バカ正直な四月バカ
八田 玄雄……今年のエイプリルフールは隼人を乗せてやろうと意気込んでいるよう
早間 隼人……そんなことは知る由もない
「なあ、隼人」
「どうした、玄雄」
「今日ってエイプリルフールじゃんか」
「そうだな」
「実はお前に話あんだよね」
「絶対ウソじゃねぇか」
「この間アマゾンの密林地帯に行った時の話なんだけど」
「もうウソじゃん。最近毎日一緒だったろ」
「この……電柱ぐらいあるでっかい……あれが、ピラニアが……」
「手探りでウソつくのやめろよ。せめて中身練ってこいよ」
「現地人ガイドの……人を一気に……」
「強行すんのかよ、すげぇな」
「丸呑みにしてさ。もう、アマゾン怖ぇな、って」
「中身ない上につまんねえじゃんか」
「ダメか? 兄貴と相談して考えたんだけど」
「兄弟で何やってんだ。てか相談してあれかよ」
「兄貴が30秒で考えてくれた渾身のウソだぜ?」
「納得のクオリティだよ」
「まあでも、自分らしいウソを付けなかったのが今年の課題だな」
「気取るな。来年は自分で考えて来いよ」
「うん。まあ、兄貴と相談したってのは、ウソなんだけど」
「………………チッ」
「うぇ~い、引っ掛かった~」
「はー、しょーもなっ! くっだらねぇ!」
「思っただろ? 『何だ、このバカ兄弟』って? そこなんだなぁ」
「ウソが小さいんだよ、ダニみてぇなウソつきやがって」
「悔しかったらお前もやってみな、はっはー!」
「いや、四月バカはもういいよ」
「えー、つれねぇなあ」
「俺らもうすぐ高3だろ? いつまでもバカ言ってるわけにいかんだろ」
「その話今するの? 隼人は就職だっけ?」
「乗ってきてんじゃねぇか。うん、まあ、そうだけどさ」
「俺は受験だよ。あんまり遊べなくなるなぁ」
「そうだなぁ……」
「隼人はあれか? やっぱり実業団とかあるとこ行くの? 陸上のさ」
「いや、俺は──ああ、そうだ。目指せオリンピックだ」
「マジか! 去年のインハイも大活躍だったもんな」
「まあな。日本人は短距離が弱いなんて言えなくしてやるから見とけや」
「すっげぇなぁ! 応援してるからなぁ! 金メダル取ったらサインくれよ~」
「お、おう……」(ウソって言いづれぇ!)
「じゃあ俺こっちだわ」
「あ、さっきの話しな!」
「ん? 何?」
「…………何でもない。また明日な」
「おう、また明日!」
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「……あ、早間隼人です。あの……先日のお話、今からでもお受けすることって可能ですか? 一度断っておいてこんなこと言うの虫が良すぎるって重々承知して………………あ、大丈夫、なんですか? …………はい、よろしくお願いします!」




