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閑話 道を探す者たち

本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。

BL成分は欠片もございません。

……ないんですってば。


 気にくわない目つきの、すかしたガキ。それがあいつの第一印象だった。


 人一倍口が重いせいもあって、俺は騎士見習いの朋輩ともあまり話をすることはなかったから、名前も忘れた相手が興奮して話しかけてきたのは、ただ、季節外れの新入りなんて大きな話のネタがあったからだろう。

 大人に馬の前に乗せられ、門をくぐるのを見下ろせば、ひどくほっそりとしていて小柄なやつだなと感じたのを覚えている。

 視線を感じたのか顔がこちらをむいた。赤みが強い髪の下の目は、幼い顔に似合わず、ひどく無表情だった。


 御領主様の館に一歩踏み込んでからというもの、あいつの姿は一瞬たりとも途切れることなく朋輩たちの監視下にあったらしい。逐一飛んでくる知らせの多さに暇な奴らだと思いながらも、それに耳を傾ける自分も、結局は同類だったのだろうが。

 来た早々御領主様に目通りを許され、次に家宰に引き合わされ、ついでに御領主様の子息たちの家庭教師にも顔を合わせたとか。

 一刻でも早くやってこい、一番下っ端としてとことんこき使ってやろう、そんな空気は次第に強くなっていった。大人ばかりを相手に館の中を動かされている――いや、自由意志で動いていると思いこんでいたな。そんなはずはないのに――あいつは、はっきりと特別扱いをされていたからだ。

 だが、そんな空気はじりじりと重くなるばかりで爆発を許されなかった。


 今になって振り返ってみれば、あの頃の俺や朋輩に限らず、騎士見習いなんてものは、ろくでもないやつばかりだと断言できてしまうものだ。

 矜持だけは一人前どころか十人前も持ち合わせているくせに、脳味噌はほんの一かけ、身体も戦技も未成熟なくせに、今すぐ戦場に放り出されたとしても、百人もの敵を剣の一振りで切り伏せられると信じてやまない、胃袋と夢だけはでかい馬鹿どもだ。

 だからこそ、あのとき大人として扱われない半人前のひよっこどもにとって、あいつは姿を見せる前からとっくに敵だったのだ。


 騎士見習いの生活に変化なんて、さしてあるものじゃない。

 それでも来客ともなれば少し料理も豪華に多くなるかもしれんと、それを楽しみに晩餐の間に入った俺は驚いた。

 なんと、あいつだけが下手(しもて)とはいえ領主様一族と同じテーブルに着くことが許されていたのだから。

 おまけにわざわざ御領主様が俺たちのテーブルにまでそいつを連れてきて説明をしたのだ。


「この子はアロイスという。今日より我がアダマスピカ副伯家にて預かることになった。明日からはそなたたちと同じ仕事をすることもあろう。よく導いてやってくれ」


 あいつは、御領主様に従いきちんと礼をしたが、俺たちに向かっては一言も口を開かずに戻っていった。

 その後は楽しみにしていたご馳走の味もわからぬまま、俺はただがつがつと詰め込んだ。


 未成人扱いされている見習いたちは、食後も全員おとなしく共同の寝室に引き取った。

 ということにはなっていたが、厨房からかすめ取ってきた酒袋と杯を傍らに、ずっとひそひそと会話が深夜まで続いていた。

 俺は黙って聞いていた。あいつが気に食わんことに相づちを求められ、考えを言葉にしようとする間に、家名も言わないのはなぜだ、御領主様はお優しすぎる、だがそこがいいところではないかなどと話題はどんどん転がっていく。会話についていくには聞いているだけの方が楽だった。そのうち俺は眠りに落ちた。


 次にあいつを見たのは、翌日の剣術を学ぶ時間だった。

 御領主様のお情けで従士から騎士身分に引き上げていただいた男の息子、そう見られていた俺にとって、少しでも早く強くなりたいというのは悲願だった。父のように武勲さえ立てることができたなら、俺も胸を張って騎士と名乗れるようになる。

 そう思っていたからこそ、俺は誰よりも早く練習場に行き長剣を振るうのが日課になっていた。

 だから、俺より先にあいつがいたのには驚いた。その脇に指南役がいたからなおのことだ。


 間近で見れば見るほど、ひょろりとしたやつだった。8才ぐらいにしか見えない体格だったが、御領主様の言葉によれば10才だという。俺より一つ年下なのか。

 だが、あんなやつが騎士になれるとは思えない。

 なのに、指南役は俺たちに指導するよりも丁寧に、あいつには剣の握り方、盾の持ち方、素振り、一つ一つ確認するように教えていた。

 男爵や副伯の子息だって俺たちの中にはいる。だけど、指南役は身分で差別をつけたことはない。

 しかし、こんなに丁寧な教え方をされたこともない。戦闘に耐えるだけの身体作りをしこたまやらされるばかりだったのにだ。

 じわりと腹が熱くなったが、俺は指南役にそっけなく礼をすると自分の場所に決めていた一隅で身体を温めることにした。

 強くなるのに怒りはいらない。


 全身の筋をよく伸ばしておいてから、練習用の胸甲を二重に重ねて着る。錘の代わりだ。そして俺は的を相手に、いつものように型をさらい始めた。

 模造剣は型の練習用だから、木製とはいえそこそこ重い。それを軽々と振り回し続ける膂力が自分にあることが誇らしかった。

 いつしかあいつのことはどうでも良くなっていた。

 むしろ集中を乱したのは、どやどやと遅れ気味にやってきた朋輩達の方だった。

 俺が端っこにいるのは見えていないようで、あいつの傍に立って指南役が足の運びをしてみせているのに気づくと、唖然とした顔になっていく。連中の目つきが歪むのに、さして時はかからなかった。


「アロイスがどれくらいできるかやってみたい」


 そう言ったのは誰だったろうか。


「しかし、この子は、ようやく今日剣を握ったばかりだ」

「おや、『騎士を目指す者はいつ剣を握ったかよりどう剣を振るうかが問題だ』と、いつも先生がおっしゃってたではないですか」

「それに、『素質を知るには下手な癖がついてない方がいい』のでしょう。今日が初日ならばなおのこといい機会ではないですか。栄誉ある相手を私が努めましょう」

「おお、アロイシウスさまが自ら名乗り出られるとは、なんと気高き行いか」


 にやにやと指南役につめよる連中は、アロイシウスとその取り巻きたちだった。

 御領主様の奥様の血族だが、『叔母様』に取り入っては、とんでもない性根の悪さで自分のわがままを押し通すのに慣れているイヤなやつだ。

 どうせこんな事を言い出したのも名前が似ているのが気にくわない、などといった、ろくでもない難癖づけに違いない。


「いや、しかし……」

「私はかまいません、先生」


 あいつが言った。うっすらと笑みを浮かべて。


「ただし、ただの試しであれば一回で十分でしょう。私も弱い者いじめはしたくありませんので」


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 その言葉に練習場の空気が凍り、誰かがぶっと噴いた音に砕かれた。

 アロイシウスは血を噴き出すかと思うほど顔を赤くした。


「……よかろう。ただの一度に限り許す」


 指南役はそう言うと周囲をぐるりと睨み渡した。


「皆も訊いての通り。この言葉は武神アルマトゥーラの御名にかけし公正なる試技とする。ともに遺恨を抱くまじ」

「「「「「「応!」」」」」」


 勝負は一瞬だった。


 上段から大ぶりに振り回しされた両手剣ををぎりぎりでよけたあいつは懐に潜り込むと、全身をバネに籠手の薄い内側を下から激しく打ったのだ。

 手首を押さえて転げ回る相手を見下ろし、「誰か手当を」と言ったあいつは、あいかわらず無表情のままだった。


 騒然とする朋輩たちをよそに、俺は身体の内から震えが湧いてくるのを止められなかった。

 こいつは、確かに俺たちとは違う。あきらかに異質だ。

 しかし、それは強くなるための美点だった。


 その日の晩餐後、俺は騒がしい大広間を早々に抜け出し、練習場に行ってみた。

 薄々そうではないかと思っていたが、あいつはいた。指南役も、錘をつけて練習場の周りを歩くあいつの姿を見守っていた。

 

「カシアス、どうした」


 指南役が声をかけてきた。あいつも俺の方を向いたが、続けるようにと指南役が手を振ると、また黙々と歩き始めた。


「先生、次からは彼も組稽古に入れるおつもりですか」

「ああ。せめてアロイシウスやその連中とは組ませないようにせねばならんだろうが、そうなるとマテウスやリヌスたちとやらせるしかないな。年は離れるが、いたしかたない」

 どちらも八才になったかならないくらいの、俺たちの中では最年少の子らだ。そんなちびどもと同等に扱われることになることをあいつはどう思うだろうか。


「お願いがあります」


 俺は指南役の目を真正面から見上げていた。


「彼と私を組ませて下さい」


 しばらく指南役は眉をしかめていた。


「なぜそんなことを言う?」


 お前はアロイシウスの取り巻きではなかろうに、と暗に問われて俺は答えた。


「私が、強くなりたいのです」


 その後、指南役が俺をあいつとともに御領主様の私室へ連れていったのには驚いた。俺がそれまで足を踏み入れたこともない棟の奥にあった部屋は、質実剛健でありながらも明らかに落ち着いた雰囲気に整えられていた、ように思う。……が、正直に言うならば、ろくに覚えていない。

 簡単な説明を聞いた御領主様は、ずっと緊張しながら片膝をつき、面を伏せていた俺に立つように言うと、近くの椅子に座らせてくれた。後ろ盾も何もないただの騎士見習いに対して破格の扱いだった。


「カシアス。なぜお前は、アロイスと組みたいというのだ?」

「彼は強いからです。強い者、勇敢な者と鍛え合ってこそ私も強く勇敢になれると考えるからです」


 確かにアロイシウスの初撃は見せかけだけのものだった。おそらくはあいつに恐怖を感じさせ、じわじわと柵の脇に追い詰めてから、わざと有効打とならぬよう剣の平で嬲り打ちにでもしようとしていたのだろう。汚い手だ。

 だが、それを見抜いたからといって、恐怖をこらえて両手剣の長大な間合いに飛び込み、狙い通り大人が使う小剣ほどの短い刀身の剣で、的確に反撃を喰らわせられるやつがどれだけいるか。

 それをあいつはやってのけた。

 それも、指南役の言葉が正しければ、初めて剣を握った日にだ。

 まぐれであっても、膂力が弱くても、臆病者では決してできないことだ。戦況の判断ができない者にもだ。


 ぽつぽつと、足らない言葉を継ぎ足しながら申し上げれば、深い吐息が聞こえた。


「あの子の話は聞いているか」

「い、いえ」


 上ずった声が恥ずかしかったが、御領主様は嗤いもせず、俺の目をじっと見据えた。


「正直に己の目を信じ、評価し、自らあの子に関わろうとしたお前にだけ話そう。家名は明かせぬが、アロイスはとある魔術伯家より預かった子だ。有能な魔術師の子でありながら、魔力(マナ)ナシと判定されたのだ」


 そう聞いて腑に落ちるものがあった。

 それでは、あの年になるまで、騎士として身体を鍛えたこともなければ、剣の握り方すら知らなくても仕方がない。体力がないことも筋肉がついていないこともだ。

 あいつは、それらを今から必死に身につけようとしているのだ。

 だからこそ、指南役は、騎士を目指す子どもなら、それこそ三才くらいから振り回す木剣の扱い方、歩法などを噛んで含めるように教え、晩餐の直後にも膂力を手っ取り早くつけるように訓練を施し、見守っていたのだと悟った。

 扱いが特別(厚遇)なのではない、あいつが特殊(未経験)なのだ。


「良い目を持ち、正しい判断を為した剛健なるダヴィドの子よ。わしからも頼む。どうか、あの子とともに鍛えあい、お前が騎士となるため学んできたことを示してやってくれんか。強くなるために」


 とうにあいつに対する無意味な敵意は消えていた。おまけに大恩ある御領主様に頭を下げられては、俺はただかしこまって頭を垂れるしかなかった。


 俺があいつを練習相手に選んだ後も、あいつは態度を変えなかった。

 片手剣同士で真っ向から打ち合えば、膂力も技術もある俺の方が強い。時には跳ね飛ばすこともあった。

 だがあいつは何も言わなかった。俺も何も言わなかった。傍から見れば組稽古は俺があいつをただ一方的に痛めつけているだけに見えたかもしれない。

 アロイシウスたちは、むしろいい気味だという顔をしていたくらいだ。

 それでも連中があいつにも俺にも寄ってこようとしなかったのは、指南役がにらみを利かせていたということもあるだろう。

 以前の立ち会いで、『真剣な立ち会いの場ではたとえ得物が木剣であっても生命をかけるな、死をかけろ』という指南役の助言に従って目を見据えたこともあっただろうか。

 あのとき勝手に腰を抜かして剣を抛り出したアロイシウスを、指南役は俺と二度と組ませようとはしなかった。

 

 俺は同い年の朋輩相手ではほぼ負けなしに近かった。

 しかし、それでも俺が傲慢の陥穽に足を踏み外さなかったのは、あいつがいたからだ。

 あいつの強さは俺の目指す強さとは異質のものだった。

 だが、相反するものではなかった。

 俺は膂力でこそつねに勝っていたが、技はみるみる上達したあいつに追い越された。

 俺ならば盾なり刀身なりで真っ正面から受け止め、跳ね返す攻撃も、あいつは斜めに受け流し力をそらす。もしくは回避する。

 そうやって損耗を押さえるだけ押さえ、そしてその合間に針の穴を通すような鋭く精妙な突きが飛んでくるのだ。たまったものではない。

 いつしかあいつは俺とは話すようになっていた。


「お前、ずるいぞ」


 唇をとがらせて文句を言われた時は何事かと思った。


「まさか、その長剣はわざと軽くしてあるのではないか?その長さでその速さはないだろう。さっきのは小回りのきく小剣の技じゃないか。よくまあ長剣で非常識な真似をしてくるもんだ」


 あいつにだけは言われたくないものだと思った。最近では駆け引きも上手くなり、受け止められたからといって下手に力任せに押し込もうとしたらするりと躱される。長剣どころか両手剣でもよくやる技だが、つんのめって土を舐めるのはたくさんだ。


「努力の成果だ」

「それは知っている。見ていたからな。でも納得できない」

「俺も、見ていた。お前をだ」


 そう言うと不思議そうな顔をした。


「お前こそ、その細い身体でよく息が続く。おまけにどこを撃ってもなかなか剣の精度が落ちない。じつに厄介な相手だよ」

「そいつは褒め言葉だな」

「ああ。ずるいとは言わんぞ。ネタがあるのだろう?」

「まあな。魔術師は痛みに耐え切れねば術の制御を失うからな。三才の頃から呼吸を乱さず、苦痛に耐える訓練はしていた」


 なるほど、鍛えるべきは身体の持久力だけではなく、精神もだったか。どんな訓練なのか試してみたいものだが難しいだろうかと考えていると、あいつは、にやっと口の端で笑った。


「……お前は訊かないんだな。なぜ魔術師が騎士見習いになったかとは」


 確かに、魔術師の素養があったならば、読み書きもさらにその上の教養も身につけることができるだろう。ならば文官を目指すことだってできたはずだ。貴族の出ともなれば宮廷で出世することも夢ではない。

 だが、俺はしばらく考えた。


「俺が、この腕の腱を断たれて、二度と剣を振るえなくなったとする。それから好きなように生きてゆけと抛り出されたら、どんな気持ちになるかと考えてみた」

「へえ」

「そこからどんな道を選んだとしても、他人には説明ができないと思った。だから、俺は訊かない」

「……そうか」


 その後のことだったろうか。

 魔術師の家の出の魔力ナシだと漏れ聞いたらしい朋輩に、『できそこない』と面と向かって嘲られた時も、表情を変えないままあいつが相手を床に引き倒して組み伏せたのは。

 そして、ひどく穏やかな声音で『騎士見習いから腕や指を折ったら、いったい何になるんだろうな。試してみようか』と言った時のあの笑顔ときたら!

 それはもうじつに凄絶な冷笑だったものだ。いったいあいつは俺の言葉から何を読み取ったのだ?!

 慌ててあいつをひっぺがした俺は、どうやら朋輩たちから『猛獣使い』と見なされたようだった。

 その後、彼らはよほどの事がない限り俺やあいつに絡んでくることはなかった。


 ひたすら強くなるために鍛え続けて数年が経ったころ、思ってもみなかった問題が持ち上がった。

 アロイシウスは御領主様たちの私室のある棟へ平気で足を踏み入れていた。御領主様の奥様にとって、アロイシウスは鼻持ちならない愚か者ではなく、成人間近となった騎士見習いであっても『姉の子のかわいいアーロ』だったのだ。

 それをいいことに、アロイシウスは、奥様の部屋子にもちょくちょく手を出していたらしい。それがたいした騒ぎにもならずにすんでいたのは、彼女たちにとってはアロイシウスへの好意のためというより、それが『かわいいアーロ』を通じて奥様に取り入るための策だったのかもしれない。というのは、憶測が過ぎるだろうか。

 だが、ある貴族の家から行儀見習いとして預かったばかりの少女にも、あろうことかアロイシウスは村娘のお針子同様組み伏せれば事は済むとばかりに、手を出しかけた。

 侍女頭が同室だというに、深夜の寝室に押し入ったのだ。

 大騒ぎになった。


 侍女頭が騒ぎ立て、人が集まってアロイシウスが恥をかいたのはまだいい。

 その場で娘が泣きわめき、『お慕いするアロイス様に顔を合わせられません!』と叫んだことで、騒ぎは手の付けられない大混乱になった。

 アロイシウスは傲慢の鼻をへし折られて剣に手をかけ取り押さえられ、奥様は卒倒し、部屋子たちは癇癪を起こして暴れ、御領主様もさすがに顔色を変えたという。

 あいつもよくよく話を聞かれたらしいが、ほとんど面識はなかったそうだ。 

 それはそうだ。

 十四才になったばかりとはいえ、あいつは武官としての立ち居振る舞いを身につけるため、半日は家宰や御領主様につきっきりで宮廷に出しても恥ずかしくないほど礼儀作法をきっちり叩き込まれ、嫡子の家庭教師からは教養を学び、後の半日は七才くらいには一通り身につけている小姓の仕事に加え、訓練と武具の手入れという、騎士見習いなら十二才ぐらいから学ぶ従士としての仕事と組稽古をこなし、その合間を縫うように指南役から騎士としての指揮官として模擬戦の指導も受けていたのだ。どこにそんなひまがあったというのか。

 組稽古と指揮戦の指導を深夜までともに受けていた俺ですら、聞いた時には、いつあいつは寝ているのかと呆れたものだ。

ただ、他家に赴いた奥様が血縁の欲目からなさった『かわいいアーロ』自慢から、娘が『かわいいアーロ』への恋心を抱いていたことは確からしい。

 しかし、御領主様の屋敷に来てから見たあいつの名前を聞いて、あいつこそ奥様の言う理想の若騎士、『かわいいアーロ』なのだと思い込み、ただひたすらに遠くより慕っていたというのにはまったく恐れ入る。

 名前が似ていたのも誤解の一因だろうが、結果として、アロイシウスはのぞき見た娘が『かわいいアーロ』の話に、嬉々として聞き入り、頬を染めていたことを知り、脈がありそうだと思い込んで事に及ぼうとした、ということになる。

 あいつから事の顛末を聞いた俺はしみじみと言ったものだ。


「色男というのも大変だな。なんとも馬鹿馬鹿しい限りの喜劇の主役に抜擢されるとは思わなかったぞ」

「ぬかせ」


 すさまじい仏頂面であいつは杯を呷った。


「顔どころか、いつから滞在していたのかもよく知らん女に『めったに微笑まぬ口元に笑みの花を咲かせてさしあげたく、ひそかにお慕い申し上げておりました』なぞと言われてみろ。ぞわっとしたぞ。あんなくだらぬ思い込みが命より大切な恋の花だというなら、案山子の顔でも自分好みに美しく塗って閨で寄り添っておればいいものを。オレまで巻き込まれるのはごめんだ」

「確かにな。まあ、不運だったと諦めろ」


 肩を叩き、杯を酒で満たしてやると、あいつは据わりきった目で言ったものだ。


「御領主様も同じようなことをおっしゃったがな。オレが騎士になったら、絶対に女のいるようなところで兜は外さんぞ」


 俺は爆笑した。

 確かに、いつのまにかあいつときたら教養も武術も人並み以上に身につけて、細身ながらも均整のとれた体つきに育ち、顔つきもかなり幼さが抜けて、このたわけた騒ぎに巻き込まれる程度には整ってきてはいたのだ。

 なのに、言うことときたら一皮剝けば、まるでちびのころのままの頑なさだというのが笑えてしょうがなかった。

 虫が好かないアロイシウスがいい年をして『かわいいアーロ』呼ばわりをされていたことを暴露され、大きく面目を損なったことにもざまあみろとしか思わなかった。

 やつは練習場にも姿を見せなくなっていた。実家に引き戻されたというわけでもないのにだ。

 それも俺には都合がいいとしか思わなかった。

 一切の建前なく言うならば、俺は、アロイシウスに興味どころか意識すら向けていなかったのだ。


 今にして思う。

 あの時、あいつは、そして御領主様は、何をどれだけ見通していたのだろうかと。

 俺が気づけなかった人の感情(こころ)も含めて。


 俺が十八の時だ。あいつも騎士叙勲を受ける時が来た。

 そのころ領主様は急激に体調を崩されていた。

 いや。はっきり言おう。今の俺はアロイシウスが毒を盛ったのだと疑っている。奥様が手を貸していたともだ。

 何のためにか。御領主様を弑し、奥様の一族が御領主様の家を乗っ取り、あいつを潰すためにだ。

 

 叙任式の準備の時には、御領主様が不例をおして騎士叙任式を執り行うものと誰もが信じていた。よほど念入りに情報を隠蔽したのか、それとも本当に間際になって御領主様が倒れられたのかはわからない。

 アロイシウスが『御不例の御領主様の名代の親族』として壇上に現れたとき、呆然としたのは俺だけではない。あいつもうっすらと顔から血の気が引いていた。

 騎士叙任式の中心である刀礼はコレーともいう。通常は主君となる者が新しく騎士となる者を膝まずかせ、剣の平で肩もしくはうなじを軽く打ち、忠誠の誓いを騎士として捧げられるというだけのものだ。

 それを古式を復興するという名目をつけて、立ち上がらせたあいつにアロイシウスは容赦のない強打を浴びせようとしたのだ。

 それも、素手で一発顔を殴るくらいならまだいい。どれだけの打撃か一目でわかる。

 その一発でアロイシウスの気が済むなら、この儀式が有効とされるならそれでもいいかと思った俺は、あえて声を挙げなかった。

 それをあのときほど後悔したことはない。

 目を伏せ、大人しく立っていたあいつに、アロイシウスは唐竹割りの要領で、あいつの首めがけて真上から棘鋲打ちの籠手を嵌めた拳をたたきつけようとしたのだ。

 それで首を痛め、鎖骨を折られれば昏倒しかねない。あいつの体面を潰す、いや騎士としての身体そのものを壊しにかかったのだ。

 狙いがわかった時には遅かった。


 まさか、それをあいつが避けるとは思わなかったがな。


間近にいたからこそ、殺気は強く感じていたのだろう。身を開いて勢い余ったアロイシウスの拳が石床を打つ前に、あいつの膝が素早く振り上げられ、卑怯者の顔を粉砕した。

 騒然となった参列者を、あいつの声が冷ややかに一閃した。

「我が感謝は御領主様に捧げるものなり。忠誠を誓うに値せぬ愚かな名代に、捧げる剣はない。我は御領主様の命にのみ従う」


 転げ回るアロイシウスに蔑みの目を向けて、あいつはその場を去った。

 その捨て台詞の理由がわかったのは、カルランゲンが一巡りもしない間だった。

 なんと、あいつときたら、とっとと領主様の寄親である辺境伯のもとへ使者を装って赴き、御領主様からの伝言として、この顛末を洗いざらいぶちまけたのだ。

 ご丁寧にも、いつの間にか御領主様から賜っていた身分を証明する手紙を持参してだ。

 騎士叙任式に多く列席していた御領主様の御身内だけならば口止めも効いたろうが、辺境伯が仲裁に入られては、アロイシウスも奥様も面だっては動けない。

 できたことは、御領主様のご判断を汚すことだけだった。

 つまり『アロイスなる騎士見習いは叙任式にて騎士とならざるまま当家を出奔せり』と王都にまで通達をしたのだ。

 確かにコレーは完全に済んでいないのだから、こじつけとは言いがたい。

 しかしこれであいつは騎士として叙勲もされず、また御領主様の家や奥様の一族と敵対してまで後ろ盾になろうという相手もいないままに放り出されたことになる。御領主様が直後に身罷られたこともあり、辺境伯もそういうことにして事を納めざるをえなかったのだろうが、あいつにはあまりにも酷な結末だった。


 だが、それが、『放浪騎士』のはじまりだった。

 叙勲の証である黄金の拍車も与えられぬまま、馬と鎖かたびら、細身の長剣、そして描かれていた御領主様の家紋を塗りつぶした細盾という姿で、あいつは従士すら連れぬ雇われの準騎士として、国じゅうを巡っていた。領主間の小競り合いの起きそうなところへ首を突っ込んでは想定外の奇手を打ち、また、頭脳と遜色ないほど鋭い剣を奮う姿に『身を寄せている者以外にとっての疫病神』とも称されるようになっていった。

 できれば敵として戦場で顔を合わせたくないものだ、そう思うような噂ばかりを聞くようになっていた。


 あいつより一年早く叙勲をすませていた俺も、騒動が収まるか収まらぬかのうちに、御領主様の家から辺境伯家へと身柄を移されていた。おそらくは事情を知る人間としてアロイシウスあたりに煙たがられたのだろう。

 譜代というには歴史のない父からの代の騎士の身では、献上しやすい戦力として、まるで枝から切り離されたマールムの実のようにやったりとったりされてもしかたがない。

 あっさり諦めたのには、御領主様亡き後の副伯家に、心の底からお仕え申し上げたい方々、御領主様の血を引く方々がお一方もいらっしゃらなくなったこともある。なつかしきお屋敷に、アロイシウスとその一党がのさばりかえっているさまなど、見たくもなかった。

 父の恩義は十分に返したつもりだ。


 辺境伯家で単純な戦力として使い潰されないために、俺が参考にしたのはあいつの考え方、振る舞い方だった。

 あいつなら、どこまで先を読んだだろう。そのために必要な情報は、どう集めただろう。そのためには誰にどのような態度を取っただろう。

 あいつなら、この長剣をどう振るうだろう。

組稽古や模擬戦で掴んだあいつの癖を手がかりに、俺は死に物狂いでもっと強くなろうと努めた。

 そしていつしか『変幻』なぞという呼び名を得た頃、俺はトニトゥルスランシア公爵家の旗下へと招かれた。

 そこで俺は、今の主であるクィントゥス殿下に出会った。


 ランシアインペトゥス王国の隣国、ジェラニツハスタとの小競り合いに駆り出された第五王子殿下は、王族とは思えない茶目っ気のあるお方だった。

 同い年なのにえらく老けているな、などといわれた時には、なんと返していいものか迷ったが、あっけらかんとしたお人柄は口の重い俺でも心を開きやすく思われた。

 なぜか殿下も俺をかってくださり、傍近く使っていてくださった。つれづれに騎士見習いの時の話など、請われるままに申し上げたことに興味をお持ちになったらしい。


「あの『放浪騎士』が『変幻』と朋輩だったとはな」


 じつに面白い、と呟いた殿下はぽんと手を打つと、上機嫌で俺に命じた。


「一度話をしてみたいものだ。顔を合わせたら、ぜひこの身の前に連れてきてくれ」


 その機会は思いがけない形で現れた。

 何度目かのジェラニツハスタ軍との野戦の最中に突然、風が爆ぜた。咄嗟に鐙から足を外し、よろめく馬の背に伏せて耐えた。倒れた馬に足を巻き込まれたらそれで終わりだ。

 暴風が収まってからようやく顔を上げると、敵はすっかり混乱していた。向こうの後衛側で発生したにも関わらずだ。

 ということは、敵の攻撃ではないか、もしくは想定外の事故だった可能性がある。

 時を移さず突撃を命じられ、一騎駆けでその中心地に向かった俺が目にしたものは、すり鉢状にえぐられた地面と、その周囲に累々と斃れた死骸の数々、半死人たち。そして泥塗れのあいつだった。

 慌てて折り重なった死骸をかき分けるようにあいつを掘り出すと、俺はようやく従士になったばかりのギリアムにも手伝わせて馬に乗せ、掃討戦の中を陣まで連れて帰った。


 気がついたあいつは、無表情のままひどく驚いていた。

 見知らぬ天幕の中で意識が戻ればそうだろう。


「相変わらず顔だけでなく運もいいやつだな、お前は」

「……お前、カシアスか?その髭、似合いすぎて年寄り臭いぞ」

「貫禄があると言え」


 相変わらずの毒舌に苦笑すると、俺は兜を差し出した。あいつが真顔になった。


「命に差し障るような怪我はないとさ。頭が瘤ですんだのは、御領主様が守って下さったのだろう」


 兜に見覚えがあったのは、あの騎士叙任式の前に御領主様から拝領したものだとあいつに見せられたものだったからだ。

 全く飾り気のない、頑丈に作られたそれは、激しくひび割れていた。


「何があった?」

「相変わらず単刀直入だな、お前は」


 身を起こしてやるようにギリアムに命じ、杯を差し出すと、あいつはゆっくり中身をすすりながら話し出した。


 その時身を寄せていた子爵家に命じられ、この戦場で『最小戦力で最大の戦果を出すこと』を命じられたあいつは、敵陣の一つに数人で潜入したのだという。

 目的は暗殺。

 褒められた手段ではないが、そこそこ有能な副官や伝令、魔術士を討ち取れば、それで大きく戦況は傾けられる。目的を果たした後は攪乱を行い、それに合わせて子爵家の本隊がそこへ突入する手筈になっていたという。

 だが、そのうちの一人がある魔術士に重傷を負わせた時に事態は急変した。


「叫び声に気づいて振り返った時には、魔術士を刺したやつの方が死体になっていた。それもからからに干からびてだ。そいつを投げ捨てたあの魔術士は、首から血を噴き出しながら風を操ってオレたちを追ってきた。逃げるオレたちを、いや手近にいた、味方のはずの連中も片端から同じように襲っては、奇妙な笑い声を上げながら干からびた死体に変えていった。オレが死なずにすんだのは、従士なしを補うのに、鎖かたびらに細工をしておいたからだ」


 平坦な口調で話すあいつの手はかすかに震えていた。


「両手に構えていた長剣と短剣もひったくられ、握り潰された。無手になったように見えたから油断したのかもしれん。ひどくゆっくりと間を詰めてきたから、仕込んでいた小剣で抜き打ちで切りつけながらその脇を走り抜けた。なんとか首を落とせた、と手応えに安堵したと思ったら、後はこの天幕の中だ。何が起こったのかはわからんが、あの魔術士、生死の狭間を踏み外していたとしか思えん」

「不死者だったということか」

「だとしたら、見抜けなかったオレの不手際だ。コルヌフェルリエ家の手勢はどうなった?!」

「コルヌフェルリエ家なら、今は陣に引き上げている。フェリウム殿が重傷を負ったようだ」

「殿下?!」


 俺は片膝をつきながら、あいつに囁いた。


「控えろ、クィントゥス殿下の御前だ」

「ああ、構わん。こんな陣中で怪我人に礼を強いることもない。カシアスも楽にしてくれ」

「いや、しかし……」

「おれの命令だ。楽にせよ」


 うるさそうに片手を振ると、ギリアムがすすめた椅子に座り、殿下はあいつの顔をのぞき込んだ。


「貴殿が有名な『放浪騎士』アロイスか。一つ貴殿に尋ねたいのだが」

「なんでございましょうか、殿下」

「このカシアスという男、貴殿と初めて顔を合わせた頃からずっと、こんなかっちん玉のままだったのか?」

「殿下!」


 呆れた俺の前で、あいつの顔が奇妙に歪んだと思ったら、弾けるように笑い出した。


 その後もちょくちょく殿下は俺の天幕に顔を出されるようになった。あいつも驚くほど早く殿下に素直に直答するようになっていた。

 だが、あいつが身を寄せていた子爵家は、一度も使いすら寄こさなかった。当主が戦死したというから混乱していたのかもしれんが、命をかけて騎士の誇りもない任務についたあいつに、何の報酬すらなかったのだ。

 馬と剣を失った騎士は騎士としての誇りを示すことができない。おまけにこんな戦の直後では、そうそう良い馬も剣も手に入らない。入ったとしてもよほどふっかけられることを覚悟しなければならないだろう。俺の剣や馬を与えるというのも難しい。予備はあっても余裕がないのは俺も同じなのだ。


 殿下がまた俺の天幕にやってこられたのは、明日には陣払いをするという晩のことだった。

 しばらく杯を傾けておられた殿下は、ギリアムを追い出すとぐっと声を潜めた。


「アロイス、おれもな、魔力ナシなんだ」


 あいつの出自も、なにゆえ家名も名乗れぬのか、すでに事情をご存じだったのか。

そう悟って、あいつの顔をふと見た俺はぎょっとした。

 あいつが、じつに穏やかに、そして冷ややかな目で笑っている。『できそこない』呼ばわりされたときと同じ顔だ。


「それは殿下、だからこそ御身にも、下賤な私の気持ちがおわかりになるとおっしゃりたいのでしょうか?」

「まさか」

 冷たい棘をあっさり振り払って、殿下はぐいと杯を傾けた。


「ならばお前は、おれの気持ちがわかるのか。母上の家では『父王に良く似ておられる』『武勇に富んだお生まれ』と言葉を飾って褒め称えてくれるが、目は明らかに『できそこないだが使える大駒』と冷ややかに値踏みしてくれる、このおれの気持ちが」


 殿下の母妃は魔術公爵家の出身だったろうか。


「おれは別にどうでもよかった。本当に魔術が使えようが、剣が使えようが、どっちでもよかったんだ」


 それなのに、と頬杖のまま呟く。


「どっちにしろ、どっちができてもできなくても、必ず誰かは『できそこない』と影で呼ぶ。誰の口から出ようと必ず聞こえる。振り回されるのもあまりに馬鹿馬鹿しくなってな」


 考えるのを止めて抛り投げた、と笑みを浮かべた。


「おれができそこないかどうかなんて、おれが決めることだ。おれに卵が産めないからといって鳥の雌のできそこないとは言わんだろう?当たり前のことだからな」


 ただの、在り方の違いでしかない。

 そう言い切って殿下は俺に目を向けた。


「カシアス。お前はどう思う?」

「私は騎士になるしか道はありませんでしたから、もっと彼の気持ちなどわかりませぬ。ですが」


 おれも杯からぐっと飲んだ。


「それでもわかろうとすること、強くなろうとすること、不十分ながらも側に並んで立とうとすることはできるのだと考えております」

「たとえ同じ場所、同じ立場に身を置かなくても、か?」

「ええ。それが私の二つ名になりました」


 戦術の組み立てはあいつの真似だ、と打ち明けると、あいつはぽかんとした顔になり、殿下はあっけにとられた後で破顔した。


「真似で二つ名が上がるものか、カシアス、お前は懐の深いやつだな!そしてアロイス、お前も得がたい策略家だな!」


 ばしばしと背中を叩かれ、むせるあいつに殿下は大きな餌を投げた。


「アロイス、どうせこの戦の後始末がついたら、コルヌフェルリエ家からは退転するのだろう?ならば、おれのもとへ来い」

「で、その代わりに何をいただけるのでしょう?剣と盾ですかな、いえ槍でしょうか。それとも馬をとおっしゃいますか」

「ついでに騎士号もつけてやる」


 ゆっくりあいつが真顔になった。


「正式に叙爵をしたとおれの名で広めてやれば、あの恥知らずの準男爵もこれ以上お前に手が出せまい?」


 そうか、アロイシウスは結局御領主様の家を継げなかったのか。


「なるほど、殿下の方こそ得がたい策略家でおられる」

「世辞はいい。立て、アロイス。おれの騎士となれ」

「……仰せのままに」


 立ち上がった殿下の元に、アロイスはゆっくりと跪いた。


「その剣も槍も振るうは国の敵を葬らんがため。騎士アロイスの名を我が名クウィントゥス・トニトゥルスランシア・ランシアインペトゥスのもとに授ける」

「この身の忠誠も感謝も、殿下に」

「よし、立て」


 殿下は拳を固め、立ち上がったあいつの肩をぽんと小突いた。

 一瞬、あいつの顔がくしゃりと歪んだ。

 これで、ようやくあの時のコレーはなったのだから。


「さて、これで名実ともに騎士となったのだ。存分に働いてもらうぞ、アロイス」

「は。殿下の御意のままに」


 こうして『放浪騎士』は、放浪の日々から離れ、殿下の庇護の下に安住の道を得たのだった。

初めての外伝的な位置づけのお話です。

前部ででてきた『カシアスのおっちゃん視点によるひねくれアロイス少年の記』ですね。

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