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王への祈祷

本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。

(ほねー)


 ヴィーリが隠し森を解除すると、フームスとカルロが駆け寄ってきた。


(においないー)

(くらくらない)

(  )


 それぞれのおでこにちょんと乗っけたラームスの葉っぱも、色が変わっていない。

 施設の中の確認をしてもらっていたのだが、どうやら、夢織草(ゆめおりそう)の効果はなくなったようだ。

 ありがとうと、あたしは葉っぱにも、幻惑狐(アパトウルペース)たちそれぞれにも触れて、魔力(マナ)を渡した。

 ちょうどいい頃合いだ。


(ヴィーリ。あなたからも情報が欲しい。そのためにみてもらいたいものがある)


カッシウスへと森精を促すと、グラミィと、なぜかコールナーもついてきた。いや、いいけどね。


葉擦れ(情報)のみを欲するというのは、この世の人としても無欲にすぎる」


 しばらく黙って隣を歩いていたヴィーリがぽつりと言ったが、そいつは買いかぶりというものだと思う。もしくは、求めてるものの違いだろうね。

 この世界の人々が森精に満たしてもらおうとしてきたのが、権力欲だったのか、それとも物欲、あるいは恋心(性欲)だったかまではあたしは知らない。だけど今のあたしにとっちゃ情報こそが最も必要なんですよ。情報も武力ですから。

 森精に求めるものが、権威の正当性を担保ではなく、政治的優位性とか、権力とかを確立するため結びつきを誇示したいわけじゃないってだけで、下心満載ってところはあたしもこの世界の人間と変わんない。

 だから、強欲にもあたしはさらに要求を重ねる。


(ウンボー半島やロリカ内海だけでなく、内陸部の情報も渡してもらえるとありがたいのだが)


 できればリアルタイムで、というのはさすがに欲張りに過ぎるだろうかとも思ったのだが、森精はあっさり頷いた。


「風は銀の梢を渡るだろう」


 そちらにつなげられるようにしておこうと。……ああ、銀の樹の魔物たちにか。

 なお、彼らにあたしはプルヌスと名付けた。なに、ちょっとした未練を重ねただけだ。

 しかし……情報をもらえるのはありがたいが、さすがにあたしが毎度毎度混沌録に接続していたら、精神がもたなさそうだなあ。人格崩壊は勘弁していただきたいんですが。


(  )


 そのへんのフィルタリングは任せていいと。

 

 ……なるほど、プルヌスたちが情報支援特化なわけだ。

 ラームスたちは、基本蓄積した情報に分類を行うことはない。あたしが彼らのデータベースを混沌録と呼ぶのはそのためだ。

 五感に感情のミックスがモザイクになってとろけてるようなものですよあれ。強固な意志と目的意識を持たず、不用意に入り込んだら、単なる精神的拷問にしかなりませんから。それも体感は時間経過ナシの無間地獄。


 だけど、プルヌスたちは、それぞれをライン分けした挙げ句、それぞれに別個の変数をかませることができるのか。

 視覚情報メインで、他の体感は控えめにすることも、感情をオフにすることも可能というのはありがたい。

 グラミィもほっとした顔になったのは……うん、あたし見てたらそうなるか。


〔ところでボニーさん、換気以外にもなんかしました?〕


 魔力吸収陣のおおかたは止めといた。そのぶん、あのじわーっと魔力を吸われている感覚はなくなってると思う。

 あの冷気、地味に嫌がらせをされているような気分になるからねー。

 対策を考えない限り、正直自分で自分の首を絞めているようなものだが。


 コールナーも一緒にゴンドラに乗り、最初に向かったのは地下四階だ。

 グラミィよろ。


〔あーはい、了解です〕


 グラミィを先頭に、あたしたちは最奥のボス部屋に再突入した。

 とはいっても、あたしとヴィーリはフードをかぶり、コールナーは部屋の入口での待機だ。

 ラドゥーンの一員、『兜職人』は眠っていた。


(ヴィーリ。あなたに診てほしいものの一つは、この者の容態だ)


 これまでに判明した事については、あらかたヴィーリに伝えてある。

 この施設が星屑(異世界人格者)を増やすためのもので、異世界人の人格を搭載するための召喚陣、その他多くの魔術陣が設置されていること。

 星屑を増やしている星屑――ラドゥーンの一員である『兜職人』が、ウィキア豆中毒と思しき症状で重態だということを。


 無言で頷くと森精は淡々と男を診察した。

 そして離れかけた時だ。


「……誰か、いるのか?」


 星屑が起きた。すかさずグラミィが前に出て行く。


「ばーさんか」

「相変わらず失礼なやつだの!まったく」


 グラミィがわざと舌打ちをして、手荒に水を飲ませてやると、『兜職人』は口をとがらせて訴えた。



「だけどばーさんの名前も知らねえもん」

「なら『魔女(ウェネーフィカ)』とでも呼べばいいではないかの」

「なんだそれ」


 男は低く笑った。


「『聖女(サンクトス)』の逆ってことか」


 グラミィは鼻を鳴らして背を向けた。

 あんたたちの生贄にはならない。そういう意味だとわかったかどうか。


 上で作ってきた粥を食べさせると、じきに男はとろとろとまどろみはじめた。混ぜ込んでおいた鎮痛剤は、昨日飲ませた自白剤機能付きのものより睡眠導入効果が高い。

 夢の中に落とし込み、何もさせないこと。『兜職人』への扱いはなにも変わっていない。変えるつもりもなかった。


「……なあ。オレの名前って、なんだったっけ」


 だから、部屋を出る間際に聞こえた小さなつぶやきには、グラミィも答えはしなかった。

 それでいい。


〔ですけど、ボニーさん……〕


 あたしは答えずヴィーリに訊いた。


(どうだった)

「病葉には虫も食わぬ。散り敷いた葉は枝に戻らぬ」


 手遅れ、ということか。

 ……うすうす予想はしていたけれども。


(できることは苦痛を緩和してやるくらいか)


 たとえ『兜職人』が、他の星屑たちのように、自分の名前の喪失に精神的な苦痛を感じていようと、あたしたちにできることはない。

 せいぜいが、今のようにひたすら眠らせるか、あるいは肉体的な苦痛を和らげてやることぐらいだろう。


「するつもりか?」

(苦しんでいる人間を見て、悦に入る趣味はない)


 ただの自己満足にすぎなくても。

 そう伝えると、ヴィーリはゆっくりと瞬きをした。


「……いつごろから、豆を?」

(夏ぐらいから食べ続けていたようだ)


 ヴィーリは小さくうなずいた。症状の進行度合いにでも、何か感じるものがあったのだろう。


「もともと、草も木も、種や芽の裡より毒を持つものだ。たった一種の葉、茎、種。そればかりを食べ続けていれば、根も絶える(命にも関わる)というものだ」

(だろうな。わたしの世界でもそういうものはあった)

〔まじですか?!〕


 グラミィはえらく驚いたようだったが、ほんとのことですとも。


 たとえば、日本ではあまり知られてないことだったけれども、粟やトウモロコシを主食にし続けるのだって、正しい食べ方を知らない限り、わりとリスキーな行為だったりする。

 おやつにトウモロコシの一本や二本食べるとか、毎日雑穀米を食べる程度であれば問題がない。

 しかし、生存に必要なカロリーを、ほぼすべてそれから摂取するという意味での主食にしていると……。

 発疹が出るだけならいい方で、虚弱体質になったり倦怠感に苦しんだり。

 果ては幻覚や脳障害を起こした挙げ句、死に至るんだとか。

 その予防のため、たしかネイティブアメリカンなどはトウモロコシを煮込むのに石灰を混ぜていたとかいう。

 

 食用になるというのは、有害ではないということを意味しない。短期的には害が現れないということなのだ。

 だからむこうの世界の米や麦、この世界のトリクティムだって、実はそういう危険がないともいえない。

 ただ、人間が食べ始めてこのかた、長期間の安全性テストが現在進行形で行われているようなものだから、食べられていない他の穀物よりは、危険性が少ないと思われるってだけで。


〔ええー……〕 


 生存戦略を考えれば、もともと植物が毒を持つのは当然のことだろう。

 草食動物の餌になることは、草木の存在意義じゃないんですよ。

 なのに、一種類の植物のみを食べる草食動物が増えたらどうなるか?

 人間が単一栽培(モノカルチャー)って形で、大量に同一種の生存を確保していない限り、植物の側からすれば、その種だけ滅亡の危機に瀕するようなもんじゃないのかね。

 進化系統樹において、人間の関与って、これまで種を絶滅させたって方向でしか痕跡が残っていないんですよ。


 草食動物といえど、一種類だけを食べ続けるような種は多くない。

 コアラがユーカリしか食べないというのは有名な話だが、それだって気分によって違うユーカリを食べ分けてたりするらしいし。

 蚕は桑の葉しか食べないが、その前に人間に育てられないと生きてけない生態に進化しちゃってる。

 それらを考えると、ひょっとしたら、森精たちの中では経験則的に雑食による毒性相殺とか、わかってるのかもね。

 人間にもそういった知識があるのなら、むこうの世界よりバランスのとれた食生活が早く広がりそうなものだ。


 閑話休題。

 話はそれたが、植物の敵意は恐ろしいものなのだ。

 怖いのはそこに他人を巻き込むこと。星屑たちを狙い撃ちにしようとしても、その身体はこの世界の人のものなのだから。

 ……ウィキア豆中毒なんてものを仕掛けた、あたしが言うこっちゃないんだけども。


 あたしのしでかしたことも、洗いざらい伝えたというか懺悔すると、ヴィーリは興味深そうに頷いていた。

 ……『兜職人』の病状に見慣れた様子があったってことは、少なくともヴィーリのアクセスできる樹の魔物たちの記憶の中に、ウィキア豆中毒についてはかなり詳細なデータがあったということだろう。

 とすると、おそらく森精の関心を惹いたのは、既存の情報じゃない。バグらせた豆の播種という手法と、類推によりウィキア豆中毒というものにあたしがたどり着いたことに重きを置いているとみるべきか。

 スクトゥムに広がる森――樹の魔物たちを使って、回収した星屑たちをなるべく回復させると言ってくれたのに、あたしはひそかに安堵した。


 次にあたしたちが向かったのは、地下二階。ゾンビさんたちのところだ。

さすがにこれだけ大量のゾンビ化された人間を見るのは初めてだったのだろう。

 薄く驚きを示すヴィーリに、あたしはさらにすべてをぶちまけた。


 このカッシウスという施設に、星屑たちをインストールするためのこの世界の人々――ゾンビ化された人たちがこれだけ大量に留め置かれていること。

 この施設とほぼ同じものが、スクトゥム帝国のどこにあってもおかしくはないこと。


 昨夜、夢織草で燻した『兜職人』に付き添ってた時のことだ。

 ついでだから、グラミィが読み終わった業務日誌のたぐいを、不審に思われないよう元の場所に戻しておくよう頼まれた――というていで、あたしはグラミィからそれらを預かってきていた。

 そして片っ端から読んだ。

 グラミィにはやんなくてもいいとは言われたが、運命共同体(相棒)にだけ、荷物を負わせるのもどうかと思ったこともある。


 ……つくづく、読んでおいてよかった。

 まあ、いろいろ出てくるわ。

 ダイジェスト報告をするために、グラミィがかなり無理をしてくれていたということもわかりましたとも。


 そもそも『運営』――やつらが自称している『ラドゥーン』は、たしかラドンの別読みだったと思う。

 ギリシア神話に出てくる、黄金の林檎を守る百の頭を持つ大蛇。

 ひょっとしたらそれも引っかけてあるのだとしたら。頭を増やす『兜』も『兜職人』も、そらいくつも何カ所にも作っておくでしょうよと妙な納得をしてしまったくらいだ。


(それらがある土地は、ここの立地から考えると、帝都レジナのような大都市近辺で、しかも交通の便が一般的には悪いと思われているような場所と見るべきだろう)

「そのような地を探そう」


 眉間に皺を寄せていた森精は、即座に答えた。


 ……安堵の息がお骨状態でも吐けるものなら、あたしは盛大に吐いていただろう。

 プルヌスたち強力な樹の魔物たちも預けてもらえたことだし、頼んだと言われたウンボー半島ぐらいは、責任持って確認するつもりでいましたとも、そりゃ。

 だけど、すべての属州まで手を回すには、組織力ってものが必要なんですよ。

 今のあたしには足りない力だ。たとえ船団に戻ったところで、焼け石に水だろう。


 けれども、ヴィーリたち森精と、その半身たる樹の魔物たちにとっては、その森内部の把握なんてものは呼吸をするようなものに近い。

 ローラー作戦なんて得意中の得意なのだ。

 そのぶんテリトリーを広げるのが大変という話はあるが、ロリカ内海を海森の主たちの森が増殖しているのなら、話は簡単だ。

 なにせ人の数が極端に偏っている上、土地からじわーっと魔力が吸収されてるような場所という立地条件は、魔力的にも目立つだろうから。


 そしてあたしは、ヴィーリをこの伏魔殿で最も闇の深い場所へと導いた。


(……この地下三階って、アロイスやラミナさんも降りなかった階ですよね)


 グラミィが訊いてきた通り、魔力吸収陣を置いただけで通過しましたとも。

 なお、生身組には夢織草の煙を吸わないようにという注意とともに、地下を立入禁止にしておいた。

 加えて、ばらまいた魔術陣は、換気用のいくつかを残して、他はとうにすべて停止させてある。

 万が一にでも降りてきたアロイスたちがうっかり効果範囲内に入ってしまったら、彼らからも容赦なく魔力を吸い取ってしまう仕様だしね。


 日誌のたぐいを読み終わった後、あたしはこの施設の中をほとんど隅から隅まで見て回った。

 いざとなったら呼んでくれるよう、一輪挿し風に飾ったラームスの枝に頼んでおいたが、コールナーや幻惑狐たちすら一緒にいないという状況はなかなか珍しいと思う。いや、ラームスの欠片たちは一緒だったけれども。

 

 だけど、同行者たちはこの階には踏み込ませなくて、つくづく正解だった。

 とんだ邪悪の詰め合わせセットなんだもん、ここ。

 たぶん、この施設の中でも一番ヤバい場所だと思う。

 希望の欠片もないパンドラの箱なぞ、開ける前に跡形もなく粉砕してくれるわ、といいたいところですよ。

 なお語源的には箱ではなく壺だったらしいですな。パンドラの災厄詰め合わせは。


(……っ)


 グラミィがぎゅっと杖を握りしめた。

 彼女が解読してくれた通り、ここにある魔力吸収陣は、単に発電機兼充電池的な役割を示すものじゃない。

 人間の遺体どころか生きている人間すら()()し、魔力に変換する廃棄物処理施設でもあったのだ。


(また外で待てというのか)


 機械室を思わせる扉の前で、コールナーは不満げに鼻を鳴らしたが、ここから先はほんとに危険区域なんですよ。

 体格の大きなコールナーだと、ちょっと蹄を踏み外しても命に関わるレベル。

 戸を開けておくから、そこから見ていてほしいと宥めて、あたしたちは部屋へ入った。


 完全に居住性を無視した殺風景な部屋の中で通路が弧を描いているのは、もちろん空間デザインの成果なぞではない。魔術陣が床に設置してあるせいだ。

 あたしはそのうちの一つ、巨大な魔力吸収陣のそばへ二人を導いた。

 ダストシュートが真上に繋がっているが、ディスポーザー代わりに使われていたにしても、まったく魔術陣に汚れがないのは……そういうことなのだろう。

 うっすら白っぽい塵のようなものがもとは何なのかとか、考えない方がいいと思う。精神衛生上。


 魔術陣は、発動条件さえちゃんと満たせば、魔術師ではない人間にも発動させることができる。

 しかし、注いだ魔力量が少なすぎる場合、発動しなかったり、たとえ発動してもしょぼい結果になったりする。

 星屑たちが火球の陣符を使ってきても、しょぼい火球しか飛んでこなかったりしたのはそういうわけだ。ま、しょぼいといっても火の球が飛んでくるのだから、危険は危険ですよ、もちろん。

 だけど逆を言えば、魔術陣の耐久限度内であれば、魔力を込めれば込めるほど脅威は高まるということになる。


 もう一つ、魔術陣の威力を高めるのに、陣そのものを大きく描くという方法がある。

 おそらくは魔術陣に込められた魔力量がその大きさの分増えるからじゃないかと思うが、シルウェステルさん謹製、あたしのローブがいろいろ規格外の性能なのは、そこに描かれている魔術陣の大きさのせいもあるのだと思う。


 で、だ。

 グラミィに訊くけど、あたしがこれまでちょいちょい作ってきた魔力吸収陣で、ここの陣みたく、載せられたものが実態を失うほど魔力を抜くことができたものって、見たことあった?


〔ないですけど。それって大きさとか、よくボニーさんがつけてる、魔力を吸い殺さないためのセーフティがどうとかって話……だけじゃないんですね〕


 正解。

 あたしが不審に感じ、そして警戒したのは、スクトゥムで使われる魔力吸収陣の威力だけじゃない。その吸収速度もとうていあたしの魔術陣では出せないものだったからだ。

 

 正直、あたしの鎌杖に使っている魔力吸収陣も、あのサイズにしてはかなり強力なものに仕上げてると思う。ほっとけばすぐに周囲の熱エネルギーまで吸ってしまうほどだ。

 けれども、アエギスの野でぶっ刺された、あの槍に仕込まれていた魔力吸収陣は、それとは桁が違った。

 触れた物質から魔力を吸い取るという、その機能は変わらない。

 けれども、あのとき砕けたあたしの肋骨の一部は、回収すらできなかったのだ。

 接触したその一瞬で、塵になったからだ。

 だけど、星屑たちからぶんどった槍を解析しても、刻まれた魔術陣はそこまで威力が出るものとは思えなかった。


 その謎の答えは、この魔術陣で見つけた。


(わたしが見てほしいのは、これだ)


 あたしは陣の一部を示した。

 魔術陣はその機能を示すいわば本文と、その周囲を取り巻く条件文から構成される。

 だけどの魔術陣は、その本文と条件文の間、そして全体をぐるりと取り巻くように、さらに繋がっているものがあった。


「『王に(こいねが)い奉る』……『封ぜられ』?『飢餓』を『満たす』?」


 難解な古典文字にグラミィが眉根を寄せた。

だけど魔術陣の機能としては、こんな文言は普通は入らない。

 だから、あたしは、槍に仕込まれた陣の文言も、最初ジャンクデータか槍を装飾する紋様の一部かと思ってしまっていたのだ。


 あたしはこれまで見たこともないほど険しい顔をした森精に向き直った。


(わたしが刺された槍には、『中空を踏まえ地底深く眠りし御方に願う』と刻まれていた。それが何を示すか、教えてくれないだろうか)

「すでに梢を風は渡って(識って)いるのではないか?」


 ヴィーリの怒りがぴりぴりと伝わってくる。


「大いなる凶渦。人の言葉でいうなら魔喰ライの王。コリュルスアウェッラーナへの祈祷だと」

※小ネタ

プルヌス ラテン語で桜の意味。鉄媒染で銀鼠色に染まる。

ウェネーフィカ ラテン語で魔女の意味。原義は「毒を盛る女」。


トウモロコシを主食にすると~は、ペラグラのことです。

なお、トウモロコシを主食にする国では、ペラグラを起こさないよう処理したものが売られているそうです。

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