表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
五章 運命の紡ぎ手と太陽の覚醒
166/194

王都奪還作戦 承1 役者は出揃った

 

「さて、俺の邪魔をする男はここか」

 相対する二人を邪魔する声が上から聞こえる。

 ユウマがその方向を見れば陽光を反射する金髪の男がそこにいた。

 ここに降りてくる前に見た重厚な扉の先にいたようだ。


「『陛下~?彼はワタシが仕留めると言った筈だけど?』」

「フンッ、俺は絶対の勝利を求めているのだ。そして残っているのはその男のみ。ここで全戦力を注ぐのみよ」

 そう言うと男は腰に携えた剣を抜く。


「『我が国の守護龍よ、ここに顕現し、敵の命運を断て』」

 男自体は大した実力も感じない、だがあの剣は違う。

 そう、あの恐ろしい男。俺を殺したあの男が纏っていた雰囲気に似た何かを感じた。


「『その名は、炎龍神ヴァルサフレア』」

 男が炎に包まれる、平気そうな表情な所を見ると剣の持ち主を焼くことはないようだ。


「あいつは誰だ?」

「『一応この国の王サマよ。ごめんなさいね、邪魔が入ってしまったわ』」

 シェリダンの方を見るとさっきまでの愉悦混じりの恍惚とした表情は消え、冷めた目で男を見ていた。

 どうやら本当に予定外だったらしい。


「フンッ、行け!あの黒髪の男をボロ雑巾のようにしてしまえ!」

 するとそれに従うように炎が飛び上がり、シェリダンの隣に並ぶように落ちる。

 それは段々と膨れ上がり、天井代わりの窓にギリギリ付かない程度の高さで止まる。


 そして重低音の咆哮を響かせてそれは姿を表した。

 赤い外皮、触れるだけで怪我をしそうな鋭い鱗に包まれた龍が。

 鋭く巨大な牙が綺麗に生え揃った口からは炎が漏れ出ている。


 これが、炎の龍神ヴァルサフレア……


「もう会うことはないだろう、去らばだ。あのガキに従った愚かな男よ」

 そして見せびらかすように外套をはためかせて王は去っていった。


「……あんな男がオーリンと争っているのか……」

「『ふん、グズよね、あの男』」

 シェリダンも同じ気持ちのようだ、恐らくは契約で仕方がなく言うことを聞いていたのだろう。


「『どうする?邪魔者から始末して仕切り直しでもワタシは一向に構わないわよ?』」

 一時休戦の申し出があった。

 だが俺は、


 俺の身体はあの龍ではなく全く別のものに警鐘を鳴らしていた。


「いや、このまま続けよう」

「『え?でも流石にこれでワタシが勝っても二対一じゃ納得いかな』」

「いいや、違う。二対二だ」

 龍神の顔を見上げた時に気づいた。

 気づいてしまったのだ。


「龍の神は『死神』が相手をする」

 頭上から迫る災厄に。


「『え?……って、何事!?』」

 疑問を浮かべたシェリダンはガラスが一気に砕け散る音、その『何か』が龍神を伏せさせた事に驚く。



「やぁ、ユウマ青年。久方ぶりだねぇ」

 空中から俺の隣にゆっくりと降り立ち、フレンドリーに話し掛けてくるが奴は本来は敵。

 何故なら……


 俺を一度殺し、強欲(アワリティア)を奪った男だからだ。


「ヴィルマ・アルファリア……」

「覚えててくれて嬉しいよ。……さて」

 伏した状態から起き上がろうともがく龍神に光の帯が伸び、地面に再び縛り付ける。

 怒り混じりの咆哮が耳を刺す。


「出来れば状況を教えてくれないかな?」

「堕天使に捕らわれた女性を救いたい」

「ふむふむ。察するに捕らわれた、と表現した女性は堕天使の器、あの肉体の本来の持ち主。そうだろう?」

「あぁ」

 一を説明すれば十を理解する、味方だと思えるならこれ以上無いくらい強力だが……。


 ヴィルマが『死神』ならオーリンの助けにはなる。

 だが俺の助けになるとは限らない。


「……よし、じゃあ一先ず過去の関係は水に流す……事は出来ないかもしれないけど一先ず!一時的に!共闘といかないか?」

 乗ってきた。


「私はとりあえず龍神が欲しい。欲を言えば堕天使も欲しかったが……うん、君とは後々お話をする約束がある、覚えてるかな?」

「そんな事もあったな」

「うん、いやぁ、君が私を疑う気持ちも理解は出来ないけど一般的には妥当な感情だ、だが君としては乗らない手は無いだろう?」

 そう、一時的とはいえ龍神を相手に力不足じゃない奴が味方になるのだ、断る理由はない。


「……そっちは任せた」

「クックック、交渉成立、だねぇ。背中は任せるよ、とでも言うべきかな?」

「生憎、正面にしか敵はいない」

「……盲点だったよ」

 お互いに冗談を冗談で返す、片目を軽く吊り上げて会話に興じるヴィルマの機嫌はずっと良いように見える。


「さて、じゃあ君は私と共にあちらに行くべきだ。『白龍神の幻光』」

 一瞬で龍神との距離を詰めたヴィルマは魔人の魔力を纏った蹴りで龍神を端に寄せる。


「じゃあまた後で『闇の帳』」

 そして黒い天幕で大広間は二つの空間へと変貌した。


「待たせたな」

「『……なんなの?あの男』」

「俺が一度殺された、最低最悪だがこの場では心強い味方だ」

「『滅茶苦茶因縁のある相手じゃないの……』」

「今重要なのは奴との因縁ではなくシェリダン、お前との戦いだ」

「『……嬉しいことを言ってくれるじゃないの』」

 左手をこちらに向けるシェリダン、青と黒の魔力反応。

 応じるように俺も火と光の魔力を放つ。


「『……やっぱり君は見えてるのね』」

 衝突した魔力は何の現象も引き起こらず霧散、いや、俺の爆破魔術だけが一瞬発動した。


「『君がセレスの『拒絶の氷爆』を相殺した理由が分かったよ。君には魔力が見える、それも魔術になる前の属性決定の段階で』」

「……あぁ」

 試されたのか、俺が魔力眼持ちかどうかを。


「『そして君には何故か分からないけど物理攻撃も通らない。だ・け・ど……君が勝てる理由にはならない』」

 そう、向こうに決定打が無いのと同じく、俺にも確実にシェリダンに勝つ策はない。


「それでも、俺はセレスとこの先も共に歩きたいんだ」

「『なら証明しなさい。ワタシに勝つことで』」

「最初からそのつもりだ」

 戦いの幕が、ついに上がる。




 ◇◇◇




「……始まったね」

 一方、オーリンは各地に散らばっていた兵士を集めて王城の前に来ていた。


「この唸り声は……あの剣に入っていたやつが出てきたか?」

「姫さんは大丈夫かねぇ~」

「大丈夫さ、あれは『死神』が相手をしてくれてる筈だから」

 途中で二人の男の人が協力を申し出てくれた。

 聞けばユウマ君が所属してる冒険者ギルドの最強格、Sランクの冒険者達だった。


「予定通りだよ、義兄は出し惜しみせずユウマ君に龍神を使う、そして僕と相対した時に切れる手札が無くなるんだ……皆、今までありがとう、勝利の時は近いよ」

 うぉぉぉ!!!と僕に従ってずっと待っていてくれた兵士達が雄叫びをあげる。

 王城側の兵士はすっかり萎縮してしまっている。


 ここまで長かった……僕の勝利の運命はもう揺るがない。


(揺らいでいるのは……彼女達の行く末、か)

 堕天使シェリダン、そしてセレスティア・デュオフィール。

 彼女等の運命はまだ分からない。


「彼女達のこの先は全て君の選択次第だ、最善の道を選べることを願うよ、ユウマ君」




 ◇◇◇




『こっちも王城に侵入したぞ、姫さん』

「オーケー、そのまま暴れちゃって。死なないこと優先でね」

『……こんなところで死んでられない、シンさんを肉壁にしてでも……』

『おいぃぃ!?』

 フフフ、二人ともやっぱり頼りになるなぁ。


『……そういえば姫さんよぉ』

「なーにー?シンさん」

『ソウジのイチオシになんで問答なんて仕掛けたよ?』

 事前の五人でのミーティングではソウジに従う、という事でまとまっていた。

 ソウジの指示は『ユウマがついた方について欲しい』とのこと。

 クロエがやったことは命令違反になる可能性がある行為だった。


「んー、やっぱりね自分で確かめたかったんだよね」

『確かめる?』

「ソウ君が見込むだけの価値がある人なのか」

 私ですら彼に推薦してもらえなかった。

 実力で自力でここまで来た。


 それなのに何処の誰だか知らないけどソウ君に推薦を貰った男の子。

 ソウ君に見込まれた人の意思の強さを知りたかった。


『……んで、結果は?』

「合格も合格だよぉ~!いやぁ、良い子だった!納得したね」

 私には無い純粋さがあった。

 それだけで十分。


 加えて強いて言うなら……


「私は恋する人には優しいの!」

『……全部それが理由じゃねぇのか?もしかして』

 これが周囲を死屍累々の状況に変えた女の台詞である。


 

さぁ、悪役登場!

一番何処から現れてもおかしくない奴って言うともうコイツかレルヴィンくらいしかいないよね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ