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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
五章 運命の紡ぎ手と太陽の覚醒
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王都奪還作戦 結2 無窮を駆けろ

 

「無窮……?まさか、三大天使に唯一並ぶとされている……堕ちた三柱の堕天使の一人か!?」

 天窮はその光景に驚いたものの全てを同じ属性で相殺。

 そしてシェリダンの正体が分かったようだ。


「……フフフ、成る程、そういうことでしたか。我が神よ」

 何を思ったのか天を仰ぐ天窮、何かに対して感謝を捧げるような……そんな動きだ。


「無窮などいらない、我が天窮こそが最強なのだ!消え去れ、過去の産廃よ!!」

 再び瞬時に七属性を合成、また光線を放つ。

 筈だった。


「『舐めてるの?』」

「なっ……あ゛ああぁぁ!!!?」

 先にシェリダンの大鎌が右腕を切り取った。

 何も特殊なことはやってない、天を仰いでこちらに視線を向けていない間に赤を引き延ばし、天窮のすぐ傍まで鎌を寄せていただけ。

 光線を放つ体勢になったら鎌を勢いよく振り上げるだけの仕事だった。


「『狙ってくれと言われてる気分だったから容赦なく斬ったけど……いけなかった~?』」

「……この産廃めがっ!正々堂々という言葉を知らんのか!?」

「『フフフ、正々堂々?戦いの後にいきなり光線降らしてきた奴の言える言葉かしら~?面白い冗談のお礼に見せてア・ゲ・ル』」

 そう言うとシェリダンは天窮と同じように基本七属性を合成する、そして次に灰色……空間属性も合成し出した。


「ハッ!バカめ!ただでさえ不安定な七属性合成に更に空間魔術も入れるだと?魔力災害を起こすだけだ、やめておけ」

「『ふーん、な、る、ほ、ど……。ここが天窮の限界ね』」

「……あ?」

 いつの間にか千切れた右腕が再生している天窮の語気が更に荒くなった。

 同時に体内の魔力もグルグルと落ち着きがない様子、まるで彼女自身が小さな魔力災害のようだ。


「『完成。数百年ぶりにやるからちょっと不安だったけど……やっぱりワタシは天才ね!』」

 それは白い球体だった。

 魔力眼から見たのがこれだ、実際はもっと特殊な色をしているのかもしれない。


 だが、俺はこの光属性とは何処か違った白を知っている。


(そうだ。俺が一度死んだときに見たあの場所だ)

 ムスペルヘイムの成れの果て、地獄の炎と同じ気配がする。


「『ワタシはよく知らないけど、ワタシの同期はこれを『終焉魔法』と呼ぶ。冥土の土産に持って帰ると良いよ。天窮さん?』」

「終焉……!?それは貴様が使っていい力ではない!!」

「『知らないわよ、ワタシは使える。それでいいじゃない』」

「それは、それはこの世界に終焉を告げるための!」

 錯乱気味の天窮、そんな中脳内に語りかける声があった。


『ごめんね~、これ発動させたはいいけど全然移動出来そうにないんだ……ユウマくんなんとかして~?』

(は?)

 何とも気の抜けた声で衝撃の事実を話すシェリダン。


『いや、ガチなの、これ。ゆっくりなら近付けるんだけどさぁ……あ、足をもいで虫の息にしてくれもいいよ!』

(……簡単に言いやがる)

『あっれぇ?出来ないの~?ワタシに頼りっきりでダサいユウマくんからならセレスを盗っちゃおうかなぁ~?』

(……上等だ)

 煽られたからやるんじゃない、決して。

 だがここら辺で力を示しておく必要はある。


 お前もそうは思わないか?スルト


『そうじゃのう。ラブロマンスの気配があったからずっと息を潜めていたが……軽々と私の剣が光線に突破されたのは心外じゃ!』

 だろう?

 じゃあ行くぞ。


『最初に言っておく。今から出す力はあまり長くは使えない、何故ならお主も燃やしてしまうからだ。持つのは精々十秒だと思え』

 あぁ、それで問題ない。


『良かろう。くぞ!……『黄昏の燼滅火(ラグナロク・ブレイズ)』!!』

 瞬間、体温が急上昇するのを感じる。

 高熱で視界がグニャリと歪む錯覚が起こる。


(あぁ、確かにこれは十秒で終わらせないとヤバそうだ)

 戦略を、今持てる手札で整えて直ぐ様立ち向かう。


 一秒目

 噴炎加速にて天窮の背後に回り、その背中に一撃与える。

 まだ彼女は何が起こったのか把握していない、目の前から俺がいなくなって背中に火傷を伴う衝撃が加えられたと認識したかどうかだ。


 二秒目

 レーヴァテインを二度振るい、その両翼を焼き斬る。

 ここでやっと痛みで悶絶する声が聞こえ出す。

 翼への傷はかなり痛みを感じるのかもしれない。


 三秒目

 ここでやっと天窮が振り向き始める。

 遅い、遅すぎる、左の拳を振り抜き、再び顔を正面へと向けさせる。


 四秒目

 ただでは済まさん、といったところか、左腕がこちらに向けられ、七属性が集束し始める。

 だが慌てない、シェリダンと同じように魔術の発動前にその腕を斬り捨てる。


 五秒目

 汗が熱で蒸発を始める。

 そろそろシェリダンの方向へ天窮を吹き飛ばすべきだと考える。

 さて、どうするべきか。


 六秒目

 シェリダンの言葉を信じるなら彼女はあの魔術の維持に手一杯で他には何も出来ないらしい。

 全て四肢を落としておくか、一応左腕は落としたが肩まで斬った。


 七秒目

 両足を太腿辺りから斬り、先程再生した右腕も肩から斬った。

 ここまでやれば即座に再生は出来ないだろう。


 八秒目

 レーヴァテインに自身の魔力を一気に注ぎ込み、天窮へと叩き込む。

 斬る、というよりは吹き飛ばすことに集中させるために爆発するように俺は光の魔力を注ぎ込んだ。


「……ぐっ!」

『ここまでじゃ!危ない危ない……加減を間違えるところじゃったわ……大丈夫か、お主?』

「問題ない、あとは……二人に任せるだけだ」

『聞いておるのはお主の身体の事なんじゃが……まぁいい』

 視線の先にはボロボロになった天窮と笑顔で白の魔術を解き放とうとするセレス……シェリダンがいる。


「『フフフ、煽った価値はあったわぁ♪まさかあんな事ができるなんて……セレスを任せるに値するわね!愛してるわよぉユウマくん』……ちょっと!何恥ずかしいこと言ってるの!?」

「いいからさっさとそいつを殺せ!」

「『おっと、ゴメンね♪』」

 途端、下を向いてゴミを見るような目に変わる。


「『じゃあね。人を好きになれない、半端な堕天使さん?』」

「やめろ、それを近付けるな!やめろぉぉぉ!!!」

 白がぶつかるとそれは一気に堕天使を吸い込み、この世から消し去った。

 少しも爆風は起こらず、まるで転移させたような見た目だったが斬り捨てた四肢や翼が灰になって崩れたことから死んだと分かる。

 天使や堕天使が死後、灰になるのは有名な事だ。


「……終わったか」

「『えぇ、あの愚かな堕天使さんは塵……は残ったけどこの世から消え去ったわ』」

 ドスッと何か大きなものが落ちる音が聞こえた、ちょうど人くらいの大きさ。

 その方向を見ると『死神』を名乗った堕天使が地に沈んでいた。


「クックック、私の前で『神』を名乗るとはナンセンスにも程がある!……はて、私は今日何回ナンセンスと言ったのだろうか……まぁいい、センスが無い有象無象が多すぎるのが悪いんだ。分かるかね?ユウマ青年」

 カランと何か金属が落ちる音と共に降り立つ最狂。

 落ちた金属は堕天使の武器だった鎌が真っ二つに折られた物だった。


「……さて、本来は私は強い堕天使の力が欲しかったが……、その子は君にあげよう、私にはこれがいるからね」

 地面にめり込んだ堕天使の首を掴んで、軽々と折った。

 魔力が、生命力か、ヴィルマの身体に流れ込んでいくのが見える。


「うん、未熟者とはいえ堕天使であることには変わらないね」

「……お前は何が目的なんだ?」

「目的、ね。そうだなぁ……、それは後日ゆっくり話すとしようか」

 ヴィルマが目線を俺ではなく龍神を解放して去っていった王がいる筈の扉を見つめる。

 すると突然、爆風が扉を吹き飛ばした。




 ◇◇◇




「弱いなぁ……本当に弱い」

「カッ……て、めぇ!」

 謁見の間に子供が大の大人の首を絞めている異様な光景が広がっていた。


「何でこうなったか分からない?まずは『愚者(ロキ)』で龍を一撃で屠る、『(トール)』で身体能力を強化してお義兄ちゃんを片腕で持ち上げられるくらいにバフを積む……まぁ僕の運命魔法が強すぎたってお話しだね」

「クソガ、キィ……!運命魔法さえ俺にあればこんなことにはっ!!」

「そうだね。でも運命は君には微笑まなかった……」

 持ち上げていた兄を外へ通じる扉の方向へと投げつける。


「君の最期だ。折角だし外のユウマくんにも目指すべき場所を見せてあげようか」

 魔術師と二本の剣のカードを取り出す。


「あ?剣の2なんて最弱のカードで何をする気だ!?」

「え?僕は2が最弱なんて一度も言っていないけど?」

 わざとだ。

 僕は今まで運命魔法を教えてきた人達の全てに1の数字が強いことを印象付けた。

 そして2は一度も使わず、3以降の数字しか使っていない。


 本当の事を語ろう。


「僕の最強は2(セコンズ)だ。『魔術師(スルト)剣の2(ソード・セコンズ)』」

 そして炎の魔剣が顕現する。

 僕の運命魔法、『ソード』で顕現する武具は模造品にすぎない。

 しかし、1(ファスト)2(セコンズ)は元になった武器が桁違いに強い。

 だから模造品だろうと本物以外には負けやしない。


「……召喚『ラグナ・レーヴァテイン模造(レプリカ)』」

 これは模造品、だが元々が世界を焼き尽くす魔剣だ。

 本気で振るえばこの大陸ごと燃やせるだろう。


「じゃあね、愚かで、運命に愛されなかったお義兄ちゃん」

 そして爆炎が扉ごと義兄を吹き飛ばした。


(さて、外の様子は……と)

 ユウマくんは……無事、お嬢さんも堕天使共々健在……これは理想の運命を掴めた感じだね、良かった良かった。

 そして、もう一人の男が『死神』かな?

 遠目から見ても圧倒的な魔力、全てを小馬鹿にしているような達観した目付き。

 だがそれよりも気になったのはユウマくんが持つ魔剣だ。


(……僕のレーヴァテインと同じ姿になってる……?この戦場で成長したのか?)

 前までは金属質の刀身が見えていたが今は完全に炎と化している。


「ハハッ、想像以上だなぁ。……ありがとね、君のお陰で全て上手くいった」


 こうして王都奪還作戦は運命の王側の勝利に終わった。


 波乱の芽はまだ残っている、だが大きな火種は消えたのだった。

 

戦争終結!

あと数話でこの章完結予定です

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