少数精鋭と烏合の衆
全然書く暇がないぃ・・・(エタりたくない、エタりたくない、エタりたくない・・・)
最高位天使テミスが現れる少し前に時は遡る。
メル達は中央の城の近くへと迫っていた。
「随分とデケェ城だなぁ‥‥‥」
「こっちとは構造が違うみたいだがな」
所々木で出来ている城は防腐加工はされているみたいだが中央大陸で建てられているような石材や鉱石を土魔術で形状変化させて作られた建造物よりは脆く見える。
『ようこそ、中央大陸の冒険者諸君』
「この声は‥‥‥」
メル達が何度もおかしいところはないか確認し、既に聞き飽きたヤマの国首領、リュウマ・イガミの声だ
『もう名乗らなくても良いだろう?よくぞ我が天から授かった堕天使を退けてここまで来たな』
「ふーん、天界から来たのはあれだけなのね‥‥‥じゃあ後は何とかなりそうね」
「油断はするなよ?いつ周囲に敵が溢れかえってもおかしくない状況だ」
「分かってるわよ、周辺警戒はちゃんとしてるわ」
ウィリアムがアリシアの方から金属が触れあう音を聞き、少し目を向けると左腕から大量の鎖が垂れていた。
魔封縛鎖グレイプニル、かつて神界の主神を殺したとされる神狼フェンリルの動きを封じたとされる鎖だ。
この鎖は大きな魔力に反応し、絡み付く性質があり、一度絡み付けばそう簡単には解く事は出来ない。
無論、アリシアは他にも様々な使い方をするが今回はウィリアムが探知の為に使うように事前に指示をしていた。
『さて、残念ながら我は貴様らを相手にしている暇はない。既に貴様らの本拠地へと踏み入れている頃だろう』
「は!?」
「なるほど‥‥な。そういえば向こう側にはうちのギルドの地下牢獄に潜入できる人材が居たな‥‥‥」
ハルクはキレ気味に驚きの声を上げ、アーネストは動揺しながらも冷静であるために相手の行動を考察する。
「っ!おい、待て!メル!」
「離してよ!すぐに戻らないとギルドがっ!」
「落ち着、け!!」
外へ駆けようとするメルの肩を掴み、こちらへ向き直らせる。
「いいか!?まずギルドにはミスティアがいる。彼女が負けるなんてことはあり得ない」
「で、でも今のミスティアちゃんは」
「んで、他にもマーク・リオスやAランクの冒険者が多数残っている。例え裏切り者候補だったギルドマスターが本当に裏切ったところで数の有利は変わらない!マークも普段はただの大酒のみの酔っぱらいだがいざという時には頼りになる男だ」
その説得を聞き、メルの体に入っていた力が段々と抜けていく。
「少しは残った奴等の事を信じろっ!俺達は俺達のやるべき事をやるぞ!?」
「‥‥‥うん、分かった!」
メルの顔から不安そうな表情が消え、笑顔が戻る。
それを確認するとウィリアムはメルの肩から手を離し、映像水晶によって映し出されているリュウマ・イガミの方を向く。
「‥‥‥で実際どんな感じかしら?」
「あ?何の事だ?」
「とぼけないでよ。ギルドに残っている人達であなたが知る憤怒の魔人に勝てそうかしら?」
少しメル達から離れた場所にいたインウィディアとルクスアリアの方へと移動していたアリシアが小さな声で聞く。
無論、メルに聞こえないようにするためだ
「‥‥‥アワリティアがしっかりと仕事をしてすれば問題ない。あくまでもイーラ単品での話だがな」
「そっかぁ‥‥‥堕天使との戦いが終わったらソウジ君には戻ってもらった方がいいかもね」
「気は済んだか?」
「えぇ、答えてくれてありがとね」
「‥‥‥」
インウィディアはこちらを見ずに問いかけに答える。
気のせいか若干最初に会った頃よりも態度が柔らかくなってる気がした。
『あぁ、安心するといい。貴様らも同じ場所へと送ってやろう。我の盟友とその僕達がな!』
「全員事前に言った通りだ!死ぬなよっ!?」
「「「「応っ!!」」」」
城の中から大量の魔物が漏れだすと同時にハルク、アリシア、アーネストの三人がその群れを突っ切り、入り口へと走る。
当然目の前には大量の魔物達がいる。
しかしそれは次の瞬間三人が通れるように道を開けることとなった。
「水龍神よ、我が手に大いなる力を与えたまえ!‥‥龍神魔術っ!『水龍神の咆哮』!!」
「『武具召喚・天嵐弓』!‥‥『ライトニング・ホーク』!!」
「最初くらい思いっきりやっちゃいましょう。‥‥龍聖招来、『ドラゴニック・オーヴァースター』!!」
鈴の音を合図に水の巨龍、雷の鷹が魔物を呑み込み、そして空からも複数の巨大な魔力の塊が降り注ぎ、それに触れた生物は何かに喰われたかのようにごっそりとその部位を消滅させた。
「アーネスト!いつもの奴忘れんなよっ!?」
「お前に言われなくても分かってるっ!‥‥『召喚・トリニティレイヴン』!」
ハルクの忠告を受ける前から召喚の準備をしていたのか直ぐ様三本足のカラスを呼び出す。
「散れっ!」
そしてカラスは三羽に分かれて飛び立った。
「じゃあ行くわよ~?どうせいつも通り殲滅するんだろうけど一応早めに切り上げて援護してあげないと」
「親玉がいないならこの魔物を召喚した奴の首を取れば良いんだろ?」
「はぁ‥‥‥ハルク、あんまり突っ込むなよ?俺はロイより援護タイプじゃないんだ」
「わぁーってるよ、んなこと」
三人は無事に城の内部へと入った。
残った五人は未だ魔物に囲まれたままだが。
「おー、結構丈夫だねぇ」
「気を付けろよ、メル。見たことねぇ魔物も混じってやがる」
「神代の魔物かしらねぇ?既存の災害級以下なら『ドラゴニック・オーヴァースター』でほぼ即死の筈だけど四肢欠損程度で済んでるなんて怖いわ」
メルは二刀を抜き、コーネリアも弓を用意しながら話し合う。
「おいお前ら、俺とルクスアリアは万が一のために背後に退路を作ってやる。他の方角はそっちで何とかしろ」
「あら?インウィディアにしては優しいわねぇ~。という訳でウィリアムさん、良いかしら?」
「あぁ、助かる。だがあんたは武器はないのか?」
腰に携えた剣を抜き、来た道を塞ぐ魔物へと近づきながら言う。
それについていくルクスアリアは何も持たずに向かっていたため、ウィリアムは少しだけ心配する。
「ふふ、心配しなくても大丈夫ですよ。だって‥‥‥」
ルクスアリアは突然右の掌に魔力を纏わせ、それを近くの魔物へと投げつける。
「『色欲の揺りかご』」
するとその魔力弾は魔物を包み込み、包まれた魔物は身体中の有りとあらゆる水分やエネルギーを失くしたのかシワシワの枯れ果てた姿へと変貌した。
「なっ!」
「ね?私は他の生物の生命力を奪うことができる。大体は同意の上である方法を使って少しずつ吸わせて貰うんだけどこうやって無理矢理奪っちゃうことも出来るの」
「ちっ、相も変わらずチート能力め」
「インウィディア~?私は魔人王様に最初に産んで貰えた貴方の能力の方が強いと思うわよ?」
「‥‥‥会話の時間は終わりだ。さっさと殺るぞ」
「はいはーい」
「ウィリアムー、こっちもそろそろ痺れを切らして突っ込んで来そうだよぉ?」
「あぁ、分かった」
会話を止め、ウィリアム達は魔物と相対する。
Sランク冒険者三人と魔人族二人に対する敵の数はおよそ五百。
圧倒的不利な戦いが今始まった。