これで終わりじゃない
勝手に毎日更新チャレンジ中
書けるなら今までも書けよって?
面白いくらい筆が進むんですわ、今は
だから面白いくらい筆が進まないときもあって良いよね
「『暖かい、そういえば人の体温ってこんなにも暖かいものだったわね』」
セレスの口からノイズがかかった声が聞こえる。
「一つ聞いていいか」
「『一つと言わずいくらでもどうぞ?』」
なら遠慮なく。
「堕天使、お前は」
「『ワタシにもシェリダンって名前があるの、あなたには特別に呼ぶことを許してアゲル』」
「……シェリダン、お前に今戦う意思はあるのか?」
「『正直なところ、悩んでいるわ。セレスの想い人っていうのもあるしワタシ自身あなたに興味があるの』」
肩を叩かれる、次の質問は?という感じだろうか。
「セレスを返せ」
「『セレスはあなたの物じゃぁないでしょう?どちらかというとワタシの物よ?』」
「どうすれば彼女は帰ってくる」
完全に無いわけではない筈、この世に絶対はない。
死を否定することも出来るんだ、堕天使との契約だろうと絶対の物じゃない。
「『……うん、決めたわ!』」
トンッと肩を押されて二人の距離は離れた。
万が一を考えレーヴァテインは抜いておく。
「『君との決着は王都で。そうだなぁ……ワタシが負けるか、ワタシが満足する答えが見つかれば、セレスは返してアゲル』」
「証拠はない」
「『あるわけがないじゃない。堕天使は自分に有利な契約しか結ばない。いや、人間だって望んで結ぶ人はいないでしょう?』」
自分の存在を賭ける事になるかもしれない契約なんて誰も結びたがらない、確かに。
「『じゃあ、頑張ってワタシのところまで辿り着いてね?セレスだけの、白馬の王子サマ』」
そう言い残すと彼女は赤い液体状になり、地面に溶け込んでいった。
「……!オーリン!大丈夫、か……?」
暫くその溶け込んだ場所を見つめていたが周囲に怪我人が大勢、加えてオーリンが倒れていたのを思い出し、顔を上げる。
するとそこには一枚のカードが浮き上がっていた。
「……白のローブ。聖職者か何かか?」
「正確には教皇、だね」
声の方向を見るとオーリンが血の池の上に立っていた、腹部に大きな穴が空いたまま。
「その傷は……」
「彼女にやられたよ、堕天使の方ね。でも大丈夫、間に合ったから」
そう言うとオーリンは一本の杖…それも通常のカードよりも過度な装飾が描かれた物を取り出した。
「『教皇・杖の1』」
二枚のカードが発した暖かい光が辺りを照らす。
オーリンの腹部の穴もふさがり、あまり日に焼けていない白い肌が見える。
「ふぅ……心配かけてごめんね。僕の運命魔法は基本的には溜めが必要ないけど1だけは発動までちょっと暇がかかるんだ」
周囲の兵士達も全員無事なようだ。
皆起き上がり、それぞれオーリンに敬礼をしている。
「即死じゃない限り僕は死なない。ただこれを知られてたら確実にトドメをさす必要があるってバレるから同じ相手には一回限りの策だね」
これで多分今回の戦いではもう使えない、と付け加えてオーリンは言う。
「奥の手だったんだけどなぁ……まぁ仕方がない、また準備して」
「悪い、その暇はない」
ユウマはすぐに王都へ向かうと決めている。
セレスを取り戻すために。
「……決意は固いみたいだね」
「あぁ、必ず彼女を取り戻すためだ」
腕を組み、顎に手を当てて考え込む。
思考は五秒、顎に当てていた手を外し、パチンッと指を鳴らす。
「うん、分かったよ。明後日には攻勢に出るとしよう。僕の元居た世界には『善は急げ』って言葉もあるからね」
皆!明日にはここを畳んで王都に向かうよ!と周囲の兵士達に告げると兵士達は襲撃の後にも関わらず雄叫びをあげた。
相当待ちわびていたのだろう。
「ついでに考察といこう。あの堕天使の使ってた魔術、あれの正体を何とか確かめたい」
「……名前、とかは参考になるか?」
オーリンが眼を見開いた、不味い、次に来るのは…!
「でかした!」
「いっ!?力強いんだよ!」
「ハハッごめんごめん。名前だけでも分かればそれが大物なら文献から調べあげれる。僕の空間収納の蔵書量はその辺の図書館より多いからね」
彼女から聞いた名前、シェリダンを教えるとすぐに兵士達が再び建てた新しいテントに入っていった。
するとすぐにズドンッと何か巨大なものが落ちた音が聞こえた。
「入るぞ!?」
中に入るとそこには……大量の本棚が並んでいた。
「……棚ごと収納する必要はあったのか?」
「無い!強いて言うなら僕はね、こういう収納されてる状態の本が一番美しいと思うって事が理由だね!」
ただの美学の問題だった。
それを話すオーリンは既に二冊同時に本を見ていた。
「あぁ、ちょっと洗いざらい調べるから周囲の兵士達のお手伝いしてあげて、終わったら呼ぶから」
「……分かった」
少し前まで腹に大穴が空いていた奴とは思えないくらいのはしゃぎっぷりだった。
それと同時にユウマがオーリンと過ごしてきた間で初めて、見た目相応の態度、というか行動を見たかもしれない、とも思ったユウマだった。
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