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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
六章 破滅の序曲と鈴の調べ
192/194

支配者VS勇者夫婦

本日連続投稿

二話目です

 

「ふむふむ、まずは私とトリンを分断しましたか。で、次の一手は……なるほど、そう来ましたか」

 トリンとヴィルマの分断後、ヴィルマをまず襲ったのは高さ約十メートルの大津波、こんなものをまともな人間が受ければ水の質量に負けて流される、だがここに立つのはあらゆる力を携えた支配者。


「ではこうしましょう。…『炎龍神の心臓』」

 ヴィルマの手から発されたのは高熱の球体、津波に向けて投げられたそれは水分を一気に蒸発させ、周囲は水蒸気や湯気で白い霧に満たされた。


「勇者の力は雷と光に特化している。一度、何処ぞの副聖騎士長様に水素爆発を決められたので水分は蒸発させるに限りますねぇ……おっと」

 周囲が霧に覆われている中、背後から振るわれたウィリアムの剣をお辞儀をするように回避し、回し蹴りを食らわせる。


「んー、誠に申し訳ないが戦略に全く意外性がない。視界を潰して背後から襲う?未来が見える私が言うのもなんですが大変面白くない」

 ベラベラとヴィルマが語る最中にも雷撃、光線が彼を襲うも前者は風の障壁、後者は水龍神の力で射線上に周囲の水蒸気を集めて拡散させることによって対策。


(……おや?)

 しかし、ヴィルマは気づく。

『そういえば最初の津波以来M3番による攻撃が無い』と。

 魔力不足?いや、それはない、仮にもあれは私の傑作。

 この程度で使えなくなるほど柔な改造を施していない。


(支配魔法で引きずり出す?いや、そんなのはナンセンスだ!!)

 全て正面から叩き潰す。

 ヴィルマは自身が認めた相手に対しては紳士に向き合い、正々堂々相手をして『ちゃんと殺す』、それが彼の流儀だから。




 ◇◇◇




 と、まぁそろそろ気づいた頃かな?

 奴は初見の技は観察する癖がある。

 まずはそこを狙う、ダメだったら次の手だ。


 ミストは水浸しになった密室で水を電気分解、その後に火種を放り込んで水蒸気爆発という手で奴に大ダメージを与えた。

 同じ手は多分使えないし今の奴には未来視がある、条件は分からないがとりあえず奴の視界に入らないようにすることで対策とする。


 実際私が準備しているのは次の一手の方、初手はすぐに使える手段だが二手目は少し面倒、龍神の力を全面的に借りる事になる。


『ウィリアム、やるよ』

『了解、防御の準備はオーケーだ!』

 まずは周囲三メートル程までをキッチリと覆える程の水球を想像、中に異物を閉じ込める形で魔術を想像するのは少し面倒、だけど全く問題はない、少し細工をする余裕があるくらいだった。


『勇者の協奏曲』によってウィリアムの位置は把握済み、離れたのを見て魔術を発動。


 ヴィルマが一瞬目を見開く、しかし次に出た表情は落胆の二文字が似合うとても残念そうな顔だった。


 思っていた面白い攻撃じゃなかった?

 大丈夫、心配しないでよ。


 お前を殺す攻撃はお前の攻撃で発動する。




 ◇◇◇




 残念だよ、あぁ、残念だ。

 並みの人間なら一秒待たずに潰れるだろう水圧程度で私を殺せると思ったか!?

 つまらないつまらない、こんな攻撃……!


『消し飛べ!!『炎龍神の心臓』!!』

 左手に再び高熱を発生させる。

 すると未来視に異様な光景が見えた。

 真っ白な光景が


 私を覆う水球の中にせいぜい直径三センチくらいの小型の球体が投げ込まれた。


 どんどん蒸発していく水球、それによって近づく球体、それが熱に触れた時……。


 視界は白に包まれた。




 ◇◇◇




『リヴァイアサン。あなたが思う最強の水の力って何?』

『……あれは私の力だけでは勝てるとは到底思えない』

 この二週間、私は眠っている間に自身の龍神と親和性の高い身体を生かして龍神と語り、新たな力を得ようと試みていた。

 これはその一つだ。


『……一応知識としてあるにはある。だがこれは私単独では出来ない』

『それはどんな魔術?』

『正確には元々は魔術ではない、化学兵器と呼ばれる代物だな』


 それからの話は前提のお話、この世界には魔力以外にも元素と呼ばれる物質が満ちている。

 私達が吸ってる空気は酸素、窒素、その他幾つもの元素で成り立っている、だとか。

 ミストがヴィルマに対して使ったという水素爆発の原理も教えてもらった。


『で、その兵器というのが……水素爆発の強化版のようなものだ』

 そこからの説明がまた長かった。

 簡単に言うと三重水素と呼ばれるものに高熱を与えて核融合、大爆発を起こすという。

 成功すれば火の最上級魔術数百発以上の威力が出せるという。


『これのキーとなるのは起爆用の高熱と高圧だ圧力はともかく熱はどうあっても私では産み出せない』

『ふーん……じゃあそれは奴に使わせよっか』

『奴か?だがわざわざ水に火をぶつける必要は……』

『ある。ミストさんが水を利用した攻め方で既にヴィルマから一本取ってる。同じ戦略を警戒しないのは奴の行動からいってあり得ない』

 となるとまずは魔術の想像だ。

 三重水素をどうにかして作らないといけない。


 この世界には一般的に普通の水素らしい軽水素と少し特異だが少なくはない数が存在する重水素がある。

 三重水素はそれらほどの数はないらしい。


『数があったらこの世界はもっと死で溢れてるだろう。空気を吸うだけで死に着々と近づいていくのだからな』

『吸ったらダメなの?』

『毒性は薄い、だがあまり良いものではない』

 これには一週間かかった。

 そもそも目に見えない世界に干渉しようというのだ、そう簡単にはいかなかった。

 なんとか今日までに生産したものがあの球体に詰め込まれたもの。

 でもあれくらいが実際ちょうど良いのかもしれない。

 強力過ぎる魔術なのだから……。


 名付けた名は『終焉の霞(フィナーレ・ミスト)

 私の剣の師と魔術の師から名付けたこの魔術。

 これで死ななかったら……第二の手段を使うしかないね。



 

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