2日目 杜ヶ浦高校料理研究部の実態
ようやく人狼ゲームの話になります。
「じんろうゲームぅ?」
マミはエマの言葉を繰り返した。じんろう?なんだそれは。
「"人"に"狼"と書いて人狼ゲーム。最近結構流行っているんだけど、聞いたことない?」
「ない。」
「即答か〜。まぁそんな気はしたけど。」
「で、その人狼ゲームとやらがなんなの?」
「あのさ、私って料理研究部に入部したでしょ?」
「え、何急に?そうだね。」
「実はそこ、料理研究部じゃなかったのね。」
「料理研究部じゃなかった?どういうこと?」
「料理研究部の正体。それは…人狼ゲーム部だったの!」
ビシッとあらぬ方向をエマが指差した。その指をへし折りながらマミは聞き返した。
「エマ、全く話が見えてこないんだけど…つまりどういうこと?」
「今日の放課後、料理研究部の人達で人狼ゲームをすることになったんだけど、今のままだとちょっと人数が物足りないの。だからさ、マミに是非来て欲しいな〜って思って!」
「えー、めんどくさ。」
「そんなこと言わないでよ〜。楽しいよ、人狼。」
「大体、その人狼ゲームってどんなゲームなの?それも分からないのに誘われてもねぇ。」
待ってましたとばかりにドヤ顔をしたエマは、次のような説明を始めた…
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—ある村に、村人に化けた狼が侵入した。"人狼"と呼ばれるその狼は人の皮を被っており、見た目は村人と同じなため、誰が狼なのかはわからない。狼は昼のうちは村人のフリをしているが夜になるとその正体を現し村人たちを一人ずつ襲撃して捕食していく。1人、また1人と減っていく村人たち……。
このままでは人狼によって村は滅ぼされる。人狼に対抗することを決意した村人たちは、昼に話し合いをしながら狼と思われる人物を1人ずつ処刑していく。一方人狼達は、昼は村人に紛れて話し合いに参加し、夜になるとその化けの皮を脱いで夜な夜な村人を1人ずつ捕食していく。
果たして最後に生き残るのは人間か、それとも人狼なのか。二つの陣営の、命を賭けた戦いが始まったのであった—
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「とまぁ、こんな感じ!要は、人間サイドと狼サイドに分かれてから昼の時間に議論をするの。で、最も怪しいと思われた1人を"処刑"してその日の議論を終わらせるの。で、夜の時間に人狼のカードを引いた人だけが起きて、1人だけ人間を"襲撃"するの。襲撃された人は、それ以降もう議論には参加できなくなっちゃうの。死人に口なしってことね!それを何回か繰り返して、人狼を全員処刑できたら人間側の勝ち。逆に、人間の数とその時点で生き残っている人狼の数が同じになったらその時点で人狼側の勝ち。」
"処刑"だの"襲撃"だの、およそ可愛らしいその容姿に似つかわしくない単語を連発しながらエマは説明を行った。
「本当はね、もっと色んな役職とか細かいルールとかあるんだけど、流石にそこまで説明しても分かりにくいだろうから説明はこの辺にしておくね。何か質問はある?」
「…そうだね。じゃあ、根本的な質問を一つ。」
コテン、とエマは首を傾げた。
「その"人狼"ってのはさ、つまり人間に化けた上でこっそり人間を食べちゃいたい訳でしょ?」
「そうだね〜。」
「だったらさ、なんでわざわざ一晩に1人しか襲撃しないの?」
「へっ!?」
「一気に全員食べちゃえばいいじゃん。」
「え、あ、えーと…」
「まあ100歩譲ってさ、一晩に村人を全滅させるのは無理だとしよう。にしても、何人か襲撃したらさっさと村を立ち去ればいいじゃない。わざわざ命の危険を冒してまで村人のフリをして村に滞在する必要性がどこにあるってのよ?」
「そ、それはその〜…はっ、そうよ!そもそも人狼の目的は人間を何人か食べるだけじゃない!その村を全滅させることなの!だから…」
「だとしても一晩に1人しか襲撃しないっていう縛りの理由にはなっていなくない?」
マミの身も蓋もない反論の前にエマは為すすべなく撃沈した。まさかそんな、ゲームの設定そのものを揺るがすようなことを言われるとは…
「マミの馬鹿〜、人でなし〜」
「事実を言ったまででしょう。」
「理屈屋〜、分からず屋〜」
「屋号みたいね。」
「ふんだ、もう知らない!せっかく新作のお菓子の試食会も兼ねていたのに!」
「…え?」
「あと、サトル君やいっちゃんも来るって言ってたのにぃ」
「ちょ、ちょっと待って。」
「もういいよ。他の人に当たるから。」
「エマ〜!」
ぷいっとそっぽを向いてマミの元を去ったエマを、マミは慌てて追いかけた。
ゲームが始まるまでもうちょい説明が続きます。少々だけお待ちください。
12/26追記 更新ですが明日以降になりそうです。時間があれば一気に進めたいと思います。