多頭竜の狙い
本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。
「ゑ」
「どうだ。こいつは知らなかっただろう」
固まったグラミィの様子を見るや、『魔術師』は無駄にドヤ顔をした。
……うん、まあ、知らなかったというなら知らなかったけど。なあ。
〔どうしたんですが、ボニーさん。微妙な表情して。てかボニーさんが微妙な表情してるってわかっちゃうあたしもなんなんですけど〕
うん、すごいすごい。あたし検定1級合格ぐらいすごい。
〔なんですかその検定!〕
律儀に脇道へ突っ込めるのは、余裕の表れか、それともパニックになっているからか。
だが当の、マグヌス=オプスの反応やいかにと見れば……彼は肩をすくめて苦笑してみせただけだった。
「と、こいつは言っているわけだが。……シシャ、あんたは本当だと思うかい?」
「は?」
「こんな馬鹿げた話を信じるようじゃあ、あんたの評価はオレの中で大暴落するんだが」
いかにも心外そうに両手を広げてみせるその仕草だけなら、『魔術師』の大嘘に困惑しつつも笑い飛ばしているようにしか見えないのだよね。うっかりすると魔力の方を読み違ってんじゃないかと思うくらいだ。
演技面でも格という意味でも、やっぱりマグヌス=オプスは『魔術師』とは役者が違いすぎる。
だけどね。
「『どうでもいいことだ。お前がどう思おうが』」
ばっさり切りますともそこは。
たしかに奇天烈な髪型をのぞいて、マグヌス=オプスは一般的な日本人に見える容貌の持ち主だ。落ちし星特有の膨大な魔力量も感じ取れる。
だからあたしも落ちし星だと名乗られて信じた。それが身体的特徴のせいだけだというのなら、たしかにマグヌス=オプスが他者の身体を収奪しているというのは、あたしの判断ミスを誘うくらいには強い手札なのだろうけど。
ああ、今のあたしにまともな目玉がないのがつくづく残念ですよ。あったら今絶対とっても生ぬるい目を向けていただろうから。
マグヌス=オプスと『魔術師』、その両方に。
「『信じる必要もないだろう。推測ぐらいはしていたのでね』」
〔って、ええええ?〕
いやあの。グラミィまで驚かなくてもいいんじゃない?
〔で、でも、負け惜しみの後出しじゃんけんとかじゃなくって?〕
違いますとも。てかどういう目であたしを見てるんだあんたわっ。
「さすがだな。シシャ」
心話でごちゃごちゃと話し合っているところへ、マグヌス=オプスが声を掛けてきた。
…………笑みを浮かべたまんまってのが、おそろしいんですけど。
「いったいいつから疑ってたんだ?」
「『マグヌス=オプス、お前の話を聞いた時からだ』」
「こいつの身の上話だぞ。嘘があると思わなかったのか?」
「おい」
マグヌス=オプスは『魔術師』を半眼で睨んだ。
「見損なうなよ。お前相手じゃあるまいし、シシャを相手に嘘なんざ言うか」
あ、うん。確かに意図的に吐いた嘘はほとんどないよね。だけど。
「『嘘とまでは言わないが、誤導するような物言い、言わずにすませたことなどはいろいろあったな。――たとえば、異世界、というか平行世界から、自分自身たちの精神をいったい何人召喚したか、とか。ラドゥーンを設立するまでに何年かけたか、とか』」
「…………」
あたしの魔力による疑似知覚はいろいろ抜けがあるものの、周囲の地面、空気に微量に含まれる魔力を知覚することで、こっちの直接知覚できないところにあるものの様子までわかるという利点がある。
自分の背後の様子を直接視認せずに、ガラスのコップに映った影である程度把握するようなものだろう。
『魔術師』に向けていたマグヌス=オプスの表情は、一瞬だが明らかに歪んだのだ。
そこまであたしが読むのは予想外だったか。残念だったな、そっちの思惑通り道化を演じるつもりはないんですよ。
「『リトスで聞いたときには、異世界からの召喚も最初の成功例が出たところで、すぐに袂を分かったような口ぶりだったが。さて、実際には何回試行を繰り返した?」
「……なぜ、今さらそんなことを聞く?」
「『簡単な話だ。いろいろとあわないのだよ』」
つじつまとか計算とかがね。
異世界人格召喚の術式一つとっても、まぐれの成功一発程度でなんとかなるもんじゃない。
たとえその時点で理論そのものは完全なものになっていたとしても、それで終わりじゃない。再現性の高い安定した手法を確立して、初めて成功と言える。
おまけに、現在スクトゥム帝国の大部分を星屑たちを埋め尽くしている様子を見ればだね。さらに大量生産するための改良が行われたんだろうなという推測だって、するする繋げられるわけだ。
もとになった星屑召喚陣だかも、魔力を大量に消費するので、精神だけの召喚も大変だったようなことをマグヌス=オプス自身が言っていたもんな。
だけど、それらの改良には開発者のひらめきや工夫だけじゃ足りない。時間が必要なのだ。
「『術式の改良にお前が手を貸していないのなら、それをやり遂げた『魔術師』の能力が、わざわざ罵倒して見せかけるほど低くはないということになる。逆にお前が手を貸していたのなら、決裂まで長い長い蜜月があったということになる』」
「…………」
マグヌス=オプスが袖の中で手を握りしめるのを感知しながら、あたしはグラミィ越しに指摘を続けた。
「『いずれにしてもお前たち二人だけでは、スクトゥム帝国を今のような状況になどできまい?ならば解決手段として担い手の数を増やしたということだろう。わかりやすい理屈だな』」
「それも推測か」
「『互いの人数を削り合ったというのなら、削れるくらいの人数がすでにその時点で召喚済みだったということでもあるのだろう?』」
なにせことは異世界人格の召喚なんですよ。この世界の人間の身体が、ガワとして必要になる。
つまりそれは、召喚術式の試行を繰り返し、星屑たちの大量生産も継続的に行おうとするのなら、それだけの人数、この世界の人間を彼らが次々と捕獲し続ける必要があるということでもある。
いくら彼らが魔術を使えるといっても、この世界の人々にだって魔術師はいる。警察――はいないが、官憲のたぐいがそれほど無能というわけでもないだろうし。
ならばたった二人で人間の拉致監禁なぞ、そうそうやり続けられるとも思えない。
二人でできなければ人手を増やせばいい。そういう発想に行き着くのは、そんなに無理筋じゃないと思うのよ。
ただし、彼らの数が増えれば増えるほど、この世界の失踪者が増えることになるという問題の、根本的な解決策などどこにもないのだけれど。
もちろん試行錯誤の段階で失敗もあっただろうから、廃人となった者も出ただろう。ショック死したりもすれば、遺体も始末しなければならない。
失踪者の数をごまかすため、失敗作に交えて何人か成功作をごまかし要員として放流、本人がひょっこり戻ってきたふりをさせようにも。
大量生産化された星屑たちって、身体の持ち主が持っていて当然の知識や技能どころか、一般常識まで使えなくなってたもんなあ……。
もし、ラドゥーンたちが増殖するのに使った召喚術式が、ガワの人たちの精神的財産にアクセスできないって部分まで星屑たち同様だったとするならば。
……これ、めちゃくちゃ不審に思われると思うんですよ。
記憶喪失を装うにしても、じゃあなんでそんなにぽこぽこ記憶喪失者が出てくるんだって話になるもんなー。だったらまるっと行方不明扱いの方が楽かもしれん。
おまけに人数が増えれば増えるほど、別の問題も持ち上がるだろうし。
「『たとえ元が世界の壁を越えたとはいえ同一人物であろうが、それだけの人間の集団を維持するには組織が必要だろうよ。それがラドゥーンだろう?』」
……推測だが、ラドゥーンは当初研究者の秘密結社、というか互助組織に近いものだったじゃなかろうか。
魔術の研究に傾注するという長期目標達成のため、必要な人材――人間の材料と書いてそう読むたぐいですな――の確保など、短期目標の達成には協力しましょう、という相互扶助。
研究そのものは非人道的ではあるけれど、いやだからこそなのか。いっそう結束も口も固くなるというもの。
「『だが、どれだけ秘密にしていても、関わる人数が多くなればなるほど派閥もできる、周囲にもばれやすくなるものだ。そして危険視もされやすくなる。主に為政者に』」
ここはスクトゥム帝国なんですよ。つまりこの国の人間は、直接的にであれ間接的にであれ、皇帝の所有物ということになる。
前例のない行方不明者の急増も、確かに人の流出入が激しい帝都レジナのような大都市ならば、ある程度はごまかせるだろう。
が、あくまでも『ある程度』なのだ。
不審を招けば都市の衛士が、いや規模と深刻さ次第では軍も動くだろう。
「『司法を抑えこむには、スクトゥム帝国そのものを抑えておく必要がある。だから対抗措置として、国の組織に彼ら自身を潜り込ませた』」
「……まったく、見てきたような嘘を言い、だな?シシャ」
「『事実ではないだろうが、真実に近くはあるのだろう?』
「そう判断した根拠は、オレの喋ったことだけか」
「『いいや。ほかにもあるぞ。――その一つが彼らの呼び名だ』」
心話で指示すればグラミィの指はぴたりと『魔術師』を指した。
「『お前が殺した者を何と呼んだか。聞いていたぞ』」
『魔術師』が殺した『将軍』もまた、軍の――ひいては国の役職名だ。
そいつがただのハンドルではなく、スクトゥム帝国という国家の運営にかかっているのなら。
ラドゥーンたち相手の戦いは、まさしく国が相手の戦いだったのだ。最初から。
「……階級を自称していたら信じるとか。バカじゃねえの」
「『その一つ。そう言ったのだがな』」
まったく頭も悪ければ耳も悪い、とまでは言いませんが。
ぶっちゃけ星屑たちのあり方を考察しただけでも、見えてくることがあるんですよ。
「『ラドゥーンの構成員ではない者たちには、おまえたちではない異世界人もいたのだろう?彼らはスクトゥム帝国を、いやこの世界そのものをゲームの中と理解していたようだった』」
たぶんこれ、どこかで自分ではない誰かも召喚できるよう、術式に仕様変更がされたんだろうなと思うのよ。でないと星屑たちすべてがラドゥーンのデッドコピーとは思えないほど、多彩な理由がわからない。
無数のパラレルワールドから召喚してくるのなら、そりゃ確かにある程度性格にも違いが生じてもおかしかないが、程度ってもんがあるだろう。相違しかなければ同一人物と認識されるかどうか。
いずれにせよ、星屑たちはラドゥーンの闇深な知識を完全に共有していない。だからこそ、彼らはある意味ラドゥーンたち以上に奔放だ。
「『思い込んだ認識と食い違う現実があれば、不満が不信となるのも時間の問題だろう』」
召喚された人たちにも感情がある。というか、むしろラドゥーンたちより強い感情を持っているかもしれん。それは抱く不満の強さにも言えることだ。
召喚されたのがたとえ精神のその一部だけでも、思考能力を制限されていても、集中力を乱されようと、歪曲された現実に不満を募らせれば、暴動すら起こしかねんのが集団心理の恐ろしさ。
「『暴発を押さえ込むなり回避するなりできなければ、彼らの近くにいるだけで被害をこうむることになる。人数が多ければ影響も強まる。遠くに逃げても躱しきれるかどうか。ならば』」
「鎮圧したり、なかったことにしたりすることができるだけの権力を手に入れているだろう、ってことか。まいったね」
マグヌス=オプスは笑顔でおどけたように両手を上げた。
あの一瞬の表情を知らなければ、あいかわらずこちらに好意しか抱いていないようにすら見えるところが、じつになんともすさまじい。
「『ところで、スクトゥム帝国掌握までに何年かかった』」
「……忘れちまったよ。でも結果より費やした時間や努力を認めて、理解してくれるやつがいるのは嬉しいもんだなあ」
言葉通り、さらに嬉しそうに笑ってみせながら答えをはぐらかしもする。
いやでもさ。
星屑たちにこの世界が、いやスクトゥム帝国に限っても、ゲームの舞台だと信じさせるには、属州も含め、この大陸の四半分以上を占める帝国をまるっと牛耳らねばできはしない。
それだけの大仕掛け、いったいどれだけの人数で、どれほどの歳月を費やせばできるというのか。
時間の経過の問題は他にもある。
「『マグヌス=オプス。お前はリトスで言ったな。クズにアビエスの御堂に閉じ込められて十年はたったと』」
確かに帝国を手に入れるため、一時期マグヌス=オプスと『魔術師』は足並み揃えて仲良くやっていた、んだろう。
彼の昔語りもそこは嘘じゃないと思う。
だが二人は平行世界の自分自身を召喚し、増殖し、決裂した。どこに不和の種があったのかはわからないが、強固な結束を誇っていたはずのラドゥーンに亀裂を入れ、異世界人とそのコピー同士で――ひょっとしたら同一人物同士でも――戦った。
星屑たちに一切気づかせることなく、ラドゥーンの存在を表に出すことなく暗闘をやりおおせたってのは相当なもんだが、その血みどろの仲間割れを制したのが『魔術師』だったとは、マグヌス=オプス自身が言ったことだ。異世界の自分自身を捨て駒にして。
「『その闘争に決着がつくまでにも、いったいどれだけの時間がかかった?』」
「さあてね」
マグヌス=オプスはまだ口の端だけで薄く笑ってみせたが、その笑みはわずかに引きつっていた。
そう、マグヌス=オプスは、そして『魔術師』は、長い長い時間をラドゥーンの作成に、スクトゥム帝国の掌握に、星屑たちの召喚に、そして互いの闘争のために費やしていたということになるのだ。
並の人間の寿命では二回ぐらい転生しても説明の付かないほどに。
魔術師としての技術の研鑽に費やした時間もあわせたら、それこそ人生何周分だよ。
たとえ長生きできるほど自分の身体が頑健だと最初から知っていても、これらすべてに取り組み達成しようと思えるかっての。あまりにも重たすぎるライフワークというやつじゃなかろうか。
「『いずれにせよ、疑似的にでも自分を不老不死化する手段でも手に入れてなければできることじゃない。そのくらいの目処はついていたからできた推測だ』」
もっとも、その手段が、落ちし星を使って自分自身の精神召喚――憑依だとは思わなかったわけで。
なんせ異世界転移者だって、そうそうしょっちゅうこの世界に落ちてくるものでもない。入手できるかも、その質すらも不確定性が高すぎるもの。
単純な話、落ちし星が女性だったらどうする気だったんだか。……ひょっとしたら、スペアボディを確保するための母体として、飼い殺しにでもする気だったのか。
「……なーるほどね」
とうとう感情を隠すことを諦めたのか、マグヌス=オプスが呆れ返った声を投げてきた。
「シシャ、あんた裏の読み過ぎで嫌われるタチだろう?」
「『どうでもいいな。そんなことは』」
ええ、知ったこっちゃないですな。そんなこた。
二回繰り返してでもばっさり言い切りますともそんなもん。さしすせそ対応なんかするもんか。
自尊心の肥やしに他人を見下げないと気が済まない人間のご機嫌取りって苦痛ですよ。マジで。
そうかと言って卑屈に自分かわいそうを繰り広げる人の相手も嫌だけどね。なぜ不幸自慢のサンドバックになって、キモチヨクさせてやらねばならんのだ。
それにあたしの推測はまだ終わっちゃいない。
「『他の人間の身体を乗っ取っているというのなら、もうひとつ訊ねよう。その身体は、いったい何人目だと』」
ぎょっとしたように『魔術師』が顔を上げた。
いやだってさあ。そうそう短時間でできたこっちゃないでしょ?ならば身体の入れ替えだって相当数やってるって考えられるんだけど。
「『魔術師』なら、そいつでたしか三人目だ」
「なにを。俺は自前だ!」
「自前で調達をしている。そういう意味だろう?」
……うわ。
ラドゥーンたちの言い合いには、さすがのあたしもどん引きですよ。
〔ボニーさん、ちょっと、これ〕
ああ。マグヌス=オプスばかり警戒してたけど、『魔術師』の方も、想定していたよりかなりタチが悪かった。
だって、森精だよ?
彼らの半身たる樹の魔物たちとともにあったら、この世界じゃほとんど無敵の生命体の一つだとあたしはこっそり思ってるくらいだ。
その身体を奪って、自分の精神を憑依させてる――いや、元の身体に戻ることはなさげだから、乗っ取ってるの方が正しいのか――ということは、それが個人で、もしくは個人たちで、できるだけの能力とあくどさがあるってことだ。
森精に対する執着心の強さも。
〔執着心ですか?〕
だってどう考えても、一般人より森精たちの方が無力化も拉致監禁も困難でしょうが。
それをわざわざ選んで自分の身体にしてるってのは、並大抵の熱意じゃない。
……いや~な想像しちゃったよ。
アエスでの森精虐殺。あれ、落ちし星の保護のためにアエスに入った森精たちが、次々とゾンビ化された人たちに拘束、樹杖をもぎ取られ、無力化されて殺されていったという事件だった。それをあたしは樹の魔物たちの蓄えていた記憶――混沌録から感情込みで知った。
だが、拘束された森精すべてが殺されたかどうかまでは確かめていないのだ。
ということはだ。
その時に拘束した森精も、『魔術師』の身体に利用されてたんじゃなかろうかという推測もできてしまうというね。
いや、もっと悪く考えるなら。
森精たちが保護しようとしていた落ちし星。
あれもラドゥーンたちによって、森精たちを誘う餌というか囮として設置されていたんじゃなかろうか、とか。
じつはその落ちし星もマグヌス=オプスのボディとして利用されてたんじゃ、とか。
そもそも囮として配置された時点で、中身がマグヌス=オプスになってたんじゃないか、とか。
……カリュプスでの落ちし星の扱いを考えると、魔力タンクとして使い潰されるのがいいか、それとも他人に自分の身体を乗っ取られて、いいように使われる方がマシかという、なんともろくでもない二択すら想像できてしまうあたり、じつに救いがないな……。
「まあ、どっちにせよ弱肉強食、やられた方が間抜けで弱かっただけってこったな」
「『弟子のクズとやらに封じられていた師匠がいうと、重みが違うな』」
「ぐ」
マグヌス=オプスは詰まったが、もちろん嫌みですよ。
これまで彼が見せかけていたように、一方的に『魔術師』にやられていただけの被害者ではないってことは、よっくわかりましたから。
まったく、似合いの棒組だよあんたら。
だがまあ、品位人格の目くそ鼻くそド外道最下位決定戦はさておいて。
あたしが知りたいのはその先だ。
「『で、結局何をやるつもりだったのだ?仲間を増やす、力を蓄える、国を乗っ取る。そこは理解できるが』」
別の世界の自分を残機扱いし、森精や落ちし星たちを消耗品のように乗り潰して、疑似的にとはいえ不老不死を獲得したんだ。
最低数十年、いや百数十年以上は歳月をかけてだろう、帝国一つを手中に収めもした。ほっといたって千年帝国ぐらいは維持できるんじゃなかろうか。
だのに、彼らのやったことは星屑たちを作るためにこの世界の人々の身体と、異世界の人々の心を費やし。この世界がゲームの舞台でもあるかのように星屑たちに思い込ませて茶番を繰り広げることだった。
その理由はなんだ?
「『コンセプトとはなんだ?目的はなんだったのだ?』」
「さすがにそこまではあんたも掴んじゃなかったか」
笑みを取り戻してマグヌス=オプスがうそぶいた。
「目的はただ一つ。黄金の林檎を喰らうためさ」
……いや、守護対象を喰っちまう守護者ってのは、いろいろとダメじゃないかね?
副題、『目くそ鼻くそ決定戦』。
……さすがにこれじゃいろいろとだいなしだと切り替えましたが。
なお、マグヌス=オプスとは、ラテン語で『偉大なる仕事』の謂だそうで。『ライフワーク』や『傑作』とも訳されるそうです。




