元聖騎士との攻防2
全部文字敷き詰めてて自分で読みづらく思ったので全部手直ししました
主観者 ユウマ・エクスベルク
まさか数十分であの距離を走破するとは‥‥‥つくづく影狼というのは規格外の魔物みたいだな。まぁそのお陰でギリギリ間に合ったみたいだからよかった。
まず初手で馬を奪うことが出来たのは幸先が良かった。
相手も俺が背後の岩山から馬を狙うとは思っていなかったらしい。
「さて、あなたは最強の聖騎士王と言われたヘクト・ギルティブレンさんですね」
ゾディアが問いかける。その間に俺は兄さんとそのチームメンバーのフォローをする。
「その通りだ。もっとも我は魔人王を倒すために戦い続け、魔人になってしまったがな。そうだ、貴様に聞こうか」
「何でしょうか?俺で教えることが出来ることならば何でも答えますよ」
「魔人王は今どこにいる?我は奴を殺さねばならないのだ。でなければ魔人に身を堕としてまで生き延びた意味がない」
俺個人的には生きているはずがないと思った。いくら魔人がほとんど不死の身であっても千年前の戦いで消えたという存在だ。目撃情報も一切ない。
「あー、確かに魔人王は不死と言われていますがあなたと戦ってから三千年経ってますからね。封印されているか人知れず死んでしまっているのが有力でしょう」
「あの魔人王、ガルド・リベレイが死ぬはずがないな。封印されるということもないだろう」
大した信頼だな。何度も戦ったがゆえにか。
「兄さん、今のうちに避難するぞ。あれはゾディアに任せれば大丈夫だろう」
「ゾディア?お前あの人はそんな名前じゃないぞ?」
お、兄さんは知り合いだったのか。しかも相当有名人みたいだな‥‥‥まぁ大体検討はついてるが。
「あの人は最強の冒険者と言われてるSランクのソウジさんだぞ?」
ん?ソウジっていうと‥‥‥
「神格種を一人で狩るっていうあの『紺の絶対強者』か?」
「その人以外いねぇよ。お前気づかずに付いてきてたのか‥‥‥」
兄さんは頭に手を当て、呆れた様子だ。
「ほう、貴様、今の時代の最強の人間なのか?」
ヘクトに聞かれていた。まぁ大して声を抑えてなかったから当然か。
「いやぁ、俺は自分で言った覚えはないんですけどねぇ‥‥‥いつの間にかそんな大層な二つ名まで付けられちゃいまして」
ゾディア‥‥ではなくソウジは苦笑いで頭を軽くかく。
「まぁ冒険者内では最強と言われてますが色々な国の騎士とか宮廷魔術師を含めたら分かりませんよ?」
「いや、とりあえず貴様の実力を知りたい。気がのらないのであれば他の者に相手を頼むが?」
ヘクトがソウジに向けて剣を向ける。
「‥‥‥まぁそうですね。胸を借りるつもりで頼みますか」
ソウジも刀を抜く。というか何気に俺はこいつのまともな戦闘を見るのは初めてだな。フレアドラゴンの時は氷魔術がメインだったし。
「お前ソウジさんに推薦してもらえるのか‥‥‥運良すぎだろ‥‥‥」
「そうか?誰に推薦されようがDランクが限界なんだろ?」
「いや、まぁそうだが‥‥‥」
兄さんはまだ文句を言いたげな様子だ。だが今はソウジの戦いを見たいので会話を打ち切る。
「まぁ最強と言われる冒険者の戦いを見ないか?」
「‥‥‥まだ言いたいことは山ほどあるが‥‥‥まぁいい」
よし、計画通り。
「ふむ、では観客はこうしておこう」
ヘクトはこちらに手を向けて
「ダークネス・バインド」
すると黒い触手のようなものが俺と兄さん達の周りに現れた。
「何!?」「ちっ!」
捕まる訳にはいかないので斬ろうとする。しかし
「ッくっそ!!」
なぜか斬ることができなかったため、なす統べなく全員捕まってしまった。
「なるほど、この拘束を斬れないか。この世界の技術はここまで衰退しているのか」
ん?衰退?千年前の方が発展していたというのか?
「あー、別に人質を取らなくても俺は逃げませんよ?」
「念のためだ。他の使い方もあるしな」
「まぁさっさと始めましょうか」
ため息をつきながらソウジは言う。
「よかろう、我にこの時代の最強と言われる力を見せてみろ!」
ヘクトが一瞬で間を詰め、剣を振り下ろす。ソウジは刀を斜めにし、それを受け流す。そして袈裟斬りを繰り出すが、ヘクトが少し下がり、それを避け下から斬り上げを放ち、今度はソウジが受け止めそこから剣と刀の打ち付け合いになった。
「あの体格差と刀とツヴァイヘンダーという違いがあるのに互角に打ち合えるのか‥‥‥」
「さすがだな‥‥‥俺は全く打ち合いにならなかったぞ」
兄さんは勝負にならなかったのか。機会があれば俺も体験してみたいものだ。
ソウジとヘクトは鍔迫り合いになり、お互い一旦下がった。
「さすがは剣王とも呼ばれていた魔人王と互角に戦ったと言われている聖騎士さんですね‥‥‥まともに打ち合ったらこちらが間違いなく負けそうですね」
「貴様こそ、その細腕のどこに我と打ち合う力があるのやら。そしてその片刃の剣もなかなかの業物のようだな」
「そりゃ最強って言われてますから一応良いもの持ってないと格好がつかないでしょう」
「ふっ、それはそうであろうな。‥‥‥しかし残念だ。ここで貴様は死を迎えることになってしまう」
ん?どうみても互角だったのになぜだ?
「へぇ?何故でしょうか?」
「我に中途半端に対抗出来たために我の本気の力を受けてしまうからだ」
そう言ったヘクトから魔力が溢れ、体の輪郭がぶれた。そして次の瞬間ソウジの居た位置にヘクトが存在し、ソウジは消えて数十メートル先から衝撃音が聞こえた。
「な!?」
「ソウジさん!?」
捕まってる全員は皆、動揺を隠せなかった。なにせ最強の冒険者が一瞬で吹き飛ばされて姿が見えなくなってしまったのだ。当然だろう。
「我はこれを縮地剣撃と名付けていてな。時間を操ることも出来ると言われている魔人王に対抗するためにはこれくらいは出来なければその目の前に立ち続けることは出来なかったのだよ」
縮地。神速の上の更なる速さであり人間の身では不可能とすら言われている速度だ。この言い方だと聖騎士の頃から使えていたのだろう。人間にも縮地に到達出来るという良い実例か。
(ちっ、思わず現実逃避して余計なこと考えちまった)
ヘクトがこちらに近づいてくる。
「まだ生きているなら早く立ち上がってくると良い」
そして
「早くしなければ」
ヘクトは剣をこちらに向け
「この五人は死ぬことになる」
絶望を叩きつきた。
主観者 ソウジ・クロスヴェルド?
今のは縮地の領域に達している剣術か?
さすがに受け止めるのが精一杯で大分吹き飛ばされちゃいましたねぇ‥‥‥
さて、今の発言は聞き捨てならなかった。
ですが少し回復を挟まないと体が持ちませんね‥‥‥
こっちも少し本気を出さないとな。こんなイレギュラーにこんな序盤で台無しにされてもらっちゃあ困るんだよ。
堕ちた聖騎士にはとりあえず血の報いを受けてもらおう。
それでも生き残ったなら‥‥‥そうだなぁ
いや、考えるのはあとだ。とりあえず決まっていることは‥‥‥
俺の計画を邪魔する敵は全て殺す。
理不尽にはさらなる理不尽を。
そして、
全ては未来のために
最強の冒険者、ソウジ。
判明して早々に三千年前の最強格に敗れる!?