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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
五章 運命の紡ぎ手と太陽の覚醒
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そして運命は動き出す

 

 初めにそれを見つけたのはあの呪いのような魔力に目覚める前日だった。


 次に見つけたのは家族と別れる前日


 次は小さな村で細やか生活だが一人で暮らすのが苦じゃなくなり始めたとき

 次の日には王都に幽閉された。


 次に見たのは至天計画完成前日、私が堕天使の容れ物になる前の日。


 安寧が崩れるときはいつもそれが空から舞い降りる。




 ◇◇◇




「いらっしゃい、お嬢さん。今日はちょっと用事があってね?」

「あ、あの……セレス何かいけないことしましたか、です?」

 突然夜にフレイと名乗る少年が私を呼び出してきた。

 普段はユウマさんと居るのに何故だろう。


「これ、心当たりとか無い?」

 その手にあったのは……


 黒い羽根

 その辺の野鳥にしては大きすぎる、そして何処か神聖な気配がする羽根。


「僕の記憶だとこの辺にこんな色の羽根がある生物は居ないんだよねぇ、何処かで見かけた?」

 思考が凍る、ついにこの生活も終わりが来たのだ、と無意識に身体が思考を諦める。


 そうなってしまえばもう彼女・・を押さえつけるものはない。


『セレス~気が緩んでるわよ?出てきて良いの?』

 一瞬で魂が抜け落ちたような脱力感を振りほどき、現実に思考を戻す。


(まだ、まだやれることが残ってる……!)

「……セレスには分からないです。ここ数日の探索でも一度も見ませんでした」

「至天計画」

 身体が思わずビクッといった音が似合うような反応をする。

 これでは知らないふりをする方が不自然。

 どうやら私は追い詰められてしまったらしい。


「僕はね、君がこちらの味方をしてくれるならそれはそれで助かる、ただでさえ人手が足りないんだからね。でも、これ、堕天使の羽根があるって事は多分君の中の彼、彼女は戦闘の意思があるんだろうね」

「……貴方が運命の王様?」

「そ、改めて名乗ろう、オーリン・ヴァルフレイだ。手を取り合いたかったよ、君とはね」

 オーリンは魔術師と11本の杖のカードを取り出す

魔術師(スルト)杖の11(ロッド・イレフス)

 二枚のカードから炎の巨槍が飛び出す、威力は最上級相当。

 オーリンが気軽に使える中では最高威力に近い数字を迷わず使った。

 それはセレスへと飛来し、彼女は爆炎に包まれた。

 当然それは外にも爆音となって伝わり、運命の王を信じてきた優秀な兵士は寝ていた者も飛び起きた。




「……これで消えてくれるとありがたいんだけどなぁ」

「『フフフフ、そんなの、このワタシが許さないわよ?』」

「!…『世界(ウルズ)杖の7(ロッド・セブンス)』!!」

 ゾリッと言った音が相応しいだろう、空間転移で逃げなければオーリンの身体は巨大な鎌に刈り取られていた。


 ヒュンヒュンと風を斬る音と共にセレスティアの姿が露になる。

 彼女は五体満足、血のように赤い何かが膜を張って守っていた。

 その膜に繋がる赤い糸の先端にオーリンを刈り取ろうとした大鎌があった。


「決して手加減したつもりは無かったんだけどなぁ……」

 制限があるカードは使ってないけど、と頭の中で付け加える…が、最上級相当の威力の攻撃を当てて無傷だったという事実はオーリンに重くのしかかる。


(最上級を複数当てる……もしくは神級相当?ッハ、馬鹿げてる)

「『セレス~?目の前の彼を殺しちゃう?それとも~』」

「ダメだよ、殺しちゃ……私達の役目は運命の王の戦力を削ることと挑発すること、王様は自分で殺したいんだから」

「『つまんないの~』」

 血の膜が喋ってる……のか?

 奇妙な光景に少し困惑するが手持ちのカードと相談して何をするか考える。


(ユウマ君にチャンスを与えるなら即死相当効果が出そうなカードの強い数字は使えない、間違っても1(ファスト)を使ってはいけない)


「『じゃあお別れしに行こっか?』」

「……うん」

 膜が翼へと変貌、この場から去る気か!


「逃がさないよ、『女教皇(フレイヤ)剣の12(ソード・トゥエルフス)』、『皇帝(オーディン)杖の9(ロッド・ナインス)』!!」

 二枚二組のカードでオーリンは動く、女教皇により顕現したのは神狼を繋ぎ止める紐『グレイプニル』、それの模造品。

 それがまず去ろうとする彼女の足と翼に絡み付く。

 次に皇帝により顕現したのは上級相当の落雷。

 膜が翼へと変わった事により、最上級に至らずともダメージは入ると考え、直後に連続使用が出来る数字を選んだ。


「『はい、ざぁんねぇん♪』」

 翼が刃物のように鋭く変貌、本来のグレイプニル程の耐久性能が無いそれはヒビが入り、鎌のひと振りで壊れる。

 迫る雷撃には片翼が天井になり、完全に防がれる。


(雷通らないの?……となるとやっぱあれ、硬質化した血液じゃないよなぁ、濃密な魔力……か)

 鉄臭い匂いがしないことからなんとなくは察していたものの、赤い何かの正体を血液ではないと断定、天使は堕ちると更に力を得る種もいる、という話もあることから桁違いの魔力を何らかの方法で赤化、硬質化したものだと仮定する。


(……困った、対策が見当たらない)

 思考の合間に『太陽(バルドル)杖の6(ロッド・シクス)』、『悪魔(ディース)杖の5(ロッド・フィフス)』、と立て続けに光、氷の魔術を放つも全く通らない。


「『あー!もうウザイ!シツコイ男はキライよ!!』」

「え?ちょっとダメだよ!それは!!」

 セレスティアの目の前に赤いドロドロとした塊が発生、彼女本人はそれを止めようとしたようだが構わずそれは地面へと放たれる。


「『大丈夫よ♪急所は多分外せるから』」

「……いいよもう。どうせ怒られるのはあなたなんだから」

 全てを諦めたかのような表情を浮かべるセレスティア。


「まだ終わってないぞ。『愚者(ロキ)』!」

 角が生えた禍々しい雰囲気の男のカードを取り出す。

 しかし、その魔術を発動させる前にズンッと何かが腹に刺さり、身体が浮いた。

 そこを見ると赤い円錐が地面から生えているのが見えた。

 背中を見ればその先端が見えるのだろう。


「……あーあ、やっばいなぁ、これ」

 そう小声で呟くと同時に円錐は消え、オーリンは地面に倒れ伏した。




 血の池が出来た地面に一枚のカードが落ちる。

 それは金の意匠が施された白のローブを着た男性の絵が書かれていた。


 

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