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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
五章 運命の紡ぎ手と太陽の覚醒
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外伝 愚者の旅路1

登場人物解説カットしまーす

まぁ私も評価しない、感想言わない大多数の読み専と一緒なのでね、気持ちは分かる。

十数人のブクマ民と一定数の評価を糧に頑張っていきますよっと

 

 森の中を一人で歩む。

 仲間も、相棒も死に、たった一人の弟は何処かへ消えた。


(最後の最後で父親面しやがって……)

 あの時、俺は死ぬはずだった。

 なのに……







『お前の覚悟は分かった。だから、もう止めろ』

『なっ!邪魔をするなと、何…してる?』

 刀がユウマの胸に刺さる直前、刀身を掴んで親父がそれを止める。

 それと同時に刃を炎が走り、滴っていた血が蒸発する。


『私が見つけるより兄に見つけられた方が勇真も嬉しいだろう……去らばだ、息子よ』

『なっ、待て!』

 そして代わりに刀身を掴む親父の血が刃に流れ、それがユウマの胸へと刺さった。


 そしてユウマと親父が陽光のような暖かい光に包まれた。


 その光が収まったとき、その場に居た筈のユウマは『アマテラス』と共に消え、事切れた親父が横たわった。


『……まぁ予定通りか』

 冷たくそう言い放つソウジ・クロスヴェルドに俺は思わず掴みかかった。


『なんだ?』

『っっ、あんた、ホントは最初から親父を犠牲にユウマを転生させるつもりだったのか!?』

『いや、別にお前が犠牲でも良かった。ただお前にはまだ伸び代がある。だから『予定通り』だと言った。気を悪くしたなら謝ろうか?』

『そうか、あんたの本性はこうなのか』

『正確には違う、が、お前は何を言おうと納得はしまい』

『あぁ、俺はあんたがトップを担うこの組織が信用できなくなった。俺は俺自身の力でユウマを探す』

 胸元を掴んでいた手を離し、その場を去ろうとする背中に幾つか言葉をぶつけられた。


『好きにしろ。だがここからの戦いは上位精霊じゃ足りない。最上位精霊かそれに準ずる物を手に入れろ。……あとここ最近の戦いの跡を巡ってみるのも良いかもしれない』

『前者は分かるが後者の意味が分からない』

『従うか従わないかはお前の自由だ。……期限は二ヶ月、それまでに準備を整えろ、何が起こるかは直に分かる』

『……』







 あれから一週間経った、この森はラミティ山の麓、これからあの山に登り、『聖魔の古戦場』へ向かうつもりだ。


(……結局俺は素直に言うことを聞いて動いてるな)

 釈然としないが性格はあれでも最強の言うことだ、意味のないことは言わない筈……。

 獣道を進んでいくと人の気配を感じた。それもかなり多い。


(こんなところに村があるのか?ギルドの地図には無かった気がするが……)

 その気配の方向に足を進めると、そこには森を切り開き、中央には大量の薪、そこを中心に少し離れて木造建築の建物が複数立ち並んだ集落のような場所があった。


「ここは……」

「おや、旅人さんかい?」

 白髪混じりの茶髪の男性に声をかけられた。


「あぁ、ここに村があるなんて知らなかった」

「はっはっは、そりゃあそうだ。ここは出来てからせいぜい一ヶ月程度しか経ってない名無しのちっぽけな村だよ。まぁちょっと前に腕っぷしの強い人が来てここまで開拓が進んだんだ」

「村長よ。今日の獲物を捕ってきたぞ」

「おお、フェムトさん。今日もありがとう」

 そのフェムトと呼ばれた男の方向を向くと、途端に全身に鳥肌が立ち、思わず魔力を解放する。


「お、お前は……っ!」

「む?……あぁ、以前山頂に居た火の上位精霊(イフリート)使いか。久しいな」

「何故生きてる!?ヘクト・ギルティブレン!」

 以前着ていた鎧は外され、巨大な馬も連れていないが背負う巨大な剣と煙と化した頭頂部のみで分かる。

 初代聖騎士王ヘクト・ギルティブレン、その成れの果てだ。

 手も足もでなかった記憶は残っている、だが黙って殺されはしないと中ほどで折れている剣を抜き、構える。


「おや、知り合いかい?それも複雑な関係そうな」

「あんた、逃げろ!こいつは、こいつはっ!」

「落ち着け、青年。私はもう君達を殺す気はない。必要ならばこの剣も置こう」

 ヘクトは背に止められた剣を地に置き、両手をあげて無抵抗を伝える。

 だが、問答無用で襲いかかってきた記憶が抜けないリュートは警戒を止めない。


「ん?青年、そういえば君の仲間はどうした?」

「死んだよ。全員な」

「……そうか、悪いことを聞いたな」

 ただ、違和感は感じた。

 以前の肌がひりつくような圧倒的プレッシャーは無く、声も落ち着いている。


「村長、少し二人になりたい。場所を借りれるだろうか」

「おお、良いとも。知り合いなら積もる話もあるだろうしねぇ」

「俺には話すことなんて」

「私は君に聞きたいことがある。それではダメかな?」

 勿論、帯刀もしない。と付け加えられ、最終的にはリュートが折れた。


「この小屋は客間にするつもりだったから、好きに使って構わんよ」

「感謝する」

「いいよいいよ、どうせ殆どフェムトさんが作ったんだから」

 そう言って一つの小屋に二人を押し込み、村長は去っていった。


「茶は飲むか?天然の葉で少し渋いが」

「……貰う」

 リュートはとりあえず流れに身を任せることにした。

 帯刀していようがいまいがヘクトに襲われれば勝てる見込みは殆どない。

 ならば大人しく話を聞いて満足させよう、と。


「……本当に渋いな」

「はは…、ここまで渋いのは私の容れ方も悪いのかね?」

 あまりの渋さに顔をしかめるとそれを笑い、ヘクトも一口啜る。

 少しでも渋さを和らげようとリュートが空間収納から牛乳の入った瓶を取り出すとそれに驚いたのかヘクトは少しのけ反る。


「今の人間達は当たり前のように空間収納を使えるのか?」

「特に冒険者はそうだな。千年前には居なかったのか?」

「空間魔術の使い手自体は居てもそれに手一杯で戦闘には加わらない者が多いな。私の部下にも何人かそういう人物が居た気がする」

 それを皮切りに会話が始まった。冒険者とは?今の教会の様子、国のかたち、様々な質問に当たり障りない程度に答えていくうちに分かった事があった。


(この世界が千年後だと認識はしているようだな……周囲の話から知ったのか。千年の記憶があるのか……)


「あぁ、失礼。一番聞きたいことを忘れていた」

(来た、本命の質問)

 今までの会話はただの繋ぎだろう。

 こちらの警戒を少しでも解きたかったのだろうがそうはいかない。


「ソウジ・クロスヴェルド。彼の中にいる存在に気づいてるか?」

「……中にいる?」

「……そうか、やはり上手く隠してるようだな」

「っ!」

 あまりにも想定外の質問で呆然としていた。

 これでは今から知ってると言ってももう遅い。

 ただ少し引っ掛かることがあった。


(もう一人……?まさか、な)

 あの時ソウジは本性を問われたときに『正確には違う』と言った。

 それと今の質問を照らし合わせると。


(ソウジ・クロスヴェルドの中にはもう一つの人格があり、それはヘクト・ギルティブレンが知る人物である……つまり、千年前の人間)

 途端に背筋がゾッとした。


 ここ最近の戦いの跡を巡れ、という指示。

 そして実際に訪れれば思わぬ人物との再会。

 そしてソウジ・クロスヴェルドに関しての質問。


 あの戦いの時、ヘクト・ギルティブレンはソウジに対して異常な執着があったようにも見えた。

 そしておあつらえ向きに戦いの場はあの千年前の魔人王と聖騎士王の決戦の場『聖魔の古戦場』。


「俺からも一つ聞いて良いか?」

「良いだろう。私に答えれる事ならな」

 信じがたい事だったがここまで情報が出揃えばそうとしか思えなくなった。


「ソウジ・クロスヴェルドの中には、あんたと千年前に雌雄を決した存在、ガルド・リベレイがいる。そうだな?」

「……いつ気づいた?」

「つい先日だ。ソウジ・クロスヴェルドは敵対者には容赦しないが味方に対しては暖かさがあった。だがこの前は違う。禍々しい刀を持って冷えきった目をしていた」

 あの目を向けられるだけで背筋が凍るほどに、冷たい。

 まるで感情が全て抜け落ちてるような無情な瞳だった。


「……そうか。それは恐らくは私のせい、だな」

「どういうことだ?あんたらは敵同士だったんじゃないのか?」

「立場上はな。少し長くなるが、話そう。千年前の真実を」

 冷めた茶を啜り、ヘクトは語り始めた。


 

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