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献身

本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。

 あたしは久しぶりに軍議の席にいた。といっても、あいかわらずクウィントゥス殿下の背後霊状態ですが何か。

 普通ならば護衛ポジションに人間がいても、お貴族サマが目を向けることはまずない。

 が、トリブヌスさんたちが注目しているせいか、視線が集中しまくること。

 ……なんか、彼らに絡まれたのもずいぶん昔のことのような気がするや。


「以上、スクトゥム帝国の異変につきましては、アスピス属州都市リトスの壊滅によるものと確定いたしました。これは骸の魔(スケレトゥス)術師(・マギウス)どのがお調べになったことです」


 アロイスの声に、抑えきれないざわめきが充満したのを感じながら、あたしはうっそりと低頭した。

 どうやらファーストインパクトは十分なようだ。

 トリブヌスさんたちの倍近い人数の、見覚えのない連中の目が痛い。だがかまわない。

 かけねなしに本当のことばっかりですから。


 そう、あたしは、一晩いろいろと考え、グラミィやヴィーリと相談した上で、クウィントゥス殿下に掴んだ情報を洗いざらいぶちまけたのだ。

 ただし、それは、ランシアインペトゥルス王国への忠誠からきた行動じゃない。あたしに大義を背負う気はない。

 ――だけど、あたしは覚悟を決めた。


 生きている人間みな推しメン。グラミィに語ったことは、今も嘘じゃない。

 それでもランシアインペトゥルスの側に立つならば、スクトゥム帝国からあふれ出る星屑(異世界人格者)たちと殺し合うことも――もちろん、今もって、可能な限り殺したくないと思っているし、できる限りは戦闘能力を喪失させるだけにとどめているけれども――、必要だと覚悟し、そして殺してきた。

 クラーワで戦線を押し返すため、モンスターのふりで戦った時もだ。


 白兵戦を挑んでこられると、牽制のつもりで振り回している鎌刃にうっかりかけてしまう、ということもある。

 またそれでも星屑たちはなかなか怯まないから、間近で事切れるまで知覚せざるをえなかったりする。

 だけどあたしは、眼窩をそらさないと決めた。それが自分のしたことだから。たとえ思い出すたびに、ばりばりと頭蓋骨の内側からかきむしられるような感覚に苛まれても。


 たしかに、あたしは人殺しだ。

 だけど、自分の手の骨を汚したくないからって、他の誰かに血を浴びせるのは間違ってると思うのだ。それで自分に罪がないとはどうしても思い込めない。

 それに、星屑がクラーワの人たちを害していることも、星屑をこの世界の人の身体に搭載している『運営』が、人の命を、この世界を、ゲームのリソースとして消費しているってことも本当のことで。

 そんなやつらに、黙ってこの世界の命をくれてやるわけにはいけない。


 ならば、どうするか。


 星屑たちが侵攻をやめないのなら、あたしが殺ろう。なるべくこの世界を巻き添えにしないよう、異世界人同士で殺り合おうじゃないか。

 レイドバトル気分でかかってくるなら返り討ちにしてやろう。それが皆殺しと同義になっても。そう決めた。

 あたしはこの世界を、あたしにつながりのある存在を喪いたくない。そう強く思ってしまったから。


「いや、しかし!」

「クラーワの最前線に詰めているとかいう、その魔術師の報告は正確なのですか?!」

「と、言われているが」


 だから、どうなのだ?とクウィントゥス殿下につっこまれたって、あたしの返答は揺るぎやしない。


「『武神アルマトゥーラと海神マリアムに誓って』」


 きっぱりとグラミィも言い切ってくれたが、それでも疑いと否定の色はどうにも拭えないものらしい。

 まあ、彼らの気持ちもわからんでもないよ?

 たった一人で前線を支えてるとか、うさんくさいだろうと我ながら思うし。真実だって証明できるような、第三者視点なんてラームスの欠片たちの記録しかないし。

 もちろんあたしは、彼らに混沌録を見せてSANチェック(狂気の瀬戸際)に追い込む気はないが。

 仮に見せたとしても、疑念まみれな連中にとっては、あたしサイドから出した情報ってだけで、信用性ゼロだろうし。

 だけど、信じられないのか信じたくないのかわからんが、この情報を飲み込んでもらわんと話が進まんのだけどなあ。


「ですがその者は、処罰を受けていると聞いております!つまりは罪人ではございませんか!そのような者の言に信など置けますまい」


 あ~……、そこか。


 クウィントゥス殿下は、リトス壊滅の報告をした時、あたしをシルウェステルと呼んだ。

 だがあれは極めて内密の場なので、公式にはまだあたしはシルウェステル・ランシピウスと名乗ることを許されないということになっている。

 状況だけ見れば、何かの処罰にも見えるだろうし、なんならあたしがクラーワの南端で星屑たちを押し返していることも、刑罰の一種と見えなくもない。

 だからこそ、新参者がこうも不信と軽侮をあらわにしてるんだろうけど。


「それは違う」


 クウィントゥス殿下がすいと煌めく目を細めた。変わった空気に吠えてた連中がびくりとした。


「彼に罪はない。あったのは多少の行き違いであり、思い違いだ。ゆえに彩火伯(さいかはく)はすでに謝罪をすませている」

「彩火伯さまが?」

「彼は寛容にもそれを容れた。――相違ないな、彩火伯?」

「御意」


 黙然とアーノセノウスさんがうなずくと、罵倒組はしおしおと勢いを失った。


 ええ、クウィントゥス殿下のついでに、あたしはアーノセノウスさんも巻き込んだ。

 問題は、アルベルトゥスくんがしでかしたリトスの壊滅以外にも多い。

 中でもクウィントゥス殿下たちが盛大に青ざめたのは、ヴィーリの言葉によるものだったりする。


 ヴィーリというか森精たちは、警戒を強めている。

 スクトゥム帝国にじゃない。

 人間全体に、だ。

 それもまた、アルベルトゥスくんのやらかした自爆攻撃に関係があるのだが。


 リトスから延々飛んで戻ってきた後、あたしはヴィーリとメリリーニャに詰め寄られたのだ。

 リトスの状況は、人間が起こしたのかと。

 なんで知ってんだと思ったら、あたしのお骨にかろうじてからみついてるラームスの欠片たちのせいだったというね。


 アルベルトゥスくんは、かつてマレアキュリス城砦を、リトスを壊滅させたのとほぼ同じやり方で砕いている。

 かつて、ランシア最北部、フリーギドゥム海に近いところで起きたことについて、ランシア最南端ともいえるランシア山は闇森を拠点とする森精たちは、あまり詳しい情報を持っていなかったらしい。

 だから、魔晶(マナイト)ひとつで、あのような巨大な破壊力を一人の人間が示したということを、よく知らなかったのだろう。

 だが、大規模殲滅兵器なんてもんは、存在を知ってしまった以上、この世界の管理者を自認している森精たちにとっては看過しがたいものなのだ。

 それゆえに、彼らは今後使用される可能性がないよう、アルベルトゥスくんの手法を潰す気でいる。もしこれが兵器であれば、実物及び作成法に至るまで、すべて奪取してから、跡形もなく破壊するというやり方で徹底的に抹消しようとしたんじゃないかな。

 ならば、人間であれば沈黙を命ずるか、それとも沈黙させるか。


 たしかにアルベルトゥスくんは、ランシアインペトゥルスにとっては隣国であり、かつての敵であるジュラニツハスタの魔術師だ。

 王弟殿下たちにとっては知ったこっちゃないと言いたいところだろうが、あいにくその言い訳はヴィーリには通じない。

 だって、途中でペルを救うために離れていったとはいえ、ヴィーリとアルベルトゥスくんはアダマスピカ副伯領まで同行した仲ですよ。

 人間を個人ではなく、所属する組織の一部として認識するらしき森精の視点的には、ランシアインペトゥルスの一員だったわけだ。


 警戒はたやすく猜疑を、そして敵意を呼び寄せる。

 スクトゥム帝国を敵に回してるこの状態で森精たちが敵に回るかもと思えば、そりゃクウィントゥス殿下はもちろん、アーノセノウスさんだって慌てますとも。


 だから、あたしはクウィントゥス殿下がヴィーリに直接釈明できる機会を設け、ついでにその場でヴィーリに提案をしたのだった。

 もともとスクトゥム帝国は、森精たちをエセルフと侮蔑を込めて呼び、虐殺までしでかした星屑どもの跳梁する土地だ。

 そんな敵意満載の場所へ送り込むなど、リトスの破壊状況を調べるにも、彼らだけでは危険がすぎる。

 なら、一緒に行こうじゃないか。そのかわり、協力はしてね、というわけだ。

 クウィントゥス殿下はそのことによっぽど重きを置いてくれたらしい。


「彼は行動でつまらぬ疑念をすべて解いた。ゆえに彼の素性について容喙(ようかい)することは、何人(なんびと)にも許さぬ」

「ですが殿下。ならばその功労者のお顔は拝見できませぬか?」


 ご新規さんのうちの一人が口火を切ったと思うと、つぎつぎに賛同の声が上がった。


「いかにも、そもそもなんとお呼びすればよろしいので?」

「骸の魔術師などという称号では、どの家のどなたかもよくわかりますまい」


 意訳:顔見せろや、ああ?


 だけど情弱かきさまら。それとも弱いのは頭の中身か。

 一応、『骸の魔術師』というのは、王サマがあたしにくれた称号ですよ?

 それを王族であるクウィントゥス殿下が、こともあろうに別人に使ってんじゃないか、って疑ってるようなもんじゃないですか。やだー。

 無礼者を自負してるあたしがいうのもなんだけど、けっこうな不届き者というか、怖いもの知らずですねみなさん。


「せめてフードをお取りになればよろしいのでは」

「どんな醜い顔であろうと、誰も驚きませんとも」

「それとも、骸骨の仮面をつけて、恐れ多くも海神マリアムの眷属気取りを我々の前でもなされると?」

「方々、口が過ぎますぞ!」


 トリブヌスさんが注意したが、逆にご新規さんたちは彼にも噛みついた。


「おや。これはトライキエーンスピラ伯ともあり方が、魔術師の肩をお持ちになるとは」

「骸の魔術師どのの顔はわたくしも見ている。失礼ではありませぬか」

「そういうことにしておきたいと殿下にでもひそかに願われたのでしょうか。いや忠義忠臣」


 トリブヌスさんの断言も、話半分でせせら笑うやつがけっこういるとか。


 ……これこそ、狸と狐の化かし合いってやつですかね?

 そして最初の謁見であたしが頭蓋骨さらして見せたってのも、どうやら新参者は半信半疑どころかほぼ疑ってかかってる連中らしいとか。

 オラわくわくしてきたぞっと。


〔やめてくださいよ。なんだかオレンジの服でも着なきゃいけない気分になるじゃないですかその口調〕


 グラミィが心話でつっこんできたが、あたしゃ星模様の球を集めたり、他人と融合したりする気はございませんとも。

 わちゃわちゃやりとりをしていると、クウィントゥス殿下が溜息をついた。


「骸の魔術師よ」

「『御意』」


 あたしは素直にフードをとった。そうそうすまなそうにしなくたっていいですとも。

 最初から見世物になるのは覚悟してましたから。ええ。

さあ、どうぞどうぞ!とっくりご覧くださいませ、ってなもんですよ。


 だから逆にあたしは驚いた。

あたしの頭蓋骨を見たことある、トリブヌスさんどころか、アロイスやトルクプッパさん、クウィントゥス殿下にアーノセノウスさんまで、なんで楕円三つで描けそうな顔になってんですか、ねえ。

 と同意を求めて首の骨を向けたら。……グラミィまで同じ顔になってるとか。どうしたのよ。


〔ボニーさんこそ!どうしたんですか、その骨は!トゲトゲじゃないですか!〕


 ……ああ、そっか。しまったな。すっかり忘れてたや。

 あたしは顎の骨を撫ぜた。ぼこぼこになっているのが指の骨に伝わる。


 あたしが空を飛んだりできるようになったのは、樹の魔物であるラームスたちが、術式の構築や顕界の一部を受け持ってくれてたからでもある。言ってみれば空の自動運転レベル2から3てなところだろうか。

 では、ラームスの本体といってもいい幹の大部分を、ここフェルウィーバスに置きっぱなしなあたしが、これまでと遜色なく魔術を行使できていたのはなぜか。

 もちろん種も仕掛けもある。

 その名残が、これだ。


「……『見苦しいものをお見せいたしました。これは我が身に直接を魔術陣を施した名残ですので、どうかお気になされますな』と申しております」


 理由を伝えると、アーノセノウスさんたち魔術師組は凝視したまま苦い顔になった。


 以前使い捨ての魔術陣、指輪やペンダントトップのような形で身につけるものをいくつか作ってみたことがあった。アーノセノウスさんたちにも護身用を送ったやつだ。

 もちろん、護身以外にもいろいろ作ったのを、制作者のあたしが使っていないわけがない。


 だけど、生身仕様な普通の装身具をお骨のあたしが使うのは、多少不便だったりするんですよ。

 指の骨に指輪を嵌めても、からから空回るようじゃ魔術陣の発動は不安定になる。ぴったりくっつくフリーサイズ仕様にしたって、今度は骨と鉱物、固いもの同士では衝撃が不安になる。

 なにせ、魔力を吸わせる都合上、結界の上からするわけにもいかないのだ。ぶつかりあった挙げ句、最悪お骨が欠けるようなことにでもなったら、取り返しがつかない。

 借り物なんですよ、愛しのマイボディは。


 そんなわけで、あたしは顕界した鉱物で作成した魔術陣を、骨に直付けしたのだった。

 トゲのように見えるのは、その魔術陣を直付けした、いわば茎の部分だ。

 そのおかげで身につける数に制限もなく、鎌杖を取り回す時もストレスフリー、おまけに骨からロスなく魔力を充填できるようになったという、想定外のおまけまでついた。

 の、だが。

 なんだろう。微妙に恐怖というか、畏怖のような感情が、魔術師組どころか、クレーマーたちの放出魔力にまで感じられるのは。


「シルウェステル・ランシピウス名誉導師」


 ゆっくりと身を乗り出したクウィントゥス殿下が言葉を発した。


「なぜそこまでする。報酬も名誉もいらぬといい、ことあるごとに返上すらたくらむ。そのくせ自ら志願して最も危険な敵地に潜入までする。挙げ句の果てにおのが身まで削る献身を見せ、それすら隠されてはおれの体面も立たんではないか」


 と言われましてもねえ。


「『どうか報酬はそれを求める者へと下げ渡されますよう。いかんせん、わたくしはこのような身ですので、舌を喜ばせる美味佳肴も、身体を休める豪奢な寝台も必要ではございません。またどれだけ美麗な衣服をまとおうと、このような顔では海神マリアムの庭へ宝玉を持ち込むようなものにございましょうし』」


 グラミィに答えてもらうと、空気が鼻白んだ。

 おどけてみせたつもりだったんだが、すべったかなあ……?


「あいかわらず困ったやつだ。人の欲しがるものを欲しがらんのだから」


 クウィントゥス殿下が嘆息した。


「ならば骸の魔術師には、別の報償を与えることにしよう。魔術書など望むものがあれば申せ。皆もそれでよいか」

「「「「「はっ」」」」」」


 一同の者が礼を取るのに合わせて、あたしもひっそりと魔術師の礼を取った。

 それは、あたしがシルウェステル・ランシピウスとして復権した瞬間だった。


 ……真面目な話、あたしにいちゃもんつけてきた連中の、行動原理はわからなくもない。

 彼らの承認欲求と実利要求は同根だ。功績を立てれば報酬も跳ね上がる。ましてやここフェルウィーバスは、ランシアインペトゥルス国内における対スクトゥム帝国最前線、ということになっている。

 おまけにクウィントゥス殿下は王族という体面上、そうそう報酬をけちることはない。


 だのに、彼らは足止めを食らい、功績すら挙げられない。その一方であたしが一人最前線でがんばってるとなりゃあ、高額報酬をかっさらってくライバルに見えてもしかたないわな。

 そりゃあ、あたしの足の骨の一本や二本、引っ張っておきたいとこだろうさ。


 狡兎死して走狗烹らる。むこうの世界の故事成語だが、その続きは敵国破れて謀臣亡ぶ、なのだ。

 功績を立てた人間というやつは、妬んだ味方に殺されるもの。

 高校漢文レベルの中国古典を引っ張り出せば、乱を起こした安禄山と戦ってる武将に功績を挙げさせまいと、楊貴妃の一族の人間が不利な野戦を挑むように命令させて殺したってのも、有名な話だ。

 背後から味方を撃ちまくった案件って、歴史の中にけっこうごろごろしてるんですよ。

 それも臣下同士、ライバルを蹴落とすために策謀するだけじゃない。君主だって功績立てた人間をぶち殺しまくってる。

 下剋上って案外狭き門なのだ。


 俺Tueeeは現実世界じゃしづらいだろうなーと思うのは、こんな時だ。

 人間、自分より優れていて、認められている者など側に寄せたくもないってことなんだろう。主が恐れるほどの武勇も、万人が認めるような功績を立てる才能も、妬みと実利のためには排除対象となる。

まあだからこそ、あたしはあえて富も名誉もいらないって態度を取ってるのだが。


 それでも、目障りと思えばあたしの排斥に動く者がいても当然だと思う。

 トリブヌスさんも、ことあるごとにあたしに突っかかってきてたしなあ。

 てゆーか。むしろあたしゃ彼らがもっと噛みついてくるかと思ってたんで、ちょっと肩透かしです。

 最初の勢いはどうしたあんたら。


〔いやそれ、ボニーさんが自分からよけいに死んでるからでしょ?〕


 なにそれ。いやそりゃとっくにお骨ですが、それが何か。


〔それ以外にも、捨て身がすぎるからですよ〕


 半目のグラミィがちろりとこっちを見上げた。


〔王サマが押しつけてこようとしたいろんな肩書きはスルー、人を殺すのは魔喰ライ一直線の危険行為っていうのに、人死にを見たくないからって、自分で死体を作ってまわるとか。ヴィーリさんたちとか樹の魔物たちに力を貸してもらってるのは知ってますけど。たぶん、クウィントゥス殿下が考えてるよりボニーさん的には危険を冒してますよね?〕


 それがどうした。

 それでもいいと、納得したのはあたしだ。

 そうしたいと、そうすべきと考えているから、あたしはそのように動く。

 自分だけ安全な場所にいて、誰かに人を殺してこい、死んでこいと命令するより、される側でいた方がはるかにましだ。

 地獄門を潰したとき、つくづくそう思ったよ。


〔そういうとこ、ボニーさんは優しいですよね〕


 どうかな。責任をとりたくないだけかもしれないよ?


〔それはわかってます。……というか〕


 グラミィが皺深い顔を引きつらせた。


〔あんだけ邪悪な献策するような人が、優しいだけなわけないですし!〕


 器用におののいた心話を送りつけてくるのはいいが、黒いとか真っ黒を通り越して、いつの間にか邪悪とまで言うようになってたとか。

 泣くぞ?


〔泣きたいのはこっちですよ!なんですかあれ、えげつないにしても、限度ってもんがあるでしょー!〕

骨っ子が見せた頭蓋骨、コンクリートの建造物が溶けて氷柱状態になったものをへし折ったような(たとえが長い!)痕跡が、スタッズをびっしり打ったように並んでた状態になってました。

そりゃびっくりしますわね。

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