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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
四章 ヤマの争乱
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選ばれなかった者の意地

 

「行くぜっ!‥‥『サンダー・メガバースト』!!」

 まずはアルバートの上級相当の威力の雷魔術で剣の耐久度とドロシーの対応を見る。

 先程は天からドロシーの頭上一点集中で放ったため、避雷針で避けられたが今回はある程度拡散されたもの。

 そのためドロシーが何もしなければ剣を通ったところで威力は殺しきれずに届きうるとシオンは判断していた。


「おっと、流石にそれは分かりやすすぎるよね~、‥‥『魔術反転(スペル・リバース)』」

 ドロシーは雷魔術を反転させ、直撃を回避した。

 これで分かったことは幾つかある。


 一つはあまりにも防いでくれと言わんばかりの攻撃はドロシーが対応し、一撃と認定されない。


 続いて二つ目としては剣は上級魔術が擦っただけでもボロボロになるほど耐久力がないこと。

 幾つか射線ギリギリの物もボロボロになっていたため、間違いないだろう。


 そして最後に―――ドロシーは恐らく本当にこちらを傷つける気はないということだ。

 反転魔術は基本的に対象をそっくりそのまま反転させる魔術、しかしアルバートの雷魔術を当てないようにわざわざズラして反転させていた。

 そんな気遣いがなくともアルバートは避けることが出来るだろうが万が一を考えたのだろう。


(随分と余裕があることで‥‥‥その余裕、失くしてやるよ)

 その結果を見て更に気合いが入ったシオンは次の一手の準備を完了し、魔術を放とうとしていた。


「‥‥『照準固定(ロックオン)』、『シューティング・レイ』!!」

 複数の目標を目線に入れ、それに狙いを定めて魔術を放つ。


「んー、やっぱりそれで全部壊すのかぁ‥‥‥じゃあ、追‥‥加?」

 ドロシーはシオンの手から産み出された大量の光線を見て少し落胆の表情を浮かべ、対策として更なる剣を精製しようとしたが光線が想像と違う動きをしたのを見て動きを止める。


「‥‥『ゼロ・グラビティ』‥‥‥『ウィンド・ストリーム』!!」

 剣が降り注ぐ中、ドロシーに向けて一直線に飛ぶシオン。

 普通ならば剣の雨に打たれ、傷だらけになるだろうその身体は傷一つない。


 それもそのはず、シオンは光に覆われ、降り注ぐ剣を全て砕きながら進んでいたのだった。


 シオンが『照準固定ロックオン』で狙いをつけたのはドロシーが持つ剣とドロシー本人の二つのみ、最初にわざと拡散させて内部に空洞を作り、光線の内側を飛ぶことで光線が盾代わりとなり剣を全て防いでいたのだ。


「へぇ~!考えたね!でもそれだけで通すわけには、行かないんだよねっ!‥‥『ディジェネレイト・メテオストライク』!!」

 それを見てドロシーは喜ぶものの、すぐに頭を切り替えて正面に錬成魔術と土魔術で創り出した巨岩を浮かべ、宙を駆けるシオンへと放つ。


「‥‥『其は終わらせる者の長子にして主神を屠りし牙を携える魔狼』」

 光に覆われながらもシオンは青い宝石で飾られたネックレスを握りしめ、詠唱を開始する。


「『彼の者の牙は衰えず、刃となりてここに顕現す。その獣の名は』」

 数秒後には巨岩と接触する距離になっても冷静かつ迅速に詠唱を完遂させる。


「『フェンリル』!!」

 そして抜かれた刃は青く燃え、獣の牙を連想させる鋭い刃が刀身から大量に生え、その刃で斬られた者は複数の裂傷によって傷を癒すことも許されず、その傷口からやがて腐り果てるだろう。


「重力魔術付与‥‥‥っ、『グラビティ・ブレイカー』!!」

「それは‥‥‥そっか、使えるようになってたんだね」

 巨岩を砕き、その背後に浮かぶドロシーへと剣を振るう。


「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

「なら、こっちも使わなきゃ失礼だよ、ね?」

 ドロシーはその振るわれた剣が自身に触れる直前に懐から鎖で繋がれた拳大で円形の物体をぶつけた。

 そんなことは関係ないと言わんばかりにシオンは力をこめるも刃はその先に進まない。


「なにっ!?」

「おお、空間魔術で位置を固定しているとは言え神話級相当の魔剣の一撃でビクともしないなんて凄いなぁ」

 それは懐中時計に見えたが内包する魔力が桁違いに多く、もし壊れて魔力が解放されれば周囲一帯が吹き飛ぶレベルの魔力災害が起こること間違いなしと思えるほどの物だった。


「巻き戻せ、『虚無の破片(ゼロ・フラグメント)』」

 その時『夢幻回廊』の時間は止まり、次にシオンの意識が戻った時には数秒前、巨岩を砕くために剣を振るうところだった。


「時間操作だとっ!?」

「そうだよ~、私の奥の手、神代器械(アーティファクト)虚無の破片(ゼロ・フラグメント)』。流石にその魔剣で一撃受けるのは嫌だったから使わせてもらったよ」

 神代器械(アーティファクト)と聞いてシオンが思い浮かべたのは通信石や映像水晶などの便利だが戦闘には生かしづらい物が多かった。


 武器の場合は強力すぎて滅んだという物のため、所有者はあまりいなかったが目の前のドロシーが持つ超常的な性能の懐中時計が現代の技術で再現できるかは言うまでもない。その言葉を信じる他なかった。

 だが―――


「ちょっと反則しちゃったから特別にご褒美をあげよう!」

「何言ってる?」

「ん?だから、今のは多分これ使わなきゃ当たってたかもだから特別に」

「まだ俺達は負けてない」

 その言葉とほぼ同時にドロシーの背後に雷鳴が轟く。


「うおおおあっ!!‥‥‥『ホーリー・ギガランス』!!」

「これって‥‥‥もしかして暴走気味?」

 若干ドロシーの笑みがヒクついた。

 それもそのはず、アルバートは最上級相当の光魔術を放ちながら最上級相当の雷魔術を想像も詠唱もせずに剣に纏わせていた。


 これは自然にアルバートが持っている魔力を無理矢理捻りだし、剣へと纏わせている行為だ。

 魔術とは魔力に指向性を持たせて自身への影響を抑え、比較的安全に活用する技術だ。

 さて、アルバートが使っている雷は魔力そのもの、魔術によって整えられたものではない。

 それは時間が立てばどうなるか、答えは簡単だ。


「お前は前に言っていたな。奥の手は幾つか用意しておくべきだと」

「う、うん。多分学生時代に言ってたね」

「なら、その奥の手でアルバートを魔力災害から救いつつ自身も魔力災害の影響を受けない‥‥‥なんて事も可能なんだろうなぁ?」

「うー、シオン君のイジワルっ!!」

 これがシオンの奥の手、わざとアルバートに魔力災害を起こさせてドロシーに後始末を任せる。

 無論、アルバートがきちんと雷魔術を安定させることが出来たならそれを奥の手としたがシオンの予想ではまだそこまで魔力の扱いが上手くないアルバートにそれは無理だ。


 勇者がほぼ全力で注いだ魔力が起こす魔力災害の規模は予想できない。

 下手をするとこの空間を壊してしまう程の物になるかもしれない。


「んじゃ、まぁ‥‥‥せいぜい頑張ってくれ」

「こんな自滅覚悟の作戦‥‥‥ホント、シオン君は予想外の事をするなぁ!?」

 そう言いながらもドロシーは自身の魔力を高めて何かをしようと画策していた。

 もうシオンに出来ることはないため全ての魔力を防御に回し、魔力災害に備える。


「しょうがないなぁ……、じゃあちょっと本気出しちゃおうかな?」

 その言葉でドロシーの目が空色の目が金色に変化した。



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