一話
ふと気が付きあたりを見回すと山の中にいた
「あれ? ここどこだ?」
ここに来る前のことを思い出そうとしたが心の奥底から果てしない絶望感が湧き出てきただけで堂々巡りになる前に心を切り替えた。
「なぜ山の中にいるんだ?」
そんな疑問がふとよぎったその時、ドーン!と近くから雷の落ちる音がしてきた。
今は昼過ぎ、それも快晴といっていいような晴れ晴れとした青い空が広がっているのにその中次々と落雷の音が聞こえてきた。
あたりの避難しているだろう人々は叫び泣き、中には座り込み念仏を唱え神に祈っているような人までいた。
(そうだった、神が最後の審判を始めると言っていたな・・・)
「とりあえず安全に降りられるような道を探すか」
不安だがここにいても仕方ないのでとりあえず動こうと決心した。
二、三時間くらい山の中を彷徨っていただろう、そしてその頃には雷は止んだが小雨が降りだし、空は分厚い雲に覆われていた。
「あれは・・・」
ふと小さな崖下を見ると線路がありそこを渡ろうとしているのか手前のフェンスによじ登っている数十人の人たちがいた。
そしてフェンスから降り線路を渡っている中、右から見知った二両編成の電車が走ってくるのが見えた。
「おい! 早く渡れ!!」
とっさに叫ぶが、電車は渡ってる人が見えないのかブレーキをかけずにどんどん迫ってくる。
そして八人くらいが轢かれ肉片をまき散らし死んでいった、ただその他の二、三人は何も元から存在しなかったかのように消えた。
無事だった女性の人がその光景を見てしまったのか口元を押さえ走り出して行くのが見えた。
「なんでこんな時間に電車が来るんだ!? 時刻表は確認したのに!!」
と憤っている男性の声が聞こえてきた。
俺は目の前の現実に耐えられなくなり目をそらすように他の場所へと走り出した。
走り出して数十分が経過しただろうか
前から聞いたことがある声が聴こえてきた、前方を見ると避難誘導をしているだろう女性が見えてきた。
近づいていくと中学のころ担任だった山本先生だと分かった。
初めての知り合いに安堵し声をかけようとする時こちらを振り向いたその顔を見るとどこか悪魔的で残酷な笑みを浮かべこちらを見た。
嫌な予感がし、避難している先を見ると切り立った崖が目に入ってきた。
「その先は崖だ! そっちに道はないぞ!!」
そう叫ぶが何人かがこっちを見ただけで何も変わらない。
「ここもか・・・」
悲しい気持ちが湧いてきたがここにいても仕方がない、そう思いその場を立ち去ろうとすると呼び止めるような声がかかった。
「七致くん!」
振り返るとそこには見知った顔がちらほらとあった
先ほど自分の名前を呼んだのが小学校の時同級生だった大谷 朱音と、その半歩後ろにいるのが朱音親衛隊と呼ばれる集団をまとめている二人、海野 修斗と伊藤 玲央がいた。
「久しぶりだな」
親衛隊と呼ばれる二人とは仲があまり良くないため素っ気なく返しておいた。
二人が何か言ってきたが小さいころから聞いてきたどこか頼りになる声が聞こえてきたので無視した。
「ナナトも避難しているとこだったか」
母方の従兄、桐谷 郷が話しかけてきた。
「久しぶりだね、元気そうでよかった。」
ゴーくんの仕事が忙しくなってから随分と会ってなかったけど元気そうで少し安心した。
「ところで後ろの三人は?」
従兄のゴーくんに知らない3人組がいたので聞いてみた。
「ああ彼らは高校生なんだが・・・」
「ふーん、なかなか頼りになりそうじゃない?」
首からカメラを提げたショートヘアで活発そうな子がこちらを探るような目で見てきた
「私は真木 凛、ライター志望だよ」
「年上の人に初対面で少し失礼じゃないか?凛」
高身長イケメンがたしなめるように言った。
「僕は杉本 斗真、気軽に斗真って呼んで」
雰囲気からしてイケメン臭が漂ってきた、多分こいつは好きになれないだろう
「最後は俺だな、名前は遠藤 拓也! よろしく!」
ツンツンヘアーの体育会系っぽい男が元気よくあいさつしてきた
「自分は大学生の柊 七斗だ、よろしく」
「ナナトくんはこれからどうするの?」
軽く自己紹介を済ませてひと段落した所で朱音が不安そうに言ってきた。