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Side異世界:条例成立後、香川県民が異世界転移すると、香川県民はこうなる(乙女ゲーム編)

 第一王子は、その卒業パーティで言い放った。


「私は真実の愛に目覚めた! リリー! お前との婚約を破棄する」


 私はその衝撃の発言にショックを受ける。


 思わず立ち眩みがし、その場にしゃがみ込む。


 頭がズキズキと痛い。


 それと同時に、私には前世があることを思い出した。


 そして同時に、この世界が有名な乙女ゲーム「西鳩(セイ・ハートオフライン ~どき☆ 破滅しかない悪役令嬢~」の世界と同じであることに気がついてしまう。


「あぁん? なんとか言ったらどうなんだ? おぃ」


 その王子の後ろには子爵令嬢のヒロインがいる。

 その声はどこぞのチンピラがごとくである。


 名前は確か、デフォルトのヒロー・イン子爵令嬢だったはずだ。


 ――少し、安直すぎやしないだろうか。

 そんな特徴的で、安直な名前であるからこそ、この世界が乙女ゲームであることに気づけたわけだが。


 ヒロインは絶世の美少女だが、安直な名前にすることで感情移入できないようにしているのかもしれない。なにしろ「ざまぁ」する対象だから。


 この後の展開としては、他国の王子に溺愛される、修道院で修道院の騎士に惚れられる、自分の領地を親から受けついでイケメンに囲まれる、といった素晴らしいイベントが発生し、このいけすかない王子は「ざまぁ」されるという展開だったはずだ。


 だからこれはイベントの最後ではなく、始まりだ。

 この乙女ゲームは、最近の潮流である『乙女ゲームと見せかけて実は悪役令嬢もの』なのだ。いかにきれいに『ざまぁ』するかによって見れるイベントが異なる、というわけだ。


 もちろん、カウンターパートとなる男たちはみな可愛い。


 卒業パーティでの惨事は続く――


 そこには卒業を控えた多数の王子の取り巻きがおり、私を言葉でなじり続ける。


 それを私は黙って聞いていた。


 もはや、意識はそれどこではない。





 これからの乙女ゲームで誰を攻略するか、悩ましい。





 一番の押しは、自国に戻ったときに出てくる、隠しキャラの第二王子だろうか。


 うまくやれば第一王子を追い落として逆ハーレムが狙えるのだ。


「おぃ! なんとか言ってみろ! あぁん!」


 もはや、王子とは思えない口調で罵倒してくる王子に、私は一言告げる。


「分かりました。王子の仰られたことに従って、私は婚約破棄を受けいれます」


 周囲がはっとした声をあげ、それから息を飲む。


 公爵令嬢である私との婚約がなくなった王子のこれからの権勢はどうなるのか、ある程度上位の人間であるならば知っている。


 私の侯爵家では軍事も、商業も、国内である程度以上の権力を抑えているのだ。それこそ国王よりも強大なほどの。


 私はパーティ会場から立ち去ろうと、すくっと立ち上がる。


「おぃ! まて!」


 王子が叫ぶが、聞いてやるほどのこともない。


 もうすでに、王子とは婚約関係にはないのだから。


 すぐに会場を出た私は、馬車に乗り込んだ。


(すぐさま自領にもどらないと……)


 まずは準備を整える必要がある。


 リリーはウキウキしていた。


 しかし――










 自領に戻る道すがら、断罪を受けてからおよそ1時間後――


 伯爵令嬢であるリリーが乗った馬車の内側は、なぜか真っ赤なトマト色で占められていた。

 それはリリーの断末魔と血の色である。

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