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ゲーム世界の最強チートな勇者vs香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(1)

「おぉ、勇者よ。トラックで死んでしまうとは情けない」


 その日、香川県民の未成年の勇者がトラックに轢かれて死んだ。

 死因は即死だ。


 するとなんということだろう。

 まるで異世界転移する前に呼ばれる女神がいそうな空間に彼はいた。


 彼の目の前には絶世の美人がいる。

 彼は思った。


 あ。これは「小説家になろう」とかでよくある異世界イベントなのではないかと。


 だが、冒頭のセリフは異世界の王様が勇者に対してひのきの棒を渡しながらいうセリフではないだろうか?

 いろいろとネタが混ざっている気がする。


「ここはー、どこなのかしらー。私は確か――」


「そう、あなたはトラックに轢かれて死んだのです!」


 トラックに轢かれたのがそんなに楽しいのだろうか?

 目の前の美女が笑いかけてくる。


「死んだ……、ということは天国なのかな?」


「あぁ、天国にそんなに逝きたいですか?」


「あぁ、地獄よりは良いだろう?」


「それは、そうですが、もっと楽しいところに行ってみたいとは思いませんか? うふふ……」


 美女は妖艶で、アヤシイ瞳を彼に向けてくる。


「例えばどこですか? ホテルとかですかね?」


「ホテルより楽しいところよ。なんと! 剣と魔法のファンタジー世界なの。私が作ったゲーム世界なのよねぇ……」


 美女はドヤ顔だった。

 『私が作ったゲーム世界』をやけに強調している。


「ゲームの世界ですか?」


「そう、ゲームの世界。だけど最近面白くないんだよね。いろいろなパターンをやりつくして、もう新たな面白い勇者が出てこないかと悲しい思いをしているのよー」


「へぇ……」


 ネタが尽きた創作作家のような悲し気な声に思わず彼は同情してしまう。

 受けない創作作家。どんなに小説家になろうに投稿してもポイントが溜まらない。そして創作作家はより過激なネタに走り、かろうじて来た読者はドン引きして去っていくことになるのだ。

 もちろんポイントなんて全然である。創作作家はこんなにポイントが欲しいのに、書けば書くほど逆の結果になるのはいったいなぜなのだろうか。


「ということで、私はトラックで轢かれた面白勇者に、さらなるネタをもらって面白い話ができないかと悩んでいるところなのよねー」


「それに俺を巻き込まないでくれ」


「えーっと、貴方の場合、カルマが低いから異世界に行かないと地獄行き決定なんだけど、それでも良いならエニシングオッケー」


「おい、地獄行きとかやめろよな。誰だよ、そんなところに行かせようとするやつは――」


「目の前にいるこの女神さまでーす☆ きゃぴ☆」


 思わずイラっときた彼は殴ろうと思ったが、なぜか身体が動かすことはできなかった。


「あら? いま殴ろうとした? あー。これはもう地獄行き確定かなー。どうしようかな~」


「異世界転生で! 異世界転生でお願いします」


 彼は土下座した。

 何が楽しくて進んで地獄になど行きたいと思うのだろうか。

 それよりは剣と魔法のゲーム世界の方が楽しいだろう。


「僕と契約して、勇者になってよ! (でないと地獄行き)」


「分かりました! 勇者になります!」


「OKOK-.じゃぁチートはどうする?」


「チート?」


「ほらぁ、チートな小説だったら当然のものよ~」


「なるほど。ではニンニクヤサイアブラマシマシでお願いします」


「なるほど。なるほど。ラーメン作成能力と、毒無効、悪食属性がMAXで欲しいと……」


 あっ、それでもOKなのねと彼は思う。


 しかし、貰えるチートがたったそれだけではラーメン大好き小説になってしまうではないか。

 それはさすがに避けるべきだろうと彼は焦った。


 世の中マシマシなのだ。

 貰えるものはかたっぱしから貰おう。


「えーっと、それから痛いのは嫌なのでVIT極振りでお願いします」


「分かったわ。VITはMAXにしておくね」


「それから――、万能宝具も欲しいなぁ」


「了解、了解~。たくさんの強い武器を同時に複数射出することができる能力を付けてあげるね」


「それから――、病気無効とか? 危険感知にー、それから各種魔法特性はMAXで欲しい」


「なるほどなるほど。付けるよ付ける。それなら私の加護も付けてあげよう」


「それから――」


「さすがにちょっと多すぎない? まぁいいけど」


「死んでもすぐに復活するとかどうだろう?」


「さすがにそれはダメかなぁ…、それ無敵じゃん。あー。不老不死は付けておくか……」


「もう一声!」


「アンチエイリング、永遠の16歳に、死んでもきっかり24時間後には復活するとかだったらいいかなー」


「おー。いいねそれ」


「ただし、永遠に16歳だと2年経過しても18歳になれないから注意してね~」


「ん? なにに注意しろと?」


「え? そりゃ、全年齢対象だとエッチがダメとか、お酒飲む描写がダメとかいろいろあるでしょう? こう見えて、私は女神なのよ? コンプライアンスは守らないと」


「じゃぁ、18歳からでお願いします」


「貴方も好きねぇ。じゃぁ、18歳スタートねー」


「あと剣術とか格闘術もください!」


「盛りますね~♪ じゃぁ、それも付けるかな」


「アイテムボックスとか、全言語理解とかはあるのでしょうか?」


「あぁ、そういうのは基本でついてるよー。だからステータスオープンって叫ぶとステータスが見えるのもお約束だねぇ」


「へぇー」


「あ、GMコールは付いてないや、付けておくわねー」


「お願いしますー」


「あー。GMコールされても、理不尽な要求は受け付けないから。コロシテ……、とか」


「そんなこと言う訳ないじゃない」


 目の前に立つ美女はしばらく手のひらをひらひらとまるで空中のキーボードをたたくかのように動かしている。

 彼の眼には見えないだけで、美女の眼にはそのキーボードが見えているのかもしれないが。


「はい。設定終わり。じゃぁステータス開いてみて」


「ステータスオープン」


 彼が叫ぶと彼の前にステータスが表示された。

 それはまるでARのようだ。


名前:香川三省

種族:人族

性別:♂

クラス:勇者(youはsh〇k)

レベル:1

HP:1000000000

MP:10

SP:10

STR:10

VIT:1000000000

DEX:10

MAG:10

INT:10

LACK:E

スキル:なし

状態:普通

称号:香川県民、未成年

加護:主神カーキンの加護

保有スキル:

 勇者特性

 VIT極振り

 痛覚無効

 毒無効

 病気無効

 危険感知

 不老不死

 アンチエイジング

 永遠の18歳(酒禁止)

 死んでも1日で復活

 武術神(武神/剣神/格闘神)

 軍神:(長曾我部元親クラス)

 剣術:(皆伝)龍破御剣流「(経験点の)おいしさはやさしさ」

 剣術:(皆伝)赤城黎明流「(剣術を)あそびましょ。」

 剣術:(皆伝)夜杖真澄流「ちょこちょこ腕白。もっとアクティブ」

 槍術:(皆伝)槍魂一擲流「掘りだそう、自然の力。」

 盾術:(皆伝)金盾友愛流「前進!前進!前進!進!」

 悪食耐性(MAX)

 炎闇属性(MAX)

 水光属性(MAX)

 風雷属性(MAX)

 土金属性(MAX)

 錬金術(MAX)

 鍛冶術(MAX)

 木工術(MAX)

 料理術(MAX)

装備:万能宝具


(わーぉ)


 保有スキルの多さに彼は驚いた。

 ウィンドウの一ページ収まらないほどの長さがある。


(これだけあれば生活には困らないだろう)


 納得の行くスキル選びに彼は満足した。


「では行きますか、ゲームの世界に――」


 眩しい光に包まれて、彼は消えた。


「うふふ……」


 残された妖艶なる女神は笑う。















 さぁ、キミは何と言って死ぬのかな――

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