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杯の中身

本日も拙作をお読み頂きましてありがとうございます。

 詳しいことをじっくり伺いたい、というので昼餐の席がはやばやと設けられた。

 あたしとグラミィとヴィーリも同じテーブルに着いたのだが、あたしたち三人の席は樹杖を置けるように、いつの間にかフックがとりつけられていた。そのせいで枝杖の座と呼ばれているらしい。

 いや、魔術師たちの席にもフックはつけてあげたらどうかなあ?下座のテーブルが騎士と交代制なのはわかるけれども。


「使者どのらをもてなすと申しても、戦闘の直後ゆえこのようなものしかないが」

 

 と言いながらも、卓上の中心に出されているのは、非常用食糧も兼用している貴重なスース()をまるまる一頭使ったものだ。

 国王の使者を迎える以上、最も格上の料理を出さなければならない。

 定番としては皮を剥ぎ、取り出した内臓の代わりに香草やいろんな詰め物をして丸焼きにするというものなのだが。

 なんせスースはでかい。下手なバイクよりでかいのだ。さすがに牛や軽自動車サイズとまでは言わないが、通常は冬直前にシメて、即座に解体、塩漬け肉にするようなもんを、そうそう丸焼きにできるような大きさのかまどが、このフルーティング城砦にあるわけがない。

 ガチガチの軍事施設なんですよここ。そんなおもてなし設備があるわけないでしょうが。

 調理場の外で火を熾して調理しようにも、ただ直火にかけるだけでは中まで火が通らず、外は丸焦げ中は生焼けということになりかねん。

 てなわけで、レガトゥスさんがどうしましょうと、大掃除真っ最中のあたしに相談を持ち込んできたりもした。

 しょうがないので輻射熱が通りやすいように、肉をすっぽり覆うサイズの炉を作り、じっくりと蒸し焼きにしたらどうじゃろうと提案してみたら、ついでに火加減もお願いしますと丸投げされ、今朝まで一晩じゅう外で火の番をする羽目になったというね。覚えてろよ。

 しかし、それより喜ばれたのは、冷たくした酒だった。


「いや、我々にはなによりのごちそうにございます」


 ええ、魔術士団に氷弾以外の氷を作成する術式を教えたこともあり、氷と水はふんだんにある。

 冷涼な山砦とはいえ、この季節に水はともかく、氷は魔術でなければ用意しづらいはずだ。

 水不足のカルクス周辺では、確かに望めぬ贅沢だろう。


「これを里の者にもわけてやりたいほどです」

「『あいにくですが、呪い師との約定がございますので』」


 ちろりとククムさんが本音交じりの視線を寄こしてきたが、お断りですとも。

 幻惑狐の氏族には、水を供給しない。これは呪い師たちを黙らせるのに結んだ誓約ですから。

 じゃあ、ククムさんたちへのこれはまずいんじゃないかって?

 グラミィが誓約してみせたのは、あくまでも『幻惑狐の氏族』への『水の供給』なのだよ。『王の使者』への『接待』に水を使いませんとは一言も言っていない。

 それに、そもそも今回水や氷を用意したのは、あたしでもグラミィでもないですしおすし。


「それは誠に残念です、が些事はさておきましょう」


 衣装は使節のままだが、いつもの表情に戻ったククムさんは、口調も行商モードになった。


「クラーワ地方とスクトゥム帝国との間には、低地に至るまでウングラ山脈が峰を連ね、低地にはイークト大湿原が広がり隔てられております。船で渡ることもかないますイークト大湿原はまだしも、ウングラ山脈は鉤爪で引き裂かれたかのように、高く狭い尾根と細く深い谷が織りなし、場所によっては湖沼も広がる地帯となっております。人の足では踏破することも難しい。――そのような難所を選んで住む者もおりましてか、サルウェワレーという小国がございます」

「ほう」

 

 ひっそりとプレデジオさんの副官が口元を緩めてみせた。シームレスに本題へつなげてみせたククムさんへの賞賛だろうか。


「おおよそクラーワの国はいくつもの氏族から成り立つもの。我がクラーワヴェラーレとて、十七氏族より成る国にございます。が、このサルウェワレーに住まうはただ一つの氏族のみ」


 単民族国家ならぬ単氏族国家ってわけか。


「小国ながらも湖沼は多く――と申しますか、人の暮らす土地よりも水面の方が広いような国にございます。湧水が多いのでしょう。ですが流れは他のクラーワの国々を通ることなく、山塊の低い渓谷を抜け、直接クラーワの南東へと滝となり、アビエス川やイークト大湿地帯へと注いでおります」

「それは、他の国との争いの種となるのでは?」


 そう訊ねたのはクランクさんだ。クラーワヴェラーレに外交出張班は何度か訪れている。雨を降らす雲より上の地域がどれだけの広さか、しっかりその目で知っている。

 水資源が豊富で小国とあれば、狙われて当然、国としての戦闘能力も低くて当然という推測ぐらいは一瞬でできるだろう。


「いえいえ、おそらくサルウェワレーという国を知って、それでも攻めようとするような、無謀な者などおりますまい」


 へえ。『無謀』ねえ。

 支配をするには手強いということは、呪い師たちの国家なのかな。


〔人数差をひっくり返すような、物理的に強い国って可能性はないんですか?〕


 天空の円環を約八分の一ダッシュした時のことを思い出してみなさいよ、グラミィ。

 あれだけのことで、酸欠か高山病かって感じで、みんなぜいぜい言ってたじゃん。

 あんな状態で、いやあれより低地で症状が比較的ましだったとしてもだ。物理的に戦闘とかできると思う?


〔……ちょっと遠慮したいですねー〕


 サルウェワレーという国の標高がどのくらいのものかは知らないが、険しい山脈に位置するというんだ、天空の円環やクラーワヴェラーレほどではないが、それなりの高地にあるという推測ができる。

 そんなところで近接戦なんてムリムリ。交代要員を多くして、休息を多くとれるようにでもしなけりゃ、戦闘どころかちょっとした小競り合いにもならんでしょうよ。

 それも短期で決着がつかなかったら最悪だ。山の天候はすぐに崩れる。動けなくなった双方がダブルノックアウト遭難、なんてこともありえないわけじゃない。

 ……プレデジオさんが弓矢と魔術を使って、遠距離でスクトゥム帝国からあふれ出した星屑たちを仕留めにかかったのは、そういう理由もあってのことなのかな。


 あたしがグラミィと心話でぼそぼそ話しているうちに、ククムさんのサルウェワレーについての話は佳境に入っていたらしい。クラーワヴェラーレの使者は囁くように声をわざと落とした。


「なぜなら彼らの領内には、『紅の源』という、力ある魔物が棲んでおりますので」

「……それはそれは」

〔グリグんやコールナーみたいに仲良くできませんかね、ボニーさん?〕


 いやいやなんにもわかんないこの状況で、何にも言えませんよ?!

 てか、四脚鷲(グリグん)幻惑狐(アパトウルペース)たちの実態を良く知ってるグラミィまで、『技術があるんだから対象となる魔獣がなんであれ、テイムできないかな?』的な発想すんのはやめてくれないかなぁ?


〔えー〕


 えーじゃありません。

  

 ……しかし、サルウェワレーって、なかなかヤバい国なのな。そりゃあ無闇に手なんて出せないわ。

 追い詰めでもしたら、魔物を刺激して怒らせ、その攻撃にこっちを巻き込むって手段が使えるんだもん。死なば諸共ミッション、ただしサルウェワレー側には難易度レベル1とか。いやすぎるでしょうよ。

 

 それにしても『紅の源』ねえ。

 マレアキュリス廃砦の主、一角獣のコールナーが『白き死』と呼ばれていたのに似ていなくもない、か。

 そんでもって、どうやら魔物と話ができる者、もしくは水の供給ができる者を求めている国がサルウェワレーで、鎮めたい魔物ってのが『紅の源』ということになるのかしらん。


 ……あるぇ?


 ってことは、『紅の源』が現在サルウェワレーの制御下にないってこと、なのか?

 

 なるほどそれは国にとっての一大事。ウングラ山脈がどういうところなのかはわからんが、『紅の源』が暴発したなら、クラーワ地方にも広範囲に被害をもたらす可能性もあると考えれば、ククムさんの急ぎっぷりもわからなくはない。クラーワ内外に恩を売れるわけだし。

 あたしたちに対しては、サルウェワレーまでの道案内や、魔物を崇める氏族への顔つなぎをしてくれるということですかね?

 

「いえいえ、わたくしとしましては、いえクラーワヴェラーレとして、クラーワ諸国すべてとランシアインペトゥルス王国との仲介役を担わせて戴きたく。またクラーワヴェラーレだけでなくクラーワの地理の一部をお伝えするというのはいかがでしょうか」

「……なるほど」


 レガトゥスさんの笑みがますます深くなった。

 これは対価としてもかなり大きい情報だ。

 クラーワヴェラーレからスクトゥム帝国との国境地帯の情報は、あたしたちというか、ランシアインペトゥルス王国としてもあまり情報がない。せいぜいイークト大湿原てのがある、ぐらいなものだ。

 この世界に静止衛星は存在せず、半径一万㎞以上の土地を一度に観測できる技術はない。世界観はどこまで遠くを見ることができるかということも関係するのか、広範囲を示す地図ほど不正確に、そして神話と地続きになっていくのだ。なにせ海の果ては海神マリアムの奥津城、と堂々と書いてあるくらいなんだもん。遠方はあの世同様想像しても仕方のない場所というわけだ。

 これには需要と供給の問題、測量技術と権限の問題、そして軍略の問題が絡んでいる。

 

 需要と供給の問題は、遠くに出かける人が極端に少ない、ということが一番強い原因となっているんだろう。

 農夫などの平民は、基本的に領主の許可なく領地から出ることはできない。けれどそういった人たちは、領内どころか生まれてから死ぬまで、生まれ育った村内から一歩も出ないということも珍しくはなかったりする。

 逆に領地間の移動ができる人間ってのは、あたしがスクトゥム帝国で化けてみたように、旅芸人だったり、お貴族サマのように身分ある者本人、あるいはその使者だったりする。

 で、こういう人たちは足で覚えるか、それとも身分的に遠方の知識にもアクセス権限があるかのどちらかで、つまりは頭に知識が入ってて当然なわけなんですよ。地図が普及しなくてもあまり苦労はないんです。

 てゆーか、限られた知識を持ってるエリートとしての価値を認められている以上、他の人たちに自分と同等の知識を分け与えようとするかというかというと、しない気がする。

 

 測量技術と権限の問題というのは、情報を誰が握っているかという問題でもある。

 じつはけっこう各領地内では、かなり正確に地理が把握されている。地図におこすかどうかは別物として、だれがどれだけの土地を持ち、管理し、誰に耕させ、どれほどの収益を上げているかの把握は、領地経営の生命線だ。だけど、測量技術は計算能力がないとできないし、そして領主でないと測量許可は出せないというわけ。

 かなり正確な地理把握ってのも、目印になる木を手がかりに何歩、という感覚的なものなんで、代替わりのたびにごたごたするのもよくあったりする。

 いやそこはちゃんと測量しとこうよ!規格化できない情報って、わりと役立たずだから!

 

 最後の軍略の問題というのは、文字通り。

 スクトゥム帝国の街道がとってもよく整備されていたのは、あれ、行軍ルートの確保って意味が大きいんではないかと思われる。

 むこうの世界でも、古代ローマ帝国の街道ってのは、軍隊を通すために構築されてたはずだ。平坦で利便性の良い道ほど、軍を速く動かし、そして損耗を減らすことができる。ガリアなどの周辺地域への出兵と帰還を繰り返すにも、その都度大量の人員が移動する街道を抑えるというのは重要な命題だったはず。

 加えて、地理というのは、戦争において国家の最高機密になりえるんですよ。

 戦場の地理さえ分かっていれば戦略的に重要な拠点も、そこにつながる道とは認識されていないような道を見いだすこともできる。奇襲逆襲ゲリラ攻撃、やりたい放題。

 べつに戦場にする予定のない場所であっても、地形がわかれば風の吹き方ぐらいはある程度わかる、風を知れば雨がどのくらい降るかも把握でき、そこで収穫できる農作物の種類、量の上限も推測できる。

 つまりその国の生産量、そこから導き出される人口、そして戦闘能力を判断する材料にもなるのだよ。

 

 だからこそ、地理とは身分の低い、つまりは情報のアクセス権限が絞られている平民が知ることのできる知識ではない。

 あたしが事前に得られた地理情報の乏しいスクトゥム帝国内でまともに動けたのは、ラームスたち森精の半身たる樹の魔物たちが、その記憶のままに森精の虐殺を起こしたスクトゥム帝国を憎み、帝国に敵対行動をとるあたしに便宜を図ってくれたからだ。

 加えて村々を移動することでちょっとずつ違う情報を入手できたこと、空を飛ぶことで移動や幻惑狐たち食事といった、時間がかかるほどに増えるコストを大幅カットできたこと、そして地理を直接上空から認識することができたってことも大きい。

 そんなものを馬やコールナーたちへのマールム(エサ)がわりに差し出してくる、ということは?


「実は、かの国より、水に困窮しつつあるとの相談を受けております。それには『紅の源』とも絡む事情があるとのこと。なにも『紅の源』をどうこうしていただこうとは申しません。なれどかの国に望む水を与えれば、こちらの言葉にも聞く耳を持つのではないかと存じます。水について呪い師たちへグラミィどのがなされた誓約は、サルウェワレーには当てはまりますまい。――いかがにございましょう?」


 なるほど?

 

「『一つ、伺ってもよろしいかな?』」

「なんなりと」

「『サルウェワレーは呪い師たちへ助けを求められたのですかな?』」

「かの国は一つの氏族、国内に呪い師はおりません。素質のある子は隣国のミーディウムマレウス中の呪い師に引き渡す慣例となっておりますので、水に困ったサルウェワレーは、ミーディウムマレウスの呪い師にまず助けを求めました。ですが、かの国が求めるだけの水を与えることはできなかったのではないかと思われます」

「……『ちなみに、どれだけの水をサルウェワレーは求めたのですか?』」

「湖一つを満たすだけ、だそうです」

 

 をい。

 

 思わずジト目気分で眼窩を向ければ、ククムさんは慌てたように手を振ったが、いったいなんだその無理難題。魔術士団のコギタティオさんが硬直して、杯を取り落としかけたじゃないか。


 ちなみに、アルボー侵攻の時に魔術士団が構築したばかでっかい氷山のような氷塊は、数百人がよってたかって十日以上かけて顕界したものだ。

 ビルぐらいの大きさはあったと思うが、それでも溶かせばできるのは湖じゃない。せいぜいが池サイズの水たまりだろう。

 

「氷であれば、量は半分もいらぬらしいのですが……」


 じつに困り果てたような顔で、ククムさんはあたしに顔を向けた。


「なんとかなりませんかねえ?」


 なるかアホたれ。


 一言でぶち切って捨てた内心はともかくとして。

 グラミィ、取り繕うのは協力よろ。

 

「『たいそう興味深いお話ではあります』」


 うん、興味深い話であることは確かなんだ。

 だけど、まだプレデジオさんが頷くわけにはいかない。

 もともとクランクさんたちの存在があるから、フルーティング城砦にはある程度の外交裁量が王都から与えられてはいる。ぶっちゃけただの軍略拠点という範疇にはないレベルだ。

 プレデジオさんが、国王の名代として、他国の使節(ククムさんたち)の応対ができたのも、そのおかげだ。

 とはいえ、彼は、ここであたしの派遣について許可も拒否もするわけにはいかない。

 あたしがこれまでやってきたような斥候なぞの非公式な行動ならともかく、他の国の要請を受けて公的な行動をする許可を出すというのは、プレデジオさんの越権行為であり、下手をするとフルーティング城砦の暴走、王権を侵すものと取られかねんのだよ。


 さりとて、鳥便を使ったとしても、王都からレスポンスが帰ってくるまで待つというのは、ない。

 だって大至急でククムさんたちは来てくれたのよ?

 つまりはそれだけ事態が切羽詰まってきていると推測できる。


 そもそも大湿原からプレイヤー気取りの星屑たちが――あたしたちが帝都レジナでぶち上げた宣戦布告に対する反応だというグラミィの推測が正しければ、まあ正しいんだろうけど――やってきているというのは、ランシアインペトゥルス王国狙い。

 プレイヤー気分な星屑たちという存在は、こちらの住民たちからすれば異常な人間だろう。甦るという思い込みが強すぎる上、無駄ポジティブのせいで、集団自殺も仲間割れも、同士討ちもやってのける。

 ならば、こちらもそれ相応の対応をするべきであり、それができるだけの時間を情報を譲渡してくれることで与えてくれたククムさんには感謝すべきだろう。

 てことで。

 

「『わたし個人としては、ぜひともサルウェワレーを(おとな)ってみたいものですね』」

「シルウェステル師!」


 マヌスくんの唖然とした顔、レガトゥスさんの片方つり上がった眉、アルガのおもしろそうな顔、クランクさんの鉄面皮、コギタティオさんの呆れ顔。

 あたしはその全部に見ないふりをした。


「『さいわい、フルーティング城砦の守りは厚うございます。わたし一人が外れたところで、微塵揺るぎもいたしますまい』」

〔……って、またいつもの『単独行動の代わりに蜥蜴の尻尾切りの対象にしろ』ですかー〕


 グラミィがひっそりジト目を寄こしたが、自由と引替に庇護を受けているのだから、自由を取り戻したら庇護が受けられなくなるのは当然でしょうよ。

 それに、後顧の憂いはあらかた断った。はずだ。


「いや、しかし、シルウェステル師が城砦を空けられますと」


 などと意味不明な供述をされても。

 コギタティオさんとは昨日大掃除の合間に話をした。掃除中だったから、お互い魔術師のローブ脱いで超ラフなかっこだったけどね。

 できることを増やすため、彼にはポイントとなる点をいくつか提示しておいた。

 けれど、彼らが使える技術の開発は彼らにしかできない。自分たちから魔喰ライが出ないように対策、集団での戦闘対応、やるべきことは多いけれども頑張れと伝えたら、ちゃんとわかりましたと覚悟を決めた顔で言ってくれたんですから、信じますよ?

 たかだか心細いからというだけで引き留めないでくれなさい。あたしゃ集団行動にも統率にも向いてないんですよ。


「『いかがでしょうか、プレデジオどの、クランクどの』」


 制止はおいといて、あたしは二人に話をふった。

 ようやく同盟なったクラーワヴェラーレは、まだかろうじて隣国だが、これ以上つっこむんならスクトゥム帝国に潜入した時と同レベルの対応が必要になる。

 しかも今度はグラミィとヴィーリがいるし、案内役のククムさんを場合によっちゃあ守らなければならない。

 プレデジオさんには身を守るための実力行使戦闘――それも城砦近隣じゃないので――の許可をもらっておく必要が、外交関係の下駄を預けたクランクさんには、今後取ってもらう責任と、今あたしたちがつっこむメリットを天秤にかけて、判断してもらう必要がある。

 まあ、あたしたちが突っ込んでってやることは外交そのものではなく、外交を行う前の地均し的な実力行使ですから。あたし個人の突出として、状況次第でいくらでも捨て石にしてもらってかまわないと伝えてあげたんだ。君らにゃ損はないはずだ。


「……わかりました。シルウェステル師にご一任いたします。ですがせめてトルクプッパの同行を。これはククムどのにも願いたいが、せめてクラーワヴェラーレまででも同行をお許し戴きたく」

「かしこまりました。師のお連れの方ならば我らが恩人でもございます。ご同行に感謝申し上げます」

「さようですね、詳しいことはまた詰めるべきでしょう」

「ありがたく」

「あんまり派手なことはなさらずお逃げください、天変地異は」

 

 失敬な。そんなことしないっす。自発的には。

 

〔その後付けフラグが不穏すぎて不安です!〕

 レガトゥスさん「スースを丸焼きにするのにこのような炉を作るとは!どちらでそのようなやり方を?」

 骨っ子(筆談)『アルボーで』(水揚げされた遺体の火葬用に、熱の回りがいい構造を作るのに試行錯誤したというのは言わないどこ……)

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