閑話 Choked!
本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。
「まあ正解にしておきましょうかぁ。もっともあたしは大魔術師、なんて名乗ったことはないけれどぉ?」
謎女性――いや、半分伝説といってもいい存在、大魔術師ヘイゼルは、ほとんど満面の笑みといっていい表情になった。
完全に、でないのはなぜかというと、まばたきひとつしない目が笑っていないせいだ。そのせいで怖さ倍増だなと、あたしは他人事のように頭のどこかで考えていた。
人間、混乱しきるとどっか意識の妙なところがまだらに冷静になるのかもしれない。
「正解したからって、何があるというわけでもないしねぇ」
「でも、だって、じゃあ」
この身体は。あたしの身体は、この世界に落ちてきた星、大魔術師ヘイゼルのものだ。そのはずだった。
グラミィを名乗っていたのはばればれとはいえ、それを覆い隠すためのフェイクも兼ねていた。
だけど目の前の存在が大魔術師ヘイゼルであることも、ほぼ直感とはいえ嘘とも間違いとも思えなかった。
「どういう、こと」
星屑たちは魔術陣によって身体の持ち主の精神を抑圧し、身体を動かす機能のみを活かした状態になったところへ人格を召喚され、その身体を乗っ取っていた。
言ってみれば持ち主の身体がフレーム、精神が稼働システム。そこに星屑が精神体としてセットされ、操っているようなもの。
そう、人格憑依を行っていた魔術陣を解読したボニーさんは説明してくれた。そのはずだ。
別人の身体に入っているという点では、あたしも星屑たちと同じ。ならばあたしがこの身体を使っている仕組みも同じなんだろうと漫然と思っていた。
もしそうなら、あたしもまた、この身体の持ち主から見れば、自由の簒奪者にすぎないのだと。
だから、大魔術師ヘイゼルにはすまないという気持ちさえ、ずっとどこかにあった。
だけど、ああ、そうだ。
クラーワにGのように大量潜伏していた星屑たちを捕獲した時のことを考えればいい。あれは森精のヴィーリさんたちが額に触れることで動きを止めていた。過剰な魔力を流すことで、精密な人格憑依陣に誤動作を起こしたり破壊したりするのだと。
ボニーさんがラドゥーンたちを手際よく取り押さえられたのも、彼らの額に触れる状況にもちこんだからこそ。
だけど、あたしはボニーさんにおでこチョップされたことがある。そのはずだ。
だけどあの時なんともなかったじゃないか。
つまりそれは――ボニーさんがあたしの動かすゴーレム、いやイマジナリーフレンドでなければ、という条件はつくけれど――あたしの額に人格憑依陣はなかったということ。
星屑たちとは違うメカニズムで、あたしはこの身体を使っていた、という証拠そのもの。
星屑たちの憑依とメカニズムが違うとなれば、目の前のヘイゼルの存在のように、身体と精神を分離させることも可能と考えれば納得がいく。
てか精神だけでも魔喰ライの王コリュルスアウェッラーナを圧倒するレベルとか。完全体になったらどうなるんだこれ。
いや。精神体ではなく、実体が――物理的にも身体がちゃんとあるように見えるって、どうなってるわけ?
そもそもだ。
今あたしの使っている、この年老いた女性の身体がヘイゼルのものだとするならば。
大魔術師ヘイゼルの使っている、その身体はいったい誰の物だというのだろう?
「古着泥棒には教えなぁい」
「古、着、泥棒?」
「いくら着てないものでも、それはあたしのよお」
甘ったるい声は童女のように舌足らずにすら聞こえる。
だけど、あたしがこの身体を使っているのが、ヘイゼルの本意でないのだとすれば。なぜそんなことが起きた?
少なくともあたしの本意でもない。というか、意図して乗っ取ろうとしたわけじゃない。
だけど、自分の身体を勝手に使われているヘイゼルが不快に思うのは当然だ。
そんな気はなかった、という言い訳はたぶん意味がない。かえって加害者が被害者面すんなと激怒されかねない悪手だろう。プチッとされないように立ち回ることを優先するなら、素直に頭を下げた方がまだましだ。
謝罪したとしてもだ。この身体を返せと言われたら――どうすればいい?
それは持ち主の要求としては当然のこと。だけどそれに従うということは、あたしが身体を失うということ。
ボニーさんですら、シルウェステル・ランシピウス師のお骨を拠り所にしていた。そのはずだ。
身体のない精神がどうなるかなんて、死後人間がどうなるかと同じくらい想像もつかない。
だからといって返さないというのは、これまたヘイゼルを怒らせ、プチッとな危険性を高めることになるだろう。
「……あたしを憎んでるの?」
「別にぃ?」
時間稼ぎにと問いを絞り出せば、女性はおもしろそうな顔になった。
「他のよりはだいぶわきまえているしぃ、泣きわめくだけじゃないだけ、まぁだ救いようがある。立ち回りも悪くない」
言い放たれたのは、完全に上から目線の答え。
あたしは理解した。憎むという感情は、自分と同等以上とまではいかないが、ある程度価値があると認めた相手に向けられるものなのだと。
たとえば、人間が足に上ってきた蟻を嫌がることはあっても、憎むことはない。
「――だぁけど、気に食わない。あたしの古着を、無断で着られているのはぁ、気分が悪いのぉ」
なぜなら、蟻程度、払い落とすのも踏み潰すのも、わけはないのだから。
完全に見下されていることにむっとしている暇はない。
ならばどう動く?どうすればいい?
けれどこの状態で目指すべきゴールはどこだ?
「古着泥棒さんはだあれぇ?同じ事を聞いてあげるぅ」
あたしは大きくあえいだ。ひどく息が苦しい。もう周囲の生臭さを気にしている余裕はなかった。
「お人形遊びは楽しかったぁ?人骨で趣味悪いけれど虚構の友人?人形?どっちでもいいけどぉ、守ってくれるものなどもういないのにぃ」
ボニーさんだったら、どう動くだろう。それが一年以上かけて作り上げた、あたしの思考パターンだ。
だけど今、ボニーさんの助けはない。
というか、もし大魔術師ヘイゼルがいうように、ボニーさんという存在があたしの中にしかなかったのならば。助けなどどこにも求めようがなかったのだ。最初から。
ならば諦めずに時間を稼ぎ、足掻く意味はどこにある?
取れる手段は、逃げ場は――ない。
「なぁんだ。一人だってわかっただけでぇ、もう崩れるのぉ?」
ひうっと喉が引き攣れる。
ねっとりとした笑みをとうとう目にまで広げたヘイゼルが、下からあたしの顔をのぞき込んできたのだった。
いつの間に下を向いて――いや、膝が落ちていたのだろう。
「――つまんないのぉ。じゃあ、古着を返してもらおぅかしらぁ」
拗ねたような口調でぐっと腕が伸びてくる。後ろに逃げることもできず、あたしはその指先を――奇妙な色に染まった、長くとがった爪を凝視していた。
「中身もそろそろ食べ頃みたいだしぃ――っ?!」
その爪が静止した。
「グラミィを古着泥棒というなら、あんたはなんだっての。古着強盗?そもそも死体でお人形遊びをしてたのはあんたでしょうに。全く自己紹介おつって、こういうときに言うのかねまったく。つーか黙って聞いてりゃ、すかぽんたんなことばっかり言ってやがるし。呆れるわ」
いつのまにか、ヘイゼルの首に絡んでいる腕があった。
しかし彼女の動きが止まっているのは、後頭部に当てられた……いや、その頭を鷲づかみにした手のせいだろう。
その指にはサックのように長い金属の鉤爪が取り付けられており――その先端はというと、ヘイゼルの鼻の穴に引っかけられていたのだ。
それを見た途端、凍っていた思考が、じわじわと溶けてゆく。
「ああ。動くな、なんて定型文は言わないよ?このまま豚鼻からの鼻血がぶっしゃー!てな、女やめた顔になりたけれりゃどうぞどうぞ」
ヘイゼルは寄り目になったまま動かない。いや動けないようだ。
……ていうか。なんつー嫌がらせだ。それ。
「ちなみにこれ、釣り針みたいに先っぽがとんがっている上に、カエシがついてるんでね。刺さったら抜けないと思っといた方がいいかも。そうなったら贈呈したげてもいいよ。ごっつぃけど鼻ピアスがわりに」
落ち着いた声で示される未来図がなかなかにひどい。
どう考えても完成形が……バビルサとかいったか、あのけったいな牙だらけのイノシシみたいな状態になりそうなんだけど。
そして、こういう嫌がらせ――相手の想像力を掻き立て、心理的拒否感を多用した罠の名手を、あたしはよく知っている。
「ついでにすかぽんたん発言も訂正しといてあげよう。ファンタージェンはたしかに万能の力を奮う権限が与えられる場所って設定がある。記憶――つまり、現実との接点を代償にしてのことだし、ファンタージェンそのものの体現者、統治する幼ごころの君には二度と会えないという制約は動かせない。基本もとの世界との接点もなく、幼ごころの君もいないこの世界の比喩にするにゃあ、無理がありすぎるんですよ。最初っから」
ヘイゼルの背後から、その喉をジト目で締め上げている鉤爪の主の顔が見えた。
人工的な黒髪でも、明るすぎる茶髪でもない。
むこうの世界ではありふれた、ごく一般的な栗色の髪。
見覚えはないけれど、なんとなく親しみの持てる顔立ち。
見た目だけなら、ヘイゼルとほぼ同年代……いや、ひょっとしたらヘイゼルの方が上かもしれない。そう感じるのは人種的な特徴もあるのかもしれない。
だけど表情が全く違う。
ヘイゼルがその魔力のようにどろりとした紫闇の深淵ならば、こちらは大海――月も星も空の高みに上らせては沈め、朝な夕なその色に染まるもの。珊瑚礁の碧も、北海の三角波に覆われた蒼もすべて等しく、そのどれでもあるもの。
その濃すぎて黒っぽく見える目が、あたしを見てにっと笑った。
「おいっす。グラミィ」
「ぼ……」
声が喉につかえた。ようやく出てくるまでに一回転半ぐらいはひっくり返ったに違いない。
「ボニーさん?!」
なんで骸骨じゃなくなってるんだとか、どうやってヘイゼルの背後を取ったのかとか、そもそもあの大量の魔力をどう耐え抜いたんだとか、いろんな疑問が混ざり合う。
だけど、どう考えても目の前にいる女性は、ボニーさん以外の何者でもなくて。
「おうとも。……よく頑張ったね、グラミィ」
じんわりと湧いてきた歓喜や安堵に理解と不信、いろんな感情がぐちゃぐちゃに混ざり合う。
「遅いです!出待ちしてたんですかあんたは!あとやり方がいろんな意味で汚い!さすが大人!さすがボニーさん!鬼!悪魔!骨!」
「……感動の再会第一声がそれかい」
ボニーさんは苦笑した。
「心配もしてくんなかったの?」
「してほしかったんですか。いっつも大丈夫とか心配ないとか言っといて。してほしければ、いい加減無茶しすぎるのをやめてください!」
ぺしっと言うとちょっと眉を下げたものの。……あれは反省してないな。
「やー……。でも言ったじゃん、あたしは欲張りなんだって。手の中にあるものを手放すなんてまっぴらだ。そしてグラミィを守れるのはあたしだけだったから動いた。動きたかったから動いた。それだけの話なんだし」
「無駄に強欲でしょ!我が身で庇っといてそういうこと言うんですか庇われた身としてはありがとうございましたって一応言っときますけど!本音はふざけんなですからねそれ!ぜんぜんありがたくないですからそれ!」
ノンブレスに押されたのか、視線が泳ぐ。眼窩じゃないボニーさんの顔立ちだと妙に新鮮だ。
「……ごめん。心配掛けて悪かったよ」
「悪いと思ってるんなら、勝ち目のない相手に挑んで自分が死んでもとんとんみたいな計算しないでください。返事は?」
「……やるならもっとわかりにくくやります」
おいこら。
「ボニーさん。『二度としません』でしょ。そこは」
半眼で睨むとボニーさんときたら、だってと口をとがらせた。
「一応だけど、死んでもかまわないとは思ってなかったしー」
「……は?」
思わず低音が出た。
「あの状況で勝算あったとか世迷い言を言う気じゃないでしょうね?」
彼我の距離が銀河系の直径ぐらいは開いてそうな、そんな力量差の相手に勝てると思ってたと?
「よ、世迷い言とまで言うかなあ……」
器用に肩だけでこけて見せたボニーさんは、しぶしぶという顔で説明を始めた。
「ラドゥーンたちの身体にぶつけられたのが超高圧縮された魔力だってのは、確かに盲点だった。そのせいで元マグヌス=オプスを助けることができなかったのも認める」
「って、じゃあ、『魔術師』は?」
「黒髪の彼はね、ラームスの欠片を介して心話をくれたんだ。――魔喰ライの王コリュルスアウェッラーナを封じてきたものとして、戦わせてくれと」
たとえコリュルスアウェッラーナがかつて森精の一員だったとしても、いやだからこそ森精はその封を守らねばならなかった。
それが解かれただけでなく、斃された。存在意義がぼろぼろになるのは納得ができる。
そして斃した者が脅威として迫ってきているならば、いっそ自分に自由を返してくれたボニーさんやあたしに感謝することも、命の借りを命で返そうとすることも。
だけど、それでもいつものボニーさんなら、割り込むとか、共闘を持ちかけるとかして、勝率を上げつつむこうの生存率も上げる、ぐらいの計算はすぐにするはず。
「『見よ、そして語れ』。彼の言葉だ。……森精に言われるのは、これが二度目だ。あたしを同胞へのメッセンジャーにするのに、生かすために、彼は勝ち目が薄いとわかってて、あたしに手出しを禁じてきたんだ」
「……」
「だけど、そのおかげで助けられた。二回も見ればネタは割れる」
「いや、わかったんならそこは逃げましょうよ!」
思わず大声で突っ込んだ。元ラドゥーンの二人や、魔力弾が直撃したランシア山の惨状を考えれば、術式を通さない魔力だけの力押しだって、超遠距離にも衝撃波がくるくらいの破壊力があるってわかってたんでしょうに。
「結局逃げられるような状況じゃなかったし。それに、見ればわかったって言ったでしょうが。対応も」
「マヂですか?!」
あたしは驚いた。豊富な魔力は、利益をもたらす。そう、非魔術師だけでなく、魔術師たちも思い込んでいる節がある。
だからこそ、魔術に対する防御は試行錯誤されていても、魔力そのものを防ぐという発想がないことはあたしも知ってた。
たしかに膨大な魔力は荒野を豊饒の地に変えることも、魔術を顕界することもできる。人をより優れた魔術師とすることも、物質をより堅固にすることも可能だ。
だが、それも限度というものがある。
その限度を超えてしまった場合、破滅が待ち構えているといってもいい。
大地は魔力溜まりとなる。コールナーたち魔物には暮らしやすいかもしれないが、人間が生活するには適さない場所だ。
魔術も過剰に魔力を注げば暴発もする。その術式が何を顕界するためのものかにもよるが、都市一つ焼き尽くしてしまうぐらいはたやすいだろう。
生物であれば、まずは魔力過多を起こす。サル系魔物の子孫である人間や魔物たちだって、許容量を超えてしまえば同じこと。
魔力過多が極まれば魔力酔いとなり、それが魔喰ライになる一つの要因にもなる。
……よく考えれば。ひょっとして。
「ボニーさん。前に闇森から魔力をもらったことってありましたよね。あれも結構危ないことだったんじゃないんですか?」
「いや?だってあの緑の風で、あたしたちの魔力は許容量を超えたかい?」
「……いえ」
「ヴィーリたち森精もちゃんと考えてくれてましたとも、そのくらい。あたしたちも魔力を消耗していたところだったしね」
爆発どころか足りないぐらいだったじゃん、と軽く断言されて、……肩から力が抜けた。
「ま、生物の場合は、過剰魔力で精神が先に壊れる傾向があるからね。だけど無生物の場合は物質にダイレクトにその影響がいくのよ」
堅くなりすぎた構成物質は、脆くも破壊される。
「その瞬間何が起きると思う?」
「いやわかるわけないんですけど」
「おいおい~、せめて考えてみてよ」
突き放すと、ヘイゼルを締め上げたまま、器用にボニーさんは肩をすくめた。
「結論。過剰蓄積されていた魔力が一度に解放されることになります」
……は?
「たとえていうなら、堤防を激流が押し流すようなものよ?いやー、魔力吸収陣の開発当初なんてほんと手こずったんだから。魔術陣こさえてんだか爆弾こさえてんだかわかんなくなるレベル」
え。
「じゃあ、あのランシア山の爆発って」
「たぶん、そういうことだろうね。耐えきれなくなった物質が破壊され、含有されていた魔力が解放される。もともと圧縮された魔力が行き場を失った状態なんだ、そりゃ破壊力も大きくなるでしょうよ」
それは、まあ、納得できる。
「だけどあれは、普通なら起きない現象でもある。杖を使って魔術を行使する際、杖が爆発したって話、魔術学院でも聞かなかったでしょ?」
たとえていうなら、のびの悪い風船に空気を入れるようなものだとボニーさんは言う。
通常であれば、ぱんぱんになるほど空気を入れても、一定の膨らみ以上には伸びない。変形もしない。
だけど、空気にも高圧をかけて、むりやり押し込めば……。
「しばらくは圧にも耐える。伸びもする。けれども、限度がきたら破裂する。そういうことですか」
あたしは納得した。
「まあね。で、これ、逆を言えば、魔力を保有許容量を超えるほど物質に流さなければいいってことなんだよね。――ならば魔力を魔力で押さえ込んでしまえば、あたしでも扱えるようになるんですよ」
「いやたしかに理屈の上ではそうでしょうけど!」
そんな大量の魔力を押さえ込める魔力って、いったいどこに……っ!
「……アレですか。ボニーさん」
「思い当たったみたいだね」
にっとボニーさんはいたずらっ子みたいに笑った。
「そう、ベヒモスの魔力をたっぷり溜め込んだ魔力吸収陣。あれを全身鈴なりにつけてたでしょ、あたし。それを全部破壊して、放出した魔力で迎撃、押さえ込んだというわけ」
お骨は避けたんだけど、魔力吸収陣しこんでたとはいえ、鎌杖の刃が砕けたぐらいならまだしもローブまで破れちゃってさあ。自己修復機能つきで助かったわ、などと軽く笑うあたりがもうね、なんというか。
ぶっつけ本番でやっていいこっちゃないでしょうに。
……だけどよくわかった。あたしはヘイゼルへの交渉を命のかかった綱渡り気分でやっていたけれど。ボニーさんの場合、綱じゃなくて糸の上で逆立ち目隠ししながら曲芸やってるようなことをしてるんだって。
「でもぶつけられてわかった。ヘイゼルは火力バカだが、それだけだ。あたしのように魔力そのものを見る力は弱そうだ、これならなんとかできるって思ったわけ。――納得してくれた?」
「……少しは」
「少しかい」
「ちょびっとに決まってますよ」
突っ込まれたけど落ち着けばいくらでも疑問は出てくる。
どこからボニーさんは出待ちしていたのか、とか。
そもそもここはどこなのか、とか。
森精に「見よ、そして語れ」と後を託されるのは二度目。
一度目は、森に身を変えたペルに頼まれてます骨っ子。




