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大学へ行かなくなって数日。抜け出したその日から私は殆ど外に出なくなった。身の回りが自分の知っているもので囲まれていないと不安になってしまう。
知らないものは私の知らないところで動き出して襲い掛かってくるかもしれない。そんな恐怖が私にまとわりつく。お化けを怖がる子供のような、それ以上な感覚だ。
世界が私に敵意を向けてくる。世界に溶け込まない、服従しない私を排除しようと動き出している。それはヒトだけでなく、動物や無機物まで。
布団にくるまり、テレビをつける。テレビの中からは絶対出てこないので安心してみてられる。外すら見れない現状で唯一の癒しだ。
テレビからはバラエティー番組の音がする。前の私なら何にも反応せずに切っていることだろう。でも今はそれすらにも見入ってしまうほど、世界に動きがなかった。
箱の中から聞こえる音と動きだけが視覚と聴覚を刺激していた。その他の見える景色はないかのように灰色に染まってしまっていた。
………
そう、俺は不安定な時に現れる。何事もなく生きていけるなら俺は必要とされないだろう。まともに生きていけない状態なら、ここに来るのも仕方ない。
誰もがこんなところに来る必要はないだろうが、今のこの状態は不安定すぎる。動きすぎると起きたときに困るだろうから置手紙でも書いて誘導しよう。
じゃないと俺すらも消えてしまう。崩壊してしまうよりは出てこない方がまだ幸せになれるだろう。
………
いつの間にか私は眠っていたみたいだ。開けた私の視界は物の色を認識するとともに少しの違和感を感じる。くるまっていた毛布はいつの間にかベッドの上にあり、テレビは消えていた。
ふと思い、全てのカギを確認するが開いた痕跡は見られなかった。誰もここに入ってきていないはずなのに嫌な感覚が変わらない。
床に置いてあるペンの位置が、ロッカーにかけてある服が、カーテンの開き具合が、何もかもが全く違っている気がする。いや、それ以上におかしいのは机の上だ。
机の上にあったコップや皿は全て片づけられ、代わりに白い紙が一枚置いてあるだけだった。その紙には私が書いたとは到底思えない字でこう書いてあった。
「すぐに精神病院へ行け」
――
もう発狂しそうだった。なんでなんでなんで。この部屋で生活することすら世界は私に許してくれないのか。世界が私を拒否する。ついに身の回りのことですら敵意を向け始める。灰色に染まっていたこの世界が真っ赤な敵意をむき出しにしてくる。視界は、敵意で真っ赤に染まり、今にも動き出しそうだ。私は耐えきれない思いを叫びに変え、行動として発現する。机をたたき、紙を破りさく。おさまらない衝動は破壊衝動へ、自傷へも。ロッカーの中身をぶちまける。今まで着ていた様々な服が床に散乱する。その中には店で使っていた赤色のドレスもあった。それを見つけると肩口から破りさいた。フリルを千切り空に撒く。その赤色がやはり敵意にの象徴に見えてまた衝動が収まらなくなる。耐えきれなくなった私は台所へ向かった。
台所から包丁を取り出し、それを自分の首に当てる。切り裂こうと思ったが一瞬の理性がそれを止める。首から包丁を離し、それでも衝動は止められなくて自分に向けて振り下ろす。右足の太ももが切り裂かれ、ズボンに穴が開き血がにじみだす。それでも足りずまだまだ何度も繰り返す。
私はそれを意識を失うまで繰り返した。
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