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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
五章 運命の紡ぎ手と太陽の覚醒
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運命の王からの課題

今年最後の日くらい投稿しときましょ

 

「私は少し前までは家族と一緒に暮らしてました」

 そこからセレスティアの一人語りが始まった。


 決して裕福な暮らしではなかったこと、でも人並みの幸せは得られる……そう確信できるくらいには長閑で平和な暮らしをしていた、と。


「ある時、私に魔力が目覚めたのです。ユウマさんもさっき見たでしょう?」

「……あの猪を吹き飛ばした魔術か」

 セレスティアは頷く。


「あの魔術、最初は全く制御出来なかったのです。無差別に人を吹き飛ばし、寝てる最中に家具を吹き飛ばして家を壊したり……私の普通の幸せも壊れました」

 今でこそ自らの拒絶の意思を鍵として発動させる、といった感じにコントロール出来るようになったが当時はそんな事は出来なかった。


 付いた名は『呪われた娘』

 村からは居場所が無くなり、彼女は家を出た。


「今はとある所に拾われましたか……とても幸せなんて掴めそうにないですね」

 帝国派に実験体として捕縛され、ここのスパイをしてる……なんてことはセレスティアには言えない。


「……こんな呪われた娘が隣にいるなんて、ユウマさんも嫌ですよね?」

 その問いかけにユウマは……




 ◇◇◇




「よく言った!素晴らしいよ君は」

 帰還後、オーリンを訪ねて報告をすると思いっきり肩を叩かれながらそう言われた。


「独断で動いて彼女のトリガーを引きかけたことも差し引きゼロにしてあげよう。でもそれくらい君の問いは危ないことだったことを念頭に入れておいてね」

 彼女と会話をしたことがあれば誰でもあの違和感ある口調は気になるだろう、実はオーリンは兵士達に対してセレスティアへの深入りを禁じていたのだった。


「君に任せると言った以上外部からの干渉は完全にったまで、結果的に情報を得ただけだから良し!んで、君の眼にはどんな風に写ったのかな?」

 これは恐らく魔術に対しての問いだろう、俺に聞くのだから当然『魔力眼』の出番だ。


「青と黒の混合、だから水と闇だろうな」

「じゃあベースは氷魔術か。それで君の眼には想像時間が極端に少なく見えた、と」

「あぁ、想像とほぼ同時に衝撃波が出ていたように見えた」

 そう応じるとオーリンは少し考え込む。


「想像時間が短い、加えて彼女の周りのみに発動、か。ハハッこれは凄まじいな。彼女自体もかなりの実力者だったか」

「セレスティアはこれを呪いだ、と言っていたが」

「無論!そんな簡単に片付けられる話じゃあない。『歪んだ愛情が呪いになる』なんて話もあるがそんなもので片付けられるなら今コントロール出来てる時点でおかしな話だ」

 歪んだ愛情、ね……

 彼女の親はそんなに歪んでる感じはしなかった、話し方的には。


「『悪魔ディース杖の4(ロッドフォース)』……これをちょっといじって……こんな感じかな!」

 オーリンは山羊の角のような物が頭に付いた女性のカードと四本の杖のカードを取り出し、少し考え込むと先程セレスティアが放ったような青と黒の衝撃波が発生した。


「うん、多分こういうことでしょ?」

「あぁ、そっくりだった」

 話を聞いただけでオーリンは再現してみせた。

 そのまま彼は解説を始める。


「常識外の想像速度で高位の魔術を放って吹き飛ばしたなら猪は絶命している筈、地面に擦れた程度のダメージだったなら低位の魔術の想像速度を限界まで切り詰めて性能を威力に極振りにすればいい」

 オーリンはこう語った。


 上級相当の魔術に『ブリザード・ノヴァ』という自身の周囲か魔力を投擲し、そこを起点に冷気の爆発を起こす魔術があるという。

 今回のは言わばそれの縮小版、こけおどし程度でも良いのなら極限まで範囲を狭くし、自分の身体からしか発動できないようにすればあのサイズの猪でも吹き飛ばすだけなら出来るらしい。


「僕の運命魔法だとカスタマイズ出来るのは4以降の数字でね、ホントは3でも威力は足りるけど4にした分ちょーっとだけ本家より強いかも」

「……で、それを見せつけられた俺は何をすれば良い?」

「決まってるじゃん。対極の魔術、火、光混合魔術である爆破魔術の高速想像とその発動の練習だよ」


 混合魔術、それは基礎の七属性を掛け合わせて作る七属性外の魔術だ。

 会得にはセンス、魔術適正、努力などさまざまな要素が必要となる、会得しようとして必ず得られるものではない。


「君は多分理論で武装した方が覚えが速い。だから光と火のベストな魔力合成率を教えてあげよう。ズバリ、光と火の比率が10対9だ」

 オーリン曰く、混合魔術はそれ事に合成比率が違うらしい、この辺が会得できる出来ないにも繋がっているらしい。


 いくら水属性が得意でも完全に同じ比率で闇魔術を使えなければ氷魔術が発動しないように……。


「君は火魔術が得意みたいだから光から練習してそれのほんの少し出力を落とした火魔術と合成する、理論上はこんなところ」

 これをセレスティアが闇と水の魔力を用意したのを見たら一瞬でこなす、と締めくくる。


「最初は発動も覚束無いだろう、でもこれが出来れば難なく凌げる。いやぁ、課題としては最高だね」

 それもそうだろう、下級レベルとはいえ高速で想像し、発動すること、それを混合魔術ですること。

 これさえ出来ればあとは混合魔術の知識と感覚を忘れないための反復練習で事は済む。


「じゃあ、今夜も協力してくれ」

「勿論さぁ、そのために僕がいるのだから」



 

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