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大学のキャンパス内、落ち葉がたくさん落ちている。清掃のおばさんが片づけているのかほとんどが端に寄せられている。しかし風に吹かれたものが散乱していくのは仕方ないことなのだろう。鞄を持ち久々にまともな社会に来たような気がする。夏休み起きた少しのイリーガルをなかったかのように落ち葉を踏みつける。カサっと水分のない音を出して崩れていく。
全てをこんな感じに消してしまえたらいいのに、と思ってしまう。
こんなことを考えてはいるが大学の生活が嫌いなわけではない。そういう点では全てとは言いすぎか……
大学で友達はいるがそんなに仲良くしていない。講義のなかだけ、という感じのレベルだ。ただ講義も後期に変わり激変してしまうためそれすらも怪しい。
決して友達がいない子ではない。彼氏はいるから少し敬遠してるだけ、そう思いたい。だけどそれでも少なすぎたかなあ。
そうであろうとも私は別に気にしない。大学には勉強しに受けたんじゃない。ただのモラトリアムの延長だ。働きたくも何もない。いっそのことニートか何かにでもなれれば楽だとは思うんだけど。
歩く道、無駄とも思えるほどのこの広さを憎みながら進むと目の前に知っている人がいた。それは前期の講義で結構かぶってた…誰だっけ、顔は知ってるんだけど…
モノトーンに包まれた彼女は時期尚早とも思える灰色のマフラーを付けていた。セミロングの長さを持つ、大学では珍しい黒髪が太陽に照らされて天使の輪のかのように光る。
肩周りには白いファーがついておりとっても暖かそうに見える。上は灰色めの服を、下は真っ黒のスカートを着ている。やはりスカートはおしゃれの意地なのだろうか。
それに比べ私の服は真っ白の紐付きパーカーだ。あったかければそれでいい、というか一番上にあったから着ただけの適当な服装だ。
彼女のようなお洒落を見ると店でのことを少し思い出してしまう。いや、それは置いておこう。思い出してはいけない。
さて、それは気にせず、彼女に話しかけよう。とりあえず後期も彼女とは一緒に講義を受けれるかもしれない。同じ方向に進む彼女に手を伸ばす。
「久しぶり、おつかれー。今から講義?」
「あ、久しぶりー!今から行くよー。一緒のやつ?」
「あ、今からのは……」
そう会話を続ける。やはり学科が一緒なだけあり講義はほとんど被っていた。後期もこの子を頼りにしよう、そしてせめていい関係でいよう。さすがに一人だと単位を落としてしまう。
そうして歩く道を並列に進む。習性なのかもしれないが、道は塞いでいないから問題ないだろう。とりあえず今日は平穏な一日を過ごせそうだ。
――
大学の生活はとても楽だ。単調な同じ毎日を続けるだけで過ぎていく。店とは違う普通のバイトは結構長く続けており、心労は特にない。
毎日がアラベスクのように同じ模様を描き続ける。アラベスクは世界の秩序を示しているが、そんな崇高な意味が全く見いだせない。
一時期変わっていた世界は結局変わらず、休止していたあの期間を夢と思えば繰り返しているに過ぎない。いつまで続けるのだろうか。
いや、いつになったら俺は俺として生きていけるのか。
――
変わらない生活に一石が投じられる。その日も私は大学を休み、電車で病院へ向かう。くしゃくしゃにした診察券を少し伸ばして財布に入れる。
イライラしていたあの気持ちを思い出す。精神的に不安定だったのだろう。今はむしろ何も考えていない。騒いだところで結果は変わらない。
一週間たってしまったのだから。
――