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失くした未来のその先へ  作者: 夜霧
四章 ヤマの争乱
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復讐者は汝の罪より来る

投稿忘れてた・・・

 

「『始めに綴るは悲劇の一節』」

 腹に複数の穴が空き、もう生きてるのが不思議な状態のアリシアの身体が淡い光を放ち始める。


(ダメだ、あれを続けさせたらマズイことになるっ!)

 ゲイルは瞬時にそう判断し、攻撃に移る。


「させるかよっ!!『幻影剣ファントムソード』!」

「『彼女に人権などない。何故なら彼女は祖国が戦禍を逃れるために捨てられたから』」

 しかし見えざる剣は光の盾や膜に阻まれ、彼女が物語を綴る邪魔を一切させない。

 光を放つアリシアから感じる威圧感が大きくなり始める。


「『彼女は自らの母を知らない。何故なら母は英雄にして祖国のために動く父に、祖国に殺されたから』」

「くっ!‥『ギガエクスプロージョン』!!はぁ‥‥はぁ‥‥、っ!『ギガエクスプロージョン』ンン!!」

 焦るゲイルは連続で爆破を引き起こすが綴られる物語は止まらない。


「『彼女は自らの子を知らない。何故なら捨てられた果てに数えきれぬ程犯され、産まれ来る子は何処かへと流されたから』」

「何なんだ‥‥‥気味が悪いはなしを語るなぁっ!!‥『ギガエクスプロージョン』!!‥『幻影剣ファントムソード』!!」

 馬鹿の一つ覚えのようにゲイルは魔術を放ち続けるがアリシアは揺るがない。


「『その末に彼女は力を得た。そして全てを終わらせた。故に彼女は復讐者と呼ばれる。彼女とは我、故に我とは復讐者』」

 そして変わる。

 放たれる淡い光がどす黒い色へと。


「『あまねく全てに罪を刻み、復讐を果たす。その刃の名は‥‥‥』」

 そして語るアリシアの虚ろな目が見えない筈のゲイルを見据え、どす黒い光がいつの間にか元通りになっていた左腕へと集まり、短剣のような形状に変化する。


「『復讐者は(リベンジャー)汝の罪より来る・フロム・ユア・シンズ』!」

 そして物語が一度幕を下ろすとその瞬間、短剣は彼女の左腕から消える。

 それと同時にアリシアに刺さる剣も全て地に落ち、傷も修復される。


 ひび割れた世界が終わる。


「な‥‥‥何故だ‥‥‥」

 アリシアが見据えた先には姿を隠していた筈のゲイルが膝をつき、倒れそうになるところをギリギリ耐えている姿があった。

 その胸には消えた短剣が深く刺さっていた。


「私は実際に私の身に起きた出来事を語っただけ。それが魔術になり、私があなたから受けた傷をまとめてその短剣に乗せて返した‥‥‥たったそれだけよ」

「そんなデタラメな魔術‥‥あって‥‥たまるかっ!?」

 アリシアが語ることは事実だ。

 だがゲイルはそれを認められない。

 避けることが不可能に近いカウンター魔術などが存在し、それがアリシアの手にある。

 それがどういう事なのか‥‥‥ゲイルは理解したくなかった。


(腹を何度も刺しても腕を落としても死なない人間にそんな魔術を持たせたら誰もこの女に勝てないじゃねぇかっ!?)

 殺しきれる可能性があるとすればあの身体を丸ごと消滅させる事ぐらいだが自分にそんな事は出来ない。


「は、ははは‥‥‥無理だ、こんなのに勝てるわけ‥‥ねぇよ‥‥‥」

 ゲイルは完全に心が折れてしまい、血を流しながら意識が朦朧としていくのを感じていた。


「さてと、脱獄犯は殺して良いんだっけ‥‥‥?まぁ後顧の憂いは断っておくべきよね‥‥『グレイプニル』」

 少しの思考の末ゲイルの首に鎖を巻き付け、首の骨を折る気で締め上げる。


「さようなら。人を羨むあまり、道を踏み外した憐れな凡人さん」

「おっと、それはさせたくないですねぇ?」

 突如背後から聞こえた声にアリシアは振り向くがそこには誰もいない。

 そして金属が切断される音が正面から聞こえ、向き直るとそこにはこの一瞬で起こった出来事としては多すぎる変化があった。


 まず『グレイプニル』がゲイルとアリシアの中間辺りで断ち切られていた。

 並みの武器ではこの鎖を欠けさせる事すら出来ず、逆に武器を壊されてしまう可能性も孕む程の代物だ。

 勿論、再生するが断ち切られるような事態が起こったことが一番の問題だ。


 次にゲイルの首が地に落ちていた。

 残った身体には大した変化はないが首の断面からまだ血が滲んでいない所を見ると相当な速度で斬られたのだろう。


「あなた‥‥‥何者?」

 そして最後に、ゲイルの背後に見慣れぬ男の姿があった。

 彼は剣を振るった後のような腕を振り抜いた状態で止まっており、少し笑みを浮かべていた。


「くっくっく‥‥‥危ない危ない。危うく『虚飾』を逃すところでした‥‥‥。流石は冒険者ナンバーツーを欲しいままにする人ですねぇ」

 そしてねっとりとした不快感を感じる口調でこちらへ話しかけてくる。


(とりあえず私の事は知っている‥‥‥情報戦では後手に回ったわね)

 記憶の中をいくら探しても目の前の男に合う存在は見当たらなかった。

 だがアリシアは瞬時に判断した。


(この男はここで殺しておくべきっ!)

 この男は生かしておけばこの先災厄を招く存在だと。


「『創造クリエイト』フリントロック!」

「うん?私はまだ貴女と戦うべき時ではないのでここで退かせて貰いたいのですが‥‥‥」

「『グレイプニル』掃射」

「はぁ‥‥‥『水龍神の咆哮』」

 フリントロックと『グレイプニル』による面攻撃を男は激流によって相殺する。


(これは‥‥‥メルの龍神魔術?)

 『ブリーシンガメン』による防御膜によってアリシアに激流は通じないが銃弾は勢いを殺されて殺傷能力は殆ど無くなってしまった。

 チームのリーダーであるメルも同じ魔術を使っていたが明らかに想像速度が違う。


(龍神本体?いや、こんな地上に地龍神ならまだしも水龍神が来るのはあり得ない)

 いくら考えようとも答えは出なかった。

 だが一つの結論には達した。


「とりあえずここで潰す。‥‥『サンダー・ギガランス』!」

 産み出された大量の水に雷の巨槍を放ち、男を殺すことを優先するという結論に。

 雷の巨槍が水に触れるとこの部屋に行き渡る全ての水へと耐性のない生物を一瞬で焦がす雷が流される。


「ふむ、こうですかね?『ファントム』」

 しかし、男は先程までゲイルが使用していた空間を歪ませる魔術を使って水を自分の周囲から遠ざけて雷を防いだ。


「ほう、なかなか便利ですね。『傲慢』の下位互換のような権能を予想してましたが‥‥‥これは嬉しい誤算です」

「‥‥‥魔術を奪った?」

 男の言葉にアリシアの動きが少し止まる。

 それは一瞬の思考だったが男にとって十分すぎる隙だった。


「‥『傲慢の(プライド・)断罪(ジャッジメント)』!!」

「っ!!『守れ!スヴァリンシルド』!!」

 アリシアは咄嗟に自らの身を守ることは出来たがそれだけだった。


「また来るべき時に会おう。勇者の亡霊」

「待ちなさい!」

「『白龍神の幻光』」

 男に向けて『グレイプニル』を伸ばすも突如視界に光が満ち、それが消え去った頃にはアリシアと首と胴が離れたゲイルの死体だけが残っていた。


「勇者の亡霊、ね‥‥‥、その呼ばれ方は久し振りだわ‥‥‥」

 男の事を頭の片隅に残しておきながらゲイルの死体を空間収納へと収め、先を行く二人を追ってアリシアは城を進むことにした。









『こちらA。あんたの言うとおり奴が現れたぞ』

『お、来た来た~♪状況は?』

『ゲイル・ストゥーピドを殺そうとしたアリシアの動きを妨害、その後自分で持っていた剣で首を一閃。そしてそれを見たアリシアが奴の事を殺そうとしたが一発も攻撃を当てれずに逃げられた』

『ふーん、まぁ奴‥‥ヴィルマ・アルファリアが逃げに徹してたのもあるんだろうけどあの人でも攻撃するのは至難の技って感じかぁ』

『‥‥‥なぁ、奴が言っていたんだが‥‥‥』

『うん?何か気になることがあった?』

『単純な興味だ。アリシアの事を勇者の亡霊と呼んだのはどういう意味か、あんたは知っているか?』

『あー、まぁ全部教えてあげてもいいけど少し自分で考えて貰おうかなぁ‥‥‥アリシアさんのフルネームって覚えてる?』

『アリシア・ツヴァイだろう。それぐらい覚えている』

『じゃあ『ツヴァイ』って実は古代語なんだけどどういう意味なのか知ってる?』

『確か数字の‥‥‥二か三だった気がする』

『まぁ正解としておこうかな。ツヴァイは二だね。じゃあ最近冒険ギルドに登録された勇者、‥‥アルバート君のフルネームってなんだったかなぁ?』

『アルバート・クロノ・ゼクス‥‥‥ゼクス‥‥‥まさかっ!だがそれならアリシアは』

『さてさて~、仕事に戻ろう!私も平然と会話してるけど今忙しいんだよね~。何せ世界を救うお仕事だからねぇ~♪』

『‥‥‥あぁ、こちらもそろそろ戦闘に入る』

『頑張ってね。奴関連でなくても戦況が大きく変わったら連絡してくれても良いから!』

『分かった』


 

最後の古代語という設定にしてある数字はドイツ語の数え方ですね。

アインス、ツヴァイ、ドライ、フィーア、フュンフ、ゼクス・・・まぁ1から順にこのような感じ

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