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EX.暗躍

本日も拙作をお読みいただきまして、ありがとうございます。

【新種発見】クラーワ地方のモンスターを語るスレ19【閲覧注意】



4:スレ主


 次に今回新たに発見されたモンスター


泥?アンデッド?系

 ※相変わらずグロな外見のものが多いので、描写だけで無理と思ったら見るな


 ・手ガニ

 字の形はよく似ているが、毛ガニでは断じてない。大事なことなので二回言うが、断じて毛ガニではない

 煮ても焼いても食えない、と思うが、まず食べようと思うやつはいないだろう

 人間の両手によく似ているし


 一番イメージしやすいのは、たぶん両手でいいねを→dbこんな感じに子どもが作った感じだろう

 その両方の親指をぐぐっと90度手の甲側に曲げる

 そして、その先端に人間の目玉をつけたものが、他の指でかさかさと動く

 カニに似てるくせに、こいつらは横移動しかできないわけじゃない

 前後左右にじつに素早く移動する

 偶然うまく叩き潰したやつの話だと、泥になったそうだ

 人間の手の形、そして泥になるというあたりから、マッドハンドの仲間ではないかと推測できる


 攻撃方法というか、特殊能力は足場悪化、転倒状態への強制変更

 マッドハンドより小さいこともあってか、正直攻撃力は皆無といってもいいんじゃないかと思われる

 単体なら足でも簡単に踏み潰せるほど弱い。だが、調子に乗ってるうちに大勢に囲まれると危険

 マッド目ンと一緒に出てくるときは、おまえがパパだ攻撃がほぼ必中と化すと思え



5:スレ主


 アンデッド?系


 ・天空ノ(フライング・)惨死神(グレーターサイス) 

 ぼろぼろな黒のローブを着て大鎌を持ったノマスケという外見は、黒ノ橋死神との共通点が多い

 しかし、より攻撃的なフォルムとしゃれにならない攻撃力を併せ持ち、飛行能力を持つという違いがある

 おそらくは、黒ノ橋死神の上位種

 黙示録の四騎士的にはこっちの方が近いかも


 黒ノ橋死神同様、地上での攻撃能力も高い

 だが、最大の攻撃方法は、出現直後に出してくる超大技『虚空より振り落ちる断罪』

 黒ノ橋死神が持ってるのと同じぐらいの大きさの大鎌を構えると風が吹き始める

 その風は大鎌の振り上げ、振り下ろしモーション中にどんどん強くなり、振り下ろされた瞬間から最大レベルに達する

 暴風が進むにつれ透明な刃に斬り裂かれたように、地表が割れ、一直線に進んでいく

 その破壊力は絶大

 数人のタンクが止めようとして両断されている

 極めて危険


 ただし、この攻撃、回避はめちゃくちゃ簡単

 真っ正面に立たず、地割れが突き進んでいく方向から逃げる、それでほぼ無傷のまま逃げられる

 この攻撃からは

 他の敵との合わせ技に注意


 前スレでも指摘があったが、スケルトン系はやはり一度に一体しか出ないようだ

 クラーワエリアの中ボス、エリアボス的な位置づけではないかと推測できる

 だったらこんなスクトゥムから渡ってきた直後に出てくんなよって感じだが



6:一狩りしたい名無し


 スレ主乙。

 マッドハンドが右手オンリーで、手ガニが両手ということは、左手だけのモンスターも出てくるのかね?

 しっかし、ありふれた人体のパーツも変形されて出てくるだけで、ああもおぞましいもんになるとはな



7:一狩りしたい名無し


 6もクラーワからの帰還組か

 もう食料その他物資の現地調達ができないってほんとか?



8:一狩りしたい名無し


 >7

 スレチな質問だな

 まあそうだけど



9:一狩りしたい名無し


 >8

 だったら、スレ主には悪いが、人体のパーツなんぞよりよっぽど極悪なモンスターが多数出没してると思うんだが。

 そう、『人間』ってやつが




 ***




 地面にのびた不審人物の肘を杖先で押さえると、あたしはその手から危険物を弾き飛ばした。

 まったく、人をモンスターデータ扱いしかしない、一狩り行こうぜ気分の星屑(異世界人格者)どもに武器を向けられるのもイヤなものだが。

 普通の人間であると判断していながら、たいした殺意も向けてこずに、事務的に『処理』しにかかられるってのも、じつになんともイヤなものだ。


 ここパルスカウテースは、アビエス川沿いの街道の終着点であるパルスリートスや、『泥の街』の異名をとるパルスリーパ同様、イークト大湿原近くにある街の一つだ。

木道直近のパルスリートスにとどまりきれず、あふれた冒険者気取りの星屑たちが近隣の街にまであふれ出てきているのも、治安が微妙に悪くなってるのも知ってたけど。

 まさか、街中でいきなり襲われるとはねぇ。

 予測通りすぎて、かえってびっくりするっての。


 幻惑狐(アパトウルペース)たちお得意の幻覚に、あたしが心話でイメージを送り込むという合わせ技の前に、不審人物はあっさり気絶した。

 わらわらと幻惑狐たちがのしかかっているのは、べつにもふもふで癒やしてやっているわけではない。むしろお食事光景ですよあれ。

 彼らも魔物だ。人間の魔術師では脳みそぶっ飛んで魔喰ライルートに踏み込みかけるような、生身の人間からの同意のない魔力(マナ)吸収すら、わりと平気でやってのけたりする。


(まずー)

(つめたー)


 文句ゆーな。てか感覚共有してくんな。

 イークト大湿原の泥の味、って言われても。どうしろと。

 てゆーか、冷えてるというのなら、あたしの魔力の方がよほど冷たいって言われることが多いんだけどなあ?


 もちろん、幻惑狐たちも、しょっちゅう無差別に魔力を生身の人間からチュウチュウ吸ってるわけではない。特に、同行してる彼らには、基本的にあたしから魔力を吸え、見境なく周囲の人間から吸うようなまねをするんじゃありませんと言ってある。

 だから、幻惑狐たちにこの不審人物の魔力を吸わせているのは、理由があってのことなんですよ。

 なにも襲われたあたしの腹いせというだけではない。


 泥を呑ませ、さんざんびびらせたはずの星屑たちは、木道を渡らなかった。

 あれでどんびかないのは死人が出てないせいもあるのかと、あたしがわかりやすい戦闘モンスターを演じたりもしたのにだ。

 なぜ彼らはスクトゥム帝国に逃げ帰らないのか。疑問に思ったのが、この夜間のスクトゥム侵入のきっかけだった。


 広場(アゴラ)には板がある。

 それは、かつてあたしが潜入した学術都市リトスの衛兵、ウーゴが教えてくれた情報だった。

 板とは、掲示板のこと。

 むこうの世界でも、たしか古代から中世まで、人の集まる広場というのは、地域や文化の違いを超えて、身分の高い者からのお触れなども行われる、パブリックからプライベートまで、いろんな情報伝達の場であったはずだ。

 それがこのスクトゥム国内にあっては、まるでネット空間を物理化したようなものだった。

 日本語で書かれているから、星屑ではないこの世界の人たちには、塀の板にがりがりと刻み込まれた書き込みは謎な落書きにしか見えないだろう。

 だけど、そこからは、じつにいろんなものが見えてくる。

 

 おかげで星屑たちの行動の謎も解けた。

 まさか、泥を食わせたことが、モンスターに寄生された危険ありと解釈されるとか。考えてもみなかったよ!

 逃げ帰ってほしいという意図とは逆に、もうスクトゥムに戻れないという、ある意味悲壮な覚悟を決めてとどまっているとか思わなかったからなあ。

 いや、確かに呑ませた泥なんて、そのへんの湿原からすくってきたものですし?不衛生だというのなら、確かに身体にはいいもんじゃないとは思うよ。

 場所によっては、虫だってうじゃうじゃといたもんなあ。危険な寄生虫が混じってたって、そりゃあおかしかないですとも。

 だけど、彼ら星屑たちにとって、より致命的なのは、生物学的な意味での寄生虫なんかじゃない気がするのだよ。どっちかっつーと、彼らが持ち合わせて、相互に感染させあっている無数の概念――古くさい言い方をするならミーム(文化的遺伝子)ってやつ――じゃないだろうか。

 この世界はゲームであり、死すら取り返しのつくものであるというのも、もちろん含む。


クラーワに残ってる星屑たちの戦意が衰えない理由も判明した。

 特に、掲示板じゃ解散者とか、残存者とかいう名称で呼ばれている彼らは、どうやら他の星屑たちの盾を自認しているようだ。

 だけど、そんな、一見美しいかもしれんが愚かな自己犠牲って、迷惑なんですよ。あたしにとって。

 てか、あたしとの戦闘で出た被害者や、死に戻り名目の自殺者から、ドロップ品と称して持ち物をひっぺがし、自分のものにしてるハゲタカ連中に『大湿原の守護者』とか、ごたいそうな呼び名をつけてほしくないんですがねえ?


 ともあれ、得た情報は有効に使ってます。戦闘行動の修正とか。

 木道のクラーワ側には、こっそりヴィーリやメリリーニャにも協力してもらい、ラームスたち樹の魔物たちを目立たぬように増やしてたりするのもその一環だ。

 戦闘中に突出したり、遊撃のつもりか分離行動を取ったりしてたうかつな星屑たちを、迷い森でさらに分断したり、隠し森に放り込むための状況設定ってやつですよ。

 いくらあたしがきちんと被害を出しても、星屑たちがああも無駄ポジティヴなゲーム思考で概念変換してしまうのなら意味がない。

 ならば、敵の戦力削減方法も、増やしたくないKIA(戦闘中死亡)より、増やすのは比較的簡単なMIA(戦闘中行方不明)を増大させるって方向に変えますとも。負担の大きい近接戦闘も減らせるし。


そして『運営』の手が、スクトゥム帝国から見ればこんな辺境の地にまで及んでいるのならば、それにもきっちり対応しておこうとね。

 そう、あたしがしばきのめした不審人物――仮に『管理人』とでも呼んでおこうか――は、おそらく『運営』の一端だ。

 なんでそう判断したかというと、いつもの深夜のお散歩とばかりにでかけた、パルスリートスで見たもののせいだ。


 万が一にでも夜中の市街地不法侵入が、それもあたしみたいな骸骨が入り込んだとはばれないよう、あたしはいつも気合いを入れて不寝番の門兵たちの目をかいくぐることにしている。

 一度街の中に入ってしまえばこっちのもの。

 よほど衛兵たちを多く抱えているような街であっても、街の中すべての通りから路地裏まで、一晩中衛兵を巡回させるなんてことはできない。できるわけがない。

 もちろん、小細工もばっちりだ。狙うのは都市中心部よりも下町あたりの広場が優先、しかも先遣隊として幻惑狐たちを別ルートでこっそり送り込むというね。

 ひやっとするような仕掛けを見つけたこともあるが、これまで一度も侵入がばれたことはない。

 人気の絶えた広場で、手持ちの小さな灯りを塀の書き込みに近づけ、じろじろと見ていた不審人物の存在に気づくことができたのも、幻惑狐たちのおかげというものだ。


 不審人物はやがて塀の一部に何かを書いたり塗ったり、削ったりした挙げ句に立ち去った。

 万一戻ってくることがないか幻惑狐たちに気をつけておいてもらい、書き込みを確認したところ、どうやらこの世界をゲームだと考えるのに不都合なものに手を加えてあるようだということがわかった。

 厭戦的なもの、退嬰的なものについては、ランシアインペトゥルスとの戦いを想定してか、『北方で超大規模なレイドバトルが発生するらしい』といった誘導情報や、やんわりと物欲や名誉欲を煽り立てるような言葉が書き込まれていたり。

 人道を思い出させるようなものには、命の軽さを強調するような、おちゃらけた書き込みが追加されていたり。

 削られていたものは、どうやらゲーム世界という夢想を覚まさせるようなものだったらしい。


 あたしはしばらくその広場を定点観測することにした。

 直接近づくのは真夜中、それも幻惑狐たちに警戒をしてもらってつくづくよかったと思うのは、彼らがしかけられていた魔術具に気づいてくれたからだ。

 魔術具、それもリトスや天空の円環付近にもしかけてあった、監視カメラのような機能を持つものとあっては対応が必要になる。

 もちろん、完全に破壊してしまうと逆に怪しまれてしまう。天空の円環みたいな難所なら、発覚も遅くなりそうだが、こんな平地の街、しかも『運営』の手先がいるようなところでうかつな真似はできない。

 だからまずあたしは、幻惑狐たちの目を借りてじっくりと観察をした。うまく干渉できそうだなと判断したので、侵入した時間帯あたりの記録を消して、真夜中の、それも雲の出ててきた時間帯のものを、こっそり引き延ばしてつなげておいた。

 月や星の動きがわからないと、わりとごまかしやすいんですよ。夜中の時間経過って。


 警戒レベルを引き上げつつ、定点観測を続けていたあたしは見た。

 夜中に、あの削り取られた板のあたりで、ひたすら書き込みをしていた人影を、『管理人』が刺殺するのを。


単なる物盗りとか強盗じゃないと思ったのは、利用者を背後から刺し殺すのに使った危険物のせいだ。

 幻惑狐たちが警戒したように、その危険物は魔術具だったのだ。

 それも、故峻厳伯が自分の息子を刺殺するのに使った短剣と同じ、『刺した相手から、魔力を吸収する』って機能の。

 

 生身に比べ、物理依存率がめっきり落ち込んでるあたしにとって、魔力は生命力とほぼ同義だ。

 が、じつは生身の人間にとっても、魔力は生命活動と強く結びついている。

 以前、魔力感知能力の高いアロイスに、傷の自己治癒能力を高める実験をしてもらったことがあるが、あれは傷口周辺にざっくり魔力を集めてもらっただけでもできたことなのだ。

 では、逆に、傷から魔力を吸収してしまえば?

 当然のことながら、そのぶん自己治癒能力は阻害され、傷は塞がらず、悪化しやすくなる。

 つまり、『管理人』が持ってるこの短剣って、『毒を塗るといった、使用者がやりづらい事前準備をしなくても、暗殺者が使う毒刃と同じくらい効率的に人を重症化させ、死に至らしめることのできる危険物』か、『それ(毒刃)以上の危険物』ということになる。


 あたしはこの世界の人間を、星屑たちを搭載されたガワの人たちを殺したくはない。傷つけたくもない。

 いや、自分から的になるような仮装までして敵前に出てきた挙げ句、防衛戦と言いながら星屑たちを、そのガワの人を殺してるあたしがどの口で言うかってやつだよね。言行不一致を実体化して色塗って動画にしたみたいだというツッコミは自分でもとっくにしてる。

 だけどこの不審人物――『管理人』は、星屑たちの書き込みを管理してるんじゃない。彼らの概念を歪め、この世界をゲームの舞台であるという認識から一歩もはみ出ないようにしている。星屑たちの思想を管理している。

 その手段に、自分と同じくこの世界の人間ではない意識を持つ相手を殺害することも辞さない。


 あたしは、『管理人』の行動を妨害することにした。

 こうやって気絶させたのは、ぐるぐる回る赤い目玉の化け物に、がぶっと呑み込まれたような幻覚を送り込んだ幻惑狐たちの能力とあたしの心話の合わせ技だったりする。

 リアリティ?必要なら、実際にそういった状況を作って、覚えて、記憶を再生してやればいいだけなんですよこれ。

当人はトラウマ発症したかもしらんが、罪悪感もかけてやる慈悲もねえ。

 一生懸命、塀の板に書き込みをしている人を背後から襲おうとする人間にたいするお返しとしちゃあ、じつに手ぬるいんじゃなかろうか。


 幻惑狐たちに魔力を吸われ、昏倒した『管理人』をあたしはじっと見下ろした。

 正直、これは――この『管理人』は、かなりの鬼札だ。


 あたしはスクトゥム帝国について、ひいては『運営』についての情報が欲しい。シルウェステルさんの喉仏の骨のあたりから、手の骨がにょきにょき生えてきそうなほどには欲しい。

 ならば、このままクラーワまで、いやランシアインペトゥルスまで持ち帰って情報を引き出すのが、正しいようにも思える。

 だけど、もしあたしが冬のひきうちを考えた程度に頭の回る『運営』だったら。

 ――こいつは、時限爆弾の引き金、ブービートラップの部品でしかない。


 捨て駒くんにとって、今、あたしとでくわしたのは不幸な偶然だろうさ。

 だけど、スクトゥム本国からすれば、こんな属州も端、戦線近い辺境の街に、帝国の敵が入り込んでくることは想定内の事態だろう。

 そんなところに『運営』が置いている人員など、いいとこ『運営』内部でも末端か、それとも下請けのさらに尻尾、切り捨て可能な人員だろうという推測は、ほぼ断定でもいいくらいだ。


 もし、あたしが帝国中枢の『運営』ならば、そんな人間にたいした情報など持たせやしない。

 むしろ、積極的に偽の情報を与えておいてミスディレクションに使う。

 スクトゥムに魔術師がいる以上、魔術師が魔力から感情を見ることができるぐらいのことは、向こうも知ってて当然。

 ならば、捨て駒当人には嘘情報以外には何も教えず、そのまま放り出していたっておかしかない。


 ついでにいうなら、運営としては敵に可能な限りの損害を与えたいところだろう。

 ……スクトゥム帝国には、地獄門程度にはえげつない魔術陣の知識があることもわかっている。

 そして、人体に仕込まれた魔術陣は、魔力を感知できる魔術師でも見方を知らなければわからない。

 魔力を流して焼き付ければ、そりゃ皮膚に仕込まれた魔術陣はわかるだろうけど。

 つまり、お持ち帰りはやめるべき。クラーワにおびき寄せ、クウィントゥス殿下あたりに引き渡すのも却下。『どんな魔術陣がしかけてあるかわからない』人間から、情報を引き出そうと尋問、いや拷問を加えたら、いったいどんなことになるか?

 ……想像したくない。その一言ですよ。


 結論。この『管理人』は接触した段階でアウトな疑似餌の可能性大。まさしく地雷。というか機雷。

ま、それを見越してあたしも彼に直接は接触しないようにしてはいるんだが。

 さて、ならば、どうするか?


 あたしは『クラーワ地方のモンスターを語るスレ』という掲示板に向き合った。




 ***



10:一狩りしたい名無し


 流れも空気も読まずにすまん

 ひとつ、いやふたつぐらい聞きたいことがあるんだけど、いい?

 特にスレ主

 まずはモンスターについての疑問なんだけど、今わかってるモンスターについて、クラーワの人から情報って得られてないの?

 その土地に出てくる生物のことは、住民がいっちゃんよくわかっていると思うんだけど


 攻撃力が高いんなら、脅威に思ってそうだし

 NPCだから状態異常が効かないってことはないと思うし

……あれ。だったら、クラーワの人がマッド目ンの被害に全く遭わないってことも想像しにくいな

 ひょっとして、接触するのは勇者でも危険?


 もう一つの疑問は、こういうモンスターって、ほんとにクラーワにしかいないと思う?

 そりゃ昔は水を渡れなければ問題はなかったと思うんだけど、今は木道があるだろ?

 渡ってこれないわけがない。


 ってことは、もうスクトゥムにいてもおかしくない?



11:一狩りしたい名無し


 もう一つ追加で疑問

マッド目ンとかの泥系モンスターについて

 元ネタってあるのかな?



12:一狩りしたい名無し


 >11

 元ネタかどうかはわからないけど、スワンプマンってのはあるぞ

 直訳すると『沼男』な

 簡単に言うと、自我とは何かって思考実験の話


 ある日、沼で一人の男が雷に打たれて死んだ

 その時、落雷による謎作用で、沼の泥から死んだ男と全く同じ見た目で、同じ記憶をもつ存在が生まれたとする

 これがスワンプマン


 謎作用のせいで、スワンプマンは泥からできたのに、身体の構成要素が死んだ男とまるっと同じ

 精神的にも全く同じとする

 さて、このスワンプマンは死んだ男と同一存在か?


 そして泥系モンスター、これが元ネタだとすると、変身とか擬態とか、あと記憶のコピーとか、そっくりに化けた人と入れ替わる能力持ちだったりしないか?

 

 

 ***




 あたしは、広場の入り口に向かって手の骨を振った。

 とたんに道の端にある下水口からにゅるにゅると泥があふれ、適当な人の形になったところで、広場の中へと入ってきた。

 なに、あたしが動かしているんですが。


 書き込みからは、たとえ泥を呑まされて、つまり汚染されても、泥人形が相手ならそれだけでは死なない、死ににくいという思い込みが、星屑たち全般に共有されている様子もうかがえた。

 ――ちょうどいい。


 あたしは『管理人』の手の側に魔術具を転がすと、幻惑狐たちとともに広場を離れた。

 そして、泥人形を動かした。


 さて。

 これで翌朝、口から例の泥の赤ん坊を吐いた痕跡のある『管理人』が見つかったとする。

 星屑たちはどう反応するだろうね?

 少なくとも街の中でパニックぐらいは起こるだろうし、不利益をもたらす者に彼らは冷淡だ。

 よってたかって『管理人』を街から放り出すぐらいのことはしそうだなあ。スクトゥムからも閉め出すかはともかくとして


 煽動して戦力にしようとしてた、当の星屑たちに切り捨てられた『管理人』の危険性は、それでかなりがくっとさがるはずだ。

 そしたら、ゆっくり対応してあげようじゃないか。

 ほかのあれこれと合わせてね。

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