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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
一章 ギルドを目指して
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元聖騎士との攻防 決着

 主観者 ソウジ‥クロスヴェルド




「ほう?ならそれを証明してみせろ!!」

 ヘクトは一度下がり、再び魔力を拡散させる。


「無駄ですよ。ディレイ‥フィールド!」

 再び俺は空間魔術を起動する。ヘクトの速さは普段と変わらないため、余裕で剣を見切れる。

 回避し、振り下ろした隙を見てがら空きの肩に刀を振るうが


「させん!!」

 ヘクトは魔力を勢いよく解放し、俺を吹き飛ばそうとする。


「まぁそう来ますよね。読み通りです」

 俺は魔力の勢いに合わせて下がり、刀を鞘に納める。

 そして、


「闇属性付与・抜刀術」

 得意の闇属性の魔術を纏わせ、

黒風一迅こくふういちじん!」

 神速の斬撃を放つ。


「ぐっ!」

 ヘクトは剣の腹で防いだがそのまま数メートル先の岩山に突っ込む。


(さて、さすがにこれじゃあ倒れてくれませんよね‥‥‥)

 案の定ヘクトは岩山が這い上がり、こちらへ向かってくる。その身には相変わらず大きな傷は見えない。


「ちゃんと防御してたとはいえ丈夫ですね。一応魔力付与して威力を上げていたのですが‥‥‥」

「ふん、聖騎士として研鑽を積んでかつ魔人の肉体を手に入れたのだ。例え刃を受けたとしても簡単には死なんぞ」

 いやぁホント魔人になってはいけない人が魔人になってしまいましたね。


「さて、その抜刀術と対象を遅くさせる空間魔術のみがお前の我への対策か?ならば拍子抜けだな」

 こちらに剣を向け軽く挑発してきましたね。

 そこまで言われたら仕方ない。


「まぁさすがにこれで終わるとは思ってないですからね。ちゃんと本命は残してますよ」

 そう言って俺は

「これ使うと後々ダルくなるんですが、まぁ有望な次世代のために頑張るのもSランクの仕事ですよね」

 自分の刀で利き腕ではない左の手首を軽く切り裂きその血を刀に浴びせた。

「何?」

「さて、行きますよ?

血盟剣術ブラッド・オーダー!』」

 刀がドス黒く発光し、力が増すのが分かる。

 これが今回用意した奥の手『血盟剣術ブラッド・オーダー』です。

 自分の血を武器に纏わせれば纏わせるほど力を増幅させる禁術に近い技です。

 使用後はかなりの倦怠感に襲われますが、俺なら大丈夫でしょう。


「いつの時代も自分の身を削る技術は消えないのだな‥‥‥以前にも似た技を見たことがある」

 まぁ千年前にもあってもおかしくない技ではありますね。


「これはそれほど命を削るものではないので問題ないですよ。とりあえずあなたを倒せれば十分です」

「そう言って魔人と戦い消えていった仲間を思い出す。準備は出来たようだな?こちらから行くぞ!」

 ヘクトは一足でこちらに近づき剣を振り下ろす。

 さっき俺が吹き飛ばされた前の時よりも剣速は上がり、込められた力も増している。

 だが俺はそれと互角に渡り合っている。


「さすがに禁術相手には手間取るな‥‥‥」

「こっちは身を削ってもあなたと互角に打ち合える程度とは、まぁまだ余力はありますけど」

 鍔迫り合いをしながらお互いに小言を挟む。

 しかし、本当に厄介ですね‥‥‥『血盟剣術』を使えば圧倒できると思っていたのですが。

 お互いに一旦距離を置いた。


(これ以上血を流すとさすがになぁ‥‥‥)

 少しだけふらつきかける。

「人間の体ならそろそろ活動に影響が出始める出血量だろう?その業物で切り裂いたのだ、簡単には出血は止まるまい」

「あー、バレてます?それは困ったなぁ」

(いやぁ、本当に困りましたね‥‥‥)

「終わらせるとしよう」

 ヘクトは二種類・・・の魔力を放ち、光の魔力を体内に、闇の魔力を周辺に拡散させる。

 これが縮地斬撃の発動の合図だ。

 闇の魔力には単純な闇の力に加え、『停滞』の力がある。それで周辺の人間の動きを鈍くし、光の魔力の『加速』の力で自らを加速させる。よって相対的に縮地の領域にまで本人は到達出来る。


 俺の空間魔術も闇の魔力を宿していて、それで光の魔力を打ち消して普段の速度と同等にして対応していたのだ。


「ソウジ!下がれ!」

 ユウマが叫ぶ。

 あぁ大丈夫ですよ。何の問題もありません。


「これで終わりだ」

 ヘクトの剣が迫る。それを俺は刀で受けようと構える。

 俺は吹き飛ばされなかったが刀が手から離れた。


「さらばだ、現代の最強よ。言い残すことはあるか?」

 ヘクトは剣を掲げる。

 へぇ、遺言を残させてくれるんですか。ずいぶんと『優しい』んだなぁ?


「じゃあ一言」

 俺は自分の右側の空間に向けて手を向け

「何を油断してるんだ?元聖騎士王!!」

 空間から太刀を抜き、ヘクトを切り裂かんと凪ぎ払う。


「何!?」

 ヘクトは驚いた様子で下がる。まぁそれもそうだろう、さっきまで自分の勝ちを確信していたのだから。


「まさか最強と言われる俺が神格種の素材とはいえ人の手で作られた武器が本気とでも?」


 今俺が持っている太刀はとある迷宮の最深部にて手に入れた神話級と呼ばれる神の手で作られたとされる等級の武器だ。


「貴様、今まで本気ではなかったのか」

「あぁ、そうだよ。こっちが俺の本性だ。普段からギルドのイメージアップのために丁寧に接してるんだが」

 剣を真っ直ぐにヘクトへ向け、

「命を懸けた戦いには邪魔なんだよ」

 そう、この素の口調と少し悪い目付きの人物がトップではイメージが悪くなってしまう可能性がある。

 そしてその言葉を合図に俺はヘクトに斬りかかった。


「ッ!何!?」

 そこから俺は連続でヘクトを斬りつける。ヘクトは防戦一方だ。


「舐めるな!!」

 また魔力を勢いよく解放し俺を吹き飛ばそうとするが、

「そっちがな!『ダークネス・ディビジョン・バースト』!!」

 俺は闇の魔術をヘクトの放った魔力に合わせて拡散させ、逆に吹き飛ばす。


「ぐぁ!!」

 ヘクトは山の端の切り立った崖まで追い詰められる。

 さぁ邪魔物は消えてもらおう。


「ッ!!ソウジィィ!!!」

 ヘクトは今までで一番に魔力を剣に込めた。

 無駄なんだよ、大人しく落ちろ。


「縮地斬げっ」

「終わりだよ」

 ヘクトの言葉と剣が届く前に俺の剣が体に届き、奴は崖から足を踏み外す。


「そんな‥‥‥バカ、な‥‥‥」

 ヘクトは落ちていく。さすがに山から落ちれば魔人といえども死ぬだろう。

 俺は太刀を空間収納にしまい


「終わりましたよ。みなさん」

 いつもの笑顔でそう言った。


 こうして元聖騎士との戦いは幕を閉じた。










 主観者 ???




 男は落ちていく中で思考を巡らせていた。


(我の剣の方が速かったはずなのに先に剣を当てたのは奴だった)

 そう、それゆえにあの最後に漏れた言葉があのような言葉になってしまったのだ。


(そして一瞬感じたあの懐かしくも憎い魔力‥‥‥)

 そうか、そう言うことか。


 我は運が良かったかもしれない。


 魔人となってこの地に舞い戻り、再び魔人王と剣を交えて今度こそ滅ぼすと誓い、まず目の前の有象無象を蹂躙しようとした矢先に


(これは運命なのかもしれぬな)


 男は決意する。落下した先で生き残り、再び奴と剣を交えるためにまた鍛練をしようと。


「ふっふっふっ‥‥‥待っていろ。我はまた必ずお前の目の前に立ちはだかるっ!?あぐっ!」

(なんだ!?頭がっ!これはまさかっ!精神操作か!?)

 思考がまとまらなくなる。さっき斬られた時か事前に何者かが仕掛けていたのか?


(ぐっ、次に目覚めたときはどうなってることやら‥‥‥)


 元聖騎士は意識を手放し、麓の暗き森へと落ちていく。


次回やっとギルド本部に着きます(予定)

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