転生っていうより転死でしょ!
お気に入りユーザに相互登録していただいているジャガイモ探偵さん(https://mypage.syosetu.com/2221799/)から、こんな素敵なイラストをいただきました!
表紙風ということでしたので、ここに置かせていただきます!
ありがとうございました!
2022/04/16
鎌のような、紅い月を見ていた。
月が紅くなるのは、なぜだったろう。
空気の屈折率がどうとか、なんだか理系っぽい理由があったと思うんだけど、よくは覚えていない。
けど。
こんなにじっくり月を見るのも久しぶりのような気がする。
うん、綺麗だ。
見とれているうちに、どれだけ時間が経ったのだろう。
気づけば、紅金に輝く月の上端にから青白い光がさしてきていた。
あんなところに一等星ってあったっけ。
ていうか、今見てる方角はどっちなんだろう。
まあいいか、綺麗だし。しばらくこのまま寝転んで見ていよう。
……そんな風に思っていた時もありました。
紅金の月の背後からあらわれたのは――それと同等、いやそれより大きいかもしんない、蒼銀の月。
……えーと。寝ぼけてんのかあたし。月が二つ見えるって。
それとも、酒でも残ってたっけか。
そんなふうに思って、あたしは目をこすった。
……………………。
なにこのカコンカコンっての。人体が立てる音か?
立てっこないわな。普通なら。
青みが強まりつつある月光に腕を伸ばして、まじまじと見る。
白くて細くて形がいいのはともかく、皮膚なし。肉なし。腱なし。
……つまり、骨。
(ぬぁんじゃこりゃあああああ~~~~~~~!)
ぶっとんでたからよく覚えてないけど、あたしは最大音量で絶叫した、ようだ。
周囲の森から動物たちが大騒ぎで逃げ出したかもしんない。安眠妨害ごめん。
……。
…………。
………………おうけい、あたしは落ち着いた。だから現状把握もちゃんとできる。
1.月の光に目が覚めた。
2.実は月が二つあった。
3.気がついたら全身骨格標本状態でした。←イマココ
どうやらここは事故現場のようだ。
見上げれば十数メートルはありそうな切り立った崖、あたしの周囲に散乱してるのはひしゃげた車体とひん曲がった車輪。
……問題は、どっちも木製に見えるってことだ。
二つも月が出てるってあたりで、うすうす気づいてたけど。
それでも認めたくはなかったんだけど!
どうやらここはベタな異世界ってやつらしい。
だったら、普通は、転生とか転移って言葉が後ろについてしかるべきでしょーが!
転生じゃなくて転死、もしくは転・落・死 って、どーいうことよ!
責任者でってこーい!
異世界転生ものの王道要素を一つずつぶち壊していきたいと思います。
一つ目は、サブタイトルどおり「転生者じゃない転死者」です。