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翌日の仕事は、遺跡周りの瓦礫運びだった。
遺跡に入ったとあるトレジャーハンターが、寄合所に迎えの馬車と昼食の手配をしたらしい。
シンの他に男の子が二人と女の子が一人いた。三人とも年下で、服もすり切れていて、一目で貧しい暮らしをしている子供たちだと分かった。
シンは三人の面倒を見るように言われたので、迎えの荷馬車の中で仕事の内容を確認しながら、三人のことを知ろうと、ぎこちなくもコミュニケーションを取ろうと努力した。
「遺跡についたら、俺たち男は瓦礫を一箇所に集める。女の子は食事の支度をしておいて。必要な道具を運ぶ時は手伝うから、その時は誰かに声をかけてね」
シンが言うと男の子二人は無愛想に、女の子は怯えるような目で頷いた。
露骨に警戒されているようでシンは戸惑ったが、その理由はなんとなくわかっていた。
子供たちの翳った瞳はシンの身奇麗な衣服に向けられていて、裕福な者に対する嫉妬を孕んでいる。
シンは、そんな視線から逃れる最適な方法を知らなかった。
「自己紹介が遅れたけど、俺はシンっていうんだ、よろしく。三人とも、名前は?」
シンは精一杯の笑顔を作って愛想よく尋ねてみた。
しかし三人は目を合わせるばかりで、答えてはくれなかった。
妹と大して歳も変わらないであろう子供たちに無視されて、シンの心は僅かに傷ついた。
しかし、その気持ちを吹き飛ばすように、めげずに、とびきりの笑顔を作ってみせた。
「今日は楽しくなりそうだ。一緒に頑張ろう」
荷馬車が止まり、手綱を握っていた男が「着いたぞ」と言った。
四人は馬車を降りると、荷車や大きな鍋を順に下ろして、さっさと仕事に取り掛かった。
馬車を走らせていた男は馬の首をぽんぽんと叩くと、働き者な若者たちを眺めながらタバコに火を点け、優雅に紫煙をくゆらせた。