヘーギ侯爵領はアルフォルド王国のはずれ、侯爵領というより辺境伯領みたいなもので、未開発の土地にとんでもない魔獣が多数生息している。
そのへんでドラゴンが散歩しているような人外魔境。
当然、領内の魔獣を間引いて、領民が安心して生活できるようにするのも領主の仕事だから、メレデクヘーギ侯爵家とその騎士団の練度はかなり高い。
その環境にもまれて育ったフェヘールは僕たちの年代でもっとも戦闘能力が高く、実戦経験が豊富なのだ。
結局、僕たちは3人で冒険者ギルドを訪ね、ちょうどよさそうな採取と討伐の依頼を1つずつ請けることにした。
採取は風邪薬の材料になるという薬草。
買い取り価格は安いものの、つねに需要があるので依頼を請けてなくても、もし見かけたら採取するといいとキスロから教わった。
討伐はウサギ。
魔獣ではないから、冒険者というより狩人の仕事みたいな感じだが、ここにもキスロの教えがあった。
「金になって、軽い獲物が最高だな。いくら金になっても重かったり、大きかったら、そんなの運べねーだろ。特に子供が2人だ。倒すだけでなく、それを持って帰ることを考えねぇーと討伐依頼は成功してるのに、完了報告できなかったり、高額買い取りが期待できる素材を捨てて帰ることになる」
この世界にはインベントリとかマジックバックのような都合のいい便利グッズは存在しない。
だから、持ち運びは確かに重要な要素だ。
しかし、小型の魔獣はあまりいないし、ウサギや鳥のような動物は人間を見ると逃げるから剣で倒すのは難しい。
そこで役に立つのは弓。
僕たちの最初の出会いはオックスグリズリーに弓を射かけたことだが、キスロは弓が上手い。
つまり今回の討伐依頼は兄から、街を出る前に弟妹に少しでも逃走資金を恵んでやろうという心遣いなのだった。
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