表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
四章 ヤマの争乱
129/194

虚無と夢幻を紡ぐ魔女

ちょっと別件で書く暇がなかった

お待たせしました

 

「空間神級魔術……っ!『虚数空間イマジナリー・フィールド』」

 ドロシーがその言葉を発すると同時にアルバートが黒い膜に包まれた。


「くっ……、縮めっ!!」

 そしてその膜が段々と縮まり、魔力暴走を起こしかけてる剣の刃のみに纏わりつく形で留まる。


(えぇっと……この先どうしよ……?)

 一方ドロシーはこの行き場のない魔力をどうするか悩んでいた。

 無論、消し飛ばす方法はあるが対応を間違えればアルバートやシオンも巻き込まれる。

 それほどまでにシオンが立てた作戦によって産み出された魔力災害は強力なものだった。

 現在ドロシーは魔力災害に対応しながらこの空間を維持し、更にシオンを警戒するというかなりの無茶を強いられている。

 特にシオンには最大限の警戒をしている、あの魔剣『フェンリル』の刃は神殺しの牙、神になったドロシーは少し体が丈夫になったが神殺しに対しては逆に弱くなってしまっている。


(あの剣は多分当たり所が悪かったら死んじゃうなぁ……まぁシオン君に殺されるなら本望ではあるけど)

 ドロシーの固有魔術、反転魔術は反転させる物を理解していなければ上手く使えない。即ち、神殺しの牙なんていう人類が調べきれていない概念に近い存在を反転させて自身を生存させる……などという行為は出来ない可能性が高いのだった。

 そしてドロシーは本望、と思いながらも自分が死ねば世界が終わる可能性が高まるため、実際には今死ぬ気はなかった。


(まだその時じゃない。でも全部終わったら……)

 自分を見つめるシオンの視線を感じ、心臓を高鳴らせながらもドロシーは妄想に耽る。





『金眼の賢者』という人物を知っているだろうか?

 彼、もしくは彼女の正式な性別は誰も知らない。一説には固有魔術によって姿形を変えていつまでも生きていると考えられている。

 彼の者には謎が多い、出身はギル・フレイヤ近郊と言い伝えられているが彼を見たという者はいない。


 ただ、名前と功績は誰もが知っている。彼女の名はフローラ、かつて魔王が君臨したとき、勇者やその仲間達と共に行動し、討伐を完遂した者達の一人である。

 この名から女性説が有力だが当時の仲間達の誰も決定的証拠は得られなかったという。

 強すぎる魔力のために誰とも魔力の波長が合わず、当時究極魔術と呼ばれていた複数人によって放つ魔術、共鳴魔術が使えなかった勇者とも難なく波長を合わせ、仲間内の誰に聞いても魔王戦の最大の功労者は彼女だと言った。


 しかし、魔王が消え、世界が平和になると彼女は王からの報酬も受け取らず、どこかへ去っていったという。

 彼女は本気を出せば単独で災害級の魔物を一瞬で殺せる初代勇者に匹敵する実力者、各国がこぞって探したが結局見つからなかった。





(もしかしてドロシーが『金眼の賢者』か!?)

 金眼というだけでそう判断するのは早計だ、とは思ったものの現在目の前で繰り広げられている魔力操作の異常性を見てシオンはそう考えざるおえなかった。


 思わず防御体勢を整えながらも隙を見て振ろうと思っていた『フェンリル』も完全に降ろし、それに見入ってしまう。


「んー、ごめん!勇者君!君の剣先も一緒に飛ばしちゃった!」

 ドロシーは結局、全て『虚数空間』に放り込む事を選択した。

 空間収納の強化版とも言えるその魔術はあらゆる物質、魔力を殆ど無制限に吸収し、完全に消滅させるまさに神級魔術に相応しい恐るべき能力だった。

 実際にはドロシーがコントロール出来る規模まで、という制約もあるがそもそもドロシーの魔力量は随一。

 神格種となった今では右に出るもの者は数人しかいない。


「ふー、いやぁビックリしたよ。でも残念だったね。このままじゃあ私には一歩、二歩及ばない……でもさぁ、シオン君、まだ出来ることあるのに何でやってないの?」

「あ?もう一本は使えねぇぞ?」

 シオンの魔剣はまだ一本ある。だがそちらは『フェンリル』よりも扱いが難しい。


「違う違う、そんな使えない力を使う前に確実に上げれる戦力を上げないのはどうなの?ねぇ、勇者君」

「おいシオン、何かあるのか?こんな自滅覚悟な攻撃じゃあ勝てねぇみたいだぞ?」

 少し考えてシオンはドロシーが言わんとすることを思いついた。

 だがそれはシオンの一存で決めることの出来ないことだ。


「……ダメだ。ドロシー、お前の言いたいことは分かった。だが」

「言い出したくないなら私が言っちゃうね?そろそろ明確に勇者君をパワーアップさせとかないと世界が終わっちゃうから」

「なっ!テメェ待てドロ」

「『虚無の破片(ゼロ・フラグメント)』」

 ドロシーは自身の言葉を止めようと駆け出すシオンの体だけを停止させ、アルバートに語りかける。


「実の弟に自滅覚悟の作戦を実行させる兄ってどう思うかな?」

「……は?」

「ましてや記憶を取り戻す方法を知っているのに親に止められてるからといって使うことを躊躇う兄ってどう思うかな?」


『金眼の賢者』に関してはまだ殆ど出てませんがまぁちらほらと正体が分かるような発言はこれからも出てきます。

はっきり分かるのはもっと後かな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ