ギルド本部
主観者 ユウマ・エクスベルク
正直に言おう。
圧倒的だった。さすがはSランクと言ったところか。あの千年前に最強格だった人間が魔人化した化け物が遊ばれてるように見えた。
(俺もいつかはこいつ以上に強くなれるのだろうか‥‥‥)
あまり弱気なことは考えたくなかったがここまで強くはなれる気がしない。
俺はあの魔人のプレッシャーに負けていた。
「さてと、リュート君のチームも一度ギルドに帰る必要があるのでみんなでギルド本部に帰還しましょうか!」
ソウジがいつもの笑顔で言う。これ猫被ってるんだよな‥‥‥
「でもソウジさん。影狼ではこの人数は無理ですよ?俺達は別で帰るのでユウマと一緒に先に帰っててください」
兄さんは遠慮するようにそう言う。確かにクロの背にはせいぜい三人程度しか乗れなそうだ。
「クロは消耗してるから元々使う気はありませんよ。それに魔人に遭遇して生き残った人はギルドに報告に行く義務があります。ちょっと待ってくださいね」
そう言うと通信石を取り出し、どこかへ連絡し始めた。
「あ、ギルドマスター?こちらは終わりましたよ。転移術式の使用申請をお願いしたいのですが」
『おお、さすがはソウジ君じゃ。良いぞ、六人ぶんじゃな?』
「はい、場所はまぁ本部入り口で。新入りの顔を警備に覚えさせる必要もあるの思うので」
『そうじゃな、それでは通信終了から一分後に三十秒間だけ起動するから抜からぬようにな』
「了解です」
通信は終わったようだ
「さて、みなさん俺の周り三メートルくらいにあつまってください。あまり周知の事実ではない技術で本部の目の前に転移します」
「な!ギルドは誰でも使える転移術式の開発に成功してるのですか!?」
驚愕した様子でリュートが言う。確かにこれは驚くことだ。転移魔術なんて使える人は相当限られる。それを誰でも使えるようにしていると言うのだ。驚くのも無理はない。
「魔力コストが高いので緊急時に少人数限定で使えますよ。わりと機密事項なので他言無用です」
ソウジは笑顔でそう言うが若干なる圧力を感じる。
今になって考えてみるとソウジはたまに素の感情が滲み出てることがあるな。
「さて、じゃあ時間ですね。『転移術式起動!』」
ソウジがそう言うと周辺が無重力になったように感じ、目の前の景色がガラリと変わった。
荒廃した大地の代わりにとてつもなく巨大な建物が目の前に現れた。
「さて、ユウマこれがギルド本部ですよ」
俺は絶句した。
今まで見てきた中でここまでの規模の建物を俺は見たことがない。まるで城のようだ。
「まぁ最初はそうなるよなぁ。俺の第一声は『城かよ!?』だったなぁ‥‥‥」
考えてることが被った。やはり兄弟は本質的には似た者同士なのか。
「さて、警備に挨拶しておきましょうか。顔を覚えてもらわないと攻撃されることがありますから」
その言い分だと警備は全冒険者の顔を覚えてるのか。一体どんな記憶力してるんだ・・・?
ギルドの門に兵士のような鎧を着た格好の男が居た。若干顔色が悪い気がする。
「ソウジ様、リュート様、シュヴァル様、エリン様、クロード様お帰りなさいませ。そちらは?」
本当に全員の名前を知ってるのか。
「この人はユウマ・エクスベルク。俺が推薦する冒険者ですよ」
「なるほど、初めまして。私は正門警備担当のボリスです。今後ともよろしくお願いします」
「あぁ、よろしく頼む」
握手をかわすが、
「‥‥‥体温がない?」
「『あら、さすがに鈍くはないわね』」
「ッ!?」
急激にボリスの魔力が膨れ上がる。つい手を離し剣を抜こうとする。
「あ、ミスティアさん起きてたんですね」
「『えぇ、あなたが推薦するなんてどんな子かと思って気になったのよ。今そっちに行くわね』」
「そんなに珍しいですかね?いや、まぁ確かに連れてきたことありませんでしたね」
ん?こっちに来るって近くに居るのか?
「『逆召喚魔術。起動』」
ボリスがそう言うと突然彼の体が強く輝き、つい目をそらした。
次に見た瞬間、そこには棺のようなものに座った大量に装飾が施された黒いドレスを着た長い白髪の幼女が現れた。
「‥‥‥子供?」
「まぁみんな第一声はそうよね。初めまして、私はミスティア・サクローネ。死霊術で操っている警備を複数に配置してギルド本部を警備するのが基本の仕事ね」
常に寝てるという人か。
「俺はユウマ・エクスベルクだ。ちょっと気になったんだが何人くらい操っているんだ?」
「えーっと、今ギルド本部の周辺で警備してるの四十人でヤマの国に遠征に行ってるのが四人だから、四十四人ね。寝てても操れるくらいには死霊術は使い馴れてるわ」
多いな、しかも寝ながらか。さりげなく恐ろしいことをしてるな。
「今のは転移魔術か?」
「ちょっと違うわね。私が召喚した死霊を目印に私を召喚するって感じかしら。私が操る死霊がそこに居れば私はどこでも行けるわ」
ちょっと待て、破格の性能過ぎないか?
自分が行かなくても死霊がそこに居ればいつでもその場所に行ける。
なるほど、だからギルド本部で寝てても大丈夫なのか。
「さて、ミスティアさん。そろそろ行きませんか?魔人に関しての報告もあることですし」
「そうね、行きましょう」
ミスティアはそう言うと立ち上がらずに棺を浮かせて先行し始めた。
「浮遊魔術か‥‥‥?」
「そうよ、歩くのダルいしこれが一番楽なのよ」
常に魔力を消費してる方が疲れると思うのだが‥‥‥どんな魔力量してるんだ?
「あぁ、忘れないうちに忠告しておくわね。この棺には触れない方が良いわよ。死にたくなかったらね」
「分かった。始めて見たときから直感でやばい物が入ってそうだとは思っていた」
「良い判断ね。何人か一般から来た子がこれに触れて恐怖を刻み込まれたから」
一体何が入ってるんだ‥‥‥ていうかそんな危ないものを乗り物にするなよ‥‥‥
門を入ると大勢の人々が依頼書が貼られている掲示板に集まっていた。何ヵ所かに分かれているのはランクによるものだろう。
薬や食料を売る店も乱立している。
「どうです?これがギルド本部です」
「やはり広いな。だが店がありすぎじゃないのか?こんなにあったらどこで買うべきか分からん」
「まぁこのなかにはぼったくりな値段で売り付けてくる店もありますね。
俺が良い店を紹介しますからそこは気にしないで大丈夫ですよ」
Sランク御用達の店が使えるなら気にしないで良いか。
「あっちよ、ギルドマスターに上に通すように言われてるから」
奥にある目立たない階段へ向かって指をさす。
「なんかやけに目立たない階段だな」
「工夫されてるんですよ。警備上の機密なので詳しくは言えませんが」
何かしら魔術で細工されてるのか。
まぁギルドの長がいる場所なのだから当たり前か。
「ギルドマスター、連れてきたわよ」
「おお、ソウジ君にリュート君一行か」
ミスティアが扉を開けるとそこには大量の書類が乗った机の前に座った胸の辺りまで髭を伸ばしたどこか圧力を感じる人物が居た。
「ソウジ君、リュート君達、よくぞ魔人を相手に生き残ってくれた!それとユウマ君だったかな?初めまして、私はゲンイチロウ・クジョウ。全てのギルドを統括するギルドマスターじゃ」
ミスティアさんはソウジ君、アリシアさんと並んで現在登場したキャラの中で最強格です。
死霊術だけでも強そうですが他にも色々出来ます。(棺の中はまだ秘密)
そしてストックが切れた・・・投稿ペース遅れそう