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1-4

――


九月下旬。夏の暑さが消えはじめ過ごしやすい気候になる。あのキャバクラは未だに続けていた。

給料は必ず支払われ、確実に増えていく手元のお金と預金残高を見ては顔が綻んでいた。

体力がそれほどない私には天職と思われるほどの働きやすさだ。酒を入れてしまえば結構簡単に記憶が飛んでしまう。元々酒が弱い体質がここでプラスに働いている。

いつもはなくなる記憶にちょっとした恐れがあったが、周りに人がいて助けてくれるから安心できる。


まだ大学は始まらない。私は仕事に没頭いや入れ込んでいたのかもしれない。三日や四日に一回のハイペースで出勤していた。このような業種において初めての人間がこんなに来ることは普通ありえないと店長も若菜さんも言っていた。

ここの店は時給自体はあまりよくないらしい。他の店のことを詳しく知らないから何とも言えないけど。しかしそれでも給料は多い。なぜかというと指名料はキャストの全取りだからだ。なので入れば入るほど給料も増える。そして私は喜ぶ。

と言っても、それほど指名があるわけじゃないからもっと私を売っていかないと……


――


「ゆら、入りまーす。どこ行けばいいですか?」


「ゆらちゃん3番テーブル入ってー」


本名から一文字削っただけの源氏名。自分がわかりやすいから気に入っている。最初に違う名前で呼ばれたときに全く気づかなかったから…

テーブルには今まで何度か指名してくれていたお客さんがいた。と言っても私はアルコール入れると殆ど覚えてないから、最初のこのワンシーンくらいしか記憶に残っていない。それならせめて今日は控えめにしてお客さんの話を聞いてみようかな、そう思ってしまった。


「いつも指名ありがとうございます。ゆらのこと気に入ってくれました?」


「ああ、いつも君は飲むと喋り倒してハイテンションだからね。こっちとしては見てて楽しいよ。」


「ありがとうございます!でも私入れすぎると記憶飛んじゃうみたいで後ろの方の記憶があんまりないんですよ……」


そんな感じで会話を始める。お客さんの名前は最初の指名されたときに言われてるはずなので聞きはしない。同じことを何度も聞いたり話すのは失礼だからね。

そう考えてゆっくりと酒を入れる。今日は指名客の確固たる確保が目的だからお話を聞かないと……


――


俺はまたここに来てしまった。 照明は少し暗く、酒の匂いがする。ねっとりとした空気が肌に触れる。食事と酒が勝手に運ばれてくる。いくら飲み食いして問題はない。金のことは……考えてはいけない。

目の前のやつの話を聞く。そして自分も話す。会話のキャッチボールが行われる。合間に酒を飲む。


酔ってきたのか体が思うように動かなくなってきた。視界が微妙にぼやけてきた。そろそろ戻る時間なのか、と俺は思った。

目の前の人もそれを察したのか店の出口まで連れて行く。


少しした後、店を出る。気分が悪いので路地裏に入る。視界が更にぼやける。もう戻る時間だ。


――

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