EX . 書信
本日も拙作をお読み頂きましてありがとうございます。
第四章開始です。
と言いながら、一方その頃ランシアインペトゥルス王国では……という感じですが。
密談用の小部屋の支配者は、異様な空気だった。
緊迫しているだけならよくあることだ。
焦燥、あるいは興奮が含まれていることも、珍しいというほどではない。
だが今のように隠しきれぬ高揚と熱意が、季節すら違えるほど小部屋を熱しているのはただ事ではない。
だがそれにも熱を発している張本人たちは気づかぬようだった。
「アルボー警衛連隊長、アロイス・ムータェルムどのがおいでになりました」
「ようやくか!」
「遅くなりまして」
「ごくろう。待っていたぞ、アロイス」
触れの語尾を踏み越えるように入ってきたアロイスは、王弟クウィントゥスに騎士の礼を施した。
旅塵にまみれ、王都ディラミナムに入ったその足でここまできたことはあきらかだったが、ねぎらいの言葉もそこそこにクウィントゥスは本題に入った。
断じて彩火伯たちの熱意に押されたからだけではない。
「わざわざそなたにアルボーより戻ってきてもらったのはほかでもない。これを解いてもらいたいのだ」
「これを、ですか」
卓上に置かれていたのは、奇妙に細長い石筒だった。
「プレデジオ。説明を」
「は」
アロイスにも面識のあるオプスクリタス騎士団の隊長が一人は、きびきびと口を開いた。
「蕾月が紅金の月の満ちた日、わたくしが警備を務めておりますフルーティング城砦に四脚鷲が飛来いたしました。通常かの魔物は城砦に近づくことはございません。なれどその時は長く鳴きながら城壁の上を飛び回り、門楼脇におりました衛士の前にこれを落としたのです」
差し出されたのは、一枚の薄い石板だった。
落下した衝撃で微塵と砕けそうな薄さだが、端だけがまるで風化したように崩れているほかはまったくの無傷だ。そこに刻まれた文字と残った紋様にアロイスは目を細めた。
「‘フルーティング城砦を守る勇猛な騎士の長へ この四脚鷲は我が使役するものなり 書信を王都へ送るよう願いたい 簡易な問いには答えうる シルウェステル・ランシピウス’……これは」
「字の読める者が気づきまして、わたくしを呼びに参りました。その間四脚鷲は櫓の上に止まったまま鳴くのをやめ、兵達を見下ろしていたようです。四脚鷲の前でわたくしは職名と名を名乗りました。するとその四脚鷲は少し離れた胸壁の上へ下りてくると、我らに向かってこう、お辞儀でもするように頭を下げたのです」
何度かすでに語り、そして信じるものの少なかったことなのだろう。むきになるような時期を過ぎて、理解されることすら半ば諦めているような顔のプレデジオにアロイスは頷いた。
「それは、わたくしも以前に見たことがある。シルウェステル師はわたくしやルクスラーミナ準男爵の前で襲ってきた四脚鷲を手取りになさり、その場で手懐け、意を通じておられるかのように使役された。魔物に礼を施されては毒気も抜けるというものだが、人語を解するような振る舞いには驚いたものだ」
(プレデジオの言葉に信憑性を加えるにはこの程度にしておこう。こちらが人語を解するどころか心話を巧みに操る魔物に宿を借りたこともあった、などと言ってもかえって嘘にしか聞こえぬだろうしな)
苦笑まじりの内心は表に出さぬ。
「御理解くださいまして、ありがとうございます。わたくしも隊の者たちも、あの時ばかりは我が目を疑いました」
安堵の色をわずかに滲ませ、現フルーティング城砦警備隊長は報告を続けた。
「わたくしとて、シルウェステル・ランシピウス師のお名前は、フルーティング城砦の城塔を復旧せねばならぬ経緯とともにお伺いしておりました。また師の率いておられる糾問使の方々が海を渡られたことも、聖槍の輪を守るべき身として存じておりました。が、このような手段で書信を送られるとは夢にも思いませんでしたので、いくつか問いを行いました。それに四脚鷲は鳴いて答えました」
「師は御無事だったのだな」
「は。一行の方々にも変わりはないか問いましたが、同じく否定を表す一声のみ」
「なるほど」
オプスクリタス騎士団の中には、鳥の鳴き声を真似した鳥笛で、複雑な情報を驚くほどの距離を隔てて取り交わす方法に長けた者もいる。それも原理は同じだ。あらかじめ取り決めておいた暗号を組み合わせて情報を伝達する。おそらくプレデジオはもっと単純に、はいかいいえで答えるような質問だけをしたのだろう。
「書信を預かろうと近寄ろうとしたところ、四脚鷲は警戒するように鳴きたて、両前脚で握っていたこれを胸壁の上に置きますと、狭間をひょいひょいと跳んで我らより遠ざかりました。飛び去ろうともせず、その場でわたくしたちの様子をうかがっている様子でしたが、わたくしがこれを手に取りますと、それを見届けた四脚鷲はあの巨体にもかかわらず、書信を運ばせるエラフロヒルンドのように軽やかに舞い上がり、闇森の方へと飛び去りました。その後は姿を見ておりません」
「なるほど。よくわかった」
アロイスは卓上にある石筒を見下ろした。
巻いた書類を保護する筒に形こそ似てはいるが、純白で通常の石より多く魔力を感じるのは、おそらく魔術で顕界したものなのだろう。地の部分には‘アルボーの守護者 ウンブラーミナ準男爵 アロイス・ムータェルムどのへ シルウェステル・ランシピウス’と刻まれていた。
それを封じるように巻いてある幅広の紐は蒼と深縹を組み合わせてあり、王よりあの骸の魔術師が賜った外套と同じ色であった。
外套の代わりに飾り紐として身につけることも、持ち物につけて主を表すこともできる平織りの丈夫な紐だ。
ご丁寧にその結び目に封蝋を垂らし、その上にはシルウェステル・ランシピウスの個人印が捺されている。
以前遺品として見せられた短剣にも刻まれていたものと見ていると、アロイスの横より地の底から聞こえてきそうな声がかけられた。
「……なにゆえシルが‘アロイスどのへ’と宛てたかはわからぬ。なれど、我らにもこの魔力錠は開けられぬ。手数をかけるが、是非ともこの場での開封を願いたい」
相変わらず、血のつながらぬ弟への偏愛甚だしい彩火伯の言葉に、アロイスは思わず苦笑した。
「では失礼いたします。封蝋は外しましても」
「もちろん構わぬ」
早速帯紐に手をかけ、アロイスは驚いたように軽く眉を上げた。
「いかがした」
「この紐は緩みの出ぬようにかけられているのではないのですね。石筒に貼りついて、いやめりこんでいるようです」
この紐もまた封の一部。にしては、特になんら魔術をかけている様子もなくひき剥がすことができたのだが。
「ほう?」
「……これは、謎ときですか」
のぞきこんだマールティウスが呟いた。
紐の下になっていた部分には‘そなたの選びし道に祝福を’という文字に、剣と杖らしき図があった。
どちらの図にもその後ろには×と○を重ね合わせたような図形が刻まれている。
「なるほど。わたくしでなくては封をここまで引き剥がしても開けるすべがないわけですね」
「…………」
わかりやすい彩火伯の動揺にアロイスは破顔した。わずかに紐に緩みがあったのは、おそらく、辛抱たまらなくなったアーノセノウスが端から引っ張ってみたからなのだろう。
この稚気溢れる彩火伯がアロイスは嫌いではなかった。
「この文言はいかなる意味でしょうか」
「以前に少々、師から忠告を頂戴いたしましたことがございまして。わたくしが選び取った道に、師は祝福を注いでくださいました」
よくぞその身を害しようとした自分を許し、それどころか長年の劣等感を拭い去ってくれたものだ。
感謝の意を籠めてアロイスは剣の図に触れたのだが……何も起こらない。
「おや?」
「……妙ですね。これで合っていると思うのですが」
「失礼。拝見しても?」
「どうぞご覧ください。魔術に疎いわたくしではわかりかねることも多いでしょうから」
「では」
ルーチェットピラ魔術伯爵家当主はそっと袖で受けると、焦点の定まらぬような目でじっくりと石筒を眺め回した。
「……やはり、さすがは叔父上。魔術陣まで組み込まれておりますが、これは結界陣のようですね。石板同様、破損せぬようにとのお心遣いでしょうか。そして魔力鍵は……二重になっております」
「二重とは」
「開錠条件が二つ組まれているようです。魔力の流れを辿りますと、先ほどアロイスどのが触れた図だけでなく、こちらにもつながっております」
そう、マールティウスが指し示したのは杖の図だった。
「両方に正しい触れ方をしないと開けられぬと?」
「おそらくは」
アロイスはしばらく考え込んだ。
あのとき、骸の魔術師はなんといったのだったか。
そして、自分は何と答えたのだったか。
「……ああ。忘れていましたね」
うっすらと笑みを浮かべて、アロイスは杖の図に触れると――爪を立てて、思い切り×を刻み込んだ。
思ったよりもあっさりと石は不名誉印を受け入れた。
『わたくしは騎士として生きようと思い定めました。魔術師の道は、おのが意思で断ち切る所存にございます』
たしかに、自分はそう言った。
おのれが選んだ道は、騎士としての剣把る者の道。魔力ナシと蔑み自分を捨てた生家の、杖振るう魔術師の道は、自ら捨て去った。
となれば、もう一つの方は、おそらくこれが正解だ。
アロイスが剣の背後に刻まれた○をなぞりきると、その手の中で石筒はゆっくりと分解した。
蕾がほころびるように石筒の中身が広がると――そう、中身もなんと紙のように薄い『石』の巻物だったのだ――卓に身を乗り出すようにして、魔術師たちは凝視した。彼らもゆるゆると伸び広がる石というものは初めて見るのだろう。
が、魔術による生成物への関心すら押しのけるように、燃えさしで書きつけたような粗く黒い文字を彼らは目で追った。
『書き述べたき事柄数多あれど四脚鷲に運ばす便宜あるがゆえ、挨拶の文言も略す。皆様にも非礼容赦願いたし』
古典文字はいきなりそのように始まっていた。ぶっきらぼうな文面に謝罪の言葉が添えられているのは、アロイス以外の者も目を通すことを想定してのことだろう。
『ジュラニツハスタを出でしより前の事は既にご存じのことと推察。省略。
木の芽月が蒼銀の月朔より三日、我らシーディスパタに入る。
外務卿テルティウス殿下が麾下、エミサリウスの補佐を得、カプタスファモ魔術子爵、ゲラーデのアルガら交渉に手腕を振るう。剣の名乗り持つ者ら、ベーブラにて取り押さえし一行の件を伝えたところ極めて協力的。彼の国は小国ゆえ大港なし。なれど無数の島影にも無数の良港あり。
木の芽月が紅金の月満ちて二日、シーディスパタが短剣の名乗り持つクルテルを同道しグラディウスファーリーが港カリュプスに入る。翌日王都ラビュウムへ。
宰相との面談かない、天空の円環を渡り侵略を図りし彼の国の叛逆者について情報を得たり。スクトゥム帝国関与の疑いありと愚考。ゆえに彼の国の叛逆者、テルミニスの一族が地ドルスムへの踏査を願い出、グラディウスファーリー王の許可を得る。なお同行者すべての同道は許されず、カプタスファモ魔術子爵には、エミサリウス、トルクプッパの両名を付けともに宰相との交渉を一任す。またゲラーデのアルガが身柄を得たり』
「ほう。シルウェステルはなかなかやるな」
王弟殿下はにやりとした。ゲラーデのアルガと呼ばれる魔術師が、一癖も二癖もあるグラディウスファーリーの密偵であることはクウィントゥスも知っている。それを他国の使節という立場にありながらよく引き取れたものだ。
考えていたよりもずっと、シルウェステル・ランシピウスという男は交渉がうまいようだ。
その呟きに我身を賞されるよりも嬉しげな様子を見せるアーノセノウスを尻目に、クウィントゥスはさらに文面を追った。
『蕾月蒼銀の月満ちるに四日、アルガ、我が舌人グラミィとともにドルスムに入る。彼の地はランシア山がグラディウスファーリー側高地にあり。即日スクトゥム帝国関与の証探索を開始せり。襲撃を受けるも無事。空を飛ぶ得難き体験』
「……は?!」
プレデジオの素っ頓狂な声に、小部屋にいた者らは互いに顔を見合わせた。
「……空を飛んだ、と書いてあるように読めますが、わたくしの見間違いでしょうか?」
「いや、わたしにもそう読める。シルウェステルともあろう者が報告書に誤りは書かぬと思うが……」
まさかに王の暗殺に巻き込まれかけて返り討ちにした結果とは想像も叶わぬ。
彼らは頭を悩ませたが、次の文面には目を剥いた。
『探索にてグラディウスファーリーの侵攻へのスクトゥム帝国関与の物証、証人を確保するに至りぬ。さらに物証を得んがため数日ドルスムに滞在せり。スクトゥム帝国は聖槍の輪を通じてグラディウスファーリーがテルミニスの一族挙兵に関与せりと推断す。スクトゥム帝国が魔手はこのテルミニス一族の使嗾ひとたびのみとも思えず。願わくばフルーティング城砦の守り手に配慮を。今後さらなる警戒を要すべし』
「なるほど。そこまであの帝国は危険とシルウェステルは見たか。これは確かに重要だ。……プレデジオ、これを持って騎士団本部へ行け。物資を山と持ち帰ってもらうぞ」
「かしこまりました」
割符を受けると、フルーティング城砦の守り手は表情を引き締め、小部屋より素早く引き下がった。
残った者は再び文面に目を落とした。
『またグラディウスファーリー王よりの信頼篤ければ、王弟の身を託さるる。国内にて匿うすべなし、緊急を要すとのこと。万已むを得ず、すべてを我が責と負う。本日ドルスムを離れ王都ラビュウムへと帯同申し上ぐ。旬日中にはスクトゥム帝国へと帆を上げる。次の動きを願わしく。なお、グラディウスファーリー王弟は今後スクトゥム帝国へもともに向かう予定。彼は魔術師なり、スクトゥムが魔手にもただびとより抗いやすきがゆえ』
「「「「「……なにぃっ?!」」」」」
何がどうしてそうなった、というのが彼らの偽らざる心情だった。
グラディウスファーリー王にきょうだいが多かったことは無論情報収集済みだ。
しかしあらかたは政争で共倒れとなり、今もまだ生きているきょうだいはほんのわずかなはず。
さらに、『身を託される』という言葉からは二つの情報が読み取れる。
その王弟殿下は、グラディウスファーリー王に極めて近い立場にあるということ。
そしてシルウェステルは、あの骸の魔術師は、何らかの理由でグラディウスファーリー王の信頼を得ているということ。
しかも、この文面から推測するに。
「この『魔術師なる王弟』という方は、叔父上たちに同行なさっていた、ということでしょうか」
「おそらくは」
「そして、ドルスム――ランシア山のグラディウス側だとすれば、かなりの辺縁の地のように思われますが――、そこまでグラディウスファーリー王の意を伝える者がやってきた、ということでしょうか」
「で、あろうな」
「では、師が受けたという襲撃も、もしや王弟を狙ったものでは?」
「否定はできん。アロイス」
「は」
「グラディウスファーリー……いやシーディスパタあたりまででもいい、出ていた影たちの耳を集めてくれ。何がグラディウスファーリーで起きたかを明らかにせねばならん」
「かしこまりました」
「継続してグラディウスへの耳を増やすなら……ああ、これはアルボーに戻ってからでよいが、影たちの宿を港に拵えてもらう必要があるかもしれんな」
「は」
もしやそこまで考えて、あの骸の魔術師は書信の宛先をアロイスにしたのかと王弟は疑った。
よもやグラディウスファーリー王自らが暗部の長の扮装で同行し、その王を狙って王弟が暗殺未遂を起こしたとは推測の埒外であった。
彼らは頭を抱えたが、状況の不明さに悩むがゆえではない渋面がひとつ。
「父上。何かお気に障るような事がございましたか」
「いや。……だが」
「彩火伯。何か気づいたことがおありかな」
「いえ、殿下。少々、ひっかかりを覚えたのでございます」
眉をしかめた彩火伯は指先で文面の一部を指した。
「あの子らしくないなと思いまして」
「シルウェステルどのらしくないとは?」
「王弟殿下の身柄を預かるような大事、一人の決断でなどなまなかに決めきれるものではございますまい。あの子ならば、より慎重に振る舞うのではないかと」
「そうか?」
騎士団長は首を傾げた。骸骨と成り果ててからこっち、あの名誉導師の繰り出す奇抜で過激な策には舌を巻いた記憶しかない。
「彼はずいぶんと豪胆な人物だとわたしは思うが。ルンピートゥルアンサ副伯攻めにもみずからアロイスたちとアルボーへ向かったのは彼だ。ピノース河だけでない。ベーブラ港の再鑿までやってのけた腕前の魔術師だぞ?」
「ええ」
アーノセノウスは首肯した。
「ですが、あの子は必ず上の者には諮るのです。独断で動くことはまずございません」
「そう言えばそうだが……、シルウェステルは正使だ。使節団には彼より上の者はおらん。また王意を伝える者に即断を求められてのことやもしれん。詳細な状況がわからぬ以上は何ともいえんが、諮りえぬからこそ、この書状を魔物という手を使って送ってきたのではないかな?」
「そうでありましょうか……」
どうにも腑に落ちないという表情の彩火伯に、相変わらずの溺愛かとクウィントゥスは苦笑を向けた。
「アーノセノウス。シルウェステル・ランシピウスという人間は、まだそなたが翼に抱え込まねばならぬような雛か?彩火伯たるそなたが認める魔術の巧者なのだろう?魔術同様、気性も強く大きくなっていたとて、わたしは驚かんぞ」
「……は」
「そなたあての文言がなかったからとてしょげるな。これほど紙幅が限られているのだ、仕方のないことだろう」
「承知、いたしてございます」
しかし、退室したのちも、アーノセノウスの表情は晴れなかった。
(あの子は、己が出自を知っている。他国の王子の子という出自がもたらす影響を知っている。国と国との問題に下手に手を出せば、クラーワヴェラーレすら巻き込む大きな紛争になりかねないことを知っている。わたしにジュラニツハスタとの戦いでの戦功をすべてよこしたのもそのせいだ。おかげでわたしは彩火伯という名ばかりが先走り、あの子はわたしから逃げるようにして魔術学院へ居を移しクウィントゥス殿下の麾下へ入ってしまった。目立たぬようにするためだろう。――あの子がわたしから離れようとすることが悲しかった。その一方で、どんなに功を立てても表に出ぬ地位を選んだことが、とてもあの子らしく思えたのだが……)
骨っ子「王弟預かるとか、本国に無断ってのはまずいよなー。グリグん、頼んだ」
そんな感じのお手紙でした。ちなみに紙じゃないのは筆記用具類をうっかり忘れてきたからです。そして意外と紙は高級品。というわけで、魔術でできるものを作ったわけですが……。
グリグじゃないと持って飛べない重量感。そのせいで超早鳥便ではなく、馬を飛ばして王都に届けられました。
イメージ的には円筒形土鈴の中までみちみちに詰めた感じ。
あと、グリグがお行儀よかったのは心話でつながってた骨っ子の命令のおかげです。
破損防止の魔術陣を組み込んだカードを渡して(その時点で反応が敵対的だったら逃走。グリグにつけた結界陣で矢の一発ぐらいは耐えられるはずだから逃げてこい、という命令つき)、えらいさんを呼び出して石筒を預けろ、下手に敵対心を煽るような真似すんな、とね。
ちなみにあんな無駄複雑になった魔力錠には、相手の魔力を生で焼き付けないとどうしても識別精度が甘くなるから、という理由があったり。




