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魔神になった少年  作者: キタビ
第四章 王宮の勅命
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 『機工部隊』をひきいる隊長であり、ガルドラ帝国の王子でもあるスレイヤーは、芸術的ともいえる造形的ぞうけいてきよろいを身につけ、ワインレッドのマントをひるがえし、つややかな金髪を後ろへと流した精悍せいかんな顔立ちの男だった。

 ジョーカーいわく庶民に愛されるフランクな性格で、いざという時の勇敢ゆうかんさもあり、次期国王として申し分ない評価を得ているらしい。剣の腕も相当なものらしく、女性のファンが多いのも納得のにくい王子だ。

 そして彼の率いる『機工部隊』の兵達は、『機械人形』を管理する重要な役割をになっている。

 複雑なギミックを持つ機械人形にはまだ安定していない機関が多く、点検や修復作業に常に備える必要があった。 

 他にも、機械人形の有効攻撃範囲内に敵をおびき寄せるなど、実戦を想定した特別な訓練を受けていて、一人一人が一定水準の戦術の心得こころえがある。ゆえにか、自信家や矜持きょうじの強い者が多い。


「それでは簡単な自己紹介が済んだところで、今回探査する遺跡に関して三人に説明させてもらう。いいかな?」


 スレイヤーは前置きすると、三人が頷いたのを確認してから説明に入った。

 今回探査する遺跡は、南に馬を走らせて二日の深い森の中にあるミスティアという遺跡だ。

 遺跡自体は昔からあったが、トレジャーハンター組合での探査は五年前を最後に、帝国が派遣した兵を除いて人の出入りはない。

 遺跡は聖堂の地下に設けられていて、入口は一つのみ。現在確認されている二層目までは、トラップやガーディアンの撤去てっきょ排除はいじょおおむね完了してるが、完全ではない。二層目の奥まで進むと、同じ場所をぐるぐる回る迷路に迷い込むらしく、更に下層へと続く道は今のところ見つかっていない。


「その森って『閉ざされた森』の事ですか?」シンが尋ねた。


「そう。魔獣まじゅうが出るから滅多に人は近づかない。付近に住む村人からは神が住む森と神聖視しんせいしされていて、入ろうとするとぬしの怒りがどうと、神ではなく村長の怒りを買う、まあよくある話だ」


 スレイヤーが少しおどけて言うと、兵達が小さく笑った。


「魔法書は最深部にあると考えて間違いないと思うが、そこへの通路が見つかっていない。銀貨同盟の三人には、その道を探し出してほしい。我々は魔人が出てきた際、機械人形をもって撃滅げきめつする。通路が瓦礫などでふさがれている場合も機械人形は役に立つと思うから、必要なら遠慮えんりょなく言ってくれ」


「わかりました」


「我々は遺跡歩きに関しては素人しろうとだ。注意事項があれば聞いておきたいのだが、何かあるかな」


 スレイヤーの問いにケイティとスコットが渋い顔をしたので、代わりにシンが答えた。


「遺跡探査での注意事項、というのは特にありません。頼りないかもしれませんが、遺跡っていうのは一つ一つ違いがあって、ひそむ危険もはかり知れません。なので、何かあればその都度つど伝えさせてもらいます。ここで言うよりは、現地について実際に遺跡を見てからの方が現実的で、納得しやすいと思いますので」


 遺跡というのは『これ』といった形が存在しない。深い階層が設けられているものもあれば、階層自体存在しないものもある。トラップや番人ガーディアンのタイプ、稼働かどう率も含めて、一つ一つの遺跡で大きくことなる。これから探査する遺跡が、シン達が攻略してきた遺跡とは全く違った構造をしている可能性も大いに考えられた。


「実際に見てみるまで分からないということか」


「そうなります。今稼動してないガーディアンやトラップも、なにかの弾みで稼動する可能性もあるので、状況に応じて柔軟じゅうなんに対応できるようにしておいてください」


 スレイヤーはしっかりと頷くと、兵達に向けて声を張った。


「聞いての通りだ。現地では我々の想定を超えた事態が起こりうるということを頭に入れておけ」


 兵達は背筋を伸ばし、声をそろえて応答した。スレイヤーが準備に取り掛かるように指示を出すと、兵達は駆け足で礼拝堂を出て、十二頭の馬を荷車と連結させ、素早く馬車に乗り込んだ。

 三人はそれに続いて、最後尾の馬車の荷台に乗り込んだ。


「シン、連中は特殊部隊っつっても遺跡探査の経験は皆無だ、現場にあってはお前達がリーダーだ。身分みぶんなんて気にしねえで、死なせねえように上手うまくエスコートしてやれ」


 見送りにきたジョーカーが言った。


「あたし達がいるんだから心配ないっての」

 

 ケイティが余計なお世話だとその懸念けねんを笑い飛ばすと、ジョーカーは肩をすくめ、真顔になった。


「お前たちにとっても名を売るチャンスだ。ついでに魔法書入手数のスコアを更新してこい」


「うん。行ってくる」


 スレイヤーが大きく通る声で「出発!」と号令ごうれいを叫んだ。

 手綱たづなを握っていた兵達が復唱ふくしょうしてむちを打った。

 十二頭の馬は息をあらげ、ひづめで地面を強く蹴って荷車を引っ張った。走り出した荷馬車に向けて、ジョーカーは敬礼する素振りを見せて送り出した。荷台から身を乗り出した三人は、ジョーカーの姿が見えなくなるまで、頼もしい笑みをたたえながら、大きく手を振り続けた。

2016/12/27 改稿。

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