冬の花に咲いた腐った真実(6)
トーカを初めて見た夏、俺はざっくざっくと足を樹海に踏み入れていた。あたりは静寂だ。見失わないように目印を確認する。
最初トーカに見た時、彼女から情景がほんの少し漏れた。それを頼りに樹海へ。
彼女の最後の姿を見つけなければならない。もしかしたら彼女の遺体は既に白骨化しているかもしれないけれど、冷たい樹海に放り投げたままなのは悲しいから。
俺の傍には誰もいない。夏に踏み入れたのはよかったかもしれない。誰かに見つかれば、大きな事件になる。
静寂の中、奥へ踏み入って、それを見つけた。
嘔吐した。
その場でえづき、鼻をくしゃくしゃにいじる。元の体が腐っていくその有様に涙目になりながら嫌悪感を持ってしまう。柔らかなたれ目はもうそこにはない。ぽっかりと黒くあいていた。首から上はぶくぶくに膨れ上がっている。
もう何も見たくない。
必死に引きずりおろした。持ってきた大きなスコップで穴を掘り、彼女を埋めた。死に物狂いでやったものの、そのあと急に再び嘔吐をしてしまう。
樹海からでは空を見えず、視界が悪い。どこにもいけない。はびこるのは虚無感ばかりだ。俺もここで死んでしまおうかとやるせなさを感じてしまう。しかし、駅で待っているトーカを思うとなぜかできなかった。
そう言えば、彼女はいもしない誰かを待っていた。
一体誰を待っていたのだろうか。
母が殺してしまった父か。
父という真実か。
それとも自分に真実を突き付ける誰かか。
俺はどれにもなりたくなかった。ただこうして静かに彼女を埋めて静かに眠らせてあげたかった。
埋めた場所に向けて手を合わせる。そうして天国にいる祖母に「生きている者じゃないから、関わってもいいよね」と言い訳をした。
去る時、近くに落ちている赤いスコップをリュックに入れて、再び来た道を引き返した。
これは少女に出会う前。誰も知らないひとりぼっちだった俺の秘密だ。
ご覧いただきありがとうございます。
では、また来年までさようなら。




