鏡
いつも拙作をお読みいただきましてありがとうございます。
物理界で回線に虫が湧きまして、しばらくネットにつなげない状態になっておりました。
屋敷内に戻ると、あたしは静かに厨房へと足の骨を向けた。
……もちろん、つまみ食いが目的じゃないですじょ?
この世界の食器は基本的に携帯式であるようだ。カシアスのおっちゃんたちもカップやナイフとフォークのセットを持ち歩いてたしね。それが行軍中って理由じゃないってのにようやく気づけたのは砦でだった、けど。
しっかしカトラリーなんてかわいげがあるもんじゃないね、ありゃ。
小型ナイフとほぼ同サイズのでっかい待ち針みたいなピックの組み合わせを最初見た時はびっくりしたもんだ。
いや、この世界の肉類も野菜類もかなり固いらしいので、ちょっとした細工物にも使えるくらい切れ味のいいナイフってのは実用的なんだけどさ。
そのあたりの物を何も持たずにいたグラミィには、手先の器用なエドワルドくんが木を削って匙とフォークを作ってくれてた。さすがにコップは無理らしく、砦に着くまでは騎士隊の面々が交互に貸してくれてたっけね。
おまけに、王都に来る前に、あたしとグラミィにそれぞれセットをアロイスがくれた。あたしには実質必要がないんだろうけど、偽装の必要性ってことまで考えたのだろうか。ありがたいことだ。
砦の備品からぱくったのかもしれんが。
……まあ、むこうの世界における中世ヨーロッパ史でも初期のころや地域によってはろくな食器がなかったらしいしね。貴族は毒殺を警戒して銀の食器を使ったとかいうが、平民とか、へたすると騎士レベルとかでも砦にあったような分解型テーブルの上に、くぼみが掘ってあって、それが個別の皿がわりになってたとか。そこにカチカチに焼いたパンを置いて、料理を取り分けたということもあったとかなかったとか。
鹿狩りメインとはいえ、王族が使うとかいうレベルのお屋敷では、さすがにそんな平民ライクなことはないらしい。手近な戸棚を開けてみたらあっさり皿が見つかった。
……つーかこれ、鹿サイズの獲物を丸焼きにしてのっけるやつじゃないのか……。
下手なテーブルの卓面よりでかいぞ。王族仕様なだけに皿でもキングサイズってことですかそうですか。
こんなん一人で持ち上げられるかっての!ひょいと片手で持って歩けるのは重量軽減なんてトンチキなことができるあたしぐらいだよ!
ああそうだよ、あたしの魔力量はトンチキさ!
……けったいな深夜のハイテンションが鎮まったところで、手頃なサイズの陶製皿を一枚借りて、自室に決めた部屋へ戻る。
明日の朝は早立ちで王都に向かうと言っていたアロイスだけじゃなく、おっちゃんやグラミィたちも、もう寝たのだろう。屋敷の中は無人のように静かだ。
この世界の夜は長い。
いや、惑星の自転とか地軸の傾きによる季節の移ろいによる日照時間の長短とかという物理的な意味じゃなくってね。どういうわけだか眠ることがないあたしにとっちゃ夜が長く感じられるってだけだ。
グラミィはちゃんと睡眠が取れてるようなので、この現象は骨だからなのか、それともすでにこの世界の人を殺してしまったせいなのか。
マクベスは眠りを殺した、ってか。
あたしゃシェークスピア悲劇の主人公でもないし、君主や親友を殺したわけでもないんだけどなー。
誰も起こさないように静かに時間を潰すのは結構難しい。道中みたく、なんか不寝番みたいな仕事があればいいんだけどね。
ようやく最近になってこっくりさん用紙とか魔術士隊の面々が作ってくれた単語帳や例文集モドキでこの世界の言語を勉強するって選択肢はできたけど、それ以外にこっそり夜を過ごす方法は意外と少ない。いろいろ考えるか、魔力をやりくりして魔術の練習をするくらいしかできないのだよ。
結果として、あたしの考察の半分は暇つぶしでできてます。
とはいえ、一人で夜に物事を考えるのは、ネガティヴになりやすい上に客観的なツッコミを入れてくれる相手がいないせいで、ドツボにはまる傾向があるらしい。だから夜書いた文章は朝読み直せというそうな。
だったらあたしの考えはさぞかしろくでもないことが多いんだろう。
そんな考察というか分析が当たってるとか言われると、考察対象のこの世界もろくでもないのかもしれないと思ってしまうじゃないか。
部屋をグラミィと手分けして見て回ってた(ついでに微風を起こして埃を払ってた)時に、ある部屋で備え付けの燭台に、燃えさしの蝋燭がささっていたのを見つけた。
きっと、前に使った人が忘れてったんだろなー。ありがたく拝借したけど。
それを小ぶりな燭台に灯すと、あたしは皿をこじゃれたテーブルの上に置いた。どうもこの世界に灯りの魔術というものはないのか、あまり発達していないものらしい。
まあ、魔術士が魔力認識できる以上は、全員暗視スコープ着用しているようなもんなんだろう。必要が無ければ発達しなくてもしかたないのかもしらんが、カシアスのおっちゃんみたいな生粋の武官系の人には、微妙に不便かもしんない。
あたしも真っ暗闇でも見える、というか認識できるんだけど、この先の作業にはどうしても灯りが欲しかった。
ちなみにここはそこそこ身分の高い女性に使わせる部屋らしいのだが、灯り以外にもあたしが探しまくってて、どうしても見つからないものがあった。
鏡である。
この世界、まだ鏡ってもんがないのか、それとも高価だから手鏡サイズでこんなところに置いとかないのかもしれないが、ともかくないものはしょうがない。
ので、金属皿でも反射率のよさげなものがあったら、代用にできないかと思ったんだが……。
どれもこれもごてごてに装飾されまくっててどうしようもなかったのだよね。
裏側だったら平面だろうしなんとかならんかなとも思ったんだが、一目見て諦めた。コインを鏡にできるかというレベルで無理だろこれ。
しょうがないので、借りてきた皿の上に高い台形のような形に氷を作成してみた。
しばらく表面が溶けてくるのを待ってから、燭台を前に置いてみると……よし、成功。
部屋の中に燭台以外の灯りがないので、溶けてつるんとした氷に炎がちょっぴり歪んで映る。
むこうの世界の鏡の代用には不十分だろうけど、今のまにあわせにはなるだろう。
いちいち魔術なんざ使わないで盥に水でも入れりゃいいじゃねーかとも考えたが、それだとちょいと角度がよくないのだ。
氷の正面に立つと、髑髏が映る。わかってても一瞬ぎょっとするけど、これが、今のあたしの顔だ。
燭台を氷にわずかに近づけて炎の反射を強めると、あたしは大きく顎の骨を開けた。
石を生成する術式を構成。色や材質は歯と同じ。顎の骨と左側の犬歯の裏に一体化するよう、生成する。
指の骨で触ってみる。ぐらつかないな、よし。
あたしが骨になってもわりと落ち着いていられた理由。
それは、わりと最初からこの身体が地球にあった自分のものではないことを理解できてたからだ。
何があっても今のこの身体はおそらく仮初の存在に過ぎないのだと。
『あるべきはずのものがない』ってのは絶大な証拠だよねー。
……胸とか股間には関係しませんよ?骨だし。
二枚歯は、この世界には持ってこれなかった、むこうの世界におけるあたしの身体的特徴の一つだ。いや他にも骨盤の広さとか身長とかはいろいろあったんだけどね。
この歯並びの悪さはこの世界におけるイレギュラーな自分自身でもある。
だからこれは、いつか自分自身を取り戻すための誓いの具現化だ。
かつての自分の特徴を、間借りしてるこのシルウェステルさんの骨にくっつけるのに抵抗がなかったわけじゃない。もともとこれまでシルウェステルさんの身体はなるべく傷を付けずに、つけたら修復する、お返しする時のために、という方針でやってきたしね。
だけど、今後のことを考えると、どうしても二枚歯は、今、具現化しておかなければならなかったのだ。
いやもちろん、お返しする時にはきちんと取ってからお返しするつもりですが。
これから先、あたしとグラミィは分離行動をしなければならない。
グラミィがヤがってるのは単純に不安だからだろう。互いに貸し借りナシの協力関係を約束したとはいえ、元JKは異世界に放り出された者同士の気安さもあってか、被保護者の立場に慣れまくっているからなー。精神年齢未成年め。
……まあ、あたしも気分的には保護者役を引き受けてたのだから同罪といえるか。
だけど、一人になるのはあたしだって怖い。
あたしがグラミィにくっついている一番のメリットは、自我の維持にあるからだ。
身体は精神を形作り、精神は身体を動かす。
むこうの世界にあった肉体によって形作られていたあたしの精神は、この世界へ来て、シルウェステルさんの骨を依代にした。のだろう。
結果として、あたしは魔力感覚を得て、肉体感覚の一部を失っている。
今も、蝋燭の炎を消して真っ暗闇にしたのに、あたしは氷の表面に映った髑髏を認識できてはいる。
だけど、ずっと締め切られてた部屋の匂いを感じるはずの嗅覚は、全く機能していない。味覚もだ。
注意を向けてみても、そこだけすぽっと『あって当たり前の情報がない』ことだけがわかるってのは、怖いよこれ。
おまけに、反動すらないんだもの。
普通、地雷踏んだり事故にあったりして身体の一部を失ったら、それに慣れるまでは脳だって混乱する。あたしもあんまり大脳生理学とかよくわかんないんだけど。刺激というインプットがなくなったのに耐えきれなくなった脳が、勝手に仮想のインプットを作ってしまうんだとか。ほんとかどうかは知らないけれど。
確かなのは、負傷してからけっこう長い年月がたつのに、それでも幻視や幻聴、幻肢痛なんかに苦しんでるって人をむこうの世界であたしは見てきたという記憶だ。
それだけに、過剰反応による激痛や幻臭といった反動もなにもなく、ただその感覚が『ない』という感覚しかない、ということに初めて気づいた時は心底ぞっとしたものだ。
感覚のフィードバックによって、あたしはここにあたしが存在すると実感できている。
なのに、その感覚が一部欠損しているということは、あたしの自我がむこうの世界にいるときとは別の形になっていることと同義でもある。
ひょっとしたら、唐突にハイテンションになる感情の沸騰もそのせいかもしんない。
少なくとも、むこうの世界じゃあんなヒャッハー気分になったことはない。通常の感情の起伏は、今よりも少し大きかったような気もするけれど。
異世界転生系の主人公がわりとあっさり異世界の常識=自分の非常識を受け入れられるのは、この自我の変質が関係しているのかもしんない。なんてね、今考えたヨタだけど。
だけど生身の肉体がない、ある意味ヴィーリよりも存在自体が魔術的ともいえるあたしにとって、この自我の変質というやつは致命的だ。いや今のあたしに命があるかないかってのも謎だけどさ。
変質を認識していてなおかつ今の状態であたしが落ち着いていられるってのは、ある意味奇跡である。
一歩間違えれば墜落現場で現状を受容できないまま、精神のバランスを崩してたかもしんない。ゲシュタルト崩壊ってやつだ。
ただ動けなくなるくらいならまだしも、魔術的存在であるあたしがぶっ壊れるってことはどういうことか。
……あんまし考えたくもないが、単に消滅するだけならまだしも、下手すりゃ魔喰ライになったサージの死亡現場よりひどい被害が出ててもおかしくないかもな。あれより膨大な魔力の制御ができなくなるわけだから。
それを考えると、この身体に入った直後にグラミィに会えたのは、ほんとにラッキーだった。
あたしにとって、グラミィは鏡なのだ。
鏡に映る姿を見ることで、人は自分がどのような姿であるかを知ることができる。
自我は他者を認識することによっても形作られる。それはわたし/われわれという群れ的な自我を持ってたヴィーリでさえもそうだ。
同様に他者を認識し、他者から認識されていることを認識することで、今のあたしの自我はある程度支えられているといってもいい。
グラミィに最初に会ったからこそ、あたしはむこうの世界であたしであったことを忘れずにいられる。
これがアロイスやカシアスのおっちゃんたちが相手だったら、まず人間として認識してもらえるかどうかって問題だし。
たとえ今みたいに会話ができる人間――『元』かもしれないけど――と認識してくれても、彼らは今のあたしをシルウェステルさんであると捉えている。
もしグラミィがいなかったら、彼らにシルウェステルさんとしか認識されていなかったなら、おそらくあたしはシルウェステルさんもどきになってしまうんじゃなかろうか。
期待されるシルウェステルさんらしい行動様式、立ち居振る舞い、思考の癖。そんなもんを身につけてバレないようにと努力するうちに、努力の理由を忘れてしまいかねない。
加えて生身の感覚がないこの身体では、自我も感情もたやすく変容する。
魔喰ライと化したサージの虐殺現場を見ても、あたしはグラミィたちより動じなかった。グロ耐性が高いように見えたかもしんない。けれどそれは『動揺できなかった』からだけなんじゃないだろうか。
自我を成り立たせるための感覚が足りない。それは動揺するはずの心さえ削っているのだ。
あたしは、この世界の人間をすでに殺している。ごまかしようのない事実だ。
だけど、慣れたくはない。
この身体で慣れてしまったら、機械的な作業としてやってしまいそうだからだ。動揺する心がないぶん、殺っちゃおうと決めたなら、淡々と実行してしまう自分の姿が想像できてしまうのが怖い。
……あの時、『被害を出す』=『敵を殺す』ことを決めたことを後悔してはいけない。それは今でもそう思っている。
でも、殺すことに慣れることに怖いと思っておきたいし、殺すことに躊躇を感じるむこうの世界の倫理観を忘れないようにすべきだと思っている。
そう、あたしは罪悪感を覚え続けなければならない。それこそ眠りを殺したマクベスにかこつけてでも。
それを忘れて、アロイスやカシアスのおっちゃんと同じ感覚を持って、敵を殺すのが当たり前になってはならない。
……そりゃあ、与する以上は仲間になっちゃったアロイスたちの価値観はある程度受容しなければいかんのだろう。だけどそれは自分が正しいとする物を誤りと見なし、悪だと思っていたことが最善だと相手が考える人間かもしんないということを受け入れることであって、自分の中の物差しを変えることであっちゃいけない。相手の物差しをまるっと受け入れるということは、相手から悪と断じられたなら悪として扱われることまで受け入れなきゃならなくなることだから。
周囲に振り回されていれば自分が正しいかどうかなんて欠片も信じられなくなる。
だからこそ、あたしは常に『あたしは何者か』と自問自答し続けなくちゃならない。
あたしはどこまでいってもこの世界における部外者なのだ。それを忘れたらあたしがあたしでいられなくなる。
……この堂々巡りをあたしが止めることができているのは、グラミィの存在が大きいのだろうと思う。
この世界に来た直後、シルウェステルさんの骨という身体から受ける影響が最も少ない状態のあたしと出会った最初の他者は、突然この世界に来てしまった異世界人同士として見てくれている。だからあたしはシルウェステルさんを騙る不届き者でいられる。
ボニーという仮の名前を付けられ、その名で呼ばれていることでどんなにかあたしが安定していられるか、たぶんグラミィ自身は知らないだろう。
恥ずかしいから言わないけどね!
グラミィにとっちゃ、あたしは妙な知識を持ってる、保護者面をする骸骨。それでいいのだ。
自我崩壊の危険を知りながらなぜ別行動することを決めたのかというと、同じ事がグラミィにも言える、ということもある。
大魔術師ヘイゼルばーちゃんの身体に入っちゃったとはいえ、今んとこ身体に引きずられる様子がないのは、シルウェステルさんの骨に入っちゃったあたしと違って、身体が生きてるからだろうか。
そのあたりの理屈はよくわからないが、グラミィの自我がほどほどに安定してくれてるのは、グラミィの存在に自我を安定させているあたしにとってもありがたいことだ。
しかし、グラミィを認識するあたしがいなくなったとき、下手するとグラミィまで『グラミィと名乗る大魔術師ヘイゼル様』に自己認識を書き換えられるおそれがないわけではないとあたしは考えている。
たとえ考えすぎであろうとも、この世界の魔術が意思によって世界を変革するものである以上、自我が強固であるということは、『大魔術師ヘイゼル様』を騙るグラミィにとっても非常に重要なことである。
ならば、グラミィの自我が安定している今のうちに、さらにグラミィを精神的に鍛える必要がある。
たとえ、あたしとグラミィが互いの存在を見失おうとも、自分自身で在り続けられるために。
ついでに言うと、今のこの状況であたしとグラミィが組んで動くことは、どう考えてもメリットを一つ潰してしまうことになるってことも大きい。『大魔術師ヘイゼル様』とほぼ同等の火力がある魔術師があと二人はいるのだ、ばんばん使うべきだろう。
見せ札にも使える『大魔術師ヘイゼル様』と違って、あたしは顔出し……というか頭蓋骨出しNGだろうから、最後の切り札的扱いになるのかもしれないし、ヴィーリは使わないにこしたことはない鬼札なんだろうけどさ。
それでも、『この異世界でどう生き返るか』『いかに快適に生きるか』というそれぞれの目的のために異世界人同士ががっちり手を握り合ってる上に、『異世界人に興味津々ですから行動生態その他諸々身近で観察したいです』などという酔狂な森精なぞが首をつっこんでいるのだ。
ただでさえ手が足りないってのに、わざわざ一カ所にくっついてたら意味ないじゃん、ねえ?
一応、あたしたちのことを『星の子=異世界人』と認識しているヴィーリにグラミィと同行してもらうという保険は打った。
ヴィーリは最後の最後までほんのりしぶってたけど、『自分の森を広範囲に増やしてみたくないかい?』というあたしの一言で落ちた。
ふっ、勝ったな。
闇森の森精たちの集団とヴィーリ個体の自我はこれまでニアリーイコールだったらしいが、根別れした以上はどんどん変化していくだろう。なにせ体験が異なれば自我なんてもんは簡単に揺らぐし変容する。一卵性双生児だって互いを他者として認識するのだから。
ということは、欲が出てくるのも利己的な行動が増えるのも当然のことだろう。枝をぶすぶす挿し木しまくる理由の一つには、ヴィーリ自身の記憶バックアップを取る自己保存複製欲だけじゃなく、半身である植物の魔物が持つ自己繁殖欲ってのもあるかもなーと見たあたしの読み勝ちである。
幸い、別行動を開始するまでにまだ少しは時間がある。
ならば生還率を上げるために、できる限りどんな手でも尽くそうじゃないの。
ヴィーリを動かしたように、アロイスもカシアスのおっちゃんたちも、王子サマさえも駒として動かそう。
その一方で、グラミィにはあたしの知る限りの魔術と応用を叩き込もう。そのためにもシルウェステルさんの杖の解析を急がないと。
それから、個別行動をしても悪目立ちしない程度にはこの世界の常識を知っておきたいし、語学の勉強だってまだまだ必要だ。そういや馬たちとも話せるようになりたいって言ってたっけね、グラミィ。
あーあと毒についての知識も必須だね。つめこめるかぎりは覚えておいてほしい。
魔力量もヴィーリ式増大法で増やしておかないと。言ってみれば呼吸法トレーニングで肺活量を増やすようなものだからね、あれ。毎日の積み重ねが大事なのだ。
数え上げれば、あたし自身にも、グラミィにも、ヴィーリにもアロイスたちにも、やること、やってもらうこと、やらせることは山のようにある。
とりあえず、あたしは――。
皿でも片づけよっと。
裏サブタイトルは「骨っ子の考察と覚悟」ってなあたりで。
人間じゃない主人公に転生する系の作品も多いようですが、周囲の状況に適応するのにいっぱいいっぱいな時を通り越しちゃても「どうしてこうなった」という自問自答をするキャラって少ないかな、と思うのですよ。
そんなわけで拙作の骨っ子は煮詰まってダシが出そうなほど悩みます。ぐつぐつ。




