時を進めてしまってもかまわんのだろう?
本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。
「……御領主様はいい方だったのですよ。とても」
遠い目のアロイスの言葉に、カシアスが無言でうなずいた。
……結構ヘヴィな過去をしょってたのね君ら。
あ。グラミィがぼろぼろ泣いてる。
〔そりゃ泣きますよ!恩人を殺されてるなんて話、ひどすぎじゃないですか!ボニーさんだって泣くべきです!〕
涙腺も眼球もまぶたもないんだぞ、あたし。物理的に無茶ぶりされてもなあ。
まあとりあえず涙でも拭いて落ち着けと、腕に巻いてた布を渡してやったが……。
涙拭くのはいいが鼻までかむな。
若干おっちゃんたちまでひいてるぞ。
すっかり日の落ちた居間は暖炉と燭台に火は入っているが薄暗い。
「……すまんの。年を取るとどうも涙もろくなっていかん」
「いえ、グラミィどの。それがしらの身に心をそこまで寄せてくださった証。ありがとうございます」
カシアスのおっちゃんの声は薄闇に深かった。
……まあ、二人とも恨み骨髄ってやつだよね。ルンピートゥルアンサ副伯家が彼らにもその恩人にも不幸と死をもたらしたとあれば。
だけど彼らが深い恩を感じている先々代のアダマスピカ副伯の死因が毒殺であると推測、いや確信しているといっても、掴んでる証拠はほとんどない。
おまけに表向きは10年以上も前に、病死扱いで処理されてる、ねえ……。
なるほど、確かに正面からルンピートゥルアンサ副伯家に一騎士が喧嘩を売るには、いろいろ足りないものがありすぎる。
権力財力政治力、全てにおいて負けている。
おまけに向こうが毒を使うこと確定となれば、いつ背後から毒刃で刺されるか、どこで毒を盛られるかもわからんもんな。
動きもならず、ただただ長きにわたり、犯人というか黒幕とおぼしき相手の跳梁を見逃さざるをえなかったとか。そりゃあ骨の髄まで無力感と憎しみが染みつくわけだ。
……だからか。だからこの二人をあっさりあたしたちにつけてよこしたのか、王弟殿下。
私怨しこたま、このままだと暴走しそうな有能な部下。だったらコントロールした上で暴走させればいい。
先々代アダマスピカ副伯暗殺以外の別件逮捕ならぬ処刑でもいいのなら、若干足りない証拠も権力も二人プラスあたしたちの才覚で押さえることができるだろう。結果として晴れて復讐の大義は彼らにあり、ということになる。
想定よりこちらが無能だった場合に備えて、速攻切り捨て可能な状態にもしてありそうだけど。
……有線ミサイルじゃあるまいし。物騒すぎる鉄砲玉扱いされてんぞ君ら。
好意的に解釈するなら、私的に晴らせぬ恨みを国家権力使って晴らす機会を与えてくれた、になるんだろうけどね。
どっちにしても王子サマ的には問題なしか。……ほんと、いいタマだなー。
ちなみに、毒は弱者の武器とも言われるが、それが強者の手に入ってしまえば最小効率で最大戦果を上げる戦略兵器に変わってしまうのだ。
人道なんて言葉がなければね。
そして世の中、いつでもどこでもわりと道徳は無視されやすいものである。それは中世ヨーロッパっぽいこの世界でも同じことなんだろう。
中世と言えばシェイクスピア作品の中にも毒殺は出てくるしなー。『ハムレット』なんか、主人公ハムレットの父王の亡霊が「寝てる間に弟に耳に注ぎ込まれた毒で脳が焼けただれました」とか、息子にひたすら恨み言を言ってるし。
史実を見ても、16世紀ともなれば美白に使われたトファナ水という化粧水はヒ素化合物の猛毒だし。女性が持っていても怪しまれないから、配偶者殺しに良く使われたとかなんとか。
〔よく知ってますねボニーさん……〕
文学とか歴史書とか読むと、いらんとこまで知識が得られるからね。世界の見方もいろいろ変わるよー。あんたも本読んどきなさい本。
しかし、毒かー。
この世界が中世ヨーロッパレベルの文明があると仮定して、使われそうなのはヒ素や鉛系、もしくは生物由来のアルカロイドってところか。
香辛料にも毒性のあるものはあるしね。
〔マジですか!〕
まじです。用法用量を間違えばもれなく死ねる機会があります。
ま、体内にあって当然の水分や塩分だって、多すぎても少なすぎても死ねるけどな。
それに加え、魔術なんてステキ要素があるこの世界だと、植物毒とか動物毒と同じようなカテゴリで、魔力毒とかいうトンチキなもんが認識・利用されてそうだよね。
向こうの世界でも、キュリー夫人がラジウム発見してからこのかた、放射性同位体を毒物として暗殺に使ったと覚しき例も出てたしなー。半減期が極端に短く放射線を一度に放出した後、非放射性物質に変わってしまうようなもん、なかなかに証拠が残りにくい、ように見えるのだろうね。
魔力的に応用すると、体内魔力に作用して内臓を傷つけたり、魔力そのものを急激に増減するとか。魔力に反応して毒効が弱くなったり強くなったりするとか。あとあと使われた痕跡が出てきづらいとか、そんな毒性がありそうでちょっとイヤだ。
閑話休題。
具体的にどんな毒があるのかどうかもわかんないってのが一番困るなー。
いや、骨なあたしは、基本的に毒は効かないだろうけどさ。
問題はグラミィだ。毒使いからの身の守りかたなんて、あたしも知らんし教えたげることもできないぞと。
沈黙してるあたしを伺うように、ぽつりとアロイスが呟いた。
「シルウェステルどのは呆れておられるのでしょうね。無理もありません。ただ我々は私怨で動いているようなものなのですから」
なんだ、私怨だってちゃんとわかってんじゃんアロイス。
だがあたしはその上で言おうじゃないの。
「『それがどうしたというのだ?』」
『放浪騎士』の二つ名がつくほど長い放浪生活を送らざるをえなかったんだろう?
カシアスのおっちゃんだって、そこまで老けるほど大変だったんだろう?
苦労したんだろう?
その苦しさを敵に報復したって悪くはないぞ。いくらでもあたしは肯定してやる。
私怨けっこう。やる気に変えてとことん活用してやろうじゃないの、という気持ちもあるけどな。
「『確かに、私怨を晴らすべき時と任務は別物だろう。だが、両方果たせるならそれはそれでよいのではないか?』」
親指の骨を立ててみせると、あたしはあらためてアロイスが広げた地図をのぞき込んだ。
ルンピートゥルアンサ副伯家はこのランシアインペトゥルス王国最北……というか最北西、ピノース河口周辺を領地としている。
アダマスピカ副伯家はその上流域。二つの領の接点はピノース河だけだな、この図だと。
両領の間にはユーグラーンスの森とかいう、かなり大きな森がある。その外縁を回るようにピノース河とロブル河という二つの河沿いに道がついている。
森の中を通らないのは、森と河沿いでは高低差がかなりあるかららしい。
……河岸段丘かなこれ……。
アダマスピカ副伯領は、カシアスのおっちゃんの話によれば、昔から典型的な農業依存型領地らしい。
基本的に下流域の方が上流域より土は富むと言われている。森の土をそのまま恒常的に畑にできるわけがないから、川に流されるミネラルや窒素分は超重要だし、水を媒介してバクテリアも増えるもんね。
まあこれもルンピートゥルアンサ副伯領みたく河口に近すぎると、潮の満ち引きの関係なんかで海水が逆流してくるわけで、農作物にはあまりよろしくない。何事もほどほどにって重要だ。
ちなみに。
ピノース河は、ユーグラーンスの森から下流域にわたり隣国ジュラニツハスタとの国境になってたそうだが、何年か前の戦いでランシアインペトゥルスに領地を譲り渡されたんだそうだ。
そのおかげでピノース河口にあるアルボー港は完全にランシアインペトゥルス王国のものになったが、それは実質ルンピートゥルアンサ副伯家の領地と勢力増大を意味することになったようだ。
だが副伯家は巨大化した三角州や島が河口を塞ぎ、ほそぼそとした流れが広大な低湿地を覆っているため、たいした利益は出ていないと主張しているという。
低湿地は魔力溜まりになっていて、魔物が生じる。
魔物と他国との交易港にもなっているため荒くれ者が多く集まっており、対応に苦慮している。
これらの口実で王が期待したほどの税収が上がらないどころか、税の減免すら願い出ている始末とか。
一応王家から港湾管理官みたいな人間も派遣されているというが、それも懐柔されているのか、それとも脅迫されているのか、あたりさわりのない報告しか上げられていないらしい。それも王子サマの言った通り、『荒くれ者』と副伯家が手を組んでんならどうしようもないことなんだろう。下手すりゃ死体にされて海か湿地に放り出され、後には証拠も残らない。
THE☆魔窟って感じだね。
……こりゃあ裏の世界もわかっていて、なおかつ飲まれないような人間でないと情報収集すら難しいだろう。
眼窩をアルボー港地図の東に向ければ、ボヌスヴェルトゥム辺境伯領がベーブラ港を中心にロブル河流域をアダマスピカ副伯領近くまで覆っている。
ここがルンピートゥルアンサ・アダマスピカ両家と直接主従関係にある、いわゆる寄親に当たる家なんだそうな。
ちなみに、この国の爵位は国から授けられるが、すべての貴族が国王の直臣というわけではない。基本的には、王族といわゆる諸侯と言われる公爵から辺境伯、一部の伯爵といった、それこそ自領を国として維持できるくらい力のある大貴族の下に、それほど力のない中級貴族が家臣として使えていて、そのまた家臣が低級貴族という階層構造を形成している。
その各貴族に騎士や魔術士がそれぞれ生涯仕えたり雇用契約を結んだりしているわけだ。
……この社会構造を考えると、アロイスもカシアスのおっちゃんも、すんごいラッキーとそれに見合った実力あってこそ、王子サマつきという今の身分を得られたんだなーということがよくわかるね。
で。
そんな大貴族の一員であるはずのボヌスヴェルトゥム辺境伯だが、自分の家臣でもあり中級貴族でもある、二重の意味での格下な存在であるルンピートゥルアンサ副伯をなぜ押さえきれていないのかというと。
単純に言えば舐められている、ということになる。ようだ。
辺境伯だけあって確かにその領地は広い。
だが行ったことのあるアロイスとカシアスのおっちゃんによれば、アダマスピカ副伯爵家どころかルンピートゥルアンサ副伯家よりも北に位置することもあって、日は短く雲が低く垂れ込める土地柄でもあり、夏でもかなり涼冷な気候であるらしい。
おまけに海際は草の生い茂る低湿地が広がっているという悪条件。
なるほどそれでは南部はともかく、北部で畑を作るのはかなり大変だろう。寒い分植物相は貧弱になるしねー。
加えて、本拠地ともいえるベーブラ港も近年とみに衰退激しく、そのために財政的にけっこう落ち込んでいるそうな。
かつては漁港としてだけでなく商港としても大いに栄え、その勢いたるや現在のアルボー港に数倍するほどの良港だった、らしいのだが。
今じゃ利用しているのは土地の漁師の小舟ばっかりという有様のようだ。
はーん……それじゃあ。
「『このまま何も手を打たず数十年たったら、小舟すら入らぬ湿地だけが残るだろう。港としての用はなさなくなろう。後は没落するだけ』?」
おっちゃんたちだけでなくグラミィまでぎょっとした。
〔大貴族相手に、いったいなにやらかす気ですかボニーさん!〕
失敬な。
完全な自然現象だよ?
海岸段丘や河岸段丘というのは水が土砂を運ぶから生じる。
ゆるやかな流れになればなるほど土砂はたまり、海も川も浅くなるものだ。
ところによってはふつうの土地より川底の方が高くなることもある。いわゆる天井川というやつだ。
ほんでもって、問題は船が入るような大きい河口がある河川の管理が、どんなふうに行われてるのかってことだ。
水深を維持するために溜まった土砂を他のところへ運んで捨てる、浚渫って概念がこの世界というか国にあるかというと……ないんだろうなー。
低湿地が広がってるってことは、たぶんこれまでに流出した土砂が堆積してるんだろう。浚渫してればそんなものが河口にそこまででかくなってるわけがない。
ってことは、港の水深もどんだけ浅くなっていることになる。港としちゃあ末期症状だろう。
むこうの世界にブルッヘという古都がある。
やや内陸にある都市だが、運河で海と結ばれ、貿易港としてだけでなく経済の中心地としても大いに繁栄したという。
しかし生命線である運河や河口に土砂が堆積し、船の出入りにも難渋するようになった結果、人は去り、ブルッヘは衰退の一途を辿った。
結果としてつけられた名前は『死都』。じつに厨二臭いネーミングだね。
ベーブラ港はおそらく、その状態に近い。
だけどそれはルンピートゥルアンサ副伯家の優位を支えているアルボー港もご同様だろうけどね!
むしろ、だからこそ、今悪あがきをしているのかもしれないが。
そう伝えると、カシアスのおっちゃんもアロイスも顔色が変わること。
「それはまことですか、シルウェステルどの」
今のところはあたしの推測だ。
裏づけが欲しけりゃ、王子サマにでも尋ねてみればいいんじゃないかな?『クウィントゥス殿下』のお手元に各領の報告がどれほど集められてるかはわからんが、船の出入りについての情報を調べればいい。
あたしの推測が正しければ、たぶんアルボー港もすでに、喫水の深い、大きな船は出入りする数が減ってるはずだ。
そうグラミィに伝えてもらうと二人は沈黙した。いろいろ王都に戻ってからどう裏を取ればいいか考えているのが半分、残り半分は失望、かな。
……そりゃまあそうか。
ほっとけば勝手に港としての需要はなくなる。交通の要衝でなくなったら、残るのは冷涼な気候と魔力溜まり。衰退した副伯家の手に余ればどんどんと開拓地域は縮小し、荒涼とした辺境のできあがりって。
復讐を我が手で、と意気込んでいた彼らに今後衰退するからほっといてもいい、なんて慰めにもなりゃしない。
復讐というのは自分で掘った落とし穴に相手が落ちて、上から埋めて、それでこそざまあと言えるものなのだから。他人に突き落としてもらって、自分の手を汚さずにすんだ、他人を使える自分すげえと黒幕気取りをしたい?それ悪役ムーブだからね。
もっとも、あたしの推測が正しくてもアルボー港が役に立たなくなるまでは、あと数百年、短くても数十年はかかるんじゃないかなー……。
ボヌスヴェルトゥム辺境伯領は現在進行形でとってもヤバいのだろうけど。
〔ねーねーボニーさん。この状況って、要は辺境伯さんにテコ入れしてあげれば、問題解決しませんか?海水から塩を作って売る方法とか教えるとかー〕
おおう。異世界モノ内政チート系でよくあるヤーツ第一位っぽい製塩な。
一言で言おう。この場合には、とこっとん不経済。
ゆえに却ぁっ下。
〔なにゆえっ?!〕
だって、港ができるくらいの大きな河があるんだよ?
淡水が流れ込んでくるようなところの海水、ノータイムで塩分濃度低そうとか思わね?
むこうの世界でも海水組み上げて塩作ってるようなところってのは、たしか河口から離れたところか取水していたはずだ。
ボヌスヴェルトゥム辺境伯領が面してるのが、北の海ってのもまずい。
海水などの製塩にはどうしても水分を飛ばす過程が必要だ。それに一番利用されるのは太陽光エネルギーである。
天日塩とか聞いたことないかな。向こうの世界じゃ、塩湖の中にはそれだけで塩が結晶化するくらい塩分濃度を高められるところもあった、と思う。
だけど、辺境伯の領地は高緯度のさらに高緯度っぽい地域、しかも曇天ばっからしいじゃない。塩田作らせたとしても、いつまでたっても海水はそれ以上濃くならないだろう。
強い海風はある程度水気を飛ばしてくれるけど、それと塩分もいっしょに飛んでくからねー。海岸沿いに作られる建物が防錆処理を施されてるのはダテじゃないのだ。
もちろん、塩分濃度を上げるだけなら、海水を煮詰めるってこともできなくはないけどさ。その燃料どっから持ってくんの?
つーかそもそも王都の状況見ただけでも、河の水が流れ出した近所から取水して作った塩なんて考えたくもない。
いろんな下水直流っぽいところに泥が混じってそうなもんが原料とか。何の罰ゲームだっての。
〔今のボニーさんですら罰ゲームと言うとか。相当ですね〕
さらっとディスるな。骨の指で脇腹くすぐんぞコラ。
……まー、ボヌスヴェルトゥム辺境伯領の北部とルンピートゥルアンサ副伯領は、どっちもイメージ的には農業より漁業と商業に生命線がある感じっぽい。
グラミィに干拓は?と聞いてもらったが、双方していないそうな。
ということは。
河をどうにかすれば、経済的にどっちも活かすも潰すも思いのままっぽい。
んー……。
あたしは頭蓋骨をかりかりと掻いた。
王子サマのリクエストによれば、ルンピートゥルアンサ副伯家は最終的には一族郎党首ちょんぱ。アロイスとカシアスのおっちゃんの私怨を考えると、その前段階でのプラスアルファが欲しいところだ。
まずは噂を流すことにしようか。
アルボー港を交通の要衝として活用している商人とかに噂を流せば、勝手に情報の裏をとってくれそうだ。ヤバいと思えば自発的に新しい交通路の開拓を始めてくれもするだろう。利にさとくなければ商人なんてやってらんない。完全に港が使えなくなる前に次行ってみよー♪ってことで。
これ、おそらく将来的には誰も損はしない手段なんだよね。税収が落ち込むだろうルンピートゥルアンサ副伯家以外にとっては。
正確性の高い噂を撒いた後、『ルンピートゥルアンサ副伯家ヤバイ』と、わざと最初と同じ情報源から出た噂として振りまく。
ついでに『他家に入った人間は罪に連座せずにすむかもよー、条件次第ではー』って付け加えたらどうなるかな。
連座制があれば、一族は団結して犯罪の隠蔽を行うだろう。だがそんな損得の絆、ぶった切ればいいのだ。司法取引という概念がこの世界にあるかどうかは知らないけれども。
他にもルンピートゥルアンサ副伯領以外にも噂を撒くか。王都限定だったりすると、一族の足並みは更に乱れるだろう。
もちろんトドメのおいしいところはおっちゃんたちに任せたげて……。
と、そうそう、いろいろやるならこれだけは聞いとかないと。
「『王弟殿下に確認を。一時的にアルボー港が使用不能になった場合、ピノース河が氾濫した場合にルンピートゥルアンサ副伯領がこうむる損害をどれほどならお見逃しいただけるかと』」
「具体的には、どの程度の損害を想定されておりますか?」
「『冬の間に片を付けるなら、さして被害は大きくなるまい。最小限ならアルボー港周辺が水につかる程度で済むだろう』」
「……最悪の場合は?」
「『ルンピートゥルアンサ副伯領が一度は水没することになる』?」
絶句していたおっちゃんが、目を剝いたままようやく口を開いた。
「シルウェステルどの、いったい何をなさるおつもりか」
「『なに、少々時を進めてしまうだけのことだ』」
もちろんフォローはするけどね!
〔って、時空系の魔術使えるようになったんですか!いつのまに!〕
何言ってんの。
あんたもやるんだよ、グラミィ。
〔…………ゑ?〕
アロイスとカシアスが語ったのは「閑話 道を探す者たち」の内容です。いろいろアロイス視点の話も入ってましたが。
そしてそれを聞いて。
骨っ子「時を進めてしまってもかまわんのだろう?(物理)」
しかも他人にやらせようとするとか。
がんばれグラミィ、負けるなグラミィ!




