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選択結果は異世界でした  作者: 守月 結
82/103

081話 一路、北へ

加速


※土日の更新は暫くお休みです。

※過去分を幾つか加筆修正していく予定です

 三人を救出した夜日の夜


「まぁ、積もる話は色々あるが…」


「いや~、やっと会えたね師匠!」


「疲れた…もう寝ていい?」


「あの…助けてくれてありがとうございます。」


「一体何があったんだい?君たちが捕まるなんて。」


 各々が話したい内容を話しだす。

 まさにカオス。


「お前ら自由すぎだろ!」


 話がまとまりゃしない。


「まず、何があったんだ!?それを聞く!」


 アレクに追従するわけではないが、まずはそれを聞きたい。


「…この街に着いてから割りとすぐ、変な兵士みたいな人達が私達に襲いかかってきたんです。」


 三人の中で一番説明が上手く、冷静だと思われるサラが代表して話し出す。

 その話は、多分ドンが言ってた金持ちの奴の私兵だな。


「その人達は問題なく迎撃できたんですが…その暫く後にあの見た目の派手な人が来て…」


「少しだけ戦った後で捕まった。捕まった時に何をされたのかわからなかった…というか、見えなかったの。」


 見えなかった?


「自信はないけど、あれは精神感応系だと思う。そして魔法じゃない、スキルだよ、多分。」


 いつもとは全く違い真剣な表情をしながらウィルがそう話す。


「あいつと戦って少ししたら、ほんとにごく僅かだけど…何か違和感を感じたんだ。頭の中のノイズというか…」


「何らかの条件をクリアすることによって発動するタイプのスキル、しかも精神感応系ってめんどくさいねぇ。」


 他人事ひとごとのようにアレクが呑気に言う。

 そんなスキルがあったんだとしたら、俺も本気で戦ってたらやばかったかもしれないな。

 俺の気持ちを察したのか、アレクが付け加える。


「ま、君と戦ってその条件をクリアできるとは思わないし、そもそもそんなスキルを発動する前に倒しちゃうでしょ。」


「多分な。」


 本気で倒そうと思えば、一秒の時間も与えずに戦闘不能にする、それができるくらいは力の差があると思っていた。


「とにかく、そのまま捕まってあの店に連れて行かれて、シンさんに助けてもらったという事です。」


「あそこで出してもらったご飯、美味しくなかった。」


 ウィルの飯の感想はどうでもいい。


「そうか。大変だったろうけど、結果的に無事でよかった。」


「あたしたちだってそんなに弱くはないしね。てか聞いてよ!あたしたちで結構強い騎士団倒したんだよ!?」


 俺達と二手に別れた後のことを思い出したかのように、喜々として語り出すクリス。

 ウィルやサラもそれに乗っかって色々と話したいことがあるようで、三人で熱く語り合っていた。

 俺の方も、ガインとどうだったかとか、あの少女…のような無機質な存在のことも話さなきゃいけないだろうし。


 そうして夜は更けていった。






********************






 翌日


 俺たちはすぐに宿を立った。

 もちろんドンからの追撃を警戒したのもあるが、ウィルを手に入れようとこの街の賞金稼ぎ的な奴らが、いつ襲いかかってくるかもわからないからだ。


「準備はいいか?」


「おっけー」


 クリスが代表して答える。

 そうと決まればさっさとこの街を出て、アレクの研究所に向かわなければ。


「この街から真っ直ぐ北に向かえばいいんだよな?」


「うん、だいたいそのあたり。」


 昨晩のうちにアレクから進行方向を聞いており、その最終確認をした。

 街を出てからではなく、街どころか宿を出る前に確認する理由は


「あー、結構増えてきてるな。」


 宿の周りに、不穏な気配がかなりの数感じられるからだ。


「夜のうちに情報が浸透したのね、めんどくさい。」


「そんなにいるんですか?」


「僕も『気配察知』は使えないけど、なんとなく鼻がムズムズする…」


「ドンが情報を売ったんじゃないかなぁ、抜け目ないやつだったし。」


 だろうな。

 昨日の感じだと、ドンは俺達から手を引いたはずだ、それでも売れる情報は売るってことだろう。

 まぁ、このタイミングでなにか仕掛けてくるって可能性も十分にあるがな。


「面倒だが、殺す訳にはいかない。かと言って相手にするのも時間ばっかりかかる。」


 相変わらず、人を殺すのだけはまだ少し抵抗がある。


「俺が先頭で突っ切る、お荷物のアレクを抱えてな。そのすぐ後ろを三人が付いてきてくれ。」


 簡単な説明をし、俺はアレクを背負いながら宿を飛び出す。

 いきなり飛び出してきた俺に驚いたのか、全員が一気にあたふたしだした。

 もちろん、そいつらは俺たちを狙っていた奴らだ。

 苦手ではあるが肉体強化魔法を一通りかけて、怪しい奴らに突っ込んでいく。


「邪魔だ!どけ!!」


 刀を抜き、魔法も無詠唱で使い、こちらに敵対していると思われる奴らを片っ端から薙ぎ払っていく。

 もちろん、殺しはしない。

 そんな某無双ゲームみたいな事をしている俺のすぐ後ろには、同様に魔法や剣技や拳闘で敵対する奴らを倒している三人がいる。


「一気に突っ切るぞ!」


 俺の合図を皮切りに、一斉に走りだす。

 取り敢えずは、この街の北門を目指して走り続ける。

 その間、それほど弱くはない冒険者らしき人物と相対したが、はっきり言って俺達の敵ではなかった。


「…俺もそうだけど、こいつらも大概だよなぁ。」


「下手な勇者候補より強いかもね。」


 俺のつぶやきに対し、背中にいるアレクが反応する。

 こいつがそう言うってことは、やっぱそれなりなんだろう。

 はたから見れば


 それなりの美人が、紅い髪をなびかせ余裕の表情で熟練の冒険者を斬り伏せる


 幸薄そうな蒼髪の少女が、往年の魔術師を凌駕するかのように上・中級魔法をいとも簡単に繰り出す


 銀狼の少年が、その見た目からは想像もつかない技術で大の大人たちを軽くあしらう


 これは…反則じゃないか?

 敵で出会ったら、取り敢えずズルい!って言って逃げ出すぞ。


「……予想通りいたよ、シン。」


 そんなことを考えながら走っていると、前方に北門が見えた。

 そして、そこには予想通りに奴がいた。


「ドン、今回は力ずくで通るぞ!」


「いーよいーよ!昨日はボクチンの土俵だったしね!」


 いつものふざけた言い方、だがその顔は真剣そのものだ。


「『スコープジャック』!」


 次の瞬間、ドンがスキル名を発し、俺に襲いかかってきた。

 そして俺は全てを『理解』した。


「それはあの三人を捕まえたスキルか!」


「そーだよー!」


 意外にも、ドンは両手に短剣を逆手に持つ双剣のスタイルで襲い掛かってくる。

 そんなイメージはなかったが、なるほど、スキルのためか。


「悪いがそのスキルは俺には通用しないぞ!」


「ほぅ!なーぜかな!」


 ドンの剣筋は決して悪く無い、というかそれなりだ。

 だが、双剣自体にそれほど慣れていない…いや、直接戦闘自体がそれほど得意ではないんだろう。

 それでも、自身が鍛えてきたステータスで何とか戦えているという感じだ。

 ならばなぜ、初心者でも使えそうな片手剣とかではなく、上級の双剣なんてものを使うのか。


「手数を増やしても意味は無い!」


「このスキルを知っているのかな!?」


「あぁ!」


 手数を増やすため、だがそれは最終目標を達成するための手段でしかない。


「そんなことをしても、俺に『傷』を付けることは出来ない!」


 俺の発言を聞いた時、明らかにドンが動揺した。


「……ボクチン以外にもこのスキルを知ってる人間がいるとはね。」


「世界は広いってことだ。わかったらそこをどけ、殺しはしないが、邪魔をするならそれなりに痛い目をみてもらう。」


 俺のスキル『原理究明』

 受けた攻撃は確実に、見た攻撃が原理を理解できることもある。

 奴の刃を刀で受けた、これは受けた攻撃とみなされたんだろ、すぐに理解できた。


 『スコープジャック』

 スキルの発動中は、スキル発動者が傷をつけた対象の視界を、一瞬操る。

 スキルの発動時間は一分、連続使用はできない。

 一度視界を操ると、同じ相手は数分操れなくなる。


 ウィルの読みはビンゴだったわけだ。

 ドンもそれなりに強いわけだし、あの三人相手でも、かすり傷くらい付けれるだろう。

 それに、このスキルはタネを知ってないと恐ろしい事この上ない。

 知らずに近づいて指先でも傷つけられたら、一瞬とはいえ視界を塞がれるわけだから。

 三人はそれぞれ視界を塞がれたか何かしたのだろう。

 結構強いスキル、リスクはないが条件があるタイプか。


「…本気で戦っても勝てないかなー。はぁ、最後のチャンスだったけどむーりかー。」


 この一瞬のやり取りで、後ろの三人も追いついてきた。


「今回はシンがいる。まず負けないわよ。」


「わかってるさー、さすがに君たち全員と戦って勝てるなんてボクチンも思ってないよ~。」


 背中のアレクは特に何も反応しない。

 警戒してくれているんだろうけど、ツッコミがないってことは今は特に怪しいところはないわけか。


「ま、こういうこともあるよね!そんじゃ、またこの街に来た時はご贔屓に!」


「来るかわからんし、来たとしてもお前には絶対に会わない。」


 そう言って俺たちはドンの横を通り過ぎ、街を出て行った。


 振り返るとドンが陽気に手を振っていた。


「僕、あいつ嫌い」


「あら、あたしも。」


「僕もやだな、ご飯美味しくなかったし。」


「みなさん…私も苦手ですけど…」


 ここにきて初めてではないだろうか


 全員の心が一つになった瞬間だった


お読みいただき、ありがとうございます!

ブクマ・感想・評価等本当にありがうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります

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