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お住まい拝見。

 ボニー は ねんがんの ブーツを てにいれた!

 

 いや単にグラミィからもらっただけなんだけど。

 足ごしらえは大事だよね。岩山を足の骨に布巻いただけで降りてきたおまえが言うなって感じだけど、風雨にさらされてがびがびのかっちかちに変形したズタボロ靴は、どれもこれもどうしてもあわなかったんだからしょうがない。


 家捜し中に見つけた靴に喜んでばかりもいられない。

 とりあえず、助け合って共同生活をするなら拠点が必要でしょということで家を見せてもらってるんだが、八割ぐらいは婆っ子グラミィの愚痴の聞き役になってるからだ。

 これも代償と我慢して聞き流してるけど。


 しっかし、二日間くらいのことを心情描写ばっかりとはいえよくしゃべれるもんだ。

 自分の手を見て皺だらけなのに驚いて、鏡を探したけど見つからず、水に映してみて崩れ落ちたとか。

 身体の人の日記らしきものがあったけど、読めないんで異世界転生シチュだと確信はしたもののスターテスは見えない(ってゲーム系かよ。MMORPGとかやったことないぞあたし)、魔法とか魔術といった異能力はといえばなにそれおいしいのレベルで使えない。

 火も熾せないから料理もできない、そもそも食材がどこにあるのかもわからない、買い食いしようにも手持ちのお金もなければ、四方が森では人と会えるところまでたどりつくのにどれだけかかるかわからずひきこもり。

 お腹が空いたから困り切って食べ物を探したけど、見つけたパンとチーズは酸っぱい臭いが鼻について、涙目になりながら飲み下したとか。


 ……まあ、その状態で途方に暮れてた気持ちも、日本語を聞いてテンションが振り切れたのもわからんでもない。

 だが出会い頭のダイビングタックルはやめれ。無駄に肋骨粉砕の危機に突っ込むところだったじゃないか。


「なにそのかわいそうな子を見るような雰囲気!ほねっこのくせに感情表現器用すぎぃ!」


 きぃいいと騒ぐのをなんとなく生ぬるい眼で見てしまう。眼球ないけど。


 なにせあたしはこの身体だし?飲食不要、つーか口にいれても顎の骨から漏れてくだけだろうし?シミ皺たるみも関係ないし?

 それはともかく、


(グラミィ、あんたさー、この世界のお茶っ葉と毒草と薬草の区別はつくわけ?)


「う…………」


 なら、下手に毒を食べずにすんだって思っとけばいいんじゃない?

 結果的に正解の行動を取れたってことでOKでしょ。


 さて。屋敷から外の作業小屋まで、見る物はほぼ見たけれど……。

 あきらかにばーちゃん一人の住居って感じじゃないよね。

 一人では維持できない大きさなのに綺麗すぎたこと。チーズ小屋とかないのにチーズがあったこと。

 いや、どっちも逆よりマシなんだけど。

 つくづく「大草原の小さな家」は食糧自作のノウハウを教えてくれる。それに必要なリソースの存在にも。

 綺麗なのは魔法があるから、という素敵な万能解答があるがそれはさておき。

 何が言いたいかというと、この家は森の外とのつながり外界とつながっているということだ。


「失礼いたす。こちらに暗森の魔女どのはおいでかな?」


こんなふうに。


「えぇ?!なにあの人も日本語喋ってる?!」


 混乱しまくってんなー、グラミィ。


(いや日本語じゃない言語で喋ってるから。よく聞いてみ)


 言葉の意味がナチュラルにネイティブな日本語っぽく聞こえてくるのは確かにびっくりする。

 でも、よく聞いてみると明らかに違う。

 グラミィにとってどう聞こえるのか知らんが、あたしには『よくわかんない言語』が音として、言葉に載せられた『意味』が副音声状態で聞こえているのだ。

 ただ、その『意味』が、言葉を口にだそうとする人の『意志』なのか、言語そのものの『表意』なのかはわからない。『意志』だったら読み取りを工夫したら読心もできるようになるかもね。


「それがしはカシアスと申す。暗森の魔女どのでおられるかな」

「……あ、ほんとだ」

(これなら普通に会話できそうじゃん)


 ちなみに、グラミィは日本語を話している。日本語しか話せないというべきか。

 カシアスと名乗ったおっちゃんの言葉とまるっきり違う異世界の言語を混乱せずに聞き分けられるって、我ながら器用だよね。耳もないけど!


「これがいわゆる異世界補正……」


 五文字で片付けたよ、このご都合主義者め。

異世界転生王道要素ぶち壊しの五つ目は「日本語がそのまま通じるとは思うなよ」です。

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