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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
六章 破滅の序曲と鈴の調べ
177/194

初代魔人王の血族

そういえば更新日設定してたな……まだ書ききれてないかど。


とりあえず新章スタートです

基本的に主視点はシオン、まれにドロシー、ソウジってところです

 

「いやぁ、まさか答えに辿り着くとはね。レルヴィンさんの手助けがあったのが大きいけどまぁ誤差誤差」

 話は終わりだよね?と元の場所へと戻ろうとするドロシー。

 気のせいか若干早口な気がする。


「待てよ!」

「……まだ何かある?」

「どうして俺達勇者の血筋に協力するんだ!初代勇者は魔王を倒す際に大勢の魔人を殺したという。俺達は仇の子孫の筈だ」

「あー、そういうことね」

 ドロシーからの返答は乾いた笑いだった。


「その虐殺に付き合っていたのは私のお祖母ちゃんだよ?」

 それを聞いて思い出した。

 勇者の同行者の一人を。


「金眼の賢者……」

「そういうこと。魔人も一致団結している訳じゃあない。むしろ一番仲悪いかもね」

 それでも、何か思うところはあるのか、どこか表情に影があった。


「全てが終わる前に、一度何処かで話そう?とりあえず今はやるべき事を優先で!」

「……お前がそう言うなら」

 問い詰めればドロシーは答える、そんな気はしていたものの俺は問題を先送りにした。

 今考えるべき事は他にもあるし後悔はしない。


「絶対にだぞ。その前に死ぬなんて許さねぇ」

「……ふふ」

「何がおかしい」

「いやぁ、私って愛されてるなぁってね」

「どうやったらそんな捉え方が出来るんだよ」

「分からない?」

「……」

「ねぇねぇ、本当に分からないのー?黙ってないでさぁー!」

「あー、うるせぇっ!!」

 ドロシーのいじりで二人の間の気まずい雰囲気は表面上は無くなった。

 だが少し、ほんの少しだけのわだかまりを残してその場の会話は終わったのだった。




 ◇◇◇




「む、来たか。こっちの準備は終えたぞ」

 一日が経過、あの後も残って作業をしていたリグレッドが欠伸混じりに報告。

 用心に用心を重ねて六時間かけて分厚い結界を展開できるようにしておいた、とのことだ。

 わざわざご苦労な事で。


「よし、じゃあアルバートを呼んで」

「私は失礼するねー」

「は?」

 おい待て、なんで立ち去る。

 第一記憶を取り戻すには俺だけじゃ出来ないだろうが。


「魔力は私が既に陣に注いであるし魔術は君が使う。何の問題もないでしょ?」

「あー、もう。ちょっとは察してよ。私はメルさんやウィリアムさんと顔を合わせづらいの!」

 そう言われて気づく、がそれならこちらとしても反論がある。


「もう敵じゃないって、訳があって敵対行動を取っていたって分かっただろうが!」

「君が納得したとしても二人はポッと出の私に仕切られて良い顔はしてなかった。ごめんだけど私にも別でやることがあるの。……今はあの二人と勇者君と顔を合わさることは出来ない」

「待て、ドロシー!」

 逃げるように空間転移によってその場を去っていったドロシー。

 伸ばした手は空を切った。


「……大丈夫かね?」

「あぁ、今度会った時にはたっぷりと話をしようと思うよ。全部話すまで絶対ぜってぇ離さねぇ」

「青春だのう」

 リグレッドと共にその場を去り、家族が待つ場所へと足を向ける。

 その目に記憶復活の魔術に対する不安など全く無くなっていた。




 ◇◇◇




「全く、世話が焼けるシオン君だなぁ」

 別空間からドロシーはシオンの事を見ていた。


 ドロシーは常々思っていたのだ。


 本当ならばシオン君はもっと出来ると。

 彼は記憶を取り戻し、勇者の兄という中途半端な立ち位置に一度絶望し、上を目指す気力を無くした。


 だがここまで、彼はジワジワと力を蓄え、成長してきた。

 武器頼り、と言われようと進んできた。

 そもそも魔剣は使用者を選ぶのだ、一本ユウマ君に譲ったとはいえ三本の魔剣に一時的に選ばれていた。

 解放は出来ずとも持てるだけで本当は凄い代物なのに、学生時代はまだ一本も使えないと自信が持てていなかった。


「今ではフェンリルはほぼ完全に掌握、もう一本も頑張ってるみたいだし……ここらで弟の記憶も一人で取り戻して自信持っちゃいないよ」

 シオン君には報われて欲しい、幸せになって欲しい、それも家族みんなで一緒に……。

 たとえそこに私が居なくても。


『ドロシー時間だ』

「はいはい。今行くよ。……終わりが始まる前に、私達が止めるからね、必ず」

 そして視界が切り替わり、慕っていた先生、音魔術の女の子、魔人族の三人が集まる場所へと移動した。


「今回の議題はコイツだ」

 先生の左手には一通の手紙、円卓の中心へと無造作に投げられたそれを私が取る。


「ふむふむ、差出人は……え?」

 思わず手に力が入り、手紙が歪む。


 その手紙の内容はこうだ。


 ごきげんよう、私の最高傑作と勇者一家の皆さん。


 20日後、私は『聖魔の古戦場』にて創世神の降臨の儀を執り行う事にしたよ。

 だが如何せん、オーディエンスがいなければイマイチだと思うのだよ。

 そこで、君達を招待しようと思う。

 無視するならばそれはそれで私は創世神を宿すことになる。

 地獄絵図を描くのを止めたければ死力を尽くして止めに来ることをお勧めするよ。


 ヴィルマ・アルファリアより親愛を込めて。



「これを受け取ったメル・クロノ・シルヴァはその場に行くそうだ」

「なっ!止めないと!!」

「無駄だ、何故俺がその手紙を持ってるか、その理由くらいは察して欲しいものだ。フローライトの孫ならば」

「……嫌味しか言えないのかなぁ?見た目は私の大好きな先生な筈なのに大嫌いになりそうだよ」

「ま、まぁまぁ二人とも、喧嘩はその辺に……、それとソウジさん、私も分からないので……理由、聞かせてください」

 ここ最近の集会では度々ソウジとドロシーによる衝突、その後カナデが収める、と言った流れが定番になっていた。

 アーネストは基本的に何も喋らない。


 ため息の後、ソウジは語り出す、そのため息でドロシーがイラついたのは言うまでもないだろう。


「メルからコイツに要請されたのは援護に来るであろう『鈴のしらべ』メンバーの邪魔だ。どうやら五代目、メル、六代目……あと恐らくシオンの四人でヴィルマと偽勇者を相手取る気らしい。ちなみにコイツは承認した」

「ソウジ先生が……?なんでそんな無謀な行為止めないの!?」

「借りがあったから、だそうだ。恐らくは六代目とシオンを戦いの場に引きずり込んだ責任からだろう。勝手なことを……」

「くだらん、そんなの無視して助けるべきだろう」

 発言したのはアーネスト、珍しいことだと思ったのか全員そちらを見る。


「なんだ、俺が発言するのはダメか」

「いや、ただ単純にアー君が喋るのが珍しいなぁ、って」

「……俺が人の子として過ごしてきた中でも奴等ほど気の良い連中は居なかった。人として過ごさなかった長い生の中で蹴散らした中にも居たのだろうか、と考えた程度には、な」

「……ていうかアーネストさんってホントに魔人じゃないんですね。同じとこに所属してたのに全然知らなかった……」

 アーネストの真の姿をここにいる者は知っている、知らなければ連携が取れない、知らなければ彼が千を越える時を生きてきて未だ掌握しきれない灰に飲まれてしまう。


「方針は変わらない、復活前に殺せるならそうする。だが復活してしまった場合は俺の奥の手発動後に仕掛ける。そして今回の事態、俺は表立って動くことは出来ない、四人の援護がしたければお前達で勝手にしろ、だが各々、優れた能力を持つ者であることを自覚しろ、死ぬことは許さん」

「私は本部にいるキアナちゃんを陰ながら見守ります」

「なら俺は勝手にさせて貰う。気まぐれに人を助ける可能性もあるかもしれんな」

 三人は席を立ち、それぞれのやりたいことをしに別の方向へと向かった。

 その場にいるのはドロシーだけだ。


「……あーあ、どうしよっかな……」

 ドロシーは自覚していた、多分シオンだけを守る事くらいは出来る、もう一人くらいは……ギリギリ守れるかもしれない、でも四人全員は無理だと。


 正直、私は子供を置いて戦いの場に戻ったメルとウィリアムをあまり良く思ってない。

 子供を戦いの場に出したくないという思いも理解できる、しかしもっと違うやり方もあったのではないか?むしろ二人も戦いの場から逃げて共に暮らせば良かったのではないか?と色々な考えが頭をよぎる。


「……まぁ結局答えは出てるんだよなぁ」

 先生が邪魔をする以上、四人の元に鈴のしらべのメンバーが集まることはない。

 余計な犠牲が減る、という言い方をすれば良いがはっきり言って四人を見捨てたも同然だ。


「まだまだ、力が足りないなぁ……」

 神の力を手に入れて強くなったと思っても、それでも私の手から命はどんどん零れ落ちる。


「私は……」

 一人の魔女は席を立つ。

 己が守るべき存在を絶対に守るために動き出した。


ヴィルマからの手紙


……正直結構影響されてるなぁ、とは思ってますよ、はい。

その頃呪術の映画を見ましたから……

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