二話
魔族の小規模な侵攻がありながらも、アクス王国の王都では穏やかな日々が続いているなか
ホープ伯爵家にアレクが誕生して6年の月日が流れていた春うららかな夕暮れ時のある日、人類史において大きな転換点を迎える
「フンッ フンッ」
ホープ家の庭で椅子に腰掛けたアレクが見ている中、父であるレオンが勇ましく剣を振っていた
アレクは剣筋に見惚れてしまい何故か無性に剣を振りたくなった
「父さま、僕も剣を使ってみたいです」
幼心なのかアレクが初めて興味を持ち、初めての我が儘を言った事に対してレオンは胸が熱くなった
「おう、良いぜ。明日城から子供用の木剣取ってきてやるから待ってな」
アレクはその言葉に少しがっかりした
そんな息子にレオンは微笑みながら近寄り頭をわしゃわしゃと撫でた
「今日は、俺の剣を見とくだけにしな」
その剣は綺麗な装飾がされ華やかだが実用性もある上等な剣だった
「これは俺が近衛騎兵に就任して剣聖の称号と共に王様から授かった剣だ、その証拠にガードには王家の紋章が刻印されてる」
アレクが言われた通りに鍔の部分を見ると、そこには円の中に右手に剣を持ち鎧を着た人物の上半身が描かれていた
「王家の紋章に描かれてる人物はこの国を建国したとされる初代王様のイラオス様だ、カッコイイだろ?」
カッコイイかは別として、アレクは剣の造形に目を奪われていた
「今日はこのくらいにして、飯食って早く寝て明日に備えるか」
剣を仕舞いながら言ってレオンはアレクの頭をわしゃわしゃと撫で微笑み
二人は夕食のにおいが漂う屋敷の中へと歩を進めた
次の日の昼食後、レオンに呼び出されアレクは中庭へと駆け出した
幾つかの扉をメイドに開けてもらい、中庭に到着すると少し小さい木製の剣を持ったレオンが言った
「さて、まずは握り方だな 武器によって握り方が変わってくるが今回はショートソードだ」
レオンはアレクの隣に並び、自身の剣を抜いて握って見せた
「こんな感じで右手と左手を少し離して握るんだ 一回振ってみろ」
アレクは見様見真似で握り、一振りすると初めて触ったのが嘘のように鋭い斬撃を繰り出した
「どうですか?とうさま」
親のひいき目無しに見ても、この世界随一の使い手になると感じさせるほどだった
「いい感じゃねーか 軽い武器は防御は基本しないで躱せ、それから攻撃するようにしろ」
アレクは驚きを表に出さないように、平静を装い言った
「はい、とおさま!」
それから、空が茜色に染まる頃まで続いていた