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ラクタ遺跡は南を砂漠に、北を枯れかけた森林に囲まれ、崩れかけた神殿の下に発見された。
数年前に立ち寄ったとある探検家が、砂漠と森林の境界線上に残されていた神殿の地下に遺跡があることを偶然発見したのである。
以来、話を聞きつけたトレジャーハンターが遺産や魔法書を求め、遺跡への出入りを繰り返した。
しかし、探索に乗り出したトレジャーハンターが遺跡に踏み込んだのをきっかけに、数千年もの間眠り続けていたガーディアンが目を覚まし、門番として立ちはだかるようになっていた。現在では遺跡の入口をゴーレムの体である大きな岩が塞いでしまっていて、完全に人の出入りが不可能な状態になっている。
というのも、以前探索に入ったトレジャーハンターを追いかけまわしたゴーレムが、そのまま入口で詰まってしまい、挙句、侵入者が遺跡から出たことを察知して、元の場所に戻ることもなくその場で眠りについてしまったという、厄介で、少し間抜けな経緯がある。
ゴーレムは強力な魔力を含んだ魔石を心臓に、硬度の高い岩石の体を持つ。軍に掛け合って大砲で吹っ飛ばしてもらうという案も上がったが、ラクタ遺跡は砂漠化しつつある森林地帯の入口にある。
どうあっても金と時間がかかりすぎるので、誰もがこの遺跡に見切りをつけるのは仕方がなかった。
しかし『銀貨同盟』の三人は、それをどかそうと考えていた。
神殿の脇に小さなテントを張った三人は、遺跡探査の準備を着々と進めていた。
「情報屋さんの話だと、魔法書があるかどうかは五分五分。お宝に関しても探索が完全に終わってるわけじゃないからまだあるかもって」
「完全攻略されてない遺跡なら、金になりそうな物の一つや二つあるでしょ」
シンが愛用のシングルアクションの銃に弾を込めると、ケイティは狩人のような笑みを浮かべ、膝の上に乗せたサーベルの鋭く研がれた刃を親指の腹でひっかいた。
「ま、だからって自分達で爆薬を買い集めて、ゴーレムごと入口を吹っ飛ばすって案もどうかと思うけど」
ケイティはサーベルを丁寧に鞘に戻し、荷袋の中に手を突っ込んでごそごそと漁った。
「お金にうるさいケイティが反対しないのにはちょっと驚いたよ」
「手ぶらじゃ帰らないわよ。元は取る」
荷袋から愛用の鞭を取り出したケイティは、それを腰のフックに固定して、シンの頭にぽんと手を置いた。
「あんたの勘じゃ、ここには何かあるんでしょ?」
「そ、冒険者の勘」シンは口角を上げた。
「あんたの勘はよく当たる。何かあってもあたしらは運命共同体。アテが外れたらみんなで自棄酒よ」
「でも、ケイティはどう思ってる? 実際、組合もここからは早々に手を引いちゃってるしさ」
シンが上目遣いに見ると、ケイティは青い瞳をぎらぎらと光らせて、にやりと笑んだ。
「何かを見つけた人間は「宝を見つけたぞ」って大きな声で宝を見せびらかす。この遺跡に入った人間からは、逃げ出してきた息切れしか聞こえなかった。賭ける価値なんかそれで十分でしょ」
ケイティはそう言うと、テントを出て行った。
シンは六つの穴が開いたリボルバーのシリンダーを元の位置に戻し、銃身を見つめた。
ケイティの言葉が遺跡で待つ危険な道のりをより強く予感させる。
シンは滲んだ手汗に深呼吸すると、リボルバーをホルスターに戻して立った。
「行きますか」
遺跡探索のベテランとして名を知られるようになったシンは十五歳に、ケイティとスコットは十八歳になった。銀貨同盟三人での遺跡探索は、これを数え、十五回目を迎えていた。
2016/12/20 改稿。




