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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
四章 ヤマの争乱
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ヤマ国侵略事件 顛末1 トラス政府にて

 

 俺の名はディルク・ブレイヤード。

 中立国トラスにて裁判官のトップを担っている。

 そんな俺が今頭を抱えている原因は此度の戦争、いや、事件の後始末に追われているからだ。


 突如宣戦布告された時、政府は大混乱に陥り、全国家が戦力を結集させた所、中立国の癖に騎士団を出し渋る政治家達。

 挙げ句の果てに冒険者に守られたと言うのに責任追求をしろ、と俺に言いつけてくる。


 しかし、完全に言いがかりとは言えない。

 実際、ギルドマスター、ゲンイチロウ・クジョウの裏切りによって色々と情報が漏れ、不利益を被った。

 他にもヤマの国出身の者達がすぐに鎮圧されたとは言え各地で暴動を起こしていた。

 事件が終息した今、責任をとるべき勢力を選ばなければならない。


「つってもなぁ……重要参考人全員死んでるってどう言うことだよ!?」

 そう、首謀者たるリュウマ・イガミ、他数名、全員一人残らず死亡しているのだった。

 後始末のためにも一人くらい捕虜にしとけよ……と愚痴るもディルクの私室には誰もいないため、虚しく響くだけだった。


「ある程度上の人間を捕まえさえすれば俺の固有魔術で何とかなるってのに……戦い大好きな連中ばっかで困るわぁー」

 そう、俺には固有魔術がある。


 嘘を見抜く魔術『真偽解明魔術』……聞いたことない?そりゃそうだ、自分で名付けたからな。


 魔力を込めて投げ掛けた質問の解答で真実なら青、嘘なら赤い魔力がその人物から発せられる。

 嘘かどうかしか分からないがこれがあるから俺は裁判官のトップに立ち続けている。


「お邪魔しますよー」

「あ?……あんたか」

 もう一つの悩みの種が来た。

 ソウジ・クロスヴェルド。俺が考える危険人物筆頭だ。


 冒険者の中でも一、二を争う実力者でかつ使役した影狼による高速移動によって情報戦にも強い。

 あと、個人的に一番嫌いだ、絶対腹黒い。


「ユウマ・エクスベルクの情報は回って来てないぞ。他にも面倒事を持ってきたのか?」

「心外ですね~、まるで疫病神じゃないですか」

「どの口が……」

 後始末で忙しい俺に人探しの依頼までするなよ、便利屋じゃねぇんだぞ……。


「ふむ、やっぱりギリスロンドが濃厚ですか……誰か派遣しましょうかね」

「言っておくが中央大陸以外に関しては管轄外だからな。他の大陸は知らん」

「そこまでは頼みませんよ。こっちの人員でなんとかします」

 ユウマ・エクスベルク。今回の事件の被害者の一人……だが魔剣『アマテラス』の『転生』の秘術によって死の淵から蘇ったとされている。


 しかし、『転生』は何処か別の地へ飛ばされて復活するもの、未だ消息が掴めず、本当に生き返ったのかも分からない。


(……確か、ユウマ・エクスベルクはヤマの国出身だったか)

 ソウジから依頼が来た後、人相は徹底的に調べた。

 今回の事件の首謀者であるリュウマ・イガミとレミエル・エクスベルクの間に産まれ、同時に消息不明となったリュート・エクスベルクを兄に持つ。

 それなりの魔術、それなりの剣術、それなりの頭の回転を持つ極めて普通の存在。だが、リュート・エクスベルクは彼を天才と称し、実際突然変異と思われるフレアドラゴンの変異種や天使相手に善戦している。

 何故か今代最強の冒険者、ソウジ・クロスヴェルド含むSランク冒険者からの評価も悪くない。


(……俺の手の者が先に見つけて目の前のこいつに邪魔される前に裁判で罪を吹っ掛けるのもありか)

 俺の優先事項は国の安定、そのためなら冤罪でも何でもやってやる。

 必要なら俺も泥を被る覚悟がある。


「あー、言っておきますけど」

「あ?なんだ、ユウマ・エクスベルクの処遇か?」

 言葉に魔力をこめる。

 これで真偽は判定できる。


「はい、そうです」

 青


「彼に、もし危害を加えたりしたら……殺しますよ?」

 ……青

 至近距離にソウジが近づく。


「……ま、嘘ですけどね!せいぜい俺の持ちうる全手段で彼を助けるだけですから」

「……はいよ」

 そう言い残して用事が終わったソウジは退出していった。


 最後は赤ののち、青……つまり嘘ではないし、全手段で最強が抵抗してくる。


「はぁー……ままならねぇなぁ……」

 さっきの案を実行すれば最善のケースでも俺が死に、裁判は出来ない。

 最悪のケースは……多分国が滅ぶ。

 完っ全に割に合わない。


「まぁ、せいぜい生き残っててくれよ?ちょっと俺も話してみたいからよぉ」

 ここまで最強に大事にされる男、興味が出ないわけがない。





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