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城下町の緩やかな坂を上り、組合の寄合所の前を通り、露店が並ぶ街路の脇道を直角に入る。建物に光を遮られた裏路地に入ると、賑やかな表通りからは想像がつかないほど辺りが静まり返った。
まるで細い路地の入口が、別の世界との境界線であるかのようだ。
路地をまっすぐ進むとすぐに突き当たり、道が左右に分かれる。シンは左に曲がり、左手に沿って並んだ店の扉や看板を目で追っていった。怪しげな看板や飾りの並ぶ列に、全く飾り気のない鉄の扉が現れる。囚人を閉じ込めておく牢獄のようなのぞき穴が付いた頑丈な分厚い扉だ。
情報屋の事務所である。
シンが手の甲でドアをノックすると、「入れ」と男の声がかえってきた。
シンは錆びついたドアノブを力任せにひねり、事務所に入った。
埃っぽい部屋にはでたらめな使い方をされた書棚と机があり、夥しい量の書類が床に散乱していた。壁掛け蝋台のぼんやりとした光が、そんな部屋を薄く照らしている。
うるさく鳴る扉を閉めると、声の主がデスクの書類を乱暴にどかし、空いたスペースに足を乗せ、ふんぞり返って片手を上げた。全ての指に、銀の指輪が嵌められていた。
乱雑に切られた髪を後ろに流し、その顔には刺々しい刺青が彫られている。凶悪な笑みを浮かべるのが特徴的で、危ない感じがカッコイイと、お姉さんたちに巷で有名、モテモテらしい。
それが膨大な情報を売買している情報屋、ジョーカーの姿である。
「ようシン、ラクタじゃずいぶん稼いだそうじゃねえか」
「お陰さまで、ケイティ達も大喜びしてたよ。これ、エマからの差し入れ」
シンがバスケットをデスクに置くと、ジョーカーは中身を確認して、サンドイッチに挟まっている具を一つ一つ丹念にチェックしていった。
「お前たちの懐があったかくなれば俺の懐も自然とあったまるからな、この調子でしっかり稼いでくれ。それより急に呼び出して悪かったな、休暇中だったろ」
「それはいいんだけど、ジョーカーさんから呼び出しなんて珍しいからちょっと驚いたよ」
「『さん』はよせっていつも言ってんだろ? 俺みてえなの敬ってると、将来ろくな大人にならねえぞ、青少年」
ジョーカーは狼のように鋭く笑むと、サンドイッチを一つ取って豪快にかじりついた。
2016/12/27 改稿。




