プロローグ:みんな死ぬしかないじゃない!
ネット・ゲーム依存症対策条例はすばらしき香川県民により選挙で選ばれた輝かしい香川議会議員様の賛成多数によって可決され、令和2年4月1日のその日施行された。これにより、香川県の少女たちは少しだけゲームを長くしたいという、そんなささやかな願いですら行政が全力で虐げることができるようになった。
条例ではインターネットとコンピュータゲームの利用時間を行政権力の力によって規制し、その自由を束縛、自己決定権に介入して、香川県の保護者のみに、乳幼児期からネット・ゲーム依存症にならないよう努めさせる努力義務を敷いている。ここでいう努力とは、教育委員会が保護者に対し1日原稿用紙1枚程度分の徴収を行い、いかに本条例が世界に冠たる素敵な対策であるかを毎日努力、毎日努力して懇切丁寧にマスコミを通じて広げる、などがあるかもしれない。なぜなら学校等は県又は市町が実施するネット・ゲーム依存症対策に協力する必要があるのだ。予算もつく。そりゃぁ美辞麗句を集め紙媒体を通じて公表などもしたくなることだろう。逆らうやつは内申がどうなるか分かってるんだろうな?
――であるならば。
異世界の主神であるカーキンは思った。
「あれ? この条例の施行後に香川県の未成年が異世界転移したらみんな死ぬしかないじゃない?」
たとえ異世界といえど、昨今のコンプライアンスやポリこれ全盛の世の中である。異世界では飲酒やタバコに関する法律などないにも関わらず、それらを20歳以下の未成年にさせると世の中からは多大なるバッシングを受ける時代なのだ。エッチは18歳未満禁止です。
異世界転移後、1時間を超えたら牢屋に収容するということもできないだろう。なぜならば、牢屋に収容するという行為自体がゲームであるロールプレイの一つと見なされるからである。1日に1時間しかゲームができない。つまり異世界で香川県の未成年はみんな死ぬしかないだろう。
主神カーキンの世界では「ステータス・オープン」と異世界転移者が叫ぶとステータスの書かれたウィンドウが表示されるような世界なのだ。だってここ、小説家になろうだぜ? 異世界転移しなかった小説家になろうなんて、焼きそばの入っていない広島焼き、タコの入っていない大阪焼き、うどんだけじゃない香川県、それらが存在しないのと同じように自明のことだ。
そう考えた主神カーキンは、異世界から転生してくる住民を香川県民の未成年だけに絞ることにした。