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とある大手新聞社

(♪とても悪役っぽいBGM――。ちゃんちゃんちゃーん♪ ちゃんちゃーんちゃーん♪)




「くそ、地方の新聞社め。やってくれるーー。馬鹿な議員どもをおだてて木に登らせやがった――」


 ガウンを着た壮年の男が、女どもを侍らしてワインを傾けている。


 彼はとある新聞の幹部であるBだ。


 当然のように上級市民だ。


 そういえば、新宿で母子をひき殺した男はその後どうなったのだろう。


「いや、さすがでございます。この時代、紙媒体である地方新聞を売ろうという意気込みは買う必要があるのではないでしょうか?」


 それに反応するのは、執事のセバスである。


 執事は上級市民の背後でワインのボトルを持ち傍に控えていた。


 執事には本名があるのだが、執事と言えばセバスと言うのはお約束なのでここではセバスということにしておいて欲しい。


「あぁ、途方ではネットやゲームなどが流行すれば紙媒体である新聞の売り上げが下がってしまうからな――」


 近頃の香川県の人口減によってその地方紙の売り上げは下がりつつある。また、置き紙なども問題視され、近年は減少気味だ。


 だが、昨今のインターネットの復旧により中央は潤っていた。


 ネットでの販売であれば紙の費用は削減され、しかも中央から直接発生んが可能となるのだ。


 そう、インターネットの普及によって、新聞にも電子化の波が訪れている。


 電子化となれば、住民はわざわざ地方の新聞を取るようなことはしないのだ。できれば(あこが)れの全国紙を取りたい、そしてそれが簡単に手に入ることになるのだ。いままで香川県のローカルで戦っていた地方紙は、全国との闘いに巻き込まれることになる。


 そのおそろしい脅威に地方紙は戦慄することになるだろう。


 さらには、企業の動向を阻止する狙いもある。


 地方紙には織り込みチラシがなくなることを極端に恐れている。


 だから地方紙は各自でアプリを提供しだすことを恐れているのだ。


 企業はアプリで情報を提供し、個人にポイントを配るようなことになれば、企業にとっては個人に対する購買傾向などを分析してより精密なマーケティング、店舗レイアウトなどに生かすことができるだろう。


 だが、そんなことをされたら地方紙はどうなるのか?


 新聞の折り込みチラシに掛ける費用がインターネット費用に行ってしまうではないか。


 だからこそ、地方はICT化を恐れた。


 地方の新聞としては、折り込みチラシを例え死ぬとしても企業に継続的に入れさせる必要がある。


 だから、香川県の地方紙の関係者はこう思ったに違いない。


「香川の県民などにICT化など100年早い」


 だからこそ、インターネットは潰さなければならない。


 であるからこそのこの法律である。


 この法律を使えば、ネットからいかようにも香川県民から情報を封殺することが可能になるのだ。


 例えば、電子版の全国紙。三国志といったゲームを題材とした広告で電子版を出そうという新聞社に対しては、それがゲームだからという理由で1時間枠に入れることができるだろう。それはあきらかにゲームだ。

 例えば、スポーツ紙。あきらかにゲームだろう。ベースボールとは、つまり野球ゲームである。

 あぁ、あの政党は最後までゲーム規制条例に反対していたな、白地に新聞なんて真っ先に潰してやらねば。あの新聞では将棋囲碁と言ったゲームが掲載されているし、きっと4コマ漫画ある。漫画など子供が喜ぶからゲームっぽい。依存症の温床となるゲームは死ねばいいのだ。


 我々地方紙にとって、紙媒体化による木材等の資源なぞ、いくら消費されても構わない。コンビニエンスストアにおけるビニール袋の方がよほど自然破壊的なのだから、こちらを規制するべきなのだ。


 森? 他県の森がいくら破壊されようとあずかり知らぬところ。


 香川県民には生涯、紙媒体である我が地方紙を買わせ続けるのだ。


 あぁ、すべては香川県の少年少女たちが、依存症の大人にならないようにするために必要なこと――


「――などと、考えているにち違いません」


「いや、さすがにそこまでは考えて無かった――」


 執事の言いように、とある新聞の幹部は顔をしかめた。


 執事は、幹部の手にするワイングラスに追加のワインを注ぎ込む。


 そのワインの色は、酷く赤黒いものであった――

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