憤怒に抗う2
切るならここだと思って切ったため短め
「ユウマ、まずはあの銃からだ。絶対に避けろよ?」
「あぁ、分かってる!」
その会話を最後に二人は左右に別れ、決して立ち止まらないように行動を開始した。
一度止まってしまえば狙いを合わされ、一撃で行動不能になるほどの重傷を負うだろう銃撃を受けてしまうからだ。
「‥‥『ファイア・アローズ』!!」
「‥‥『ダーク・ランス』!」
まずは左右から様子見の魔術を放つ。
銃撃で対応するならその隙に近づいて銃を破壊、だがその程度ならば中央大陸全体に喧嘩を売るような発言は出来ない。
そのためこれは実質リュウマの対応力を見るための試金石である。
「‥‥‥舐められたものだ。『憤怒の業火』」
一瞬で想像された赤黒い炎によって二つの魔術は飲み込まれる。
(さっきの炎とは違う‥‥‥?)
赤黒い炎は二人の魔術を飲み込んだ後も残り続けている。
少し前に放った近距離を嫌って無理矢理離れさせるための炎とは別の性質だとユウマは考えた。
「まずは足を止めるか‥‥『炎牢』」
「っ!そういうことかっ!」
滞留する赤黒い炎がリュウマの言葉で直接魔術へと変貌し二人を閉じ込める牢へと変化した。
リュウマ自身の魔力の動きを見ていたユウマは対応に遅れ、その牢に周囲を囲われてしまった。
「邪魔くせぇ!‥‥『烈炎』!」
リュートは炎の牢に負けじと自身の二つ名を冠する魔術で打ち消し、その炎は衰えないままリュウマへと迫る。
「‥‥‥魔人の炎を上回るか。面白い‥‥『多重炎壁』」
今度は自身の魔力も使い、何重にも炎の壁を重ねて防ぎきる。
「‥‥‥経験不足を補う必要があることは分かった。少し寝ていろ。勇真」
「させるかっ!」
ユウマへと銃口を向け、それを阻もうとリュートは走る。
しかし、いくら急いでもその距離がゼロになるよりも引き金を引く方が早い。
恐らくは二人の第一目標である銃の破壊は達成できる。引き金を引けばその反動で生まれる硬直時間でリュートは剣を振るえる。
だがそれと引き換えに片方の戦闘不能という軽くない代償がついてしまう。
(そうか‥‥‥)
ユウマはギル・フレイヤでの任務を達成したばかりの頃を思い出す。
(こういう状況のためにあいつは俺に魔術を奪わせたのかっ!)
自身のチームの勇者のしてやったりという顔が脳裏に浮かぶ。
「『ホーリー・ギガランス』!!」
感謝の念を彼へと送りながらリュウマの銃口に向けて光最上級魔術を放った。
「むっ!小癪なっ」
光の槍は牢を軽々と貫き、リュウマへと迫るが引き金を引くと同時に響く強烈な音に相殺される。
「はぁぁぁぁっ!」
「チッ!‥‥『風鎧』!!」
波打つ剣と風を纏う銃で鍔迫り合う。
相当な力が両側からかかっているにも関わらず纏った風は依然として消えない。
「魔術を纏えぬ剣では『風鎧』は永遠に裂けぬ」
「ああそうかいっ!そいつは良いことを聞いた。‥‥来い!炎の下位精霊っ!」
リュートの剣には魔力は伝達されてるものの魔術という形にはなっておらず、また、彼自身はまだ魔術を剣に纏わせる事ができなかった。
「‥‥『精霊纏い』!」
だから自身では行わず、精霊に任せることにした。
まだ体が慣れておらず、下位精霊までしか纏うことしか出来ないがこれによって武器に炎系統の魔術を伝達させる事が出来るようになり、
「斬れろぉぉっ!!」
「くっ!」
風の鎧を裂いて銃を両断するに至った。